6 / 30
来年も、再来年も。~来年の夏も、再来年の夏も会いたい
しおりを挟む
「そろそろ夏も終わりだね」
「終わりって言っても、毎日くっそ暑いけどな」
「あはは。そうだけど、夏休みの終わりが近づくとやっぱり夏が終わるって感じがするじゃん?」
そう言って隣でニカッと笑う顔は、まるで真夏に咲いたひまわりみたいに見えた。
「ねぇ、来年も帰って来るんだよね?」
「あー……来年は大学受験があるから、ちょっと無理かも」
「そっかぁ」
元気よく咲いていたひまわりが、ほんの少ししおれたような表情に変わる。
「あ、でもその次の夏休みは必ず帰って来るから」
「その次って再来年のこと?」
ウンと頷くと「再来年ってどれだけ先なんだか」と呆れたように笑われた。
「それに、再来年も会えるかなんてわからないよ」
「なんでだよ」
毎年こうして夏休みに会っているのに、どうしてそんなことを言うんだろう。そう思ったら口が少しだけ尖ってしまった。
「だってさ、いつかは成仏するんだろうし。もしかしたら、それが来年になるかもしれないわけじゃん?」
慌てて隣を見た。すっかり見慣れた横顔が静かに青空を見上げている。
「……再来年、きゅうりの馬なんかじゃなくて戦闘機の模型、作ってやるよ。夏休み入ったらすぐ用意する」
「あはは、なにそれ」
「帰りは……」
茄子の牛なんて用意してやらない。毎年お供え物の隣に置いてあるけど、こっそり捨ててやる。
「だから、会えるかわからないなんて言うな」
「……うん」
お盆なんて関係なく、毎年夏休みでこっち来た日から帰るギリギリまでこうして会っている。だからこれからも、もちろん再来年だって当然のように会えると思っていた。
青空を見上げる横顔を見ていられなくて、同じように空を見上げた。そうして座っているブロック塀を這うようにそっと指を動かす。すぐそばにあるはずの手に触れることはできなかったけど、ほんの少し冷たいような温かいような感触がしたような気がした。
「終わりって言っても、毎日くっそ暑いけどな」
「あはは。そうだけど、夏休みの終わりが近づくとやっぱり夏が終わるって感じがするじゃん?」
そう言って隣でニカッと笑う顔は、まるで真夏に咲いたひまわりみたいに見えた。
「ねぇ、来年も帰って来るんだよね?」
「あー……来年は大学受験があるから、ちょっと無理かも」
「そっかぁ」
元気よく咲いていたひまわりが、ほんの少ししおれたような表情に変わる。
「あ、でもその次の夏休みは必ず帰って来るから」
「その次って再来年のこと?」
ウンと頷くと「再来年ってどれだけ先なんだか」と呆れたように笑われた。
「それに、再来年も会えるかなんてわからないよ」
「なんでだよ」
毎年こうして夏休みに会っているのに、どうしてそんなことを言うんだろう。そう思ったら口が少しだけ尖ってしまった。
「だってさ、いつかは成仏するんだろうし。もしかしたら、それが来年になるかもしれないわけじゃん?」
慌てて隣を見た。すっかり見慣れた横顔が静かに青空を見上げている。
「……再来年、きゅうりの馬なんかじゃなくて戦闘機の模型、作ってやるよ。夏休み入ったらすぐ用意する」
「あはは、なにそれ」
「帰りは……」
茄子の牛なんて用意してやらない。毎年お供え物の隣に置いてあるけど、こっそり捨ててやる。
「だから、会えるかわからないなんて言うな」
「……うん」
お盆なんて関係なく、毎年夏休みでこっち来た日から帰るギリギリまでこうして会っている。だからこれからも、もちろん再来年だって当然のように会えると思っていた。
青空を見上げる横顔を見ていられなくて、同じように空を見上げた。そうして座っているブロック塀を這うようにそっと指を動かす。すぐそばにあるはずの手に触れることはできなかったけど、ほんの少し冷たいような温かいような感触がしたような気がした。
10
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説


囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる