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前編 恋の自覚と両思い
38.二歳・三歳児クラス
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ニ歳児クラスの子供たちの数は四人だ。基本的にどのクラスも四人なのかもしれない。
まだ調査も継続中ってことは、途中入園はしないのかもしれない。ほとんどの子は、魔法を幼いうちは封じられるんだろうな。危ないし……それは今後もそうなりそうな気はする。
あー……ニ歳児クラス、大変そうだ……。
「もうすぐご飯だから、お片付けするよー」
「ないないする!」
すごい勢いで玩具が飛んでいって、他の子の頭に当たりそうなのを先生が阻止した。
「ダメ! 頭にごっちんするでしょ! 魔法はダメなの、手でないない!」
「びゅーん、する!」
「びゅーんは、お庭だけだよ。人がいないところでしようね」
「びゅーん、するー!」
「お片付け、上手にできるかなぁー? 先生と競争だ! 先生が先に入れちゃうよ~」
「ダメ! 自分で入れる!」
「うん、できたね~。やったぁ!」
ああ~、ニ歳……イヤイヤ期だよね……。
誤魔化すのも大変だ。
「ほぅら、おてて、綺麗綺麗するよ~」
「みじゅ!……うあぁぁぁぁ~っ!」
ああ……他の子の手を洗っている姿を見て、床に寝転んでいた子が空中に水を出して顔にかぶって大泣きしている……。
「ママ!」
手を洗い終わった子が、とてとて走ってきた。
「あ、見つかっちゃった」
シルビア先生がお母さんの顔になった。小さな男の子がガッシリとしがみついて、シルビア先生は愛おしそうにその子をふわっと抱き上げた。
「ママ~! ママママママ~!!! うぁ~ん!」
「ごめんごめん、ジョージ。まだ帰らないよ」
「や! 帰る!」
これは……ニ歳児クラスからは退散した方がよさそうだ。
「あ、あの……もうニ歳児クラスは大丈夫です」
「あら、そう? ごめんなさいね、気を遣わせちゃって。ジョージ、もうママはバイバイね」
「やぁ~!」
「今日はなんのご飯かな~、楽しみだね。人参さん、出てくるかな。ほら、ハリー先生と戻ろう?」
ニ歳児クラスの男性の先生に引き剥がされていく。可哀想に……お家に帰れると期待させちゃったのかな。
「せっかくお会いできたのにお話できなくて残念です。ゆっくりされてくださいね!」
男性の爽やかな先生がそう言い残し、ジョージくんを抱っこしながら中へ戻っていった。
ママの顔が見えるのに一緒にいられないのは辛いはず……早く隣へ移動しよう。
「じゃ、三歳児の方へ行こう」
さっとレイモンドが私の手をとって速足で歩いた。
なんか……疲れてきた……子供って可愛いけど見ているだけでエネルギーを吸い取られる感じもするんだよね……。
三歳児クラスを見た瞬間、もっと疲れる光景が広がっていた。
「いやぁぁぁ! ミレイの、コレじゃないー!」
ぎゃー!!!
一瞬、エプロンが燃えていたー!
「火は駄目! ママも忙しかったんだよ。忘れる時もあるよ」
「ミレイのエプロンはウサギさんなのー! こんなのやだー!!!」
「カエルさんも可愛いよ。ミレイちゃんに、つけてほしいなーって思ってるよ。ミレイちゃ~ん、つけてつけて」
ああ……ママがエプロンを忘れちゃったのか……。
「いやぁぁぁぁぁ!」
ああ……火を使わないか先生が警戒している。こだわりが強い子なのかな。
レイモンドが苦笑しながら、シルビア先生に話しかけた。
「そろそろお昼時ですし、失礼させてもらってもいいですか。僕たちの姿を見たら、ご飯どころではなくなってしまいそうだ」
「そうですね、そうしましょうか。すみません」
「いえ、こんな時間に来てしまって、こちらこそすみませんでした」
それでいいですか、という視線を向けられて私も頷いておく。そのまま三人で歩き出した。
「ふふ、レイモンド様もご立派になられましたね」
「もー、だからそれはやめてくださいよ。どう話そうか、これでも結構悩みながらなんですよ」
「それは失礼しました。……アリス様、レイモンド様をお願いしますね」
また……レイモンドにすまなそうな顔をされる。そんなに気を遣わってもらわなくてもいいのに。
「はい。でも今は頼ってばかりなので、もっと頑張りたいなと思っています。たまに……四歳児クラスさんに顔を出してもいいですか? ニ歳と三歳は……まだ厳しそうですが」
「ええ、もちろんです。アンディくんとも約束されていましたものね」
「ありがとうございます」
「ただ……お気を付けください。子供はとても無邪気で……残酷性も持っています。その瞬間の強い気持ちで、躊躇いなく攻撃してしまいます。火を使うことは普段禁止していますが、癇癪を起こして使ってしまえば、小さな火でも火傷をしてしまう。子供同士の喧嘩も、とても危ない。アンディくんのライバルは……つくらない方がいいかなと思います。レイモンド様がいらっしゃれば、ライバルはレイモンド様になるんでしょうけど」
ああ……そっか。アンディくんよりも他の子と仲よくしすぎるのも危ないのか……。
先生は皆の先生でいなくちゃいけない。やっぱり私はさっきの一連のやり取りで、たまに遊びに来るお姉さんなら許されるけれど先生ならアウトな行動をとってしまったのかもしれない。
あの時……どうするのが正解だったのかな。保育についてもっと勉強すれば……見えてくるのかな。
まだ調査も継続中ってことは、途中入園はしないのかもしれない。ほとんどの子は、魔法を幼いうちは封じられるんだろうな。危ないし……それは今後もそうなりそうな気はする。
あー……ニ歳児クラス、大変そうだ……。
「もうすぐご飯だから、お片付けするよー」
「ないないする!」
すごい勢いで玩具が飛んでいって、他の子の頭に当たりそうなのを先生が阻止した。
「ダメ! 頭にごっちんするでしょ! 魔法はダメなの、手でないない!」
「びゅーん、する!」
「びゅーんは、お庭だけだよ。人がいないところでしようね」
「びゅーん、するー!」
「お片付け、上手にできるかなぁー? 先生と競争だ! 先生が先に入れちゃうよ~」
「ダメ! 自分で入れる!」
「うん、できたね~。やったぁ!」
ああ~、ニ歳……イヤイヤ期だよね……。
誤魔化すのも大変だ。
「ほぅら、おてて、綺麗綺麗するよ~」
「みじゅ!……うあぁぁぁぁ~っ!」
ああ……他の子の手を洗っている姿を見て、床に寝転んでいた子が空中に水を出して顔にかぶって大泣きしている……。
「ママ!」
手を洗い終わった子が、とてとて走ってきた。
「あ、見つかっちゃった」
シルビア先生がお母さんの顔になった。小さな男の子がガッシリとしがみついて、シルビア先生は愛おしそうにその子をふわっと抱き上げた。
「ママ~! ママママママ~!!! うぁ~ん!」
「ごめんごめん、ジョージ。まだ帰らないよ」
「や! 帰る!」
これは……ニ歳児クラスからは退散した方がよさそうだ。
「あ、あの……もうニ歳児クラスは大丈夫です」
「あら、そう? ごめんなさいね、気を遣わせちゃって。ジョージ、もうママはバイバイね」
「やぁ~!」
「今日はなんのご飯かな~、楽しみだね。人参さん、出てくるかな。ほら、ハリー先生と戻ろう?」
ニ歳児クラスの男性の先生に引き剥がされていく。可哀想に……お家に帰れると期待させちゃったのかな。
「せっかくお会いできたのにお話できなくて残念です。ゆっくりされてくださいね!」
男性の爽やかな先生がそう言い残し、ジョージくんを抱っこしながら中へ戻っていった。
ママの顔が見えるのに一緒にいられないのは辛いはず……早く隣へ移動しよう。
「じゃ、三歳児の方へ行こう」
さっとレイモンドが私の手をとって速足で歩いた。
なんか……疲れてきた……子供って可愛いけど見ているだけでエネルギーを吸い取られる感じもするんだよね……。
三歳児クラスを見た瞬間、もっと疲れる光景が広がっていた。
「いやぁぁぁ! ミレイの、コレじゃないー!」
ぎゃー!!!
一瞬、エプロンが燃えていたー!
「火は駄目! ママも忙しかったんだよ。忘れる時もあるよ」
「ミレイのエプロンはウサギさんなのー! こんなのやだー!!!」
「カエルさんも可愛いよ。ミレイちゃんに、つけてほしいなーって思ってるよ。ミレイちゃ~ん、つけてつけて」
ああ……ママがエプロンを忘れちゃったのか……。
「いやぁぁぁぁぁ!」
ああ……火を使わないか先生が警戒している。こだわりが強い子なのかな。
レイモンドが苦笑しながら、シルビア先生に話しかけた。
「そろそろお昼時ですし、失礼させてもらってもいいですか。僕たちの姿を見たら、ご飯どころではなくなってしまいそうだ」
「そうですね、そうしましょうか。すみません」
「いえ、こんな時間に来てしまって、こちらこそすみませんでした」
それでいいですか、という視線を向けられて私も頷いておく。そのまま三人で歩き出した。
「ふふ、レイモンド様もご立派になられましたね」
「もー、だからそれはやめてくださいよ。どう話そうか、これでも結構悩みながらなんですよ」
「それは失礼しました。……アリス様、レイモンド様をお願いしますね」
また……レイモンドにすまなそうな顔をされる。そんなに気を遣わってもらわなくてもいいのに。
「はい。でも今は頼ってばかりなので、もっと頑張りたいなと思っています。たまに……四歳児クラスさんに顔を出してもいいですか? ニ歳と三歳は……まだ厳しそうですが」
「ええ、もちろんです。アンディくんとも約束されていましたものね」
「ありがとうございます」
「ただ……お気を付けください。子供はとても無邪気で……残酷性も持っています。その瞬間の強い気持ちで、躊躇いなく攻撃してしまいます。火を使うことは普段禁止していますが、癇癪を起こして使ってしまえば、小さな火でも火傷をしてしまう。子供同士の喧嘩も、とても危ない。アンディくんのライバルは……つくらない方がいいかなと思います。レイモンド様がいらっしゃれば、ライバルはレイモンド様になるんでしょうけど」
ああ……そっか。アンディくんよりも他の子と仲よくしすぎるのも危ないのか……。
先生は皆の先生でいなくちゃいけない。やっぱり私はさっきの一連のやり取りで、たまに遊びに来るお姉さんなら許されるけれど先生ならアウトな行動をとってしまったのかもしれない。
あの時……どうするのが正解だったのかな。保育についてもっと勉強すれば……見えてくるのかな。
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