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9.プールでお仕事
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「では姿を見せようか、シルヴィア」
「ええ」
目の前でわーきゃー楽しそうにしているだろう生徒たちの存在を感じ取れる。姿は見えないけれど、水しぶきでもそれが分かる。
ここはプールだ。まだ四月だから解放されていないプール。おそらくご丁寧にも水はそれなりに魔法によって温かくされているのだろう。
すぐにはバレないように消音魔法も姿隠しの魔法もかけられているようだけど、気づいてしまえば簡単に解ける。
バロン王子が解呪の呪文を唱え、パチンと指を鳴らした。
「そこまでだ」
目の前に水着姿の男女が三十人くらいか……聞いていた通り、多いな。それに確かに女のほとんどがビキニだ。露出度が高い。
オレが男だったら、役得だっただろうに……。
「バロン様!?」
「嘘だろ、バロン様が自ら取り締まることはないって――!」
「逃げろ!」
何人かがプールサイドに杖を取りに行こうとして、他の風紀委員に捕縛されている。
「は~い、皆さんここに並んでくださいね。名前を述べたらすぐに着替えてください。会議室に行きますよ。逃げた場合は、おって重い処分を伝えます」
リリアンも張り切って風紀委員の仕事に精をだしている。
「全員の顔を把握した。あとは風紀委員の言葉に従え」
風の拡散魔法でバロン王子がここにいる全員にそう伝える。逃げようとしていた奴も諦めたようだ。
あーあ。
つまんねーなー。
水の中に入っての捕り物になる可能性も考えて、風紀委員の八割くらいは水着だ。オレも王子も水着だ。せっかくだからと露出度の高いビキニを選んでみた。いい体しているわけだしな!
三十人前後が皆して空から逃げようとしては、さすがに捕まえるのは大変だと思ったけど……王子の肉体美とオレのエロティックでムチムチな肉体美を逃げるより見たいと思う生徒の方が多そうだ。熱い視線をビシビシと感じる。
そうだろうそうだろう!
オレの体、めちゃくちゃ魅力的だろう!
「あの子たちの処分はどうするのかしら?」
ふふんといい気になりながら、こそっとバロン王子に聞いてみる。
「反省文とここの掃除と、あとは軽い奉仕活動かな」
「ふーん。少し可哀相ね」
放課後のプールでひっそり遊びたい気持ちは分かる。……ま、普通はやらないだろうが、魔法世界だと証拠隠滅もやりやすいだろうしな。
「あそこまで露出度が高くなっていなければ、僕まで出てこなかったんだけどね」
「確かに、聞いていた以上に……」
季節外に、教師たちの目を盗んでプールに入る輩は今までも普通にいたらしい。不定期開催だ。掃除までしっかりするのなら大目に見て、気付かないふりをしていたようだが……最近は男をたらしこもうと平民の富裕層の女の露出度が高くなり、男の目も間違いが起こりそうになってきて……完全に禁止しなくてはならなさそうだということで、王子が出張ることになった。
生徒を生徒が取り締まるのには理由がある。少し悪いことをした程度なら、かなり大目に見てやれるからだ。卒業したら誰もが責任ある立場になる。多少は……と。
だが、王子にしっかりと認識されてしまっては、卒業後にいいことは何もない。さすがにその行為は誰もがやめる。禁止にさせるレベルのことが起きると、今は王子が前面に出るという方針だ。……王子が入学するまでは、その立場は顧問ではあったらしい。顧問も敵にまわすと厄介な理由があるようだが……教えてはもらっていない。バカなことをした生徒だけが思い知るとかなんとか。とはいえ、噂は広がっているらしい。
「でも、私ほどの肉体美を誇る女の子はいないわね」
風紀委員の前に並んでいる校則違反の生徒を遠巻きに見ながら、腰に手をあてて体を揺らしてみせる。乳がバイバインと揺れる。
「……僕の恋人は少々いかがわしいな」
「あ。貴族ってことを忘れていたわ」
「だんだんと、慣れてきたね」
女って立場にってことだな。まぁ、エロい目で見られるのは悪い気はしない。
「私の王子様も、この体にメロメロなのかしら?」
わざと色っぽくしなだれかかりながら聞いてみる。
「……これだけ生徒がいる前で反応するわけにはいかないんだから、やめてくれるかな」
こそっと耳元でバロン王子がセクハラまがいのことを言ってきた。完全にオレが元オトコだと知っているからこその発言だな。
「なんのことかしら」
「……生娘を装うなよ」
「生娘でしょう、私。ねぇ?」
「はぁ……」
「触りたくなります?」
「肯定したら触らせてくれるのかな」
「絶対させません!」
「それなら聞かないでくれ」
オレが元オトコだと分かっていても触りたくなるんかな。ま、オレだって触りたくなったしな。興奮しねーけど。
一通りの作業が終わって、風紀委員の一人がこちらに来た。
「名前の記録も完了しました」
「ああ、あとは任せる。水を抜いて最後に点検したら僕も戻るよ」
「はい、お任せください」
全員がいなくなる。もう女らしくはそんなにしなくていいか。今は四月後半、夜は少し肌寒い。
「さてと、泳ごうか。シルヴィア」
「え」
バロン王子が穏やかに笑う。
「ずっとつまらなさそうにしていただろう?」
「そりゃ、つまらないですよ」
責めたような言い方をしながらも笑ってしまう。うずうずしていた。だって目の前にプールがあるのに泳げないなんて、つまらないだろ? 水着なのにさ。
「このために水着を着てもらったんだ。……まさか、それを選ぶとは思わなかったけど」
「せっかくなので!」
王子に渡されたいくつかの水着の中で、一番エロいのがコレだった。驚かせてやろうかと、あえてコレを選んだ。黒で大人の魅力が漂っている。
さて、もう人はいない。
そろそろいいか。
こそっとバロン王子の耳元で呟く。
「オレの泳ぎ、とくと見やがれ!」
そう言って、ザブンとプールの中に飛び込んだ。ここはやっぱりバタフライだろ!
爽快感がたまらない。ザブンザブンと水しぶきをあげて――、しかし、この体すぐ疲れるな……。毎日筋トレはしているものの、まだ大きくは変わらないか。
「鍛え方が足らなさ過ぎます、この体……」
「いい泳ぎだったよ、シルヴィア」
プールサイドに座って一休みする。
バロン王子が杖をヒュッと円を書くように動かした。恐らくプールの栓を抜いたんだろう。
「もういい?」
「抜く前に聞くのはどうかと」
「泳ぎ足りないなら、また栓をするよ」
「誰かにバレたらまずいでしょうし、やめときます」
「バレてもちゃんと口を封じるよ」
息の根を止めるって意味に聞こえるな。
「もういいです」
「そう」
バスタオルがふわふわと飛んできた。
「はい。風邪をひくよ」
「……女の気分になるな……」
「女の子だよ、僕にとっては」
「え」
「ここまで女の子の体をしているのに、男とは思えない」
「そんなもんですかね」
ムチムチだしな。
それなのに、なんで今までこいつはシルヴィアに見向きもしなかったんだろうな。
「確かに、いい体してますもんね」
ビキニをチョイと引っ張る。
「はあ!? ち、ちょっと待って、シルヴィア! 今、見えたから! 軽く見えたよ!?」
「えっちですね、王子」
「見せたんだろうが!」
「王子……オレよろしく言葉遣いに品がないですよ?」
「あーもう! シルヴィア、もう少し考えて行動してくれるかな! 僕以外の前でそんな迂闊なことしないでよ!? あー……もう、心配だ。心配すぎる……」
頭抱えてる……面白いな。オレのこんなんで、ここまで動揺するのか。
「バロン様を誘惑したくなってきました」
「……それ相応の覚悟を持ってから言ってくれるかな」
「オレ相手に襲いたくなります?」
「はー………………」
そんな深いため息をつかなくても。
「なるよ」
「……え」
「襲いたく、なる」
「えええ!?」
仕方ないなという顔で王子がこちらを見ながら立ち上がって、オレに手を差し出した。
「さて、戻るか」
「え、点検とかいいんですか」
「大丈夫だ。ロダンの猫があちこち確認してくれるだろう」
「は?」
「猫はロダンの言う通りに動くし、彼らが見ている光景を視ることもできる」
「そうなんですか……」
一応、見張りみたいなことをしている生徒もいた。外から姿隠しの魔法を使って入ってくるかもしれない風紀委員を警戒してのことだろう。大量の猫が見張りになぜかまとわりつくというハプニングを起こして、オレたちは中まで侵入したという経緯だ。集中していなければ気付かないからな。
さっきの校則違反の奴等の露出度が高くなっていたのも、猫に偵察してもらって判明したことだ。ロダンは猫語も分かるらしい。最終確認もロダンが行うのだろう。
「お帰りなさいませ。こちらが着替えです」
「うわ!」
更衣室の手前でロダンが待っていやがった。ああ、でもそっか。着替えを預けていたんだった。
「シルヴィア様、驚く声もご令嬢らしくしてください。それから一応、ここも外ですよ。男口調はできる限り密室で二人きりの時だけにしてくださいよ」
「……気をつけます」
地獄耳すぎだろ。
なんだか怒られてばっかだなー。ま、魔法を使える範囲でなら特定の声を拾うことも可能だからな……。当然ながら遮断する魔法もあるものの、わざわざ使っていない以上は気をつけるべきか。
着替えを受け取って更衣室に入る前につい、バロン王子に聞いてしまう。
「一緒に入ります?」
「ついていっていいのかな」
「……駄目ですけど」
「それなら聞くなって言ったのに」
やれやれと笑って王子が中に入るので、オレも女子更衣室の中に入った。
何やってんだろうな、オレ……。
自分ながら、意味が分からない。どうしてか女って目でバロン王子に見られると、少し嬉しくなる気がする。
女の体を見ても興奮しない。女の子と付き合いたいとも前世と違ってまったく思わない。男を好きになるように脳が変わってしまっていても不思議ではない。というよりも、むしろそれが当たり前のはずで――。
もしかしてオレ、バロン王子のこと……。
少しだけ頬が熱を持つ。王子のためには、今のうちに離れた方がいいのかもしれない。
ビキニを脱ぐ。襲いたくなるなんて言ってたなと思いながら、自分の体を見下ろす。
わざと見せた、ソレ。
夜、思い出して悶えてろと思いながら、制服を手に取った。
「ええ」
目の前でわーきゃー楽しそうにしているだろう生徒たちの存在を感じ取れる。姿は見えないけれど、水しぶきでもそれが分かる。
ここはプールだ。まだ四月だから解放されていないプール。おそらくご丁寧にも水はそれなりに魔法によって温かくされているのだろう。
すぐにはバレないように消音魔法も姿隠しの魔法もかけられているようだけど、気づいてしまえば簡単に解ける。
バロン王子が解呪の呪文を唱え、パチンと指を鳴らした。
「そこまでだ」
目の前に水着姿の男女が三十人くらいか……聞いていた通り、多いな。それに確かに女のほとんどがビキニだ。露出度が高い。
オレが男だったら、役得だっただろうに……。
「バロン様!?」
「嘘だろ、バロン様が自ら取り締まることはないって――!」
「逃げろ!」
何人かがプールサイドに杖を取りに行こうとして、他の風紀委員に捕縛されている。
「は~い、皆さんここに並んでくださいね。名前を述べたらすぐに着替えてください。会議室に行きますよ。逃げた場合は、おって重い処分を伝えます」
リリアンも張り切って風紀委員の仕事に精をだしている。
「全員の顔を把握した。あとは風紀委員の言葉に従え」
風の拡散魔法でバロン王子がここにいる全員にそう伝える。逃げようとしていた奴も諦めたようだ。
あーあ。
つまんねーなー。
水の中に入っての捕り物になる可能性も考えて、風紀委員の八割くらいは水着だ。オレも王子も水着だ。せっかくだからと露出度の高いビキニを選んでみた。いい体しているわけだしな!
三十人前後が皆して空から逃げようとしては、さすがに捕まえるのは大変だと思ったけど……王子の肉体美とオレのエロティックでムチムチな肉体美を逃げるより見たいと思う生徒の方が多そうだ。熱い視線をビシビシと感じる。
そうだろうそうだろう!
オレの体、めちゃくちゃ魅力的だろう!
「あの子たちの処分はどうするのかしら?」
ふふんといい気になりながら、こそっとバロン王子に聞いてみる。
「反省文とここの掃除と、あとは軽い奉仕活動かな」
「ふーん。少し可哀相ね」
放課後のプールでひっそり遊びたい気持ちは分かる。……ま、普通はやらないだろうが、魔法世界だと証拠隠滅もやりやすいだろうしな。
「あそこまで露出度が高くなっていなければ、僕まで出てこなかったんだけどね」
「確かに、聞いていた以上に……」
季節外に、教師たちの目を盗んでプールに入る輩は今までも普通にいたらしい。不定期開催だ。掃除までしっかりするのなら大目に見て、気付かないふりをしていたようだが……最近は男をたらしこもうと平民の富裕層の女の露出度が高くなり、男の目も間違いが起こりそうになってきて……完全に禁止しなくてはならなさそうだということで、王子が出張ることになった。
生徒を生徒が取り締まるのには理由がある。少し悪いことをした程度なら、かなり大目に見てやれるからだ。卒業したら誰もが責任ある立場になる。多少は……と。
だが、王子にしっかりと認識されてしまっては、卒業後にいいことは何もない。さすがにその行為は誰もがやめる。禁止にさせるレベルのことが起きると、今は王子が前面に出るという方針だ。……王子が入学するまでは、その立場は顧問ではあったらしい。顧問も敵にまわすと厄介な理由があるようだが……教えてはもらっていない。バカなことをした生徒だけが思い知るとかなんとか。とはいえ、噂は広がっているらしい。
「でも、私ほどの肉体美を誇る女の子はいないわね」
風紀委員の前に並んでいる校則違反の生徒を遠巻きに見ながら、腰に手をあてて体を揺らしてみせる。乳がバイバインと揺れる。
「……僕の恋人は少々いかがわしいな」
「あ。貴族ってことを忘れていたわ」
「だんだんと、慣れてきたね」
女って立場にってことだな。まぁ、エロい目で見られるのは悪い気はしない。
「私の王子様も、この体にメロメロなのかしら?」
わざと色っぽくしなだれかかりながら聞いてみる。
「……これだけ生徒がいる前で反応するわけにはいかないんだから、やめてくれるかな」
こそっと耳元でバロン王子がセクハラまがいのことを言ってきた。完全にオレが元オトコだと知っているからこその発言だな。
「なんのことかしら」
「……生娘を装うなよ」
「生娘でしょう、私。ねぇ?」
「はぁ……」
「触りたくなります?」
「肯定したら触らせてくれるのかな」
「絶対させません!」
「それなら聞かないでくれ」
オレが元オトコだと分かっていても触りたくなるんかな。ま、オレだって触りたくなったしな。興奮しねーけど。
一通りの作業が終わって、風紀委員の一人がこちらに来た。
「名前の記録も完了しました」
「ああ、あとは任せる。水を抜いて最後に点検したら僕も戻るよ」
「はい、お任せください」
全員がいなくなる。もう女らしくはそんなにしなくていいか。今は四月後半、夜は少し肌寒い。
「さてと、泳ごうか。シルヴィア」
「え」
バロン王子が穏やかに笑う。
「ずっとつまらなさそうにしていただろう?」
「そりゃ、つまらないですよ」
責めたような言い方をしながらも笑ってしまう。うずうずしていた。だって目の前にプールがあるのに泳げないなんて、つまらないだろ? 水着なのにさ。
「このために水着を着てもらったんだ。……まさか、それを選ぶとは思わなかったけど」
「せっかくなので!」
王子に渡されたいくつかの水着の中で、一番エロいのがコレだった。驚かせてやろうかと、あえてコレを選んだ。黒で大人の魅力が漂っている。
さて、もう人はいない。
そろそろいいか。
こそっとバロン王子の耳元で呟く。
「オレの泳ぎ、とくと見やがれ!」
そう言って、ザブンとプールの中に飛び込んだ。ここはやっぱりバタフライだろ!
爽快感がたまらない。ザブンザブンと水しぶきをあげて――、しかし、この体すぐ疲れるな……。毎日筋トレはしているものの、まだ大きくは変わらないか。
「鍛え方が足らなさ過ぎます、この体……」
「いい泳ぎだったよ、シルヴィア」
プールサイドに座って一休みする。
バロン王子が杖をヒュッと円を書くように動かした。恐らくプールの栓を抜いたんだろう。
「もういい?」
「抜く前に聞くのはどうかと」
「泳ぎ足りないなら、また栓をするよ」
「誰かにバレたらまずいでしょうし、やめときます」
「バレてもちゃんと口を封じるよ」
息の根を止めるって意味に聞こえるな。
「もういいです」
「そう」
バスタオルがふわふわと飛んできた。
「はい。風邪をひくよ」
「……女の気分になるな……」
「女の子だよ、僕にとっては」
「え」
「ここまで女の子の体をしているのに、男とは思えない」
「そんなもんですかね」
ムチムチだしな。
それなのに、なんで今までこいつはシルヴィアに見向きもしなかったんだろうな。
「確かに、いい体してますもんね」
ビキニをチョイと引っ張る。
「はあ!? ち、ちょっと待って、シルヴィア! 今、見えたから! 軽く見えたよ!?」
「えっちですね、王子」
「見せたんだろうが!」
「王子……オレよろしく言葉遣いに品がないですよ?」
「あーもう! シルヴィア、もう少し考えて行動してくれるかな! 僕以外の前でそんな迂闊なことしないでよ!? あー……もう、心配だ。心配すぎる……」
頭抱えてる……面白いな。オレのこんなんで、ここまで動揺するのか。
「バロン様を誘惑したくなってきました」
「……それ相応の覚悟を持ってから言ってくれるかな」
「オレ相手に襲いたくなります?」
「はー………………」
そんな深いため息をつかなくても。
「なるよ」
「……え」
「襲いたく、なる」
「えええ!?」
仕方ないなという顔で王子がこちらを見ながら立ち上がって、オレに手を差し出した。
「さて、戻るか」
「え、点検とかいいんですか」
「大丈夫だ。ロダンの猫があちこち確認してくれるだろう」
「は?」
「猫はロダンの言う通りに動くし、彼らが見ている光景を視ることもできる」
「そうなんですか……」
一応、見張りみたいなことをしている生徒もいた。外から姿隠しの魔法を使って入ってくるかもしれない風紀委員を警戒してのことだろう。大量の猫が見張りになぜかまとわりつくというハプニングを起こして、オレたちは中まで侵入したという経緯だ。集中していなければ気付かないからな。
さっきの校則違反の奴等の露出度が高くなっていたのも、猫に偵察してもらって判明したことだ。ロダンは猫語も分かるらしい。最終確認もロダンが行うのだろう。
「お帰りなさいませ。こちらが着替えです」
「うわ!」
更衣室の手前でロダンが待っていやがった。ああ、でもそっか。着替えを預けていたんだった。
「シルヴィア様、驚く声もご令嬢らしくしてください。それから一応、ここも外ですよ。男口調はできる限り密室で二人きりの時だけにしてくださいよ」
「……気をつけます」
地獄耳すぎだろ。
なんだか怒られてばっかだなー。ま、魔法を使える範囲でなら特定の声を拾うことも可能だからな……。当然ながら遮断する魔法もあるものの、わざわざ使っていない以上は気をつけるべきか。
着替えを受け取って更衣室に入る前につい、バロン王子に聞いてしまう。
「一緒に入ります?」
「ついていっていいのかな」
「……駄目ですけど」
「それなら聞くなって言ったのに」
やれやれと笑って王子が中に入るので、オレも女子更衣室の中に入った。
何やってんだろうな、オレ……。
自分ながら、意味が分からない。どうしてか女って目でバロン王子に見られると、少し嬉しくなる気がする。
女の体を見ても興奮しない。女の子と付き合いたいとも前世と違ってまったく思わない。男を好きになるように脳が変わってしまっていても不思議ではない。というよりも、むしろそれが当たり前のはずで――。
もしかしてオレ、バロン王子のこと……。
少しだけ頬が熱を持つ。王子のためには、今のうちに離れた方がいいのかもしれない。
ビキニを脱ぐ。襲いたくなるなんて言ってたなと思いながら、自分の体を見下ろす。
わざと見せた、ソレ。
夜、思い出して悶えてろと思いながら、制服を手に取った。
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