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自分はいま発情という状態じゃない。Ωだという自覚がない拓巳もそれはわかっていた。それでも優一がほしくてたまらない。拓巳のほうから手を伸ばした。優一もそれに応えた。
ヌプヌプといやらしい音が聞こえる。ローションを使ったわけでもないのに後孔はしっかりと濡れていて、背後から突き入れられた太く硬い楔をすんなりと受け入れていた。それどころかあふれ出したもので太ももの内側までも濡らし、シーツに淫らなシミを作っている。
「あ……!」
背後から押さえつけるようにグゥッと奥を抉られ、拓巳の背中がクッとしなった。それでも襲いくる快楽を散らすことはできず、顔を傾けてハクハクと忙しなく息をする。拓巳は初めてと同じようにうつ伏せで貫かれていた。しかし楔が穿つのはもっと奥で、かろうじて腰を支えている両足はガクガク震えていまにも崩れ落ちそうになっている。
「発情していなくても、こうして濡れるようになったね。……あぁ、とてもいい香りがする」
うなじをクンと嗅がれ首筋が快感で粟立つ。直接触れられなくても鳥肌が立つほど敏感になった肌は、優一の吐息が触れるだけで快感を拾っていた。
「俺……、なん、で……」
どうしてこんなに感じているのわからず戸惑った。発情しているときの交わりはあまり覚えていないが、それに近いくらい感じているような気がする。ペニスには一度も触れていないのに、先走りか白濁かわからないものをずっと垂れ流しているのも感じていた。
「きみとわたしがつがいだからだ。いや、それだけじゃない。互いに心から求め合っているからだろう」
「んぁっ」
「ここまで早く目覚めるとは予想外だよ。目覚めたばかりとは誰も思わないだろう」
「ぁ……あ……っ、そこ……っ」
「そう、ここがきみの最奥だ。……そして、子を孕む場所だ」
「……!」
優一の言葉を聞いた瞬間、拓巳の腹部がヒクッと震えた。ギチギチに食い締めていた楔をさらにきつく締めつける。
「ふっ。言葉だけで興奮したかい? 快楽に素直なところも、きみの素敵なところだ」
「あぁ……!」
「あとは、いまのようにもっと声を聞かせてくれるとうれしいんだけどね」
グッグッと奥を突かれ高い声が漏れた。優一は声を出せばいいと言うが、拓巳は枕に額を擦りつけるように何度も頭を横に振る。媚びるような声を出すことに抵抗がある拓巳には無理な相談だ。
それに、自分の声で優一が萎えてしまわないだろうかという不安もあった。先輩からずっと「声、出すなよ」と言われていたこともあり、自分の声は気持ち悪いに違いないと思っていたからだ。思えば父親に触られていたときから声を押し殺してきた。自慰のときも、呼吸は荒くなるものの声は出なかった。
ずっとそうだったのに、優一と交わるときはなぜか声が漏れそうになる。聞き慣れない自分の声を耳にするたびに、どうしようもない羞恥心と居たたまれなさに顔がカッと熱くなった。
「恥ずかしそうにしている顔も、たまらなくそそられはするが、ねっ」
「ひ……! ぃあっ」
奥深くをガツンと抉られ、また声が出た。そのまま数回、硬い楔に擦り続けられた拓巳の口から掠れた甘い声があふれ続ける。
「まずは二人でいることを存分に楽しもう。それに、Ωの体に慣れる時間も必要だろう。そうして身も心も準備が整ったとき……」
「ひぅっ」
「ここに子ができる」
「ふぁ……!」
切っ先が触れたのは拓巳自身でさえ知らなかった場所だ。そこを抉られると肌が粟立ち腰が震える。体の中心をゾクンとした激しい感覚が走り抜け腰が抜けそうになった。そもそもそんな深くに触れられたのは初めてで、ゾクンゾクンとした鋭い感覚が何度も体を貫く。
「Ωのここは、女性のそれよりずっと奥深くにある。女性のΩもそうだ。だからαの長大な性器しか届かない。Ωはα以外と交わることもできるが、αとしか子がなせなくなったのはそういったことも関係しているのだろう。もしくは、αとのみ子をなすために進化した結果か」
「ぁふっ。ふ、ふぁ、ぁ……!」
「どちらにしても、きみのここに触れられるのはわたしだけだ。すべての初めてを手にできなかったのは残念だが、Ωとしてのきみの初めては手にすることができた」
「あっ、あぁ……!」
気がつけば必死に掴んでいたいくつもの枕はすべてなくなっていた。力が抜けた上半身は完全に崩れ落ち、頬が擦るのはシーツだ。後孔を突かれるたびに頬や肩がシーツと擦れかすかな痛みを感じるが、力が抜けた腕ではそれを避けることも体を支えることもできない。
「わたしだけのΩ……わたしの拓巳くん」
「ふぁ!」
耳元で囁かれ、つがいの印に吐息が触れただけで高い声が上がった。それを恥ずかしいと思う間もなく優一の唇が首筋の印に触れる。そうしてベロリと舐められ、続けて硬いものが触れ、ツプリと肌を貫く小さな痛みが走った。
「……!」
噛まれた瞬間、拓巳は絶頂に達していた。快楽の涙で滲む視界の先には、だらりと投げ出された自分の腕が見える。膝をついている両足の力も抜けた気がするが、腰が上がったままなのは優一がつかんでいるからだろう。
尻たぶに押しつけられている人肌がかすかに震えている。体の奥ではそれに呼応するかのように欲望が肉壁にぶつかるのを感じた。それに例のコブが膨らんでいるからか、後孔がひどく広がっているのも感じる。
(うれ、しい……)
発情していないのに本気で注がれていることがうれしかった。優一に激しく求められているように感じて心が歓喜に震える。
肉体的な快楽に加え心まで満たされた拓巳の体から、瑞々しい香りがぶわりと広がった。それは自分だけのαを求めるΩ特有の現象で、柔い肌に牙を突き立てる優一の口元がゆるりと緩む。
この日二人は発情とは違う熱に浮かさ、食事も忘れ早朝まで交わり続けた。
翌日の昼過ぎに目覚めた拓巳は、先に起きていた優一に促され少し遅い昼食を食べた。優一に見守られながらゆっくりと、しかししっかりと食べる。それから優一が用意していた服に着替え、エレベーターでフロントのある二階まで下りた。
フロントにたどり着く前に制服を着た中年男性が慌てたように近づいてきた。それを見た拓巳はそっと優一のそばを離れた。
(ほとんどの人には見えていないって言ってたけど、あの人には絶対に見えてたよな)
かすかにだが、昨日「そちらは……」というような言葉が聞こえたのを覚えている。平凡な男がイケメンセレブにお姫様抱っこされてホテルに来るなんて、どんな状況だと驚いたに違いない。もしかしたら顔を覚えられたかもしれない。
(……恥ずかしすぎるだろ)
これ以上目立ちたくはない。顔を見られるのを避けるため、拓巳は先にホテルの外に出ようと自動ドアに近づいた。そうして一歩踏み出したところで視線を感じ、足が止まる。咄嗟に昨日の山手線でのことを思い出したが、そういった不快な感じはしない。しかしジッと見られているような何とも言えないものを感じた。
「……?」
そっと振り返ってみたものの、こちらを見ている人はいない。ドアの外では歩道を歩く何人もの人が見えるが、立ち止まってこちらを見ている人もいなかった。
「どうかしたかい?」
「優一さん」
肩をポンと叩かれ振り返ると、いつもと変わらない優一の姿がある。
「車が届いているようだから、それで帰ろう」
「車……?」
「シナガワに止めたままだった車を、こちらに持ってきてもらったんだよ」
「あ……」
本当なら昨日はシナガワで落ち合う予定だった。だから朝一緒に乗った車もシナガワに置いていたんだろう。申し訳ないことをしたと思い「すみません」と謝ると、「気にしなくていい」と優一が微笑む。その顔に見惚れていた拓巳だったが、首筋にチリッとした視線のようなものを感じてビクッとした。
「……?」
振り返ってみたものの、やはり自分を見ている人はいない。
「拓巳くん?」
「あ、いえ……なんでもないです」
優一が何も感じていないということは、きっと勘違いだ。そういう勘のようなものは、きっと自分よりも優一のほうが優れている。そう思い、隣に立つ優一の顔を見上げた。
優一の表情に変化はない。ということは自分の気のせいなのだろう。そう思いホッとしたところで優一の顔が近づいてくることに気がついた。驚き目を見開いていると、形のよい唇が耳たぶに触れる。
「やはり、明け方までというのはやり過ぎたかな」
「……!」
とんでもない囁きに、みるみるうちに拓巳の顔が真っ赤になった。そんな姿に微笑む優一の手が背中に添えられ、エスコートされるようにホテルを出る。さっきまで感じていた視線や違和感は拓巳の中から綺麗さっぱり消え去っていた。
ヌプヌプといやらしい音が聞こえる。ローションを使ったわけでもないのに後孔はしっかりと濡れていて、背後から突き入れられた太く硬い楔をすんなりと受け入れていた。それどころかあふれ出したもので太ももの内側までも濡らし、シーツに淫らなシミを作っている。
「あ……!」
背後から押さえつけるようにグゥッと奥を抉られ、拓巳の背中がクッとしなった。それでも襲いくる快楽を散らすことはできず、顔を傾けてハクハクと忙しなく息をする。拓巳は初めてと同じようにうつ伏せで貫かれていた。しかし楔が穿つのはもっと奥で、かろうじて腰を支えている両足はガクガク震えていまにも崩れ落ちそうになっている。
「発情していなくても、こうして濡れるようになったね。……あぁ、とてもいい香りがする」
うなじをクンと嗅がれ首筋が快感で粟立つ。直接触れられなくても鳥肌が立つほど敏感になった肌は、優一の吐息が触れるだけで快感を拾っていた。
「俺……、なん、で……」
どうしてこんなに感じているのわからず戸惑った。発情しているときの交わりはあまり覚えていないが、それに近いくらい感じているような気がする。ペニスには一度も触れていないのに、先走りか白濁かわからないものをずっと垂れ流しているのも感じていた。
「きみとわたしがつがいだからだ。いや、それだけじゃない。互いに心から求め合っているからだろう」
「んぁっ」
「ここまで早く目覚めるとは予想外だよ。目覚めたばかりとは誰も思わないだろう」
「ぁ……あ……っ、そこ……っ」
「そう、ここがきみの最奥だ。……そして、子を孕む場所だ」
「……!」
優一の言葉を聞いた瞬間、拓巳の腹部がヒクッと震えた。ギチギチに食い締めていた楔をさらにきつく締めつける。
「ふっ。言葉だけで興奮したかい? 快楽に素直なところも、きみの素敵なところだ」
「あぁ……!」
「あとは、いまのようにもっと声を聞かせてくれるとうれしいんだけどね」
グッグッと奥を突かれ高い声が漏れた。優一は声を出せばいいと言うが、拓巳は枕に額を擦りつけるように何度も頭を横に振る。媚びるような声を出すことに抵抗がある拓巳には無理な相談だ。
それに、自分の声で優一が萎えてしまわないだろうかという不安もあった。先輩からずっと「声、出すなよ」と言われていたこともあり、自分の声は気持ち悪いに違いないと思っていたからだ。思えば父親に触られていたときから声を押し殺してきた。自慰のときも、呼吸は荒くなるものの声は出なかった。
ずっとそうだったのに、優一と交わるときはなぜか声が漏れそうになる。聞き慣れない自分の声を耳にするたびに、どうしようもない羞恥心と居たたまれなさに顔がカッと熱くなった。
「恥ずかしそうにしている顔も、たまらなくそそられはするが、ねっ」
「ひ……! ぃあっ」
奥深くをガツンと抉られ、また声が出た。そのまま数回、硬い楔に擦り続けられた拓巳の口から掠れた甘い声があふれ続ける。
「まずは二人でいることを存分に楽しもう。それに、Ωの体に慣れる時間も必要だろう。そうして身も心も準備が整ったとき……」
「ひぅっ」
「ここに子ができる」
「ふぁ……!」
切っ先が触れたのは拓巳自身でさえ知らなかった場所だ。そこを抉られると肌が粟立ち腰が震える。体の中心をゾクンとした激しい感覚が走り抜け腰が抜けそうになった。そもそもそんな深くに触れられたのは初めてで、ゾクンゾクンとした鋭い感覚が何度も体を貫く。
「Ωのここは、女性のそれよりずっと奥深くにある。女性のΩもそうだ。だからαの長大な性器しか届かない。Ωはα以外と交わることもできるが、αとしか子がなせなくなったのはそういったことも関係しているのだろう。もしくは、αとのみ子をなすために進化した結果か」
「ぁふっ。ふ、ふぁ、ぁ……!」
「どちらにしても、きみのここに触れられるのはわたしだけだ。すべての初めてを手にできなかったのは残念だが、Ωとしてのきみの初めては手にすることができた」
「あっ、あぁ……!」
気がつけば必死に掴んでいたいくつもの枕はすべてなくなっていた。力が抜けた上半身は完全に崩れ落ち、頬が擦るのはシーツだ。後孔を突かれるたびに頬や肩がシーツと擦れかすかな痛みを感じるが、力が抜けた腕ではそれを避けることも体を支えることもできない。
「わたしだけのΩ……わたしの拓巳くん」
「ふぁ!」
耳元で囁かれ、つがいの印に吐息が触れただけで高い声が上がった。それを恥ずかしいと思う間もなく優一の唇が首筋の印に触れる。そうしてベロリと舐められ、続けて硬いものが触れ、ツプリと肌を貫く小さな痛みが走った。
「……!」
噛まれた瞬間、拓巳は絶頂に達していた。快楽の涙で滲む視界の先には、だらりと投げ出された自分の腕が見える。膝をついている両足の力も抜けた気がするが、腰が上がったままなのは優一がつかんでいるからだろう。
尻たぶに押しつけられている人肌がかすかに震えている。体の奥ではそれに呼応するかのように欲望が肉壁にぶつかるのを感じた。それに例のコブが膨らんでいるからか、後孔がひどく広がっているのも感じる。
(うれ、しい……)
発情していないのに本気で注がれていることがうれしかった。優一に激しく求められているように感じて心が歓喜に震える。
肉体的な快楽に加え心まで満たされた拓巳の体から、瑞々しい香りがぶわりと広がった。それは自分だけのαを求めるΩ特有の現象で、柔い肌に牙を突き立てる優一の口元がゆるりと緩む。
この日二人は発情とは違う熱に浮かさ、食事も忘れ早朝まで交わり続けた。
翌日の昼過ぎに目覚めた拓巳は、先に起きていた優一に促され少し遅い昼食を食べた。優一に見守られながらゆっくりと、しかししっかりと食べる。それから優一が用意していた服に着替え、エレベーターでフロントのある二階まで下りた。
フロントにたどり着く前に制服を着た中年男性が慌てたように近づいてきた。それを見た拓巳はそっと優一のそばを離れた。
(ほとんどの人には見えていないって言ってたけど、あの人には絶対に見えてたよな)
かすかにだが、昨日「そちらは……」というような言葉が聞こえたのを覚えている。平凡な男がイケメンセレブにお姫様抱っこされてホテルに来るなんて、どんな状況だと驚いたに違いない。もしかしたら顔を覚えられたかもしれない。
(……恥ずかしすぎるだろ)
これ以上目立ちたくはない。顔を見られるのを避けるため、拓巳は先にホテルの外に出ようと自動ドアに近づいた。そうして一歩踏み出したところで視線を感じ、足が止まる。咄嗟に昨日の山手線でのことを思い出したが、そういった不快な感じはしない。しかしジッと見られているような何とも言えないものを感じた。
「……?」
そっと振り返ってみたものの、こちらを見ている人はいない。ドアの外では歩道を歩く何人もの人が見えるが、立ち止まってこちらを見ている人もいなかった。
「どうかしたかい?」
「優一さん」
肩をポンと叩かれ振り返ると、いつもと変わらない優一の姿がある。
「車が届いているようだから、それで帰ろう」
「車……?」
「シナガワに止めたままだった車を、こちらに持ってきてもらったんだよ」
「あ……」
本当なら昨日はシナガワで落ち合う予定だった。だから朝一緒に乗った車もシナガワに置いていたんだろう。申し訳ないことをしたと思い「すみません」と謝ると、「気にしなくていい」と優一が微笑む。その顔に見惚れていた拓巳だったが、首筋にチリッとした視線のようなものを感じてビクッとした。
「……?」
振り返ってみたものの、やはり自分を見ている人はいない。
「拓巳くん?」
「あ、いえ……なんでもないです」
優一が何も感じていないということは、きっと勘違いだ。そういう勘のようなものは、きっと自分よりも優一のほうが優れている。そう思い、隣に立つ優一の顔を見上げた。
優一の表情に変化はない。ということは自分の気のせいなのだろう。そう思いホッとしたところで優一の顔が近づいてくることに気がついた。驚き目を見開いていると、形のよい唇が耳たぶに触れる。
「やはり、明け方までというのはやり過ぎたかな」
「……!」
とんでもない囁きに、みるみるうちに拓巳の顔が真っ赤になった。そんな姿に微笑む優一の手が背中に添えられ、エスコートされるようにホテルを出る。さっきまで感じていた視線や違和感は拓巳の中から綺麗さっぱり消え去っていた。
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