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7 妃候補としての新生活1
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ノアール殿下の妃候補になった僕の一日は、鶏の鳴き声で目が覚めるところから始まる。こんな豪華な王宮にも鶏がいるということに驚いたが、ビジュオール王国の王族だって卵は食べるだろうから敷地内に鶏小屋でもあるのだろう。
起きたらまず、窓を開けて気持ちのいい空気を胸一杯に吸い込む。アールエッティ王国ではまだ肌寒い季節だが、海が近いビジュオール王国は新緑が眩しいよい季節だった。
「そういえば、ビジュオール王国には四季があるんだったな」
アールエッティ王国にも季節はあるが、夏は短く冬が長めだ。それも春や秋より少し暑いだとか寒いだとかいった程度で、季節感をたっぷり味わうことは少ない。
それに比べてビジュオール王国にははっきりとした四季があると本に書かれていた。そうした四季のもとで見る景色はどれだけ美しいだろうと思い、つい荷物に詰め込む画材が増えてしまった。
「そのうち、絵を描く許可をもらわないとな」
だが、まずは発情を迎えるのが先だ。そのための計画もすでに立ててある。
僕はさっと顔を洗って歯を磨き、一人で着替えを済ませると朝イチのスケッチに取りかかった。これは小さなスケッチブックと木炭だけでできるから、許可が必要なほど大がかりではないし部屋を汚すこともない。毎日何かしら描かないと体調がおかしくなる僕は、とりあえずスケッチで一日を始めることにした。
スケッチをしていると、侍女たちが朝食を運んでくる。到着した翌日は僕が先に起きてスケッチしていることに驚いていたようだが、毎日同じことをくり返しているからか、いまではすっかり慣れたようだ。今日も驚いた表情一つ見せずにおいしそうな料理を並べ、静かに頭を下げて部屋を出て行った。
「そういえば、一人で食事をするのは初めてか」
アールエッティ王国では、大体家族そろって食事をしていた。父上や母上が忙しいときでも妹のルーシアと食べていた。だから、こんなふうに完全に一人だけで食事をするのは初めてということになる。
「……まぁ、そのうち慣れるだろう」
少し寂しい気がしないでもないが、これがビジュオール王国での日常なのだと慣れていくしかない。
食事が終わったらスケッチの続きをして、昼食の三時間前に後宮から出て“ベインブル”と勝手に呼んでいる部屋へと向かう。
本来、後宮にいる妃候補たちは後宮の外に出ることはできない。それは万が一でも間違いがあっては大変だからだ。しかし、男の僕には間違いの起きようがなかった。女性のΩは普通の男性相手でも子をなすことができるが、男性Ωはαが相手でなければ孕めないらしいからだ。
本で見たときには「本当か?」と思ったが、こうして後宮の外に出る許可が出ているということは本当なのだろう。「それじゃあ、ますます珍獣のようじゃないか」と思ったりもしたが、おかげで殿下に近づくチャンスが増えたと思えばいい。
「まずは毎日殿下に会うことから始めよう」
これが僕が考えた計画だ。ただすれ違うだけで発情を促せるのかはわからないが、とにかくαである殿下の近くに行かなければ何も始まらない。そのために僕が目をつけたのは、殿下の執務室のそばにある宝物庫と呼ばれる部屋だった。
そこは代々の王族が集めた品が置かれている保管庫のような部屋で、僕にとっては芸術品が山のように納められた夢のような場所だった。この部屋の存在を知ったとき、僕は「なんてすばらしいんだろう!」と芸術の神に感謝の祈りを捧げたくらいだ。同時に「執務室の奥に貴殿の好きそうな部屋がある」と教えてくれたノアール殿下の言葉に「これだ!」とひらめいた。
殿下が執務室に行く時間を狙ってその部屋に向かえば、必ず顔を合わせることになる。殿下はほぼ毎日執務室へ行くと侍女に確認したから、僕も毎日通えば毎日すれ違えるということだ。
すれ違うだけだから本当に短い時間しか近づけない。というより、ほとんど一瞬のようなものだ。それでも回数が多ければ、そのぶん接触する時間が増えることになる。質より量だと考え、とにかく毎日殿下とすれ違うことを目標に掲げることにした。
それにしても……と、これから向かう部屋のことを思い出す。
「さすがは大金持ちのビジュオール王国だ。あんなベインブルのような部屋まであるなんて、いろんな意味で僕はラッキーだな」
ちなみに、勝手に呼んでいる“ベインブル”というのは、芸術の神が住まう城の名前だ。そう言いたくなるくらいの部屋だから、芸術の神への感謝の気持ちを込めてそう呼ぶことにした。
スケッチブックと木炭を仕舞った僕は、手を洗ってから服を整え廊下に出た。数十歩ほど歩くと後宮の出入り口に到着する。そこから王宮の表に入り、フカフカの絨毯が敷かれた廊下の途中で左に曲がると王太子専用の執務室が見えてくる。さらに進むと、目的地であるベインブルの部屋だ。
(今日もバッチリだ)
角を曲がったところで、前方から従者をつれたノアール殿下が歩いてくる姿が目に入った。相変わらず美しいデザインの服を身に纏っている。
(……今日のカメオはストーンカメオだな)
どうやら殿下は、シェルカメオだけでなくストーンカメオもお気に入りらしい。たまにキラキラ光る宝石も見えるから、カメオ・アビレも好きなのだろう。
(もしかしなくても殿下は、そこそこ芸術品が好きなんじゃないだろうか)
それなら会話も弾みそうだと思ったが、いまのところ殿下と話をする機会は持てないままだ。殿下が僕の部屋を訪れたのは初日の一度きりで、そのときも十数分程度の会話で終わってしまった。
つぎにじっくり話す機会があればカメオの話題から入ってみようと思いながら、ほんの少し殿下のほうに距離を詰めつつ頭を下げる。そうして殿下が通り過ぎるのを待ち、頭を上げて歩き出そうとしたところで声をかけられた。
「毎日通っているようだが、飽きないか?」
振り返ると、殿下が僕を見ていた。僕は体全体を殿下に向け、「そんなことはまったくありません」と答えた。
「あの部屋にある品々の中には、失われてしまった過去の技術が施された芸術品もあります。僕は絵画が専門ですが、それ以外のそうした品々にも大変興味を持っています」
「なるほど、アールエッティ王国の王子らしい言葉だ」
「ありがとうございます。いえ、いまのお言葉に対してだけではなく、あの部屋への出入りを許可していただいて、本当にありがたく思っています」
そう答えると、ノアール殿下の真っ黒な瞳がますます僕の顔をじっと見た。何かおかしなことを口にしたかと思いながらも視線を受け止めていると、「おもしろい」という小さな声が耳に入った。
(おもしろい? ……僕が?)
別におもしろいことなど言っていないはずだが……と内心首を傾げたが、気分を害したのでないなら問題ない。
「あの部屋はいつでも開いているから、見たいときに見ればいい」
そう言った殿下が、黒髪をなびかせながら執務室へと入っていった。
「……いつも開いているなんて、不用心じゃないか?」
いや、これほどの王宮なら各部屋にいちいち鍵をかけなくても警備上の問題はないのかもしれない。そういうことなら、食事の時間を省いてでも入り浸りたいくらいだが……いやいや、それじゃあ目的が変わってしまう。
「僕は殿下に近づくためにベインブルに通っているのであって、それを忘れないようにしなければ」
そうしないと、ビジュオール王国に来た意味がなくなってしまう。改めて「まずは発情して、それから殿下とベッドを共にして、そうして子を生まなければ……」と呪文のように唱えながらベインブルの扉を開けた。
起きたらまず、窓を開けて気持ちのいい空気を胸一杯に吸い込む。アールエッティ王国ではまだ肌寒い季節だが、海が近いビジュオール王国は新緑が眩しいよい季節だった。
「そういえば、ビジュオール王国には四季があるんだったな」
アールエッティ王国にも季節はあるが、夏は短く冬が長めだ。それも春や秋より少し暑いだとか寒いだとかいった程度で、季節感をたっぷり味わうことは少ない。
それに比べてビジュオール王国にははっきりとした四季があると本に書かれていた。そうした四季のもとで見る景色はどれだけ美しいだろうと思い、つい荷物に詰め込む画材が増えてしまった。
「そのうち、絵を描く許可をもらわないとな」
だが、まずは発情を迎えるのが先だ。そのための計画もすでに立ててある。
僕はさっと顔を洗って歯を磨き、一人で着替えを済ませると朝イチのスケッチに取りかかった。これは小さなスケッチブックと木炭だけでできるから、許可が必要なほど大がかりではないし部屋を汚すこともない。毎日何かしら描かないと体調がおかしくなる僕は、とりあえずスケッチで一日を始めることにした。
スケッチをしていると、侍女たちが朝食を運んでくる。到着した翌日は僕が先に起きてスケッチしていることに驚いていたようだが、毎日同じことをくり返しているからか、いまではすっかり慣れたようだ。今日も驚いた表情一つ見せずにおいしそうな料理を並べ、静かに頭を下げて部屋を出て行った。
「そういえば、一人で食事をするのは初めてか」
アールエッティ王国では、大体家族そろって食事をしていた。父上や母上が忙しいときでも妹のルーシアと食べていた。だから、こんなふうに完全に一人だけで食事をするのは初めてということになる。
「……まぁ、そのうち慣れるだろう」
少し寂しい気がしないでもないが、これがビジュオール王国での日常なのだと慣れていくしかない。
食事が終わったらスケッチの続きをして、昼食の三時間前に後宮から出て“ベインブル”と勝手に呼んでいる部屋へと向かう。
本来、後宮にいる妃候補たちは後宮の外に出ることはできない。それは万が一でも間違いがあっては大変だからだ。しかし、男の僕には間違いの起きようがなかった。女性のΩは普通の男性相手でも子をなすことができるが、男性Ωはαが相手でなければ孕めないらしいからだ。
本で見たときには「本当か?」と思ったが、こうして後宮の外に出る許可が出ているということは本当なのだろう。「それじゃあ、ますます珍獣のようじゃないか」と思ったりもしたが、おかげで殿下に近づくチャンスが増えたと思えばいい。
「まずは毎日殿下に会うことから始めよう」
これが僕が考えた計画だ。ただすれ違うだけで発情を促せるのかはわからないが、とにかくαである殿下の近くに行かなければ何も始まらない。そのために僕が目をつけたのは、殿下の執務室のそばにある宝物庫と呼ばれる部屋だった。
そこは代々の王族が集めた品が置かれている保管庫のような部屋で、僕にとっては芸術品が山のように納められた夢のような場所だった。この部屋の存在を知ったとき、僕は「なんてすばらしいんだろう!」と芸術の神に感謝の祈りを捧げたくらいだ。同時に「執務室の奥に貴殿の好きそうな部屋がある」と教えてくれたノアール殿下の言葉に「これだ!」とひらめいた。
殿下が執務室に行く時間を狙ってその部屋に向かえば、必ず顔を合わせることになる。殿下はほぼ毎日執務室へ行くと侍女に確認したから、僕も毎日通えば毎日すれ違えるということだ。
すれ違うだけだから本当に短い時間しか近づけない。というより、ほとんど一瞬のようなものだ。それでも回数が多ければ、そのぶん接触する時間が増えることになる。質より量だと考え、とにかく毎日殿下とすれ違うことを目標に掲げることにした。
それにしても……と、これから向かう部屋のことを思い出す。
「さすがは大金持ちのビジュオール王国だ。あんなベインブルのような部屋まであるなんて、いろんな意味で僕はラッキーだな」
ちなみに、勝手に呼んでいる“ベインブル”というのは、芸術の神が住まう城の名前だ。そう言いたくなるくらいの部屋だから、芸術の神への感謝の気持ちを込めてそう呼ぶことにした。
スケッチブックと木炭を仕舞った僕は、手を洗ってから服を整え廊下に出た。数十歩ほど歩くと後宮の出入り口に到着する。そこから王宮の表に入り、フカフカの絨毯が敷かれた廊下の途中で左に曲がると王太子専用の執務室が見えてくる。さらに進むと、目的地であるベインブルの部屋だ。
(今日もバッチリだ)
角を曲がったところで、前方から従者をつれたノアール殿下が歩いてくる姿が目に入った。相変わらず美しいデザインの服を身に纏っている。
(……今日のカメオはストーンカメオだな)
どうやら殿下は、シェルカメオだけでなくストーンカメオもお気に入りらしい。たまにキラキラ光る宝石も見えるから、カメオ・アビレも好きなのだろう。
(もしかしなくても殿下は、そこそこ芸術品が好きなんじゃないだろうか)
それなら会話も弾みそうだと思ったが、いまのところ殿下と話をする機会は持てないままだ。殿下が僕の部屋を訪れたのは初日の一度きりで、そのときも十数分程度の会話で終わってしまった。
つぎにじっくり話す機会があればカメオの話題から入ってみようと思いながら、ほんの少し殿下のほうに距離を詰めつつ頭を下げる。そうして殿下が通り過ぎるのを待ち、頭を上げて歩き出そうとしたところで声をかけられた。
「毎日通っているようだが、飽きないか?」
振り返ると、殿下が僕を見ていた。僕は体全体を殿下に向け、「そんなことはまったくありません」と答えた。
「あの部屋にある品々の中には、失われてしまった過去の技術が施された芸術品もあります。僕は絵画が専門ですが、それ以外のそうした品々にも大変興味を持っています」
「なるほど、アールエッティ王国の王子らしい言葉だ」
「ありがとうございます。いえ、いまのお言葉に対してだけではなく、あの部屋への出入りを許可していただいて、本当にありがたく思っています」
そう答えると、ノアール殿下の真っ黒な瞳がますます僕の顔をじっと見た。何かおかしなことを口にしたかと思いながらも視線を受け止めていると、「おもしろい」という小さな声が耳に入った。
(おもしろい? ……僕が?)
別におもしろいことなど言っていないはずだが……と内心首を傾げたが、気分を害したのでないなら問題ない。
「あの部屋はいつでも開いているから、見たいときに見ればいい」
そう言った殿下が、黒髪をなびかせながら執務室へと入っていった。
「……いつも開いているなんて、不用心じゃないか?」
いや、これほどの王宮なら各部屋にいちいち鍵をかけなくても警備上の問題はないのかもしれない。そういうことなら、食事の時間を省いてでも入り浸りたいくらいだが……いやいや、それじゃあ目的が変わってしまう。
「僕は殿下に近づくためにベインブルに通っているのであって、それを忘れないようにしなければ」
そうしないと、ビジュオール王国に来た意味がなくなってしまう。改めて「まずは発情して、それから殿下とベッドを共にして、そうして子を生まなければ……」と呪文のように唱えながらベインブルの扉を開けた。
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