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12ー嫌な予感

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「ッッ!?」



 耳を劈くような轟音と衝撃が響き渡った。

 甲高い悲鳴が聞こえる。

 後ろの方からだった。



 とっさに振り返ると、壊れた馬車と砕けた門があった。

 馬車は黒い煙をあげながら燃えている。

 石は黒焦げになって亀裂が入っている。

 そしてその先の空に、翼を持ったモンスターがいた。



「ド、ドラゴンだ!!」



 誰かが叫んだ。



「な、なんでこんなところに!?」



「やばい、モンスターだ! モンスターが出たぞおおおお!!!」



「冒険者ギルドに今すぐ走れ! 戦える人がいないか早く!!」



 平和だった街に、一気に恐怖と混乱が広まって行く。



 空を飛行する巨大なモンスター。

 初めて遭遇したモンスター。



 逃げ惑う人々の中、僕は動けずにいた。

 ……恐怖、恐怖、恐怖。



「──ギャアアアア!!!」



 ドラゴンと目があった。

 その瞬間、口元から何かを吐き出す。



「ぼーっとしてんな!! 小僧!!」



「わっ!!」



 着ていたコートの襟首を引っ張られて、投げられる。

 すると、目の前にドラゴンが吐き出した物が遅れて打つかる。



「あ、熱い……!!」



 コートが少し焦げていた。

 これは、まさか……炎?



「今すぐ安全な場所に避難しろ、クレイ」



「せ、先生……」



 僕を間一髪で助けてくれたのは、僕が通う剣術道場の先生だった。

 先生は鋭い表情でドラゴンを睨みながら、剣を抜く。

 戦うのだろうか、あんな巨大で恐ろしいモンスターと。



「チッ……ドラゴンなんて、久しぶりに見たぜ……」



「あ……う……」



「クレイ、遠くへ離れてろ。あのドラゴンは魔力の塊みたいなもんだから、加護も魔力も一切ないお前は見てるいるだけで気が触れかねん」



「そ、その……馬車が!!」



 嫌な予感が脳裏を過ぎる。



「クレイ!」



 思わず馬車に向かって駆け出そうをする僕を先生が止めた。

 魔力を持ち、剣を修めた人の力には到底かなわない。

 僕はそのまま硬い地面に投げられてしまった。



「落ち着け。お前がいっても死ぬだけだ」



 先生はそう言うと剣を構え直してドラゴンを睨んだ。

 ドラゴンは上空で大きく旋回し、町中に響き渡る咆哮をあげている。

 吐き出した炎であたりが焼き散らかされて、焦げた匂いが辺りを包んでいた。



「確か、あの馬車は集団で都市部を目指してたんだよな……ってことは……」



「フィーナが!! それと街の人たちも!!」



「お前の幼馴染か……わかった。なんとか助け出す。だからお前は安心して隠れていろ」



 蹴り飛ばされるままに、燃える街の中を僕は走った。

 巨大な体躯に、先生が勝てるのか、そもそも街の人が総勢で当たっても勝てるのか。

 魔力を持たないから、人の強さがわからない僕には理解できなかった。

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