3 / 45
一章 鬼に繞乱(じょうらん)されしは
其の参
しおりを挟む
「なにを、……ッ!」
「ふ、あ……あぁ、なんて逞しい……。こんなに太く立派で……。はぁ……、奥までしっかり届く……」
「ぅ、あ……ッ」
「あ……!」
熱く滑ったものに逸物の根元まで包まれた瞬間、己と鬼が密着する下半身を見つめたまま一気に子種を吐き出していた。腰を突き上げてはいけない、そこまで堕ちてしまうわけにはいかないと必死に両手の爪を床に突き立ててはいるものの、いつもより明らかに長く逐情が続く。
鬼の腰はゆらゆらと艶めかしく揺れ、いきり勃つ男の証はぬらぬらと濡れているものの逐情した様子は見られなかった。だが、かすかに震えている下腹部の姿は感じ入っているように見える。
「ふふっ、熱く脈打ちながらこんなにも吐き出して……。それほどにわたしの中は、心地よいですか……?」
「なに、を……ッ」
「素直になればよいものを。わたしはあなたに欲情した、あなたもそれに答えた、ただそれだけのこと。鬼だの人だのは関係ないじゃないですか」
「だ、まれ……ッ」
「そのように頑ななところにも惹かれますけどね。肉欲に鬼だの人だのは関係ありません。ただ獣のように本能に従うのみ……。ほら、あなたのここも、気持ちよさそうじゃないですか。……んっ、ふふ、また大きくなった」
子種を吐き出したというのに、俺の逸物は一向に衰えることがなかった。それどころか鬼の中でますますいきり勃っている。
それを感じるのか、鬼はニィと笑って腰を回すようにゆるりと動き出した。そうされるとますます気持ちよくなり、自分でも腰を動かしそうになる。
(く……ッ! 駄目だ、鬼のいいように、されては、いけない……ッ)
俺は必死だった。鬼に呑み込まれないように、これ以上惑わされないようにと必死になった。
手籠めにされなかったことには安堵したが、だからといって鬼を抱いてよい理由にはならない。交わりが自分の意志でなかったとしても、ここで少しでも腰を突き上げるようなことをしてしまえば、望んで鬼に屈したことになる。
それは鬼退治に来た俺にとって耐え難い屈辱だった。
「あぁほら、また唇を噛んだりするから、血が出ているじゃないですか」
不意に鬼の指が唇を撫でた。襲い来る快感に耐えようと無意識に噛み締めていたらしく、指先が触れた部分がチリリと痛む。
唇から離れた白い指には、まるで鬼の唇のように赤い血が付いていた。
「いい香り」
鬼の言葉にハッとした。
「それに、……やはり、とても美味しい」
俺の血がついた指先を、鬼の真っ赤な舌がぺろりと舐める。妖艶にも見える姿を目にした瞬間、ゾッとするとともに体がカッと熱くなった気がした。
「あぁ、なんと心地よい香り……。それだけじゃない、古酒のように芳醇で奥深く、それでいてねっとりした味わい……。あぁ……、いけない、鬼の本性が……、あぁ、いけない……」
逸物を咥え込んでいる場所が大きくうねった。もっていかれまいと慌てて瞼を閉じ、くっと下腹に力を入れる。それでもぐねぐねと動く熱く柔らかい感触に、尻が何度も床板から離れようとするのがわかった。
ただでさえすぐに逐精しそうになるほど心地よいというのに、これ以上は本格的にまずい。そう思い、なんとか鬼から逃れなければと目を開いた俺はとんでもないものを目にした。
(髪が、伸びている……? それに、額のものは……)
短かった鬼の黒髪が、ゆらりと毛先を揺らしながらゆっくりと伸びていく。さらに、真っ白な額ににょきりと角が一本生えていることに気づいた。赤く艶やかに光るその角は、かつて書物で見た異国の獣の角のようにも見える。
「あぁ……、あまりにも美味で、鬼の本性が抑えきれなくなりました……」
同じ声だというのに、明らかに先ほどより艶を増したと感じるのは気のせいだろうか。それに見間違えでなければ、紅い唇の端から小さな牙のようなものがちらりと覗いていた。
「よかった、萎えていませんね」
「……!」
鬼の言葉に、今度こそ愕然とさせられた。
そう、俺の逸物は鬼が鬼らしく変化するのを見たというのに、まったく衰えなかったのだ。それどころかますます滾るようにいきり勃ち、逐精したいと訴えるように脈打っている。
「俺、は……」
「それも妖魔の血がなせること。いいえ、自我を保ったままというのは妖魔の力が完全には効いていない証。ということは……、わたしそのものに、欲情しているのですか……?」
「なにを、馬鹿な……!」
「あぁほら、それです。普通の人ならば反論することもなく、とっくに自我を失いわたしの腹の奥を獣のように犯しているはず。これまでどんな盗っ人も、そう、帝の第十親王だというあの者も、ただ獣のようにわたしを求め、わたしに子種を注ぐだけでした」
第十親王というのは、帝が俺に勅命を下す最後の一押しになった皇子のことだ。
皇子は親王ながら早くに臣に下り、少し前から鬼退治に行くのだと盛んに触れ回っていた。周囲は「また戯れが始まった」と本気にしていなかったが、本当に鬼退治へと旅立ってしまい、その後、都には戻って来ていない。
そうか、第十親王はこの鬼に堕ち、犯したのだ。その結果、都に戻れなくなってしまったに違いない。
「ふ……、また逞しくなった。もしや、親王に嫉妬でもしましたか?」
「馬鹿なことを、……ぅッ」
「体はこんなに素直だというのに……。その胆力こそが妖魔の力を弱めているのでしょうね。それに、鬼の本性を見ても萎えることのない逞しさ……。やはり、あなたこそがわたしの求めていた存在なのかもしれません」
「ふざけ、るな……ァッ!」
「ふざけてなどいませんよ? さぁ、あなたも素直になってください。そうして……」
腰をゆるりゆるりと回し、ニィと笑った鬼が顔を近づけてくる。
「心と体のおもむくままに、わたしを犯してください」
耳に触れた熱い息と淫らな言葉に、必死に耐えていた俺の気持ちは呆気なく崩れ落ちてしまった。
「ふ、あ……あぁ、なんて逞しい……。こんなに太く立派で……。はぁ……、奥までしっかり届く……」
「ぅ、あ……ッ」
「あ……!」
熱く滑ったものに逸物の根元まで包まれた瞬間、己と鬼が密着する下半身を見つめたまま一気に子種を吐き出していた。腰を突き上げてはいけない、そこまで堕ちてしまうわけにはいかないと必死に両手の爪を床に突き立ててはいるものの、いつもより明らかに長く逐情が続く。
鬼の腰はゆらゆらと艶めかしく揺れ、いきり勃つ男の証はぬらぬらと濡れているものの逐情した様子は見られなかった。だが、かすかに震えている下腹部の姿は感じ入っているように見える。
「ふふっ、熱く脈打ちながらこんなにも吐き出して……。それほどにわたしの中は、心地よいですか……?」
「なに、を……ッ」
「素直になればよいものを。わたしはあなたに欲情した、あなたもそれに答えた、ただそれだけのこと。鬼だの人だのは関係ないじゃないですか」
「だ、まれ……ッ」
「そのように頑ななところにも惹かれますけどね。肉欲に鬼だの人だのは関係ありません。ただ獣のように本能に従うのみ……。ほら、あなたのここも、気持ちよさそうじゃないですか。……んっ、ふふ、また大きくなった」
子種を吐き出したというのに、俺の逸物は一向に衰えることがなかった。それどころか鬼の中でますますいきり勃っている。
それを感じるのか、鬼はニィと笑って腰を回すようにゆるりと動き出した。そうされるとますます気持ちよくなり、自分でも腰を動かしそうになる。
(く……ッ! 駄目だ、鬼のいいように、されては、いけない……ッ)
俺は必死だった。鬼に呑み込まれないように、これ以上惑わされないようにと必死になった。
手籠めにされなかったことには安堵したが、だからといって鬼を抱いてよい理由にはならない。交わりが自分の意志でなかったとしても、ここで少しでも腰を突き上げるようなことをしてしまえば、望んで鬼に屈したことになる。
それは鬼退治に来た俺にとって耐え難い屈辱だった。
「あぁほら、また唇を噛んだりするから、血が出ているじゃないですか」
不意に鬼の指が唇を撫でた。襲い来る快感に耐えようと無意識に噛み締めていたらしく、指先が触れた部分がチリリと痛む。
唇から離れた白い指には、まるで鬼の唇のように赤い血が付いていた。
「いい香り」
鬼の言葉にハッとした。
「それに、……やはり、とても美味しい」
俺の血がついた指先を、鬼の真っ赤な舌がぺろりと舐める。妖艶にも見える姿を目にした瞬間、ゾッとするとともに体がカッと熱くなった気がした。
「あぁ、なんと心地よい香り……。それだけじゃない、古酒のように芳醇で奥深く、それでいてねっとりした味わい……。あぁ……、いけない、鬼の本性が……、あぁ、いけない……」
逸物を咥え込んでいる場所が大きくうねった。もっていかれまいと慌てて瞼を閉じ、くっと下腹に力を入れる。それでもぐねぐねと動く熱く柔らかい感触に、尻が何度も床板から離れようとするのがわかった。
ただでさえすぐに逐精しそうになるほど心地よいというのに、これ以上は本格的にまずい。そう思い、なんとか鬼から逃れなければと目を開いた俺はとんでもないものを目にした。
(髪が、伸びている……? それに、額のものは……)
短かった鬼の黒髪が、ゆらりと毛先を揺らしながらゆっくりと伸びていく。さらに、真っ白な額ににょきりと角が一本生えていることに気づいた。赤く艶やかに光るその角は、かつて書物で見た異国の獣の角のようにも見える。
「あぁ……、あまりにも美味で、鬼の本性が抑えきれなくなりました……」
同じ声だというのに、明らかに先ほどより艶を増したと感じるのは気のせいだろうか。それに見間違えでなければ、紅い唇の端から小さな牙のようなものがちらりと覗いていた。
「よかった、萎えていませんね」
「……!」
鬼の言葉に、今度こそ愕然とさせられた。
そう、俺の逸物は鬼が鬼らしく変化するのを見たというのに、まったく衰えなかったのだ。それどころかますます滾るようにいきり勃ち、逐精したいと訴えるように脈打っている。
「俺、は……」
「それも妖魔の血がなせること。いいえ、自我を保ったままというのは妖魔の力が完全には効いていない証。ということは……、わたしそのものに、欲情しているのですか……?」
「なにを、馬鹿な……!」
「あぁほら、それです。普通の人ならば反論することもなく、とっくに自我を失いわたしの腹の奥を獣のように犯しているはず。これまでどんな盗っ人も、そう、帝の第十親王だというあの者も、ただ獣のようにわたしを求め、わたしに子種を注ぐだけでした」
第十親王というのは、帝が俺に勅命を下す最後の一押しになった皇子のことだ。
皇子は親王ながら早くに臣に下り、少し前から鬼退治に行くのだと盛んに触れ回っていた。周囲は「また戯れが始まった」と本気にしていなかったが、本当に鬼退治へと旅立ってしまい、その後、都には戻って来ていない。
そうか、第十親王はこの鬼に堕ち、犯したのだ。その結果、都に戻れなくなってしまったに違いない。
「ふ……、また逞しくなった。もしや、親王に嫉妬でもしましたか?」
「馬鹿なことを、……ぅッ」
「体はこんなに素直だというのに……。その胆力こそが妖魔の力を弱めているのでしょうね。それに、鬼の本性を見ても萎えることのない逞しさ……。やはり、あなたこそがわたしの求めていた存在なのかもしれません」
「ふざけ、るな……ァッ!」
「ふざけてなどいませんよ? さぁ、あなたも素直になってください。そうして……」
腰をゆるりゆるりと回し、ニィと笑った鬼が顔を近づけてくる。
「心と体のおもむくままに、わたしを犯してください」
耳に触れた熱い息と淫らな言葉に、必死に耐えていた俺の気持ちは呆気なく崩れ落ちてしまった。
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる