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16 グランギニョルの花嫁
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大聖堂の地下に連れて行かれて以来、リシアは火照る体をますます持て余すようになっていた。とくに違和感が大きいには腹の奥で、常時疼くような感覚がリシアを悩ませている。同じくらい口の中にも違和感があった。痒いような疼くような奇妙な感覚にスープさえ飲む気になれない。
優秀な侍女マルガは「無理をする必要はございません」と口にした。そして「姫さまがお母上と同じになられた証拠でございます」と告げる。
(母様と一緒なんて、あんまりうれしくないんだけど)
見た目だけならすでにほぼ同じようなものだ。そのうえ体の内側まで一緒というのは微妙な気持ちになる。
そんなリシアの食事は、いまやワインのような色の水とユリティの血だけになっていた。なぜ赤い水を飲まなくてはいけないのかわからないが、ユリティの命令ならと毎日口にしている。しかし水を飲むと体が火照って苦しい。苦しくて苦しくてユリティがほしくなる。
(ユリティがほしい……ユリティに愛してほしい)
この日もリシアは疼く体を持て余しながら愛しい人が帰ってくるのを待っていた。待つ間も思い返すのは夜のことばかりで、体の奥深くまで愛された昨夜のことを反芻するように思い浮かべる。
(昨日もここにたっぷり注いでもらった)
華奢な手が下腹部を優しく撫でる。それだけで奥を抉られる刺激と注がれた心地よさを思い出し花芯がピクリと震えた。毎日の行為で吐き出すものがすっかりなくなったリシアの体だが、ユリティとのことを考えるだけで健気に反応を示す。
(喉が渇いてきた)
体の奥を濡らされるときにユリティの血を口にしているからか、行為を思い出すだけで喉が渇くようになった。一度渇きを感じると、水差しの水を飲んでも新鮮な桃を口にしても癒えることはない。「はやく帰ってきて」とつぶやきながら窓の外を見た。すでに夕日は落ち薄闇が広がっている。もうすぐ帰ってくる、そう思うだけでリシアの白い肌は期待に赤く染まった。
「これはまた随分とよい香りがしていますね」
「ユリティ」
待ち望んでいた声にリシアがパッと振り返った。禁欲的な神官服を着ている姿にもかかわらず体の奥がズクンと疼く。ゆっくりと近づいて来る清廉な姿に、昨夜もたっぷりと交わった交合口がキュウッと窄まった。
「お腹が空いたでしょう?」
ソファに座るリシアの頬をユリティの手がするりと撫でた。それだけで花芯が勃ち上がり粘度の低い蜜をとろりと滲ませる。
「ユリティ、あのね……その、お腹も空いてるけど、それだけじゃなくて」
恥ずかしいわけでもないのにモジモジしてしまう。あまりにも興奮していたリシアは、空腹と情欲のどちらを優先させればいいのかわからなくなっていた。
「そうした初心な様子もいいものですね」
「……ユリティは、こういうのが好き?」
「どんなあなたでも好きですよ、リシア」
「僕も、ユリティが好き」
両手を伸ばしたリシアに応えるようにユリティが身を屈める。一つに結ばれた金髪ごと抱きしめたリシアは、「もう、準備できてるから」と囁いて腕を離した。
ソファの座面に両足を載せたリシアは、ゆっくりと足を開いた。神官王の花嫁らしく慎ましやかなドレスの下に下着はない。すっかり勃ち上がった花芯は期待に震え先端を蜜で濡らしている。さらにその下ではじわりと濡れている交合口が誘うようにふくふくと開閉していた。
その様子に碧眼がスッと細くなった。小さく息を吐くと「これはまた」とつぶやく。
「こういう僕は嫌?」
「とんでもない。ベッドに行く前に組み敷いてしまいそうで困っているだけです」
「別に……ベッドじゃなくてもいいのに」
リシアの返事にユリティが微笑んだ。赤くなったリシアの耳に唇を寄せ「では」と囁き神官服の上着を床に落とす。そうして猛々しくそそり勃つ熱塊を取り出すと、うっとりした眼差しでそれを見るリシアの期待に応えるように交合口にあてがった。
リシアが「あっ」と期待の声を上げた。それを遮るようにユリティが熱塊を一気に突き入れる。
「ああぁぁ……!」
華奢な体がソファの上でビクンと跳ねた。たまらず細腕でユリティを引き寄せた。腕を必死に掴みながら背もたれに後頭部を載せ、もっとと強請るように尻を浮かせる。
「わたしの花嫁はなんて淫乱なのでしょう。それにこれほど香りを撒き散らして」
「だって、ユリティがほし、から……っ。もっと、ユリティ、ほし、からっ」
「好きなだけあげますよ」
ユリティの腰がリシアの尻にグッと密着した。ズブズブと肉壁を擦りながら最奥へと先端が入っていく。
「ぁ、あぁ、奥に、はいる、ぅ……っ」
目の前がチカチカ光り始める。星が瞬くような感覚にリシアは思わず目を瞑っていた。それでもなお頭の中で光が点滅する。
「ユリティの、おっきぃ……ぁん! 奥、当たって、る……っ」
「あなたは奥が好きですね」
「全部、好き! ユリティがしてくれるっ、の、全部、好き、だからっ」
気がつけば自ら腰を揺らしていた。それに合わせるようにユリティが中を突き上げる。そのたびにリシアの花芯からは勢いのない透明な蜜があふれ出し、ドレスやユリティのズボンをしとどに濡らした。それでもリシアの動きは止まらない。もっともっとと貪欲に強請りながら体をすり寄せる。
「ユリティ、もっと、ちょうだい、ねぇ、もっと、」
「ほしいのはこちらだけですか?」
「あんっ!」
「こちら」と言いながら最奥を押し上げられ顎が上がる。震える背中に手を回したユリティは、交わった状態のままリシアを持ち上げた。突然の動きにリシアは「やあっ」と悲鳴を上げた。角度が変わった熱塊の感触に下腹部をブルブルと震わせる。
「やんっ! あっ、あぁっ!」
ユリティが一歩踏み出すたびにリシアの口から嬌声が上がった。それにかまうことなく寝室に入ったユリティはリシアを抱えたままベッドに腰掛ける。そうして向かい合わせに抱き合い「ほしいのは?」と再び問いかけた。
「どっちも……どっちも、ほしぃ……」
リシアがゆっくりとユリティの首筋に顔を近づけた。鼻先を肌に付けクンと鼻を鳴らす。
「いい匂い……おいしそうな、匂い」
快感に震える唇で首筋に吸いついた。肌に歯を当てるだけで喉が鳴る。そのままクッと力を入れると肌に小さな傷を付けたのがわかった。ほんのり感じる血の香りにリシアの背中をゾクッとした快感が走り抜ける。交合口がキュウッと窄まり肉壁が熱塊に吸いつく。
「んっ、んちゅ、ちゅっ」
リシアは夢中で肌に口づけていた。首筋に滲む甘い香りに吸いつき、舌で何度も舐め取る。それでもほしい量には足りず、むずがるように甘噛みをくり返した。
「好きなだけ口にしてかまいませんよ」
ユリティの囁きに一度唇を離す。
「ほんとに……?」
「言ったでしょう? わたしはあなたのものだと。好きなだけ口になさい」
「……うれしい」
微笑んだリシアの唇の端に尖った白いものが見えた。それは普段見えない牙のような歯で、今宵初めて姿を現したものだ。リシアは無意識にそれを舌先で舐めていた。そうして最初からそうしていたように愛しい人の肌に牙を当て、ゆっくりと力を込める。
ツプッ。
尖った部分が肌を貫いた。先ほどよりも濃い香りにリシアの背中がブルッと震える。
喉がカッと熱くなった。同じくらいユリティに貫かれている腹が熱くなる。ジクジクと疼き我慢ができなくなる。リシアは首筋に吸いつきながら腰を揺らめかせた。前後にゆらゆらと、回すようにゆらゆらと動かす。そのたびに結合部からヌチュヌチュと濡れた音がし、熱塊に押し上げられた最奥がたまらなく疼いた。
「おいし……くて、ぁん! きもち、ぃ……っ」
「リシアは上も下も貪欲ですね」
「んっ、ちゅっ、だって、どっちもほし……からっ」
「そんな貪欲なあなたも好きですよ」
「んっ! んぁっ! そこ、きもちいぃ……すごぃ、そこ、いぃ……!」
腰を振りたくるリシアに合わせるようにユリティも腰を突き上げた。リシアの花芯は壊れたように透明な蜜をしたたらせ、寝室に媚薬香のような清々しくも甘い香りが広がる。
嬌声を上げていた唇をひと舐めしたリシアは、再びユリティの肌に吸いついた。甘い肌にチクチクと牙を当てながら、体の奥では精を吸い尽くさんばかりに肉壁が熱塊に絡みつく。
「あ……!」
最奥をグリグリと抉られリシアの下腹が痙攣したかのように震え出した。
「んっ! そこも、きもちいぃ……!」
あられもない嬌声を上げながら背中を仰け反らせる。
「あ、あぁ! ぁ、ユリティ、ど、しよ、きもちいい、いぃ……っ」
「何度でもいきなさい」
「ん、ぅんっ、いく、いっちゃう、ぁんっ、いっちゃ、う――――!」
ドクン!
リシアの鼓動が大きく跳ねた。ドクンドクンと跳ねる鼓動に合わせるかのように最奥で熱塊が欲を吐き出している。体内を愛しい人に濡らされる悦びにリシアは艶然と微笑んだ。そのとき、リシアの肌を撫でるような嫌な気配がした。
ざわり。
トロンととろけていた黒眼がゆっくりと開く。仰け反っていた背中を起こしたリシアが、夢うつつのような声で「どうして?」とつぶやいた。
「どうして、小鼠がいるの……?」
ここは神官王の寝室、神官王付きの神官ですら立ち入ることが許されていない。唯一許されている侍女マルガはユリティと入れ替わるように部屋を出て行った。それなのに二人以外の気配がしている。
まるで何かを盗み見るように、何かを探るように、息を潜め狙いを定めるように。床を這い回り逃げ回る小鼠のような気配に黒眼がきらりと光った。嫌な匂いに眉をわずかに寄せる。
小鼠ナンテ 消エチャエ。
ユリティの背中越しに小鼠が見えた。神官服を着ているものの神官の気配はしない。まるで婚姻式のときに見たあの男のように嫌な匂いを撒き散らしている。
リシアと視線が合った男がビクッと肩を震わせた。床まで届くカーテンの裏側にいた男は、まさか見つかるとは思っていなかったのだろう。うろたえた表情で逃げるべきか隠れ続けるべきか考えながら、懐に忍ばせた短剣に手を伸ばす。一瞬揺れ動いた男の目がぴたりと動きを止めた。そんな男の目をリシアの黒眼がじっと見つめる。見つめながらゆっくりと赤い唇を動かした。
消 エ チャ エ。
男の体がガクンと大きく揺れた。そのまま床に崩れ落ちる。それを見るリシアの黒眼は情交中とは思えないほど冷たい色をしていた。
「リシア」
ユリティに名を呼ばれ、リシアの顔が一気にとろけた。「なぁに?」と答える声もとろけている。
「花嫁自ら手を下す必要はありませんよ」
「だって、すごく嫌な匂いがしたから、んっ!」
「そうしたことはわたしに任せなさい」
「わか、っ! んっ、あっ、だめっ」
「駄目ではないでしょう?」
「だ、って! すぐ、いっちゃ、からぁっ!」
欲を吐き出してもなお硬いままの熱塊が静かに動きを再開する。すっかり熟したリシアの中は擦られるたびにビクビクと痙攣した。
「待って、まって、いっちゃ、ぅから、まって!」
「何度でもいっていいんですよ?」
「だめっ。もっとしたぃ、からっ。いったら、とんじゃ、ぅ!」
リシアが大きく仰け反った。黒髪をパサパサと揺らしながらユリティの肩に爪を立て、逃げるように細腕を突っ張る。
プシュ、プシュプシュ、プシュッ!
半勃ちだったリシアの花芯から盛大に蜜が噴き出した。透明なそれはユリティの服をたっぷりと濡らし、ドレスの胸元にまで飛び散っている。
「あなたの蜜は何度浴びてもたまりませんね。さぁ、もっと感じて。わたしの愛しいリシア」
「ユ、リティ……!」
花芯から最後の一吹きが飛び散った。体の最奥で熱塊が弾けるのを感じながら、頭も体も真っ白になったリシアは完全に意識を飛ばした。
優秀な侍女マルガは「無理をする必要はございません」と口にした。そして「姫さまがお母上と同じになられた証拠でございます」と告げる。
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そんなリシアの食事は、いまやワインのような色の水とユリティの血だけになっていた。なぜ赤い水を飲まなくてはいけないのかわからないが、ユリティの命令ならと毎日口にしている。しかし水を飲むと体が火照って苦しい。苦しくて苦しくてユリティがほしくなる。
(ユリティがほしい……ユリティに愛してほしい)
この日もリシアは疼く体を持て余しながら愛しい人が帰ってくるのを待っていた。待つ間も思い返すのは夜のことばかりで、体の奥深くまで愛された昨夜のことを反芻するように思い浮かべる。
(昨日もここにたっぷり注いでもらった)
華奢な手が下腹部を優しく撫でる。それだけで奥を抉られる刺激と注がれた心地よさを思い出し花芯がピクリと震えた。毎日の行為で吐き出すものがすっかりなくなったリシアの体だが、ユリティとのことを考えるだけで健気に反応を示す。
(喉が渇いてきた)
体の奥を濡らされるときにユリティの血を口にしているからか、行為を思い出すだけで喉が渇くようになった。一度渇きを感じると、水差しの水を飲んでも新鮮な桃を口にしても癒えることはない。「はやく帰ってきて」とつぶやきながら窓の外を見た。すでに夕日は落ち薄闇が広がっている。もうすぐ帰ってくる、そう思うだけでリシアの白い肌は期待に赤く染まった。
「これはまた随分とよい香りがしていますね」
「ユリティ」
待ち望んでいた声にリシアがパッと振り返った。禁欲的な神官服を着ている姿にもかかわらず体の奥がズクンと疼く。ゆっくりと近づいて来る清廉な姿に、昨夜もたっぷりと交わった交合口がキュウッと窄まった。
「お腹が空いたでしょう?」
ソファに座るリシアの頬をユリティの手がするりと撫でた。それだけで花芯が勃ち上がり粘度の低い蜜をとろりと滲ませる。
「ユリティ、あのね……その、お腹も空いてるけど、それだけじゃなくて」
恥ずかしいわけでもないのにモジモジしてしまう。あまりにも興奮していたリシアは、空腹と情欲のどちらを優先させればいいのかわからなくなっていた。
「そうした初心な様子もいいものですね」
「……ユリティは、こういうのが好き?」
「どんなあなたでも好きですよ、リシア」
「僕も、ユリティが好き」
両手を伸ばしたリシアに応えるようにユリティが身を屈める。一つに結ばれた金髪ごと抱きしめたリシアは、「もう、準備できてるから」と囁いて腕を離した。
ソファの座面に両足を載せたリシアは、ゆっくりと足を開いた。神官王の花嫁らしく慎ましやかなドレスの下に下着はない。すっかり勃ち上がった花芯は期待に震え先端を蜜で濡らしている。さらにその下ではじわりと濡れている交合口が誘うようにふくふくと開閉していた。
その様子に碧眼がスッと細くなった。小さく息を吐くと「これはまた」とつぶやく。
「こういう僕は嫌?」
「とんでもない。ベッドに行く前に組み敷いてしまいそうで困っているだけです」
「別に……ベッドじゃなくてもいいのに」
リシアの返事にユリティが微笑んだ。赤くなったリシアの耳に唇を寄せ「では」と囁き神官服の上着を床に落とす。そうして猛々しくそそり勃つ熱塊を取り出すと、うっとりした眼差しでそれを見るリシアの期待に応えるように交合口にあてがった。
リシアが「あっ」と期待の声を上げた。それを遮るようにユリティが熱塊を一気に突き入れる。
「ああぁぁ……!」
華奢な体がソファの上でビクンと跳ねた。たまらず細腕でユリティを引き寄せた。腕を必死に掴みながら背もたれに後頭部を載せ、もっとと強請るように尻を浮かせる。
「わたしの花嫁はなんて淫乱なのでしょう。それにこれほど香りを撒き散らして」
「だって、ユリティがほし、から……っ。もっと、ユリティ、ほし、からっ」
「好きなだけあげますよ」
ユリティの腰がリシアの尻にグッと密着した。ズブズブと肉壁を擦りながら最奥へと先端が入っていく。
「ぁ、あぁ、奥に、はいる、ぅ……っ」
目の前がチカチカ光り始める。星が瞬くような感覚にリシアは思わず目を瞑っていた。それでもなお頭の中で光が点滅する。
「ユリティの、おっきぃ……ぁん! 奥、当たって、る……っ」
「あなたは奥が好きですね」
「全部、好き! ユリティがしてくれるっ、の、全部、好き、だからっ」
気がつけば自ら腰を揺らしていた。それに合わせるようにユリティが中を突き上げる。そのたびにリシアの花芯からは勢いのない透明な蜜があふれ出し、ドレスやユリティのズボンをしとどに濡らした。それでもリシアの動きは止まらない。もっともっとと貪欲に強請りながら体をすり寄せる。
「ユリティ、もっと、ちょうだい、ねぇ、もっと、」
「ほしいのはこちらだけですか?」
「あんっ!」
「こちら」と言いながら最奥を押し上げられ顎が上がる。震える背中に手を回したユリティは、交わった状態のままリシアを持ち上げた。突然の動きにリシアは「やあっ」と悲鳴を上げた。角度が変わった熱塊の感触に下腹部をブルブルと震わせる。
「やんっ! あっ、あぁっ!」
ユリティが一歩踏み出すたびにリシアの口から嬌声が上がった。それにかまうことなく寝室に入ったユリティはリシアを抱えたままベッドに腰掛ける。そうして向かい合わせに抱き合い「ほしいのは?」と再び問いかけた。
「どっちも……どっちも、ほしぃ……」
リシアがゆっくりとユリティの首筋に顔を近づけた。鼻先を肌に付けクンと鼻を鳴らす。
「いい匂い……おいしそうな、匂い」
快感に震える唇で首筋に吸いついた。肌に歯を当てるだけで喉が鳴る。そのままクッと力を入れると肌に小さな傷を付けたのがわかった。ほんのり感じる血の香りにリシアの背中をゾクッとした快感が走り抜ける。交合口がキュウッと窄まり肉壁が熱塊に吸いつく。
「んっ、んちゅ、ちゅっ」
リシアは夢中で肌に口づけていた。首筋に滲む甘い香りに吸いつき、舌で何度も舐め取る。それでもほしい量には足りず、むずがるように甘噛みをくり返した。
「好きなだけ口にしてかまいませんよ」
ユリティの囁きに一度唇を離す。
「ほんとに……?」
「言ったでしょう? わたしはあなたのものだと。好きなだけ口になさい」
「……うれしい」
微笑んだリシアの唇の端に尖った白いものが見えた。それは普段見えない牙のような歯で、今宵初めて姿を現したものだ。リシアは無意識にそれを舌先で舐めていた。そうして最初からそうしていたように愛しい人の肌に牙を当て、ゆっくりと力を込める。
ツプッ。
尖った部分が肌を貫いた。先ほどよりも濃い香りにリシアの背中がブルッと震える。
喉がカッと熱くなった。同じくらいユリティに貫かれている腹が熱くなる。ジクジクと疼き我慢ができなくなる。リシアは首筋に吸いつきながら腰を揺らめかせた。前後にゆらゆらと、回すようにゆらゆらと動かす。そのたびに結合部からヌチュヌチュと濡れた音がし、熱塊に押し上げられた最奥がたまらなく疼いた。
「おいし……くて、ぁん! きもち、ぃ……っ」
「リシアは上も下も貪欲ですね」
「んっ、ちゅっ、だって、どっちもほし……からっ」
「そんな貪欲なあなたも好きですよ」
「んっ! んぁっ! そこ、きもちいぃ……すごぃ、そこ、いぃ……!」
腰を振りたくるリシアに合わせるようにユリティも腰を突き上げた。リシアの花芯は壊れたように透明な蜜をしたたらせ、寝室に媚薬香のような清々しくも甘い香りが広がる。
嬌声を上げていた唇をひと舐めしたリシアは、再びユリティの肌に吸いついた。甘い肌にチクチクと牙を当てながら、体の奥では精を吸い尽くさんばかりに肉壁が熱塊に絡みつく。
「あ……!」
最奥をグリグリと抉られリシアの下腹が痙攣したかのように震え出した。
「んっ! そこも、きもちいぃ……!」
あられもない嬌声を上げながら背中を仰け反らせる。
「あ、あぁ! ぁ、ユリティ、ど、しよ、きもちいい、いぃ……っ」
「何度でもいきなさい」
「ん、ぅんっ、いく、いっちゃう、ぁんっ、いっちゃ、う――――!」
ドクン!
リシアの鼓動が大きく跳ねた。ドクンドクンと跳ねる鼓動に合わせるかのように最奥で熱塊が欲を吐き出している。体内を愛しい人に濡らされる悦びにリシアは艶然と微笑んだ。そのとき、リシアの肌を撫でるような嫌な気配がした。
ざわり。
トロンととろけていた黒眼がゆっくりと開く。仰け反っていた背中を起こしたリシアが、夢うつつのような声で「どうして?」とつぶやいた。
「どうして、小鼠がいるの……?」
ここは神官王の寝室、神官王付きの神官ですら立ち入ることが許されていない。唯一許されている侍女マルガはユリティと入れ替わるように部屋を出て行った。それなのに二人以外の気配がしている。
まるで何かを盗み見るように、何かを探るように、息を潜め狙いを定めるように。床を這い回り逃げ回る小鼠のような気配に黒眼がきらりと光った。嫌な匂いに眉をわずかに寄せる。
小鼠ナンテ 消エチャエ。
ユリティの背中越しに小鼠が見えた。神官服を着ているものの神官の気配はしない。まるで婚姻式のときに見たあの男のように嫌な匂いを撒き散らしている。
リシアと視線が合った男がビクッと肩を震わせた。床まで届くカーテンの裏側にいた男は、まさか見つかるとは思っていなかったのだろう。うろたえた表情で逃げるべきか隠れ続けるべきか考えながら、懐に忍ばせた短剣に手を伸ばす。一瞬揺れ動いた男の目がぴたりと動きを止めた。そんな男の目をリシアの黒眼がじっと見つめる。見つめながらゆっくりと赤い唇を動かした。
消 エ チャ エ。
男の体がガクンと大きく揺れた。そのまま床に崩れ落ちる。それを見るリシアの黒眼は情交中とは思えないほど冷たい色をしていた。
「リシア」
ユリティに名を呼ばれ、リシアの顔が一気にとろけた。「なぁに?」と答える声もとろけている。
「花嫁自ら手を下す必要はありませんよ」
「だって、すごく嫌な匂いがしたから、んっ!」
「そうしたことはわたしに任せなさい」
「わか、っ! んっ、あっ、だめっ」
「駄目ではないでしょう?」
「だ、って! すぐ、いっちゃ、からぁっ!」
欲を吐き出してもなお硬いままの熱塊が静かに動きを再開する。すっかり熟したリシアの中は擦られるたびにビクビクと痙攣した。
「待って、まって、いっちゃ、ぅから、まって!」
「何度でもいっていいんですよ?」
「だめっ。もっとしたぃ、からっ。いったら、とんじゃ、ぅ!」
リシアが大きく仰け反った。黒髪をパサパサと揺らしながらユリティの肩に爪を立て、逃げるように細腕を突っ張る。
プシュ、プシュプシュ、プシュッ!
半勃ちだったリシアの花芯から盛大に蜜が噴き出した。透明なそれはユリティの服をたっぷりと濡らし、ドレスの胸元にまで飛び散っている。
「あなたの蜜は何度浴びてもたまりませんね。さぁ、もっと感じて。わたしの愛しいリシア」
「ユ、リティ……!」
花芯から最後の一吹きが飛び散った。体の最奥で熱塊が弾けるのを感じながら、頭も体も真っ白になったリシアは完全に意識を飛ばした。
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