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25 麗しの魔術師は養い子の弟子を花嫁に迎える・終
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境界の地の秋は短い。あっという間に凍てつく風が吹き始め、朝晩は底冷えするほどになった。
この秋、ジルネフィは居間に簡易暖炉を設置した。以前使っていた薪ストーブが壊れたからで、一見すると鋳物でできた調度品のようにも見えるものを用意した。人間の世界で見かけたものを模した作りだが、スティアニーも気に入ったようで冬の始まりとともに使い心地を確かめている。
燃料は薪ではなく青白く燃える石で、煤が出ることがないため手入れも楽だった。平らな上部では簡単な温めものもできるということで、スティアニーはお茶に使う湯をここで温めるようになった。
(温かくて便利というだけじゃなく、スティアニーを鮮やかに照らすのがまたいいんだ)
ジルネフィはそこまで考えて暖炉を選んだ。石自体は青白く燃えるのに炎は普通の暖炉のようなオレンジ色で、その火がストロベリーブロンドや菫色の瞳を赤々と照らし美しく輝かせる。
そうした姿にジルネフィが触れたい衝動に駆られるのは当然だった。もちろん我慢することなどなく、今日も欲のまま柔い白肌に手を伸ばす。
「風邪を引かないように気をつけなくてはと、一応思ってはいるんだけどね」
「ん……っ」
「それでも、ついこうして触れてしまう」
「ぁ……っ、ぁ、ぁ」
いつもより灯りが落とされた居間で暖炉の赤い炎が揺らめいている。ジルネフィはそんな暖炉の正面に置かれたソファに座っていた。身軽なローブ姿なのは部屋が暖かいからで、ジルネフィの膝に背中を預けるように座っているスティアニーは何も身に纏っていない。
「スティ」
「ん……っ、ぁ!」
暖かいはずの暖炉の前でもスティアニーの体が小刻みに震えているのは、体深くを屹立に貫かれているからだ。そしてもう一つ、健気に勃ち上がっている自分のものに触れているからでもある。その手を動かすように囁くジルネフィの声に、赤く染まった肌がひくりと震えた。
「ほら、手が止まっている」
「む、り……」
「無理じゃないよ。さぁ、ゆっくり擦ってごらん」
ゆるゆると頭を振るスティアニーにそう囁き、小振りな手に自身の右手を添えて促すように上下に動かした。途端に濃桃色の先端から透明な液体がトロトロと滴り落ちる。
「ほら、こんなにトロトロだ。これを手で伸ばすように擦ると気持ちいいと教えただろう?」
そう言いながら熟れた先端を指先でクリクリと撫でる。それだけでとぷりと淫液があふれ、握っているスティアニーの手を濡らした。
すでにストロベリーブロンドの下生えはぐっしょりと濡れ、種を作る袋やその下まで濡らしている。下肢をくつろげただけのジルネフィの服も濡らしているが、それをジルネフィが気にする様子はない。
(さて、そろそろかな)
スティアニーの中を貫いてそれなりの時間が経った。その間ほとんど動かすことなく、ただじっと咥えさせたままでいる。代わりにスティアニーの屹立を自分でいじらせていたが、それもままならないほど体が火照っているのは服をとおしてもよくわかった。
ジルネフィの唇が美しい弧を描く。人間に捨てられ、この境界の地で密やかに育てられたスティアニーは、いわば無垢な蕾のようなものだ。それが欲を知り快楽を知り、濃密な香りを撒き散らすように一気に花開こうとしている。
「も……っ、ねが、です……んっ、ジル、さま……っ」
「スティ、何がほしい?」
「ん……!」
ジルネフィがわずかに腰を揺らすと、ストロベリーブロンドをふるふると揺らしながら顎がクッと持ち上がった。瞼をキュッと閉じ、唇は噛み締めるようにきつく結ばれている。これ以上声を漏らさないようにしたいのだろうが、ジルネフィは甘い声をもっと聞きたいと思っていた。
「ほら、声を我慢しないで。出したほうが気持ちがいいからね」
「んっ、は、はふ」
「それに唇を噛んで傷ができたら大変だ」
「ふ、ふ、」
「ほら、手を動かすのも忘れないで」
真紅の耳飾りが光る耳元で甘い睦言を囁く。すると上半身を震わせたスティアニーが屹立に添えていた手をゆっくりと動かし始めた。「そのままチュクチュして」とジルネフィが誘うと、華奢な手の動きが段々早くなる。
「いい子だ」
「んっ、ぁ、ぁ、ぁ」
「いい子にはご褒美をあげなくてはね」
「ぁ、ぁ、あ!」
細腰を掴み、ゆっくりとスティアニーの体を持ち上げる。少しずつ抜けていくことにさえ感じてしまうのか、スティアニーの体がブルブルと震え出した。それに笑みを浮かべながら床に下ろし「両手をついて」とジルネフィが囁く。
素直に従う様子に笑みを浮かべながら、見せつけるように突き出された尻たぶを割り開いた。そうして一度抜き去った屹立の先端を赤く膨らむ蕾にぴたりとつけ、一気に奥まで貫く。
「ぁあ――……! ぁ、やぁ、ぁ、ぁ、ぁ」
背中を仰け反らせたスティアニーが一際高い声を上げた。その声を聞きながら甘美に蠢く中を長大な屹立で万遍なく擦り上げる。ようやく与えられた刺激に、すっかり熟れきっていた中は歓喜するように迎え入れた。
情交に慣れた体は貪欲にジルネフィを求めた。抜けていく屹立を追いかけるように絡みつくかと思えば、奥へと突き進むときには緩急をつけて締めつける。一番奥に先端が触れると、狭い隘路がその先へと促すようにゆっくりと口を広げた。
「本当に覚えのいい体だ」
「んっ、ふっ、ふあ、ぁ、ぁ、ぁ」
「あぁ、スティのここはもうぐっしょりだね」
「……っ!」
ペチペチと揺れている愛らしい屹立にジルネフィが触れると、先端からトロトロと体液が滴り落ちた。
「本当に何て愛らしいんだろうね。それにこんなにもいやらしくなった。まさにわたし好みの花嫁だよ」
ジルネフィの囁きにスティアニーの蕾がより一層強く締まる。腰をカタカタと震わせながら全身で快感を享受する姿に、プレイオブカラーの瞳がクルクルと色を変えた。
震えが止まらない細腰を掴み上げたジルネフィは、締めつけの強くなった中を押し拓くように最奥へ突き進んだ。そうして最後の隘路をぐぐぅと拓いていく。
「そ、こ……っ、や、ぁ……っ、こ、わ……ジルさ……こわ、ぃ……っ」
すでに何度も経験している強烈な快感を思い出したスティアニーが、頭を振りながら「こわい」と声を上げた。それさえもジルネフィには悦楽をもたらす仕草でしかない。
(快感と恐怖は紙一重だ。そんな悦楽をスティの心と体に与えられるのはわたししかいない)
そして、いずれはこの悦楽を自ら求めるようになる。
(いや、すでにそうなりつつあるかな)
「こわい」と言いながらもスティアニーの腰はジルネフィから逃れようとしなかった。打ちつければ体はずり上がるものの、中はもっとと言わんばかりに長大な屹立を食い締めている。
「さぁスティ、今夜もたっぷりと体の奥で飲み込むんだよ」
震える背中に覆い被さったジルネフィは、耳元でそう囁きながら勢いよく欲を解放した。ドクドクと脈打ちながらなおも隘路を擦り、たっぷりと熟れた中を濡らしていく。
強烈な衝撃に、スティアニーは声を声を上げることなく絶頂に達した。強張った体が数回跳ね、屹立からはプシュッ、プシュッと透明な液体が噴き出している。それが毛足の長い敷物を濡らし色を濃くした。
「ぁ……ぁ……ん……」
ジルネフィがゆっくりと屹立を抜き去ると、甘い余韻にふっくらした蕾がふくふくと開閉した。そのたびに白濁が蕾を濡らし種の袋をも濡らしていく。そうして力を失った屹立をたどりスティアニーの淫液と混じり合いながら敷物へと滴った。
「いい眺めだ」
暖炉の前での交わりで精も根も尽き果てたスティアニーが、くたりと横たわっている。ジルネフィはその様子に満足げな笑みを浮かべると、力の抜けた背中や腰に唇を寄せ所有の印を付けた。
汗でしっとりした体を抱き起こすと、快感で虚ろだった菫色の瞳がとろりとした笑みを浮かべる。スティアニーが意識を保てたのはそこまでで、そのまますぅっと瞼を閉じジルネフィに体を預けるように眠った。
情交の色を濃く残した白い肌は薄紅色に変わり、そこにかかるストロベリーブロンドは暖炉の火のせいか赤々と輝いている。いまは瞼の奥の瞳も以前よりずっと濃い菫色になった。
「人間と呼ぶには難しい存在になっていることに、きみはどのくらい気づいているのかな」
目を閉じた愛らしい顔を見つめながら、ジルネフィはそう問いかけた。
最後の準備を整えるため、ジルネフィは欲望が赴くまま毎日のように欲を注ぎ込んだ。魔力を調整することなく、思う存分体の奥深くに欲と魔力を塗り込めている。
(おかげでスティの体は随分と歪なものになってきた)
それもこの後のために必要なことだ。
人間は魔族に比べて脆く寿命も短い。肉体を強化したり寿命を誤魔化したりする方法はいくつかあるが、人間を完璧な魔族にすることは限りなく難しいことだった。
(それでも吸血鬼が行う血の契約なら、完璧に近い形で魔族へと作り替えることができる)
古き血を持つ父親が、伴侶となった人間の男を完璧なまでに魔族へと作り替えたと聞いたときから考えていた。父親と同じことができればスティアニーを未来永劫手元に置き、魂さえも誰にも奪われないようにすることができる。
しかし、ジルネフィは父親の血を半分しか受け継いでいない。ほとんど魔族の体を持つとはいえ古き血の力を使うことは不可能だった。
(しかし精霊王の精露が手に入った)
メルディアナにもらった漆黒の石の欠片には他者の魔力を増幅させる力がある。それを使えば吸血鬼としての力を最大限引き出すことが可能だ。元々魔力が強いジルネフィなら難なく父親由来の力を使うことができるだろう。
(父上の血なんて面倒なだけだと思っていたのに)
父親譲りの美しい容姿は有象無象を引き寄せてしまう。何もしなくても周囲を魅了してしまう魔力は疎ましいだけのものだった。それがいまや最高の贈り物に変わりつつある。肉体を失ってまで実験に挑んだ顔さえ知らない母親に、生まれて初めて感謝の念が芽生えた。
ジルネフィの顔が神々しささえ感じる笑みに変わる。うっとりと微笑む目で意識が途切れた花嫁を見つめ、乱れたストロベリーブロンドの髪を指に絡ませるようにすくい取ると顕わになった首筋に唇を寄せた。
「いずれはここに新しい印を刻んであげよう」
プレイオブカラーの瞳がクルクルと色を変え黄金色に光り出す。いつにも増して美しく光る虹彩がギュッと縦長に細くなったかと思えば真っ赤に変わった。
開いた唇の端に小さく尖った象牙色の牙が見えている。赤い舌でスティアニーの首筋をひと舐めしてから唇で肌を食み、ほんの少し肌に当てた牙に力を入れた。柔らかい皮膚はツプンと簡単に破け、そこからにじみ出る瑞々しい血はひどく甘い。それに思わず喉を鳴らしたジルネフィは、己の中に流れる古き魔族の血を強く意識した。
(魔族となったきみをこの手にする日が待ち遠しいよ)
唇を離した白い肌に牙の痕は残っていない。ジルネフィの中の吸血鬼の力が傷を瞬時に癒やした証拠だった。
精霊王の精露を体に取り込んでひと月ほどが経つ。そろそろジルネフィの魔力と融合する頃合いで、吸血鬼の力が増す月齢も近い。スティアニーの体にもジルネフィの魔力が行き渡り、これなら万が一にも失敗することなく血の契約を結ぶことができるだろう。
(わたしの魔力を帯びたスティの体は磁石のようにわたしの魔力と結びつき、より強力で完璧な血の契約を結ばせる)
古い文献を漁り確証も得ていた。「もう間もなくだ」と想像するだけでジルネフィの体の中で膨大な魔力が蠢く。
「きっと、いま以上に愛らしく淫らなわたしだけの花嫁になるだろうね」
うっとり微笑むジルネフィの瞳がギラリと黄金色に輝いた。
しばらくすると、境界の地に二つ名で呼ばれる新たな魔術師が現れた。“幻身の魔術師”と呼ばれるその魔術師は、人間とも魔族とも言いがたい不可思議な気配を漂わせているという。
「お師さま、調合が終わりました」
「スティはますます優秀になったね」
「お師さまのおかげです」
「優秀な弟子と愛らしい花嫁を得られて、わたしは幸せ者だよ」
銀髪の麗しい魔術師にそう言われ、ストロベリーブロンドの魔術師が菫色の瞳を細めながらふわりと微笑む。その姿は可憐で愛らしく、それでいて妖艶な魔力を漂わせていた。それは異形の魔術師の花嫁と呼ぶにふさわしい姿だった。
この秋、ジルネフィは居間に簡易暖炉を設置した。以前使っていた薪ストーブが壊れたからで、一見すると鋳物でできた調度品のようにも見えるものを用意した。人間の世界で見かけたものを模した作りだが、スティアニーも気に入ったようで冬の始まりとともに使い心地を確かめている。
燃料は薪ではなく青白く燃える石で、煤が出ることがないため手入れも楽だった。平らな上部では簡単な温めものもできるということで、スティアニーはお茶に使う湯をここで温めるようになった。
(温かくて便利というだけじゃなく、スティアニーを鮮やかに照らすのがまたいいんだ)
ジルネフィはそこまで考えて暖炉を選んだ。石自体は青白く燃えるのに炎は普通の暖炉のようなオレンジ色で、その火がストロベリーブロンドや菫色の瞳を赤々と照らし美しく輝かせる。
そうした姿にジルネフィが触れたい衝動に駆られるのは当然だった。もちろん我慢することなどなく、今日も欲のまま柔い白肌に手を伸ばす。
「風邪を引かないように気をつけなくてはと、一応思ってはいるんだけどね」
「ん……っ」
「それでも、ついこうして触れてしまう」
「ぁ……っ、ぁ、ぁ」
いつもより灯りが落とされた居間で暖炉の赤い炎が揺らめいている。ジルネフィはそんな暖炉の正面に置かれたソファに座っていた。身軽なローブ姿なのは部屋が暖かいからで、ジルネフィの膝に背中を預けるように座っているスティアニーは何も身に纏っていない。
「スティ」
「ん……っ、ぁ!」
暖かいはずの暖炉の前でもスティアニーの体が小刻みに震えているのは、体深くを屹立に貫かれているからだ。そしてもう一つ、健気に勃ち上がっている自分のものに触れているからでもある。その手を動かすように囁くジルネフィの声に、赤く染まった肌がひくりと震えた。
「ほら、手が止まっている」
「む、り……」
「無理じゃないよ。さぁ、ゆっくり擦ってごらん」
ゆるゆると頭を振るスティアニーにそう囁き、小振りな手に自身の右手を添えて促すように上下に動かした。途端に濃桃色の先端から透明な液体がトロトロと滴り落ちる。
「ほら、こんなにトロトロだ。これを手で伸ばすように擦ると気持ちいいと教えただろう?」
そう言いながら熟れた先端を指先でクリクリと撫でる。それだけでとぷりと淫液があふれ、握っているスティアニーの手を濡らした。
すでにストロベリーブロンドの下生えはぐっしょりと濡れ、種を作る袋やその下まで濡らしている。下肢をくつろげただけのジルネフィの服も濡らしているが、それをジルネフィが気にする様子はない。
(さて、そろそろかな)
スティアニーの中を貫いてそれなりの時間が経った。その間ほとんど動かすことなく、ただじっと咥えさせたままでいる。代わりにスティアニーの屹立を自分でいじらせていたが、それもままならないほど体が火照っているのは服をとおしてもよくわかった。
ジルネフィの唇が美しい弧を描く。人間に捨てられ、この境界の地で密やかに育てられたスティアニーは、いわば無垢な蕾のようなものだ。それが欲を知り快楽を知り、濃密な香りを撒き散らすように一気に花開こうとしている。
「も……っ、ねが、です……んっ、ジル、さま……っ」
「スティ、何がほしい?」
「ん……!」
ジルネフィがわずかに腰を揺らすと、ストロベリーブロンドをふるふると揺らしながら顎がクッと持ち上がった。瞼をキュッと閉じ、唇は噛み締めるようにきつく結ばれている。これ以上声を漏らさないようにしたいのだろうが、ジルネフィは甘い声をもっと聞きたいと思っていた。
「ほら、声を我慢しないで。出したほうが気持ちがいいからね」
「んっ、は、はふ」
「それに唇を噛んで傷ができたら大変だ」
「ふ、ふ、」
「ほら、手を動かすのも忘れないで」
真紅の耳飾りが光る耳元で甘い睦言を囁く。すると上半身を震わせたスティアニーが屹立に添えていた手をゆっくりと動かし始めた。「そのままチュクチュして」とジルネフィが誘うと、華奢な手の動きが段々早くなる。
「いい子だ」
「んっ、ぁ、ぁ、ぁ」
「いい子にはご褒美をあげなくてはね」
「ぁ、ぁ、あ!」
細腰を掴み、ゆっくりとスティアニーの体を持ち上げる。少しずつ抜けていくことにさえ感じてしまうのか、スティアニーの体がブルブルと震え出した。それに笑みを浮かべながら床に下ろし「両手をついて」とジルネフィが囁く。
素直に従う様子に笑みを浮かべながら、見せつけるように突き出された尻たぶを割り開いた。そうして一度抜き去った屹立の先端を赤く膨らむ蕾にぴたりとつけ、一気に奥まで貫く。
「ぁあ――……! ぁ、やぁ、ぁ、ぁ、ぁ」
背中を仰け反らせたスティアニーが一際高い声を上げた。その声を聞きながら甘美に蠢く中を長大な屹立で万遍なく擦り上げる。ようやく与えられた刺激に、すっかり熟れきっていた中は歓喜するように迎え入れた。
情交に慣れた体は貪欲にジルネフィを求めた。抜けていく屹立を追いかけるように絡みつくかと思えば、奥へと突き進むときには緩急をつけて締めつける。一番奥に先端が触れると、狭い隘路がその先へと促すようにゆっくりと口を広げた。
「本当に覚えのいい体だ」
「んっ、ふっ、ふあ、ぁ、ぁ、ぁ」
「あぁ、スティのここはもうぐっしょりだね」
「……っ!」
ペチペチと揺れている愛らしい屹立にジルネフィが触れると、先端からトロトロと体液が滴り落ちた。
「本当に何て愛らしいんだろうね。それにこんなにもいやらしくなった。まさにわたし好みの花嫁だよ」
ジルネフィの囁きにスティアニーの蕾がより一層強く締まる。腰をカタカタと震わせながら全身で快感を享受する姿に、プレイオブカラーの瞳がクルクルと色を変えた。
震えが止まらない細腰を掴み上げたジルネフィは、締めつけの強くなった中を押し拓くように最奥へ突き進んだ。そうして最後の隘路をぐぐぅと拓いていく。
「そ、こ……っ、や、ぁ……っ、こ、わ……ジルさ……こわ、ぃ……っ」
すでに何度も経験している強烈な快感を思い出したスティアニーが、頭を振りながら「こわい」と声を上げた。それさえもジルネフィには悦楽をもたらす仕草でしかない。
(快感と恐怖は紙一重だ。そんな悦楽をスティの心と体に与えられるのはわたししかいない)
そして、いずれはこの悦楽を自ら求めるようになる。
(いや、すでにそうなりつつあるかな)
「こわい」と言いながらもスティアニーの腰はジルネフィから逃れようとしなかった。打ちつければ体はずり上がるものの、中はもっとと言わんばかりに長大な屹立を食い締めている。
「さぁスティ、今夜もたっぷりと体の奥で飲み込むんだよ」
震える背中に覆い被さったジルネフィは、耳元でそう囁きながら勢いよく欲を解放した。ドクドクと脈打ちながらなおも隘路を擦り、たっぷりと熟れた中を濡らしていく。
強烈な衝撃に、スティアニーは声を声を上げることなく絶頂に達した。強張った体が数回跳ね、屹立からはプシュッ、プシュッと透明な液体が噴き出している。それが毛足の長い敷物を濡らし色を濃くした。
「ぁ……ぁ……ん……」
ジルネフィがゆっくりと屹立を抜き去ると、甘い余韻にふっくらした蕾がふくふくと開閉した。そのたびに白濁が蕾を濡らし種の袋をも濡らしていく。そうして力を失った屹立をたどりスティアニーの淫液と混じり合いながら敷物へと滴った。
「いい眺めだ」
暖炉の前での交わりで精も根も尽き果てたスティアニーが、くたりと横たわっている。ジルネフィはその様子に満足げな笑みを浮かべると、力の抜けた背中や腰に唇を寄せ所有の印を付けた。
汗でしっとりした体を抱き起こすと、快感で虚ろだった菫色の瞳がとろりとした笑みを浮かべる。スティアニーが意識を保てたのはそこまでで、そのまますぅっと瞼を閉じジルネフィに体を預けるように眠った。
情交の色を濃く残した白い肌は薄紅色に変わり、そこにかかるストロベリーブロンドは暖炉の火のせいか赤々と輝いている。いまは瞼の奥の瞳も以前よりずっと濃い菫色になった。
「人間と呼ぶには難しい存在になっていることに、きみはどのくらい気づいているのかな」
目を閉じた愛らしい顔を見つめながら、ジルネフィはそう問いかけた。
最後の準備を整えるため、ジルネフィは欲望が赴くまま毎日のように欲を注ぎ込んだ。魔力を調整することなく、思う存分体の奥深くに欲と魔力を塗り込めている。
(おかげでスティの体は随分と歪なものになってきた)
それもこの後のために必要なことだ。
人間は魔族に比べて脆く寿命も短い。肉体を強化したり寿命を誤魔化したりする方法はいくつかあるが、人間を完璧な魔族にすることは限りなく難しいことだった。
(それでも吸血鬼が行う血の契約なら、完璧に近い形で魔族へと作り替えることができる)
古き血を持つ父親が、伴侶となった人間の男を完璧なまでに魔族へと作り替えたと聞いたときから考えていた。父親と同じことができればスティアニーを未来永劫手元に置き、魂さえも誰にも奪われないようにすることができる。
しかし、ジルネフィは父親の血を半分しか受け継いでいない。ほとんど魔族の体を持つとはいえ古き血の力を使うことは不可能だった。
(しかし精霊王の精露が手に入った)
メルディアナにもらった漆黒の石の欠片には他者の魔力を増幅させる力がある。それを使えば吸血鬼としての力を最大限引き出すことが可能だ。元々魔力が強いジルネフィなら難なく父親由来の力を使うことができるだろう。
(父上の血なんて面倒なだけだと思っていたのに)
父親譲りの美しい容姿は有象無象を引き寄せてしまう。何もしなくても周囲を魅了してしまう魔力は疎ましいだけのものだった。それがいまや最高の贈り物に変わりつつある。肉体を失ってまで実験に挑んだ顔さえ知らない母親に、生まれて初めて感謝の念が芽生えた。
ジルネフィの顔が神々しささえ感じる笑みに変わる。うっとりと微笑む目で意識が途切れた花嫁を見つめ、乱れたストロベリーブロンドの髪を指に絡ませるようにすくい取ると顕わになった首筋に唇を寄せた。
「いずれはここに新しい印を刻んであげよう」
プレイオブカラーの瞳がクルクルと色を変え黄金色に光り出す。いつにも増して美しく光る虹彩がギュッと縦長に細くなったかと思えば真っ赤に変わった。
開いた唇の端に小さく尖った象牙色の牙が見えている。赤い舌でスティアニーの首筋をひと舐めしてから唇で肌を食み、ほんの少し肌に当てた牙に力を入れた。柔らかい皮膚はツプンと簡単に破け、そこからにじみ出る瑞々しい血はひどく甘い。それに思わず喉を鳴らしたジルネフィは、己の中に流れる古き魔族の血を強く意識した。
(魔族となったきみをこの手にする日が待ち遠しいよ)
唇を離した白い肌に牙の痕は残っていない。ジルネフィの中の吸血鬼の力が傷を瞬時に癒やした証拠だった。
精霊王の精露を体に取り込んでひと月ほどが経つ。そろそろジルネフィの魔力と融合する頃合いで、吸血鬼の力が増す月齢も近い。スティアニーの体にもジルネフィの魔力が行き渡り、これなら万が一にも失敗することなく血の契約を結ぶことができるだろう。
(わたしの魔力を帯びたスティの体は磁石のようにわたしの魔力と結びつき、より強力で完璧な血の契約を結ばせる)
古い文献を漁り確証も得ていた。「もう間もなくだ」と想像するだけでジルネフィの体の中で膨大な魔力が蠢く。
「きっと、いま以上に愛らしく淫らなわたしだけの花嫁になるだろうね」
うっとり微笑むジルネフィの瞳がギラリと黄金色に輝いた。
しばらくすると、境界の地に二つ名で呼ばれる新たな魔術師が現れた。“幻身の魔術師”と呼ばれるその魔術師は、人間とも魔族とも言いがたい不可思議な気配を漂わせているという。
「お師さま、調合が終わりました」
「スティはますます優秀になったね」
「お師さまのおかげです」
「優秀な弟子と愛らしい花嫁を得られて、わたしは幸せ者だよ」
銀髪の麗しい魔術師にそう言われ、ストロベリーブロンドの魔術師が菫色の瞳を細めながらふわりと微笑む。その姿は可憐で愛らしく、それでいて妖艶な魔力を漂わせていた。それは異形の魔術師の花嫁と呼ぶにふさわしい姿だった。
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完結おめでとうございます!!
ジネルフィの後半の囲い込みと同属(眷属?)にするためのあれこれにニヤリ😏
とっても好きな作品です!
感想ありがとうございます。
ほのぼののはずなんですが、最終的にジルネフィの所有欲が爆発して終わりました(笑)。スティ本人が気づかないうちに見事な魔族に仕上がっていると思います。とっても好きな作品と言っていただけてありがとうございます(エアー握手でブンブン振りながら)!
……はぅぅ… 独特の怪しい世界観、どっぷりと堪能させていただきました。
こちらの作品も大好きです。
お師さまのじわじわとえげつない囲いこみも、スティちゃんの可愛い嫉妬深さも、もうたまりません♡
妖精王とジルさまの関係もなにやらアダルティで良き~。
吸血鬼パパと人間の伴侶も気になるし、霊鳥同士もどんなカップルなのやら? 可愛がっている弟くんは?
…あれこれ妄想が止まりません(笑) ぜひ番外編をお願いしたいです。
素敵な作品をありがとうございました!
感想ありがとうございます。
実はこういった世界、大好きです(魔術師とか吸血鬼とか妖精とか)。吸血鬼パパとその奥方の話は改稿するのに相当時間がかかるため、そのうちに……と思っています。今回登場した霊鳥やスティたちのその後を想像するのは確かに楽しい! いつか公開できるといいなぁと思っています。
こちらこそ、最後までお付き合いいただきましてありがとうございます! 感想に不慣れで面白い返しができないままですが、ジャンピング土下座で感謝しております!
この狂った男は妖鳥族だよね……妖鳥族は執念深いのか😅スティを凄く下の下に見てる。嫉妬で誘拐まで実行するとは。そして、犯そうとしてる?
スティアニーに傷が付く前にジルさま、早く助けてあげて🙀怒り狂ったジルさま、めっちゃ怖そうー💦
感想ありがとうございます。
ジルネフィ、何気に魔族に人気でして、スティを拾ってからは余計な輩が近づかないようにアレコレしていました。それが婚姻を機に周囲がざわざわと……多くの魔族は人間を蔑んでいるので扱いがシビアです。