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二章 鬼の王に会いて

其の参

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「あ、ぁ――!」
「ぐ、ぅ……っ」

 きゅうぅと絞るように熱い肉に絡みつかれ、どちゅんと貫いた奥深くで子種を撒き散らす。もう何度目かわからない交わりに体は疲労を訴えているが、俺の逸物はなおも力強いままで、頭は妙に冴え渡っていた。


 関白家の荘園にある別邸に到着し、少し休んだあとにまずやったのは体を洗うことだった。
 久しぶりに湯殿を使い、ざぶりざぶりと贅沢に湯を被りながら「やはり水とは違うな」と妙なことで感心した。別邸には風呂殿もあるが、あまり蒸し風呂が好きではない俺は滅多に使うことがない。蒸し風呂を使うくらいなら水を被ったほうがいいと思ってしまうのは、もしかしなくても師匠の悪影響だろうか。
 しかし金花は蒸し風呂が気になったようで、しばらく蒸し風呂を堪能してから湯殿を使ったようだ。「わたしの屋敷には湯殿しかなかったので」と言っていたが、鬼も湯を使うのだなと思い、それなら俺も大丈夫そうだと考える。

 それから夕餉を食べ、旅の疲れもあるだろうからと早々と御帳で横になった。ところがなぜか眠気がやって来ることがなく、逆に目が冴えて仕方がない。一人きりの御帳はやけに静かで、「あぁそうか、金花と一緒でないからか」などと思っていたとき、するりと布が上がり金花が潜り込んできた。
 驚きながらも「休んだほうがいい」だとか「鬼の王に会うのだぞ」だとか言ってたしなめた。しかし、月明かりにぼぅと浮かび上がる白く美しい顔を一瞬でも目にしてしまえば、あとは言わずもがなだ。

 気がつけば腕を引き寄せ、ふらりと倒れてきた細い体を組み敷いていた。単を剥ぎ取りながらがむしゃらに体を舐め、噛みつき、撫で回す。「あぁ」という艶やかな声に俺の逸物はぐぅんと天を向き、同じように美しい色合いの金花の逸物も天を向いていることに喜びを覚えた。
 気がつけば金花の逸物を咥え、金花が俺にするように震えるそれを舐めしゃぶっていた。
 しゃぶればしゃぶるほど腹をひくりと震わせ「だめ」とか細く鳴くのだから、ますます鳴かせたくなってしまうのが男というものだろう。金花のものをじゅぼじゅぼと口でかわいがり、ふと思いついて尻に差し込んでみた指を動かせば、声が高くなりますます艶めいた。
 それに気をよくした俺はますます熱心にしゃぶり、指は鳴いて悶えるコリコリとした場所を撫で擦った。そのうち金花の声は掠れ、腹がひくひくと震え出した。さぁもっと鳴けとばかりに指でコリコリしたところをぐぅと押し込めば、「あぁ!」と一際高い声を上げて背を浮かせた。
 口の中に吐き出された金花の子種は、伽羅香のようであり梔子の花の香りのような芳しさにも感じた。だからか、ためらうことなくごくりと飲み干してしまった。
 それに驚いたのは金花のほうで、手足をもぞもぞとさせながら何やらつぶやいている。俺は構うことなく足をぐぃと持ち上げ、月明かりにてらてらと光る尻の奥へと逸物を突き入れた。


 それからどのくらい交わっているのか、もう覚えていない。たしか最初は正面から押さえつけるように逸物を入れたような記憶があるが、いまは後ろから尻の上に乗るようにねじ込んでいる。
 外はすっかり陽が昇り明るくなっていたが、鬼の王のところへ行く日まで構うなと命じたからか、下男の一人も姿を現さなかった。

「ぁ……ん、」

 俺が逸物をずるりと抜くと、細くも甘い声が体の下から聞こえた。
 見下ろした先には真っ白な背があり、長い黒髪はうねるように散らばっている。首や肩に赤い部分があるのは、俺が無意識に噛みついてしまったからだろう。
 そういえば、いつもより気持ちが昂ぶり噛みつく加減ができなかったなとぼんやり思い出す。

(金花の子種を飲んだからか……?)

 やけに甘く感じた子種を飲み下した直後から熱に浮かされたようになり、止めどなく凶暴な気持ちが湧き上がった気がする。

(鬼の子種だったからだろうか)

 そんなことを思いながら、ハァハァと息を乱している白い体を見下ろす。ずっと見ているというのに、目にするだけで俺の逸物がぐぅんと力を持った。

「まるで盛りのついた獣のようだな……」
「カラ、ギ……?」
「まだいけるだろう? ……キツラ」

 名を呼べば、それだけで金花――キツラの体がひくりと震えた。
 それに気をよくした俺は、うつ伏せのままのキツラの左肩を押さえつけた。逆に右腕はぐぃと引き上げるように掴む。何をするのかと振り返ったキツラにニィと笑った俺は、その体勢のままずぅんとキツラのぬかるんだ中を貫いた。

「ひ、あ――!」
「ぐぅ……っ。これは、また……、すごい、うねりだな……」
「ぁ、あ、……っ、ふ、……っ」

 ずん、ぬちゅん、ぱちゅんと突き入れるたびにキツラの背が跳ね、そうすると中がぐぐぅと締まりえもいわれぬ心地よさに襲われる。俺は押さえつけていた左腕も掴み、上半身を起こすようにぐぃと両腕を引いた。
 上半身を無理やり引っ張り起こされたキツラは、それさえもたまらないのだと言うように中をうごめかせた。

「あ――! あぁ、もぅ、だめ……、だめ……」
「駄目では、ないだろう……? おまえの中は、ずっとうねって、はぁ、いまも俺の子種を、吸い取ろうとしている、くせに……」

 そう言って奥を突き上げれば、細い声を上げてキツラがビクビクと震える。中がきゅうきゅうと締まり吸い取られそうになったが、奥歯を噛み締めて子種を吐き出すのをかろうじてこらえた。
 そうしてゆっくりとキツラの上半身をうつ伏せに戻してから、汗に濡れた黒髪を何度か撫で、自分の右の人差し指を口に咥えた。

 ガリッ。

 ビリッとした痛みとともに鉄臭い匂いが口の中に広がる。うまいとは思えないが、これがキツラの……、いや、鬼の食らうものなのだなと思うと、何やら不思議な感覚になった。
 少なくとも俺は血に恐れを抱いたりはしない。武士もののふのように太刀を振るい鬼退治をしてきた俺は、鬼の血を何度も見てきたからだ。さすがにこれが食事だと言われると複雑な気持ちになるが、思ったよりも抵抗はなかった。

(気持ちはもう鬼といった感じか)

 おかしなことを考えてしまったと思いながら、赤く濡れた人差し指をキツラの顔のほうへと回す。そうしてハァハァと息を乱している唇に押しつけた。
 指先で唇の柔らかさを堪能していると、ぺろりと熱いものが触れた。そのままぴちゃぴちゃと濡れた音がし、そのうち俺の指先はすっかりキツラの口の中へ入ってしまった。

「あぁ……、また中が、締まってきたな……」
「んちゅ、ん、ちゅぅ、ちゅっ、ん、」
「ふ、く……っ。腰を動かさずとも、吸い取られ、そうだ……っ。ぐ、ぅぅ……っ!」

 根本から先端までしゃぶりつくされているような感覚に、気がつけばキツラに指を吸わせながら腰を激しく打ちつけていた。
 奥を穿つたびに音を立てて滑ったものが吹き出すのは、俺が何度もキツラの中に撒き散らした子種だろう。それが互いの股をひどく汚しているが、そんなことを気にする余裕はなかった。ただひたすら、まるで初めての交わりのようにキツラの中を穿ち続ける。
 時折り口に含ませた指にずきりと鋭い痛みが走るのは、小さな牙が当たっているからに違いない。もしかしたら額に角が現れているかもしれない。その角を撫でながら交わってみたいなどと妙なことを思いながら、さらに奥へと逸物の先端を押し入れる。
 そうしてすっかり慣れた狭い路を通り抜け、熱く濡れた奥の壁を貫き破る勢いで突き上げた。

 ぐちゅん、ぶちゅっ、どちゅん!

 これ以上は入らないだろうと思われる先を目掛けて、なおも逸物を突き入れた。まろい尻たぶを押し潰し、限界まで尻の間にねじ込み、もっと奥へと昂ぶる気持ちのまま穿ち続ける。
 そうして先端がとけそうなほど熱く濡れた壁にぶつかり、そのままくぃと少し曲がった先にぶつかったところでキツラの腰が激しく震えた。つられるように中も激しくうごめき、擦るように、舐めるように、根本から先端までを絞り上げられる。
 さすがに今度は耐えきれず、思う存分子種を吐き出した。

 びゅうと勢いよく噴き出た衝撃を感じたのか、キツラががじりと俺の指を噛んだ。痛みはあるもののそれすら心地よく感じられて、続けざまにびゅうびゅうと子種を撒き散らす。キツラもつられるように指をがじがじと噛み締め、最後には骨にまで食い込むような鋭い痛みを感じた。
 おそらく小さな牙に思い切り噛みつかれたのだろう。以前なら「鬼の牙に貫かれた」と恐怖を感じたかもしれないが、いまの俺にはその痛みさえも心地よかった。

「……キツラの牙になら、噛みつかれてもいいかもな」

 俺の言葉にひくりと体を震わせたキツラだったが、さすがに精魂尽き果てたのかうつ伏せのまま動かなくなった。

 キツラの口から引き抜いた指先には小さな穴のようなものがあったが、血はすでに止まっていて痛みもほとんど感じない。これも鬼のなせる技かと思いながら、ぺろりとその傷をひと舐めする。
 力の抜けたキツラの中から逸物をずるりと抜き出せば、ぬちょぉと滑った筋が逸物の先端とキツラの尻の間に伸びた。あれほど吐き出したというのに、最後までこれほど濃いものをと思うと、己の精の強さには笑うしかない。
 気を失ったキツラを寝かせたまま、水の入った桶や何枚もの手拭い、それに飲み水や簡単に食せるものを御帳へと運び入れた。互いの身を清めたあとは軽く腹ごしらえをし、少し眠る。目が覚めたときにはまだ陽は高く、わずかの間しか眠らなかったことがわかった。

(鬼の王に会うのだ、気が高ぶっているのだろう)

 そう思いながら、隣ですぅすぅと寝息を立てているキツラに視線を向ける。そうして美しい寝顔を目にした途端、あれほど交わった俺の体にぶわりと熱が戻った。逸物はむくむくと力をみなぎらせ、もう何も出ないだろうと思っていた先端には白の混じった玉のような雫が滲んでいる。

(俺は、一体どうしたというのだ……)

 そう思いながらも俺の手はキツラの白い頬を撫で、首を撫で、肩を撫で、気がつけば太ももを押しわけ逸物を突き入れていた。
 鬼の王に会うまでの二日間、俺はまるで何かに取り憑かれたかのように金花を求め、ひたすらにその美しい体を貪り続けた。
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