上 下
13 / 27

13 晩冬から初春にかけてのこと1

しおりを挟む
「ひーまーだーなー」

 思わずそう言ってしまってから、「あれ? 暇だったっけ?」と少し考えた。
 ぼくが部屋でできることは前と同じだ。しかも今度は王様にはっきりと「部屋から出ないでほしい」と言われてしまった。だから部屋の外には出られない。部屋の中でできることはパンやお菓子を作ることくらいで、あとは王様が持って来てくれた本を読んだりして過ごしている。

(うん、やっぱり暇だ)

 それが悪いとは思わない。すごく贅沢をさせてもらっている。ただ、お妃様になったら何か変わるんじゃないかと勝手に思っていた。

(それにこのままでいいのかなぁって、やっぱり気になるし)

 王様のお妃様なら、もっとこう、ピシッとしないといけない気がする。それなのにぼくは一日のほとんどを暖炉の前で王様のマントを被りながら過ごしている。王様もアルギュロスさんも、そんなぼくに駄目だとは言わない。だから、ますますだらしない過ごし方をしてしまう。

(……いや、これじゃ駄目だ)

「せめて学がないのをどうにかしよう」と思ったぼくは、暖炉の前で本を読むことにした。本は王様が持って来てくれた子ども用のものだ。大人用の本より一ページの文字が少ないから早く読める。早くたくさん読めると頭がよくなった気がしてもっと読みたくなる。

(それに怖いことも変なことも書いてないし)

 それが一番よかった。

(そうだ、今日はイチゴのゼリーを作るんだった)

 でもぼくがよく知っているゼリーとは少し違う。獣人の国でよく食べる寒天というものを使ったゼリーだ。完成したゼリーは夜ご飯の後に王様と一緒に食べる。それから王様に味の感想を聞く。

(よく考えたらあんまり暇でもないかな)

 前の部屋で作るのをやめてしまった芋と栗のお菓子もまた作り始めた。獣人の国には“きんとん”というお菓子がある。芋を蒸かしたあと練って甘くしたものに栗を混ぜたお菓子だ。それを見たぼくは、何度か食べたことがあるスイートポテトを思い出した。それに屋台でよく売られていた焼き栗も頭に浮かんだ。

(あれを一緒にしたらおいしいんじゃないかな)

 ということで、いまは芋に混ぜるバターの量を調整しているところだ。味見をして生クリームを追加したりもしている。でもあまり甘くしすぎると王様の口には合わないかもしれない。お菓子をあまり食べないという王様でも食べやすいように気をつけながら調整している。

(あとは栗もこんがり焼いて、こっちには塩を少し振りかけるんだ)

 焼き栗はアルギュロスさんたちもおいしいと言って食べてくれた。あれなら甘く煮た栗より食べやすいに違いない。どちらも少し時間がかかるから、作るのはまた今度にしよう。
 そんなことを考えながらイチゴゼリーを作り、夜ご飯の後に王様と一緒に食べた。実は隠し味にこの国の出汁というものを少しだけ使ったんだけれど、甘い物が本当は得意でないらしい王様も喜んで食べてくれた。
 ぼくはホクホク顔でお風呂に入った。それから歯磨きをして暖炉の前に座る。

(雪、もう降らなくなったなぁ)

 窓の外を見ると星がよく見えた。ついこの前までは毎日雪が降っていたのに、いつの間にか降らなくなっていた。「年が明けると雪は格段に減る」と教えてくれたのは王様で、本当にそうなった。

(こんなに寒い年越しは初めてだった)

 寒いだけじゃない。昼間は暖炉の前から離れられないくらい寒いのに、夜はとても熱い。

(だって、夜になると王様が体、撫で回すからさ)

 そしてぼくをギュッと抱きしめて眠る。年越しのときもそうだった。おかげで大雪の日もホカホカで眠ることができた。

(しかも、もう二本入ったとか言うし)

 王様の指は太い。その指が二本も入るようになったらしい。

(ぼくのお尻って、実はすごいんじゃないかな)

 そんなことを考えながら頬をポリポリと掻く。ぼくは王様のお妃様になった。平民でいうところの夫婦だ。つまり、そういうことをする仲ということでもある。王様は子ども生んでほしいようだから間違いなくその先もするはず。
 本当に男のぼくが子どもを生めるのかはわからない。いまでもほんのちょっと疑っている。でも、子どものことは関係なく王様とそういうことをしたい気持ちはぼくにもあった。

(ぼくも男だからね)

 問題はぼくの体が小さすぎることだ。それに王様も獣人の中では体が大きい。体の大きさがあまりにも違うせいで、王様のアレは簡単にはぼくの中に入らない。

(聞いたときは絶対無理だと思ってたけど、指が二本も入ったなら大丈夫な気がしてきた)

 きっと三本目もすぐに入るに違いない。三本入れば王様のアレだって……。そこまで考えて顔が熱くなった。「ぼくって実はエッチだったんだ」なんて思いながら手でパタパタ扇いでいると王様がやって来た。お風呂上がりの王様も相変わらずかっこいい。

「そろそろ寝よう」
「はい」

 寝室に行く前に風呂場に向かった。寝る前にトイレを済ませるためだけれど、その後残り湯で下半身をもう一度綺麗にする。王様にお尻を触られるようになってから、寝る前にこうして洗うようになった。そうしないと落ち着かないからだ。でも、洗っているとまるで触られるのを期待しているような気がして恥ずかしくなる。

(やっぱりぼくってエッチなのかもしれない)

 そう思うと王様の顔を見るのが恥ずかしい。俯いたまま寝室に入り、王様を見ないようにしながらベッドに寝転がる。ぼくが恥ずかしがるのはいつものことだからか、王様は気にすることなくぼくの服と下着を優しく剥ぎ取った。

「随分と柔らかくなったな」

 ぼくをうつ伏せにした王様は、ヌルヌルしたものをつけてからお尻に指を入れた。そうして何か探すように指を動かす。

「それに……ここもよくわかるようになった」
「ひっ」

 王様の指がお尻の中の何かをグッと押した。そこを押されるとお腹がビリビリして変な声が出てしまう。しかも押されるだけでアレがピンと勃つようにもなってしまった。

「お、さま、そこ、だめ、っ」

 枕に顔を押しつけながら必死に声を出す。

「我慢しなくていい。気持ちがいいなら素直に感じていろ」
「そ、じゃなく、てっ。そこ、されると、ひぃっ!」

 ビリビリするところをトントンと叩かれて腰から力が抜けた。それなのに引きつるくらい両足には力が入って、お腹の奥のビリビリもどんどんひどくなっていく。

「ここで感じられるのはいいことだ」
「んぅっ」
「中で感じられれば繋がったときも快感を得やすい」
「ぁうっ」
「そうすれば、それだけ気持ちよくしてもやれる」
「んんん……っ!」

 お腹がゾワゾワした。触っていないのにアレがビリビリして出そうになる。それなのにあと一歩が足りなくて出すに出せない。

(出したい、出したい、出したい!)

 気がつけばそんなことばかり考えていた。お腹が熱くてたまらない。気持ちがいいけれどその先にいけなくて苦しい。ぼくは半泣きになりながら「出したい」と訴えた。

「このまま出せばいい」
「むりっ。さわって、前、さわってっ」
「おまえならここだけで出せる」

“ここ”と言いながらビリビリするところをトントンと叩かれた。これ以上は耐えられないと、ぼくは何回も頭を振った。腰をヘコヘコ動かしてシーツにアレを擦りつけたけれど刺激が足りなくて出せない。それでも出したくて「さわってよぅ!」と声を上げた。
 叫んだ瞬間、お尻の中がゾクゾクゾクッと震えた。ものすごい痺れを感じてパッと目が開く。背中までゾクゾクして目の前がチカチカした。
 腰がブルッと震えた。まるでトイレに行ったときみたいな感覚がする。アレから何かが出ているのはわかるのに、何が出ているかわからない。それでも気持ちがよくて体がブルブル震えた。

「出せたな」
「……っ」
「あとはもう一本指が入れば十分だろう」
「ぁぅ……っ」

 王様の声に耳が痺れる。首がゾワゾワして、またアレから何かがピュウッと出てしまった。そこでぼくの限界が来てしまった。気持ちがよくて、それなのにヘトヘトで、ぼくはそのまま気を失うように眠った。
 次の日も王様はぼくのお尻の中を触った。ビリビリするところを何度もトントンと叩く。それだけで腰から力が抜けてしまった。うつ伏せになったぼくは「ハフッ、ハフッ」と牧羊犬みたいな息を吐きながら必死に枕を抱きしめた。

「そろそろよさそうだな」

 王様の声が聞こえたあと、お尻の孔がググーッと広がるのがわかった。

(こ、壊れる……!)

 そう思ったのは一瞬だった。お尻の孔がこれでもかと拡がっているはずなのに痛くない。苦しかったけれど我慢できる。ぼくは王様の手に支えられながらお尻をグッと上げた。

(これ、たぶん三本目、入れようとしてる)

 指が三本入れば準備完了だ。王様もそう言っていた。三本目まで入れば、ぼくはいよいよ王様とそういうこと・・・・・・ができるようになる。

 ヌグッ、グッ、ググッ。

 三本の指がゆっくりと奥に入ってくる。いつもトントンされるところを過ぎて、もっと奥に入ってきた。腰が抜けていたはずなのに足やお尻にグーッと力が入る。

「そう力むな」
「ハフッ、フッ、んっ、ふぅっ、はふっ」
「そうだ、そのまま力を抜いていろ」
「ふぅっ、ふっ、んぅ、フッ、ハフッ、ふっ」

 王様の指がぼくの中で動いている。ぼくの中を王様が触っている。今度はここに王様のアレが入ってくるんだ。そう思った途端にお腹の中がブルブル震えた。王様の指が動くたびにお腹が熱くなってキュンキュンする。

「あっ、あ、アッ、あぁっ、アァッ」

 何かが体の奥からせり上がってくる。腰がカクカク動いて止まらなくなった。痛いくらい膨らんだアレの先がシーツやぼくのお腹にペチペチと当たっている。王様の指が動くたびに体の内側がゾワゾワした。

「やだっ、なにか、でるっ。でる、からっ。だめ、もぅっ、でちゃ、う……っ!」

 ペチペチ動いていたアレから勢いよく何かが噴き出した。つられてお尻にぎゅううっと力が入る。グリグリ動いていた王様の指が少しだけ止まり、そのまま奥のほうをググッと押した。

「んんん~~……っ!」

 ゾクゾクした何かが頭のてっぺんまで走り抜けた。瞼をギュッと閉じているのに目の前がチカチカ光っている。あまりの衝撃に、ぼくは感じたものが快感だとわからなかった。全身を鋭いものに貫かれたぼくは、訳がわからないまま意識を失った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

食堂の大聖女様〜転生大聖女は実家の食堂を手伝ってただけなのに、なぜか常連客たちが鬼神のような集団になってるんですが?〜

にゃん小春
ファンタジー
魔獣の影響で陸の孤島と化した村に住む少女、ティリスティアーナ・フリューネス。父は左遷された錬金術師で村の治療薬を作り、母は唯一の食堂を営んでいた。代わり映えのしない毎日だが、いずれこの寒村は終わりを迎えるだろう。そんな危機的状況の中、十五歳になったばかりのティリスティアーナはある不思議な夢を見る。それは、前世の記憶とも思える大聖女の処刑の場面だった。夢を見た後、村に奇跡的な現象が起き始める。ティリスティアーナが作る料理を食べた村の老人たちは若返り、強靭な肉体を取り戻していたのだ。 そして、鬼神のごとく強くなってしまった村人たちは狩られるものから狩るものへと代わり危機的状況を脱して行くことに!? 滅びかけた村は復活の兆しを見せ、ティリスティアーナも自らの正体を少しずつ思い出していく。 しかし、村で始まった異変はやがて自称常識人である今世は静かに暮らしたいと宣うティリスティアーナによって世界全体を巻き込む大きな波となって広がっていくのであった。 2025/1/25(土)HOTランキング1位ありがとうございます!

離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?

ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

人形となった王妃に、王の後悔と懺悔は届かない

望月 或
恋愛
「どちらかが“過ち”を犯した場合、相手の伴侶に“人”を損なう程の神の『呪い』が下されよう――」 ファローダ王国の国王と王妃が事故で急逝し、急遽王太子であるリオーシュが王に即位する事となった。 まだ齢二十三の王を支える存在として早急に王妃を決める事となり、リオーシュは同い年のシルヴィス侯爵家の長女、エウロペアを指名する。 彼女はそれを承諾し、二人は若き王と王妃として助け合って支え合い、少しずつ絆を育んでいった。 そんなある日、エウロペアの妹のカトレーダが頻繁にリオーシュに会いに来るようになった。 仲睦まじい二人を遠目に眺め、心を痛めるエウロペア。 そして彼女は、リオーシュがカトレーダの肩を抱いて自分の部屋に入る姿を目撃してしまう。 神の『呪い』が発動し、エウロペアの中から、五感が、感情が、思考が次々と失われていく。 そして彼女は、動かぬ、物言わぬ“人形”となった―― ※視点の切り替わりがあります。タイトルの後ろに◇は、??視点です。 ※Rシーンがあるお話はタイトルの後ろに*を付けています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

狼王の夜、ウサギの涙

月歌(ツキウタ)
BL
ウサギ族の侍従・サファリは、仕える狼族の王・アスランに密かに想いを寄せていた。ある満月の夜、アスランが突然甘く囁き、サファリを愛しげに抱きしめる。夢のような一夜を過ごし、恋人になれたと喜ぶサファリ。 しかし、翌朝のアスランは昨夜のことを覚えていなかった。

処理中です...