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16ー側に感じる

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 精霊?



「精霊がどうしたの!?」



「……今、わかるの……私のすぐ側に……あ……」



 フィーナは折れた腕を動かして抱えられていた杖の入った箱を指し示した。



「……出して欲しい……みたい……」



「こ、これを開ければいいの!?」



 まさか、本当に精霊の姿を感じ取っているのだろうか。

 でも、フィーナなら。

 精霊に愛されたフィーナなら、と思って彼女の腕にある箱を開けて杖を取り出す。



 そこにいるのか?

 いるなら、自分たちが愛した人が。

 大きな加護と与えた人が。

 今にも死にそうになってるんだから、助けて欲しい。

 僕を嫌いなら、それでいい。

 でも今だけは頼みを聞いて欲しかった。



「……クレイく、ん」



「フィーナ、精霊はいるの!? 今すぐ助けてもらえたりとか」



 そう言うとフィーナは首をわずかに横に振った。



「……今なら、側にいるから……声も届く、みたいだから……言ってみるね? ……クレイ君を、認めてあげてって……」



「いいよそんなの!! 精霊に声を届けられるなら、フィーナを助けるように言ってよ!!!」



 何を言ってるんだフィーナ。

 なんで、なんでそういう事を言い出してるんだ。

 僕が精霊に認められてる認められてないなんて話は今違う。

 今更そんな事言わないでほしい。



 それに、今ならってなんだよ!

 まるで、まるでフィーナが死んじゃうみたいじゃないか!



「……精霊、様……? え……? うそ……それじゃ……」



 フィーナは僕には見えない誰かとしゃべっているようだった。

 近くに精霊はいる。



 だったら……。

 だったら今すぐ助けてよ!



 僕は加護を持ってないし、認めれられてない人間だけど。

 周りには精霊認めた魔力を持った人たちがたくさんいるんだ。



「なんでせいr──」



 そこで、建物の壁が崩れて人が突っ込んできた。

 道場の先生や武具防具を身につけたおそらく冒険者のような人たちが、身体中に火傷を負いながら崩れた瓦礫の上に倒れている。



 そして目の前には、



「──ギャォォォォオオオオオ!!!」



 一体のドラゴンがいた。



「きゃあああああ!!」



「も、もうおしまいだ!!」



「お父さん!! お母さん!!」



「くっ、大丈夫だ大丈夫だ!」



「何が大丈夫だ!! に、逃げろ逃げろ!!!」



 阿鼻叫喚の叫びが伝染して一気にパニックが広がって行く。



「うわっ!!」



 蹴られた、踏みつけられた。

 誰よりも先に先にと、怪我人達を押しのけて外へ逃れようとする人々。



 そんな様子を嘲笑うように。

 ドラゴンは咆哮を響かせ。

 豪炎を吐き出した。



「ぎゃあああああ!!」



「いやああああああああ!!!」



 消し炭も残らないだろうな、なんて思って僕はフィーナを抱えて目を閉じた。







 ──だが、炎はいっこうに訪れない。
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