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それから土曜日までの時間は、僕にとってちょっとした拷問だった。
(だってセックスする日がわかってるとか、ちょっと恥ずかしいっていうかさ)
それに否が応でも期待が高まる。いまみたいに先生と向き合ってご飯を食べているだけでもそわそわしてしまう。
「なに余計なこと考えてるんだ」
「べ、別に何も考えてないし」
慌ててカレーをすくったスプーンを口に入れる。今夜のカレーは我ながら上出来だと思った。ほろほろになった鶏肉もいい具合で、先生も絶対においしいって言ってくれるに違いないと胸を張った。
それなのに、食べている先生の口を見るだけでそわそわしてしまう。スプーンを持つ先生の手が、あらぬ妄想をかき立てて落ち着かなくなった。
「顔、にやけてるぞ」
「え!? うそ、」
「やっぱり余計なこと考えてるじゃないか」
「ち、違うし! 変なことなんて何も考えてないから!」
「なるほど、余計なことじゃなくて変なことだったか。大方、土曜のことで頭がいっぱいなんだろ?」
「……っ」
先生はずるい。いつもこうやって僕が考えていることを当ててしまう。
(だって、明日は金曜日だから余計に気になるっていうか)
やっぱり僕は性欲旺盛なんだろうか。そんなことを考えていたら、先生が「明日だけどな」と口にした。
「先生方に捕まって、会議のあと飲みに行くことになった。遅くなるだろうから先に寝てろ」
さっきまでのそわそわが、あっという間にしょぼんと萎れる。
「起きて待ってる」
「そう言ってソファで寝てたら風邪ひくぞ。夏だからって冷房つけてるんだから油断するな」
「でも、」
先生は土曜日って言ったけど、金曜日の夜からするんじゃないかと密かに期待していた。そう思ったから、いまもずっとそわそわしていたんだ。
だから先生が帰ってくるのを待っていたい。疲れているようなら我慢するけど、そうじゃないなら僕は明日の夜したい。
「土日は俺も休みだ。そんなに焦る必要はないだろ?」
先生の言葉に「本当に土曜日のことだったんだ」と残念に思った。もしかしてと期待していたのに、明日じゃないんだ。
「本当におまえは顔に出やすいな」
「え?」
「おまえが考えてることなんて丸わかりだ。『金曜日の夜にするんだと思ってたのに』って残念がってる」
「そ、そんなこと、ないし」
「隠さなくていい。男子大学生なんて性欲旺盛真っ直中だからな」
「だから、そういうことじゃなくて」
僕は先生とだからセックスしたいんであって、誰とでもしたくなるわけじゃない。大好きな先生だから、もっともっと近づきたいし触りたいんだ。
「俺も楽しみにしてるんだよ」
「……え?」
「ってことでおあいこだな、菜月」
同棲っぽいのを始めてからも滅多に呼ばれない名前を言われて、心臓が飛び出るかと思った。キスされたわけじゃないのにドキドキしすぎて息が苦しくなる。
「ほんと、おまえって顔に出やすいよなぁ。まぁ、そこも可愛いんだが」
「せ、んせいって、意地悪だ」
僕が言えたのはそれだけだった。そんな僕に先生は意地の悪い笑みを浮かべている。せっかく胸を張れるくらい力作のカレーだったのに、味も何もわからなくなったままモグモグと食べ続けた。
ようやく金曜日の夜が来た。先生からは七時前に「飲みに行ってくる。ちゃんとベッドで寝てろよ」というメッセージが届いた。
その後、一人でご飯を食べて片付けて、お風呂にも入った。今夜はしないかもとは思ったけど、念のため先生に教えてもらったとおりお尻の準備をしておく。
(だって、もしかしたら早く帰って来るかもしれないし)
それなら、やっぱり今夜セックスしたい。何なら明日一日セックスでもかまわない。
「って、何考えてんだよ」
熱くなった顔をパタパタと手で扇ぎながら時計を見た。もうすぐ十時になるけど先生からメッセージは来ていない。
先生たちの飲み会ってどのくらいの時間やるものなんだろう。サークルに入っていない僕は、そういった飲み会みたいなものに参加したことがないからわからなかった。
「先生はサークルに入るのも大学生の楽しみの一つだって言うけどさ」
でも、僕は大学の人たちとよりも先生と一緒にいたいんだ。アルバイトはそのうちしたいと思っているけど、できれば夏休みや冬休みのような先生が学校に行っている時間にやりたい。
ほかは先生と過ごす時間に使いたかった。できるだけ先生と一緒の時間を過ごしたい。
「そうだ。あれ着てみようかな」
ベッドに寝転がっていた僕は「えいっ」と勢いよく起き上がってクローゼットを開けた。ゴソゴソと奥のほうから袋を引っ張り出して中身を取り出す。いつか着ようと思って、こっそり隠していたものだ。
「たしかに見た目は可愛いけど……」
広げたのは、フリフリのレースがついたドロワーズと呼ばれるパンツだ。絵本で昔見たカボチャパンツにも見える。
「やっぱり僕が穿いたら変な気もする」
そんなことは買う前からわかっていた。それでも思わず買ってしまったのは、先生が「ドロワーズって可愛いよな」と言ったからだ。そのとき見ていた昔のヨーロッパを描いた映画では、可愛い女の子がドロワーズを穿いていた。ドロワーズという言葉を知らなかった僕は、ネットで調べて結局買ってしまった。
(あのときは、こういうのを穿いたらセックスしてくれるかもって思ったんだよな)
結局穿く勇気が出なくて袋にしまったままだったけど、内心ちょっと興味があった。これを穿いた僕を見て、先生が興奮してくれたら嬉しいなぁなんて思ったりもしている。
「ちょっと穿いてみようかな」
このときの僕は、何日もセックスのことばかり考えていたせいで少し変だったに違いない。だからフリフリのカボチャパンツを穿こうなんて思ってしまったんだ。
パジャマのズボンを脱いでからカボチャパンツを当ててみる。裾は太ももの真ん中くらいでパンツっぽくはない。それに膨らんでいるから、下着を穿いたままでも大丈夫そうだと思った。
「……へぇ、意外と履き心地は悪くないかも」
それに見た感じも可愛い。値段を見たときは「高っ」と思ったけど、これならあの値段も納得できる。
そのままベッドにごろんと横になった僕は、スマホでほかのカボチャパンツを検索したりゲームをしたりした。そうして気がついたら寝落ちしてしまっていた。
(だってセックスする日がわかってるとか、ちょっと恥ずかしいっていうかさ)
それに否が応でも期待が高まる。いまみたいに先生と向き合ってご飯を食べているだけでもそわそわしてしまう。
「なに余計なこと考えてるんだ」
「べ、別に何も考えてないし」
慌ててカレーをすくったスプーンを口に入れる。今夜のカレーは我ながら上出来だと思った。ほろほろになった鶏肉もいい具合で、先生も絶対においしいって言ってくれるに違いないと胸を張った。
それなのに、食べている先生の口を見るだけでそわそわしてしまう。スプーンを持つ先生の手が、あらぬ妄想をかき立てて落ち着かなくなった。
「顔、にやけてるぞ」
「え!? うそ、」
「やっぱり余計なこと考えてるじゃないか」
「ち、違うし! 変なことなんて何も考えてないから!」
「なるほど、余計なことじゃなくて変なことだったか。大方、土曜のことで頭がいっぱいなんだろ?」
「……っ」
先生はずるい。いつもこうやって僕が考えていることを当ててしまう。
(だって、明日は金曜日だから余計に気になるっていうか)
やっぱり僕は性欲旺盛なんだろうか。そんなことを考えていたら、先生が「明日だけどな」と口にした。
「先生方に捕まって、会議のあと飲みに行くことになった。遅くなるだろうから先に寝てろ」
さっきまでのそわそわが、あっという間にしょぼんと萎れる。
「起きて待ってる」
「そう言ってソファで寝てたら風邪ひくぞ。夏だからって冷房つけてるんだから油断するな」
「でも、」
先生は土曜日って言ったけど、金曜日の夜からするんじゃないかと密かに期待していた。そう思ったから、いまもずっとそわそわしていたんだ。
だから先生が帰ってくるのを待っていたい。疲れているようなら我慢するけど、そうじゃないなら僕は明日の夜したい。
「土日は俺も休みだ。そんなに焦る必要はないだろ?」
先生の言葉に「本当に土曜日のことだったんだ」と残念に思った。もしかしてと期待していたのに、明日じゃないんだ。
「本当におまえは顔に出やすいな」
「え?」
「おまえが考えてることなんて丸わかりだ。『金曜日の夜にするんだと思ってたのに』って残念がってる」
「そ、そんなこと、ないし」
「隠さなくていい。男子大学生なんて性欲旺盛真っ直中だからな」
「だから、そういうことじゃなくて」
僕は先生とだからセックスしたいんであって、誰とでもしたくなるわけじゃない。大好きな先生だから、もっともっと近づきたいし触りたいんだ。
「俺も楽しみにしてるんだよ」
「……え?」
「ってことでおあいこだな、菜月」
同棲っぽいのを始めてからも滅多に呼ばれない名前を言われて、心臓が飛び出るかと思った。キスされたわけじゃないのにドキドキしすぎて息が苦しくなる。
「ほんと、おまえって顔に出やすいよなぁ。まぁ、そこも可愛いんだが」
「せ、んせいって、意地悪だ」
僕が言えたのはそれだけだった。そんな僕に先生は意地の悪い笑みを浮かべている。せっかく胸を張れるくらい力作のカレーだったのに、味も何もわからなくなったままモグモグと食べ続けた。
ようやく金曜日の夜が来た。先生からは七時前に「飲みに行ってくる。ちゃんとベッドで寝てろよ」というメッセージが届いた。
その後、一人でご飯を食べて片付けて、お風呂にも入った。今夜はしないかもとは思ったけど、念のため先生に教えてもらったとおりお尻の準備をしておく。
(だって、もしかしたら早く帰って来るかもしれないし)
それなら、やっぱり今夜セックスしたい。何なら明日一日セックスでもかまわない。
「って、何考えてんだよ」
熱くなった顔をパタパタと手で扇ぎながら時計を見た。もうすぐ十時になるけど先生からメッセージは来ていない。
先生たちの飲み会ってどのくらいの時間やるものなんだろう。サークルに入っていない僕は、そういった飲み会みたいなものに参加したことがないからわからなかった。
「先生はサークルに入るのも大学生の楽しみの一つだって言うけどさ」
でも、僕は大学の人たちとよりも先生と一緒にいたいんだ。アルバイトはそのうちしたいと思っているけど、できれば夏休みや冬休みのような先生が学校に行っている時間にやりたい。
ほかは先生と過ごす時間に使いたかった。できるだけ先生と一緒の時間を過ごしたい。
「そうだ。あれ着てみようかな」
ベッドに寝転がっていた僕は「えいっ」と勢いよく起き上がってクローゼットを開けた。ゴソゴソと奥のほうから袋を引っ張り出して中身を取り出す。いつか着ようと思って、こっそり隠していたものだ。
「たしかに見た目は可愛いけど……」
広げたのは、フリフリのレースがついたドロワーズと呼ばれるパンツだ。絵本で昔見たカボチャパンツにも見える。
「やっぱり僕が穿いたら変な気もする」
そんなことは買う前からわかっていた。それでも思わず買ってしまったのは、先生が「ドロワーズって可愛いよな」と言ったからだ。そのとき見ていた昔のヨーロッパを描いた映画では、可愛い女の子がドロワーズを穿いていた。ドロワーズという言葉を知らなかった僕は、ネットで調べて結局買ってしまった。
(あのときは、こういうのを穿いたらセックスしてくれるかもって思ったんだよな)
結局穿く勇気が出なくて袋にしまったままだったけど、内心ちょっと興味があった。これを穿いた僕を見て、先生が興奮してくれたら嬉しいなぁなんて思ったりもしている。
「ちょっと穿いてみようかな」
このときの僕は、何日もセックスのことばかり考えていたせいで少し変だったに違いない。だからフリフリのカボチャパンツを穿こうなんて思ってしまったんだ。
パジャマのズボンを脱いでからカボチャパンツを当ててみる。裾は太ももの真ん中くらいでパンツっぽくはない。それに膨らんでいるから、下着を穿いたままでも大丈夫そうだと思った。
「……へぇ、意外と履き心地は悪くないかも」
それに見た感じも可愛い。値段を見たときは「高っ」と思ったけど、これならあの値段も納得できる。
そのままベッドにごろんと横になった僕は、スマホでほかのカボチャパンツを検索したりゲームをしたりした。そうして気がついたら寝落ちしてしまっていた。
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