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前編 恋の自覚と両思い
28.変態的な……?
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「気持ち悪い、早く乾かして!」
「えー、できるようになってからでいいじゃん」
「本当に乾かせるのかも見たいし」
「……仕方ないな」
レイモンドが杖を振り、風が私の身体にまとわり付くように滑っていく。暖かい風がドライヤーの大みたいな勢いで私の服を乾かしていく。
「……ふ、わぁっ」
やばい……この魔法、やばい!
「アリス……? ど、どうしたの、あ、熱かった? 人肌くらいにしたはずなんだけど……」
人肌の風が……絶対に人が触れないような場所まで触れていく。これはやばい……でも変態的な意味がなさそうにレイモンドは魔法を使っていた。言及もしにくい……最後に乾かしてもらえばよかった……。
「アリス、顔が赤いけど……」
「く、くすぐったい。ムカついたから、あんたも水浸しにしていい? 私も乾かす」
「それはやめて! 絶対やめて! 高熱の爆風がきたら俺、死んじゃうよ。何かで試してからにして!」
「精霊さんの力は威力が弱いんじゃないの」
「そっちに頼もうとは普段意識しないでしょ。すっ飛ばして神に徹底的に乾かしてとかうっかり願ったら、火砕サージみたいなのがきそうだよ。人を相手に最初に試そうとするのは、やめてくれるかな」
「この世界……人って簡単に死にそうだね……」
「君の願いが聞き届けられやすいだけだよ。精霊の力では無理なことをお願いすると神が力を貸してくれる。普通は義務感とか使命感とか強い意志がないと無理だけどね。君の場合、一つ一つ調整を覚えないと危険なんだ」
もしかして……命の危険を感じながらレイモンドは私に教えてくれている……?
ダメだダメだ。考えれば考えるほどコイツの株が上がってしまう。
「それで、なんで水は止まってくれなかったの! そのせいで水浸しになったんだよね。あんた予想してたでしょ」
「実際に体験しないと分からないしね。君、水に対して来るなって思ったでしょ。この世界の恵みを拒否したら駄目だよ」
な……何それ……。
「自分に襲いかかってくる水に、感謝を込めて止まれって祈るの? 無理でしょ、無理無理」
「まぁね。だから風魔法で止めたいところだけど、球体ではないから調整がかなり難しい。実際には光魔法で止めるのが楽だよ。さっきのコップのもだし、タライから水が落ちてきてもね」
「光……」
光なんかで止まるの?
いや、単なる光じゃないんだっけ。
「向けられた恵みを自然へと還す。そんな意識で光の壁をつくる。浄化するイメージと似ているかな。来るな、よりは霧消しろと念じて空気中へとお返しする意識で防げば魔法で生み出したばかりの水なら消えるし、大地へと戻れって意識なら壁にぶつかって落ちる。ただ、魔法で球体にした水をそのままの形で止めるには……さっきの水魔法を使う。光魔法と水魔法の組み合わせでもいい。咄嗟の判断も拒否したい気持ちを抑えるのも難しいし、慣れだね。瞬間的に光の壁をつくれるようになるのが最初の目標かな」
これから……思っていた以上にレイモンドにベッタリになるかもなぁ……。
「じゃ、もう一回いくね」
「え、待って。待って待って」
バシャァァァァァァァ!!!
「待ってって言ったでしょ、レイモンドー!!!」
「いやいや、いきなり水が飛んできた時の対応のためにもさ……」
「今は練習でしょ!」
「じゃ、乾かすねー」
「駄目駄目駄目駄目駄目!」
「え……濡れてるの、気持ち悪いんじゃなかったの……」
「やっぱりまとめて最後でいい」
「ええー、なんで。乾かしている時のアリス可愛いから、もう一回見たかったのに」
そのせいで、いきなりかけたのか!!!
「この変態が!」
「酷いなぁ。でも……もう少し今日はシンプルなワンピースの方がよかったかもなぁ……」
「それ……体のラインが見えるからとか透けるからとか思ってない?」
「当然だよね」
「当然じゃなぁぁぁぁい! 変態変態変態! いっぺん死んでこい!」
「ちょっ……! 君、明確なイメージでそんな言葉言ってたら俺、メラメラ燃えて死んじゃうよ? やめてよね、怖すぎるよ」
「あんたが変態すぎるの!」
「好きな女の子にくらい、変態になったっていいじゃん」
認めている上に開き直ってるし……。
でもそっか。これから「死ね」は言わない方がよさそうだな……。中学校では突っ込みも兼ねているような軽い言葉で使う友達も結構いたけど、子供っぽいといえば子供っぽい。大人の階段を上るためだと思って、これからは言葉にも気を付けよう。使うのは「変態」くらいにしておこう。
「アリスがいけないんだよ。貧乳貧乳言うから、もう気になって気になって……。一年経ったら戻っちゃうんでしょ? 前の君がどれくらいだったのか全然気にしていなかったから覚えていないけど、今のそれは今しか見れな……」
「何があろうと見せないから! 分かった、もういい。言わないようにする。夢だと思っていたから言ってたの。もう気にしないで」
「えー、そう言われてもねー」
そうか……貧乳貧乳言っていると想像されてしまうのか……全然意識していなかった。もう少し色々と考えてから口にしよう。
レディらしくね、レディらしく。
でも……私が好きだって言うわりに全然気にしてなかったの? それも男子としてどうなの。それって本当に好きなの?
体に興味を持たない好きって、女として好きってわけじゃないんじゃ……。
いやいや、興味を持ってほしかったわけじゃないけど。でも全然って……全然っておかしくない?
「じゃ、乾かすねー」
「ま、待って、駄目だって……ふ……んんっ」
「くすぐったがってるアリス……可愛い……」
「ぶっ殺す! 今すぐ殺す!」
「うわぁ! アリス、右手の上に岩が浮かんでる!」
「あ……」
「やめてよもー、怖いよ。まぁ、危なくなったらなんとかするけどね。なんともできなかったら困るからやめてよね。他の人と特訓なんてしないでよ。下手したら相手が死んじゃうよ」
他の人は余計なことを言わないし、しないと思うけど……。でも調整し損ねることはありそうだし、仕方ないか。
次は絶対に止める……!
なんだっけ、神に力をお返しするんだっけ?
私に襲いかかる全ての恵みは、一滴残らず神に返上してやるんだから!!!
「えー、できるようになってからでいいじゃん」
「本当に乾かせるのかも見たいし」
「……仕方ないな」
レイモンドが杖を振り、風が私の身体にまとわり付くように滑っていく。暖かい風がドライヤーの大みたいな勢いで私の服を乾かしていく。
「……ふ、わぁっ」
やばい……この魔法、やばい!
「アリス……? ど、どうしたの、あ、熱かった? 人肌くらいにしたはずなんだけど……」
人肌の風が……絶対に人が触れないような場所まで触れていく。これはやばい……でも変態的な意味がなさそうにレイモンドは魔法を使っていた。言及もしにくい……最後に乾かしてもらえばよかった……。
「アリス、顔が赤いけど……」
「く、くすぐったい。ムカついたから、あんたも水浸しにしていい? 私も乾かす」
「それはやめて! 絶対やめて! 高熱の爆風がきたら俺、死んじゃうよ。何かで試してからにして!」
「精霊さんの力は威力が弱いんじゃないの」
「そっちに頼もうとは普段意識しないでしょ。すっ飛ばして神に徹底的に乾かしてとかうっかり願ったら、火砕サージみたいなのがきそうだよ。人を相手に最初に試そうとするのは、やめてくれるかな」
「この世界……人って簡単に死にそうだね……」
「君の願いが聞き届けられやすいだけだよ。精霊の力では無理なことをお願いすると神が力を貸してくれる。普通は義務感とか使命感とか強い意志がないと無理だけどね。君の場合、一つ一つ調整を覚えないと危険なんだ」
もしかして……命の危険を感じながらレイモンドは私に教えてくれている……?
ダメだダメだ。考えれば考えるほどコイツの株が上がってしまう。
「それで、なんで水は止まってくれなかったの! そのせいで水浸しになったんだよね。あんた予想してたでしょ」
「実際に体験しないと分からないしね。君、水に対して来るなって思ったでしょ。この世界の恵みを拒否したら駄目だよ」
な……何それ……。
「自分に襲いかかってくる水に、感謝を込めて止まれって祈るの? 無理でしょ、無理無理」
「まぁね。だから風魔法で止めたいところだけど、球体ではないから調整がかなり難しい。実際には光魔法で止めるのが楽だよ。さっきのコップのもだし、タライから水が落ちてきてもね」
「光……」
光なんかで止まるの?
いや、単なる光じゃないんだっけ。
「向けられた恵みを自然へと還す。そんな意識で光の壁をつくる。浄化するイメージと似ているかな。来るな、よりは霧消しろと念じて空気中へとお返しする意識で防げば魔法で生み出したばかりの水なら消えるし、大地へと戻れって意識なら壁にぶつかって落ちる。ただ、魔法で球体にした水をそのままの形で止めるには……さっきの水魔法を使う。光魔法と水魔法の組み合わせでもいい。咄嗟の判断も拒否したい気持ちを抑えるのも難しいし、慣れだね。瞬間的に光の壁をつくれるようになるのが最初の目標かな」
これから……思っていた以上にレイモンドにベッタリになるかもなぁ……。
「じゃ、もう一回いくね」
「え、待って。待って待って」
バシャァァァァァァァ!!!
「待ってって言ったでしょ、レイモンドー!!!」
「いやいや、いきなり水が飛んできた時の対応のためにもさ……」
「今は練習でしょ!」
「じゃ、乾かすねー」
「駄目駄目駄目駄目駄目!」
「え……濡れてるの、気持ち悪いんじゃなかったの……」
「やっぱりまとめて最後でいい」
「ええー、なんで。乾かしている時のアリス可愛いから、もう一回見たかったのに」
そのせいで、いきなりかけたのか!!!
「この変態が!」
「酷いなぁ。でも……もう少し今日はシンプルなワンピースの方がよかったかもなぁ……」
「それ……体のラインが見えるからとか透けるからとか思ってない?」
「当然だよね」
「当然じゃなぁぁぁぁい! 変態変態変態! いっぺん死んでこい!」
「ちょっ……! 君、明確なイメージでそんな言葉言ってたら俺、メラメラ燃えて死んじゃうよ? やめてよね、怖すぎるよ」
「あんたが変態すぎるの!」
「好きな女の子にくらい、変態になったっていいじゃん」
認めている上に開き直ってるし……。
でもそっか。これから「死ね」は言わない方がよさそうだな……。中学校では突っ込みも兼ねているような軽い言葉で使う友達も結構いたけど、子供っぽいといえば子供っぽい。大人の階段を上るためだと思って、これからは言葉にも気を付けよう。使うのは「変態」くらいにしておこう。
「アリスがいけないんだよ。貧乳貧乳言うから、もう気になって気になって……。一年経ったら戻っちゃうんでしょ? 前の君がどれくらいだったのか全然気にしていなかったから覚えていないけど、今のそれは今しか見れな……」
「何があろうと見せないから! 分かった、もういい。言わないようにする。夢だと思っていたから言ってたの。もう気にしないで」
「えー、そう言われてもねー」
そうか……貧乳貧乳言っていると想像されてしまうのか……全然意識していなかった。もう少し色々と考えてから口にしよう。
レディらしくね、レディらしく。
でも……私が好きだって言うわりに全然気にしてなかったの? それも男子としてどうなの。それって本当に好きなの?
体に興味を持たない好きって、女として好きってわけじゃないんじゃ……。
いやいや、興味を持ってほしかったわけじゃないけど。でも全然って……全然っておかしくない?
「じゃ、乾かすねー」
「ま、待って、駄目だって……ふ……んんっ」
「くすぐったがってるアリス……可愛い……」
「ぶっ殺す! 今すぐ殺す!」
「うわぁ! アリス、右手の上に岩が浮かんでる!」
「あ……」
「やめてよもー、怖いよ。まぁ、危なくなったらなんとかするけどね。なんともできなかったら困るからやめてよね。他の人と特訓なんてしないでよ。下手したら相手が死んじゃうよ」
他の人は余計なことを言わないし、しないと思うけど……。でも調整し損ねることはありそうだし、仕方ないか。
次は絶対に止める……!
なんだっけ、神に力をお返しするんだっけ?
私に襲いかかる全ての恵みは、一滴残らず神に返上してやるんだから!!!
応援ありがとうございます!
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