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15ー何もできない
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「おい!! 入り口に立ってんじゃねえ!!」
「うっ」
入り口へ向かうと、急に入ってきた人たちに突き飛ばされた。
どうやら怪我を負った人たちをここへ運び込んでいるようだった。
肉の焼けた匂いが立ち込める。
火事で怪我をした人たちなのだろうか。
「ま、街はどうなってるんですか!?」
「ここは安全なんですか!?」
「怪我人優先だ! ちょっと静かにしててくれ!」
怪我人を見て、不安になった人が治療院の人の足元にすがっていた。
治療院の人は困っている。
「もう反対側のこの区画以外、安全な建物は残っていない」
「ええ! じゃ、じゃあもうすぐドラゴンがここに……!!!」
「だから生存者をみんなここに集めて、戦える人が総出でここを守るんだ」
「ほ、本当に大丈夫なんですか!?」
「黙っててくれ! あんたと喋ってる間に大事な命が失われて行くかもしれないんだぞ!」
外の状況をしつこく聞く人がいる。
少しでも安心できるものが、縋れるものが欲しい表情をしていた。
僕は、もしかしたらその中に両親が居るかもしれない。
そう思って並べて寝かされた怪我人たちの元に近寄る。
「──フィ、フィーナ!!」
フィーナの顔があった。
髪と顔が焦げてて一瞬別人かと思ったけど、僕があげたプレゼントを折れ焦げた腕で大事に抱えていたから誰だかわかった。
「あ、ああ……」
まさか……そんな……。
こ、こんな……。
悪い予感は当たっていたんだ。
言いようのない痛みが心を貫く。
そんな中、
「……クレイ……君?」
フィーナが名前を呼んでくれた。
目は閉じられている。
そもそも、手足も折れて焦げて。
喋るどころじゃないはずなのに。
フィーナは側にいるのが僕だと確信した様にか細い声で呟く。
「……ごめんね……せっかく杖もらったのに……私……宮廷、魔術師に……なれないや……」
「今そんなことどうでもいいよ!」
か細い声を出すたびに、残された命を消費している様な気がした。
「喋ると体力使うから、じっとして! すぐに治療院の人が助けてくれるから!」
「…………うん、わかった」
よかった、少しの間があったが素直にいうことを聞いてくれた。
治療の魔術を使える人は少なくて、フィーナの順番が回ってくるまで時間が掛かる。
こういう時、僕には何もできない。無力だ。
「……クレイ君……側にいる?」
「いる、いるよ! ずっと君の隣にいるから安静にして!」
フィーナに声をかける。
そうしないと、遠くへ行ってしまう気がしてならなかった。
「そ、そうだ! フィーナ! 自分で回復魔法は使える!?」
「…………ずっと、使ってる」
「くっ、治療院の方! は、早めにこっちを……ッ!」
できることなら、フィーナのところへ来て欲しい。
じゃないと、遠くに……!
でも、治療院の人は、もっと重症を負った人の治療に当たっている。
その表情は必死そのもので、とてもじゃないけど自分のわがままを言える雰囲気ではなかった。
状況は、みんな同じなんだ。
歯がゆい、僕にも何かができたらいいのに。
「……精霊、様……?」
その時、フィーナが呟いた。
「うっ」
入り口へ向かうと、急に入ってきた人たちに突き飛ばされた。
どうやら怪我を負った人たちをここへ運び込んでいるようだった。
肉の焼けた匂いが立ち込める。
火事で怪我をした人たちなのだろうか。
「ま、街はどうなってるんですか!?」
「ここは安全なんですか!?」
「怪我人優先だ! ちょっと静かにしててくれ!」
怪我人を見て、不安になった人が治療院の人の足元にすがっていた。
治療院の人は困っている。
「もう反対側のこの区画以外、安全な建物は残っていない」
「ええ! じゃ、じゃあもうすぐドラゴンがここに……!!!」
「だから生存者をみんなここに集めて、戦える人が総出でここを守るんだ」
「ほ、本当に大丈夫なんですか!?」
「黙っててくれ! あんたと喋ってる間に大事な命が失われて行くかもしれないんだぞ!」
外の状況をしつこく聞く人がいる。
少しでも安心できるものが、縋れるものが欲しい表情をしていた。
僕は、もしかしたらその中に両親が居るかもしれない。
そう思って並べて寝かされた怪我人たちの元に近寄る。
「──フィ、フィーナ!!」
フィーナの顔があった。
髪と顔が焦げてて一瞬別人かと思ったけど、僕があげたプレゼントを折れ焦げた腕で大事に抱えていたから誰だかわかった。
「あ、ああ……」
まさか……そんな……。
こ、こんな……。
悪い予感は当たっていたんだ。
言いようのない痛みが心を貫く。
そんな中、
「……クレイ……君?」
フィーナが名前を呼んでくれた。
目は閉じられている。
そもそも、手足も折れて焦げて。
喋るどころじゃないはずなのに。
フィーナは側にいるのが僕だと確信した様にか細い声で呟く。
「……ごめんね……せっかく杖もらったのに……私……宮廷、魔術師に……なれないや……」
「今そんなことどうでもいいよ!」
か細い声を出すたびに、残された命を消費している様な気がした。
「喋ると体力使うから、じっとして! すぐに治療院の人が助けてくれるから!」
「…………うん、わかった」
よかった、少しの間があったが素直にいうことを聞いてくれた。
治療の魔術を使える人は少なくて、フィーナの順番が回ってくるまで時間が掛かる。
こういう時、僕には何もできない。無力だ。
「……クレイ君……側にいる?」
「いる、いるよ! ずっと君の隣にいるから安静にして!」
フィーナに声をかける。
そうしないと、遠くへ行ってしまう気がしてならなかった。
「そ、そうだ! フィーナ! 自分で回復魔法は使える!?」
「…………ずっと、使ってる」
「くっ、治療院の方! は、早めにこっちを……ッ!」
できることなら、フィーナのところへ来て欲しい。
じゃないと、遠くに……!
でも、治療院の人は、もっと重症を負った人の治療に当たっている。
その表情は必死そのもので、とてもじゃないけど自分のわがままを言える雰囲気ではなかった。
状況は、みんな同じなんだ。
歯がゆい、僕にも何かができたらいいのに。
「……精霊、様……?」
その時、フィーナが呟いた。
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