31 / 189
前編 恋の自覚と両思い
31.目的地
しおりを挟む
「あ、あのね、アリス……」
「なに」
レイモンドの方を見もしないでズンズンと歩く。
どこに行くつもりなのとか聞かないでー、私も分かんないしー……。
「リボンの位置とかは、仕立て屋さんから提案としてのデザインはあるんだけど――」
「聞いてなーい!」
あ、思わず振り向いちゃった。
「ええー……気になっていたんじゃないのー」
「ソ、ソフィと服のデザインについて話していただけなの! 女の子特有の話題選びなの!」
「そうなんだ。それにしては自宅ではジャージやTシャツばっかりだった気もするけど」
「自由になるお金もそんなになかったし。自分で稼げるようになっていたら、もっと気にしたし。私のお古のTシャツを大樹が着れたら着る感じだったから仕方ないの。家の中の私にまでケチつけないで。覗く方が悪いんでしょ」
「ケチなんてつけていないよー。そっか……それなら今度一緒にデザインも考えようよ。今から好みのやつ買いに行く?」
「い……いいよ。なんかこの家、いっぱい服があるし。水色ロリ服ばっかりだけど。もったいないから買わなくていい」
「俺が考えたの、気に入ってくれた?」
「……もうそれでいいや。これ以上はいらない。まぁ……もう少し汚してもいいと思えるようなのがいいけど……」
「え……最初のワンピースで腹筋までしていたのに……」
「夢だと思ってたの!」
そういえば、あのワンピースはどこにいっちゃったんだろう。
……さすがに夢じゃないよね、もう……。昨日も夢を見ちゃったし。海の上に立ってタコの足を引っ掴んでダンスをするという全くもって意味が分からない夢だったけど。
ちなみに観客はイルカだった。
「でも、確かに動きやすい服もあった方がいいかな……」
レイモンドが思案し始めた。
辺境伯息子の嫁候補(?)に相応しく見える動きやすい服ってあるのかな……あ!
「ミニスカはやめてよ、ミニスカは」
「ううん……それなら、ドロワーズを組み合わせれば……?」
結局そっち系か!!!
「そういえば、私のネグリジェもドロワーズ付きでロリロリだよね……あんたが考えたわけ?」
「そうだよ! 俺が考えたのに着ている姿をまだ見ていないよ。寝る前に俺、部屋に行くから!」
「来るな。変態。ウザい」
「さっき約束したじゃん、寝る前にお願いを叶えてもらいに行くって」
「私、了解していないけど」
「えー、俺にタダ働きをさせたのー? 酷いよ、アリスちゃん」
たまに、ちゃん付けするよね……なんでだろ。
ううん……確かに可哀想かな……でもお願いって……たぶん、たぶんだけど……キ、キスとかだよね……ま、まずい、ドキドキしてきた。
「分かった、ネグリジェを寝る前に見せるので手を打つ。それでお願いはおしまい」
「えーっ、それ? じゃ、たまに見せて」
「……寝る前のレディの部屋にたまにでも来るのはダメだと思う」
「でもさ、他の人がいると聞けないこととかあるでしょ? 一日の終わりに何かなかったか聞くくらいはさせてよ。本当はそれをお願いしようと思ったんだ。使用人がいる場だと、やっぱり無理をしている。気にしないでいつも通り話をしてほしいけど、君はそうしないよね。言えずにいたこととかないかなって、これでも気にしているんだよ」
なんだ……キスじゃなかったんだ……いや、ガッカリなんかしてないけどね!? でも、そんな真面目なお願いだったなんて、色々想像した私が馬鹿みたいじゃん。
「……分かった。変なことはしないでよ。聞きたいことがなかったら、すぐ部屋に戻って」
「ああ、そうするよ」
……あれ?
おかしいな……おかしいよね? 一度見せるって話だったのに、毎晩来ることになってない?
え? なんでそうなった?
「それじゃ、せっかくだし、この世界の保育園に行ってみる?」
「あ、うん。それは行ってみたい」
「じゃ、行こっか」
彼がぷかりと浮かせてくれた杖に跨って、後ろから彼に支えられる。
高い場所は怖い。一人で乗れるようになっても……彼に後ろで支えてもらえないかなと思いながら、宙に浮かんだ。
「なに」
レイモンドの方を見もしないでズンズンと歩く。
どこに行くつもりなのとか聞かないでー、私も分かんないしー……。
「リボンの位置とかは、仕立て屋さんから提案としてのデザインはあるんだけど――」
「聞いてなーい!」
あ、思わず振り向いちゃった。
「ええー……気になっていたんじゃないのー」
「ソ、ソフィと服のデザインについて話していただけなの! 女の子特有の話題選びなの!」
「そうなんだ。それにしては自宅ではジャージやTシャツばっかりだった気もするけど」
「自由になるお金もそんなになかったし。自分で稼げるようになっていたら、もっと気にしたし。私のお古のTシャツを大樹が着れたら着る感じだったから仕方ないの。家の中の私にまでケチつけないで。覗く方が悪いんでしょ」
「ケチなんてつけていないよー。そっか……それなら今度一緒にデザインも考えようよ。今から好みのやつ買いに行く?」
「い……いいよ。なんかこの家、いっぱい服があるし。水色ロリ服ばっかりだけど。もったいないから買わなくていい」
「俺が考えたの、気に入ってくれた?」
「……もうそれでいいや。これ以上はいらない。まぁ……もう少し汚してもいいと思えるようなのがいいけど……」
「え……最初のワンピースで腹筋までしていたのに……」
「夢だと思ってたの!」
そういえば、あのワンピースはどこにいっちゃったんだろう。
……さすがに夢じゃないよね、もう……。昨日も夢を見ちゃったし。海の上に立ってタコの足を引っ掴んでダンスをするという全くもって意味が分からない夢だったけど。
ちなみに観客はイルカだった。
「でも、確かに動きやすい服もあった方がいいかな……」
レイモンドが思案し始めた。
辺境伯息子の嫁候補(?)に相応しく見える動きやすい服ってあるのかな……あ!
「ミニスカはやめてよ、ミニスカは」
「ううん……それなら、ドロワーズを組み合わせれば……?」
結局そっち系か!!!
「そういえば、私のネグリジェもドロワーズ付きでロリロリだよね……あんたが考えたわけ?」
「そうだよ! 俺が考えたのに着ている姿をまだ見ていないよ。寝る前に俺、部屋に行くから!」
「来るな。変態。ウザい」
「さっき約束したじゃん、寝る前にお願いを叶えてもらいに行くって」
「私、了解していないけど」
「えー、俺にタダ働きをさせたのー? 酷いよ、アリスちゃん」
たまに、ちゃん付けするよね……なんでだろ。
ううん……確かに可哀想かな……でもお願いって……たぶん、たぶんだけど……キ、キスとかだよね……ま、まずい、ドキドキしてきた。
「分かった、ネグリジェを寝る前に見せるので手を打つ。それでお願いはおしまい」
「えーっ、それ? じゃ、たまに見せて」
「……寝る前のレディの部屋にたまにでも来るのはダメだと思う」
「でもさ、他の人がいると聞けないこととかあるでしょ? 一日の終わりに何かなかったか聞くくらいはさせてよ。本当はそれをお願いしようと思ったんだ。使用人がいる場だと、やっぱり無理をしている。気にしないでいつも通り話をしてほしいけど、君はそうしないよね。言えずにいたこととかないかなって、これでも気にしているんだよ」
なんだ……キスじゃなかったんだ……いや、ガッカリなんかしてないけどね!? でも、そんな真面目なお願いだったなんて、色々想像した私が馬鹿みたいじゃん。
「……分かった。変なことはしないでよ。聞きたいことがなかったら、すぐ部屋に戻って」
「ああ、そうするよ」
……あれ?
おかしいな……おかしいよね? 一度見せるって話だったのに、毎晩来ることになってない?
え? なんでそうなった?
「それじゃ、せっかくだし、この世界の保育園に行ってみる?」
「あ、うん。それは行ってみたい」
「じゃ、行こっか」
彼がぷかりと浮かせてくれた杖に跨って、後ろから彼に支えられる。
高い場所は怖い。一人で乗れるようになっても……彼に後ろで支えてもらえないかなと思いながら、宙に浮かんだ。
1
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです
坂合奏
恋愛
「I love much more than you think(君が思っているよりは、愛しているよ)」
祖母の策略によって、冷徹上司であるイギリス人のジャン・ブラウンと婚約することになってしまった、二十八歳の清水萌衣。
こんな男と結婚してしまったら、この先人生お先真っ暗だと思いきや、意外にもジャンは恋人に甘々の男で……。
あまりの熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです。
※物語の都合で軽い性描写が2~3ページほどあります。
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
別にいいんじゃないんですか? 上手くならなくても——。
後輩マネージャーのその一言が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
だから、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると思っていたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。
しかし、そこに香奈が現れる。
成り行きで香奈を家に上げた巧だが、なぜか彼女はその後も彼の家を訪れるようになって——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
甘酸っぱくて、爽やかで、焦れったくて、クスッと笑えて……
オレンジジュース(のような青春)が好きな人必見の現代ラブコメ、ここに開幕!
※これより下では今後のストーリーの大まかな流れについて記載しています。
「話のなんとなくの流れや雰囲気を抑えておきたい」「ざまぁ展開がいつになるのか知りたい!」という方のみご一読ください。
【今後の大まかな流れ】
第1話、第2話でざまぁの伏線が作られます。
第1話はざまぁへの伏線というよりはラブコメ要素が強いので、「早くざまぁ展開見たい!」という方はサラッと読んでいただいて構いません!
本格的なざまぁが行われるのは第15話前後を予定しています。どうかお楽しみに!
また、特に第4話からは基本的にラブコメ展開が続きます。シリアス展開はないので、ほっこりしつつ甘さも補充できます!
※最初のざまぁが行われた後も基本はラブコメしつつ、ちょくちょくざまぁ要素も入れていこうかなと思っています。
少しでも「面白いな」「続きが気になる」と思った方は、ざっと内容を把握しつつ第20話、いえ第2話くらいまでお読みいただけると嬉しいです!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
悪役令嬢を拾ったら、可愛すぎたので妹として溺愛します!
平山和人
恋愛
転生者のクロエは諸国を巡りながら冒険者として自由気ままな一人旅を楽しんでいた。 そんなある日、クエストの途中で、トラブルに巻き込まれた一行を発見。助けに入ったクロエが目にしたのは――驚くほど美しい少女だった。
「わたくし、婚約破棄された上に、身に覚えのない罪で王都を追放されたのです」
その言葉に驚くクロエ。しかし、さらに驚いたのは、その少女が前世の記憶に見覚えのある存在だったこと。しかも、話してみるととても良い子で……?
「そういえば、私……前世でこんな妹が欲しかったって思ってたっけ」
美少女との出会いが、クロエの旅と人生を大きく変えることに!?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる