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第一章 - 旧友との再会
6 - 恋愛師匠と花嫁師匠
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■国境沿い/アルヴェイの森/無職:ユウ=フォーワード
オルフェの後に続いて森を歩いていると、俺の腹がぐぅと音を立てた。
意識を失っていたマリアナもちょうど目が覚めたので、一度食事をとりながら小休止を挟むことに。
火が焚かれ、パチパチと音を立てる。
オルフェは、アイテムボックスから調理器具を取り出してせっせと作り始めている。
「……すごいこだわりだな」
テーブルとか椅子とか、使われる調理器具から食器類まで。
どこの物かはわからないが、同じメーカーと思われる印がついている。
「ハハ、自慢の道具だよ。食材が少し古いのがいただけないけどね」
「なんだか想像した小休止と違う……」
おしゃれなカフェのテラス席って感じの空間なんだけど。
もっとこう、冒険者のサバイバルごとは干し肉ふやかしてかぶりつくものを想像していた。
「野暮ったいのも嫌いじゃないけど、その時は惚れた男と死に物狂いな時さ」
「……ああ、はい」
言ってる意味がわからないが、とりあえず頷いておく。
ここを歩く中、出会ったモンスターは全てオルフェが処理していたのだが、その強さを見るに死に物狂いの時なんて一生こうないだろうなって思う。
「なんなら紅茶も淹れようか? 知り合いからいいのもらったんだ」
そう言いながらニコニコと紅茶を入れ出す姿を見ると想像がつかない。
モンスターを前にした姿はとんでもなかった。
あれは戦闘ではなく、まさに処理。圧巻である。
っていうか彼女の言葉のチョイス。
なんだかマリアナに似ている気がする。
そんなマリアナは、少し前まで大ケガを負って気を失っていたというのに。
今はなにやら熱心にオルフェの調理風景を見ていた。
「私は家事スキルを持っていませんでしたのでご教授お願いしたいです」
「ん? いいよいいよ。簡単な花嫁修行だね」
「頼もしいです。マスターの健康管理は全て私ができるようになってみせます」
「いやあ、ユウはこんな献身的な美女に好かれて羨ましいね!」
献身的な痴女だと、俺は思っているけどな。
言ったら怒られそうだから言わないけど。
「聞いてくださいオルフェ様。マスターは据え膳も食べない野郎なんですよ?」
「ハハ、大事にされてるって証拠じゃない? とりあえず胃袋から狙っていこうよ?」
「その通りです。これからは師匠と呼ばせてください」
「うーん、私からすれば君たちの関係性が羨ましいし、なんていうか逆に師匠と呼びたいけどね?」
「ならば私は恋愛師匠。そしてオルフェ様は花嫁師匠ということで、ここはひとつ」
「のった! これからはお互いそう呼び合おう」
「ふふふ、私の恋愛修行はきついですよ? あらゆる可能性を網羅し、そして献身的に積極的に伴侶に合わせて行く技術は、生半可な覚悟では到底極めることはできません」
「どんどこいだね。女は恋焦がれる相手に合わせて何にでもなれる生き物さ。っていうかマリアナ、私の花嫁修行もとんでもなく厳しい世界だよ? 男に求めることも高いけど、その分、女が求められるものも巨大なのさ。ついてこれるかな?」
ちなみに。
その様子を見て俺は、なんだこいつら、と思っていた。
特にマリアナ、恋愛師匠ってどういうことだ。
こいつの中にある恋愛感なんてウィンストンが構築したものだったはず。
「いいでしょう。でも私の48の秘儀の方が難しいですよ?」
「48? ハハハ、私の秘儀は二倍以上、108式の心得があるんだよ?」
「108っ!?」
「くっ、対等になるには48の秘儀に追加して60個の体位を考えなければならないですね……」
……おい、48の秘儀ってなんだよ。
どういうことだよウィンストン。
マジであいつぶんなぐりころがしたろか。
「マスター!」
「えっ、いきなりなに?」
「急遽60の秘儀を追加で開発しなくてはならない案件ができました」
「あ、うん……聞いてた。がんばってね」
「一人じゃ無理なので手伝ってください」
「あほたれ!!」
つまり、つまりそういうことか?
あほだな、そんなもんゲームの規制に引っかかってしまうぞ。
っていうか、108個もいらないだろ……。
俺が知ってるのでいえば、せいぜい3個くらいだし。
まだ1個も使用したことがない。
「ええ!? そもそも一人で開発するのが物理的に無理なんです!!」
そんな物騒なやりとりをマリアナとしていると、オルフェが真剣な表情で言った。
「なるほど、二人で協力するとは……私には到底できない手段だね。これはそのうち1000の秘儀みたいなことになってきそうで戦慄したよ。是非とも開発したら伝授してね」
「いや作らないから!」
「いいですよ。恋愛弟子にはリアルタイムでお手本も見せます」
「みせねーよ!」
そもそも、マリアナの今話している内容って、恋愛というよりも結婚してからのことなのでは?
だったらそれを開発するのは花嫁師匠の方になると思うんだけど、そこんところはっきりしてほしい。
「そ、それは刺激的だね」
「おっと、思わぬ弱点を発見してしまいましたね」
何を想像したのだろうか、急に顔を赤くするオルフェ。
本当に、ナニを想像しているんでしょうね?
もっと奥ゆかしくなってほしい、そう思った今日この頃である。
そもそもついさっきまで絶望的な状況だったのに、この温度差よ。
まあ、平和でほのぼのしてるのは嫌いじゃないけどさ……。
オルフェの後に続いて森を歩いていると、俺の腹がぐぅと音を立てた。
意識を失っていたマリアナもちょうど目が覚めたので、一度食事をとりながら小休止を挟むことに。
火が焚かれ、パチパチと音を立てる。
オルフェは、アイテムボックスから調理器具を取り出してせっせと作り始めている。
「……すごいこだわりだな」
テーブルとか椅子とか、使われる調理器具から食器類まで。
どこの物かはわからないが、同じメーカーと思われる印がついている。
「ハハ、自慢の道具だよ。食材が少し古いのがいただけないけどね」
「なんだか想像した小休止と違う……」
おしゃれなカフェのテラス席って感じの空間なんだけど。
もっとこう、冒険者のサバイバルごとは干し肉ふやかしてかぶりつくものを想像していた。
「野暮ったいのも嫌いじゃないけど、その時は惚れた男と死に物狂いな時さ」
「……ああ、はい」
言ってる意味がわからないが、とりあえず頷いておく。
ここを歩く中、出会ったモンスターは全てオルフェが処理していたのだが、その強さを見るに死に物狂いの時なんて一生こうないだろうなって思う。
「なんなら紅茶も淹れようか? 知り合いからいいのもらったんだ」
そう言いながらニコニコと紅茶を入れ出す姿を見ると想像がつかない。
モンスターを前にした姿はとんでもなかった。
あれは戦闘ではなく、まさに処理。圧巻である。
っていうか彼女の言葉のチョイス。
なんだかマリアナに似ている気がする。
そんなマリアナは、少し前まで大ケガを負って気を失っていたというのに。
今はなにやら熱心にオルフェの調理風景を見ていた。
「私は家事スキルを持っていませんでしたのでご教授お願いしたいです」
「ん? いいよいいよ。簡単な花嫁修行だね」
「頼もしいです。マスターの健康管理は全て私ができるようになってみせます」
「いやあ、ユウはこんな献身的な美女に好かれて羨ましいね!」
献身的な痴女だと、俺は思っているけどな。
言ったら怒られそうだから言わないけど。
「聞いてくださいオルフェ様。マスターは据え膳も食べない野郎なんですよ?」
「ハハ、大事にされてるって証拠じゃない? とりあえず胃袋から狙っていこうよ?」
「その通りです。これからは師匠と呼ばせてください」
「うーん、私からすれば君たちの関係性が羨ましいし、なんていうか逆に師匠と呼びたいけどね?」
「ならば私は恋愛師匠。そしてオルフェ様は花嫁師匠ということで、ここはひとつ」
「のった! これからはお互いそう呼び合おう」
「ふふふ、私の恋愛修行はきついですよ? あらゆる可能性を網羅し、そして献身的に積極的に伴侶に合わせて行く技術は、生半可な覚悟では到底極めることはできません」
「どんどこいだね。女は恋焦がれる相手に合わせて何にでもなれる生き物さ。っていうかマリアナ、私の花嫁修行もとんでもなく厳しい世界だよ? 男に求めることも高いけど、その分、女が求められるものも巨大なのさ。ついてこれるかな?」
ちなみに。
その様子を見て俺は、なんだこいつら、と思っていた。
特にマリアナ、恋愛師匠ってどういうことだ。
こいつの中にある恋愛感なんてウィンストンが構築したものだったはず。
「いいでしょう。でも私の48の秘儀の方が難しいですよ?」
「48? ハハハ、私の秘儀は二倍以上、108式の心得があるんだよ?」
「108っ!?」
「くっ、対等になるには48の秘儀に追加して60個の体位を考えなければならないですね……」
……おい、48の秘儀ってなんだよ。
どういうことだよウィンストン。
マジであいつぶんなぐりころがしたろか。
「マスター!」
「えっ、いきなりなに?」
「急遽60の秘儀を追加で開発しなくてはならない案件ができました」
「あ、うん……聞いてた。がんばってね」
「一人じゃ無理なので手伝ってください」
「あほたれ!!」
つまり、つまりそういうことか?
あほだな、そんなもんゲームの規制に引っかかってしまうぞ。
っていうか、108個もいらないだろ……。
俺が知ってるのでいえば、せいぜい3個くらいだし。
まだ1個も使用したことがない。
「ええ!? そもそも一人で開発するのが物理的に無理なんです!!」
そんな物騒なやりとりをマリアナとしていると、オルフェが真剣な表情で言った。
「なるほど、二人で協力するとは……私には到底できない手段だね。これはそのうち1000の秘儀みたいなことになってきそうで戦慄したよ。是非とも開発したら伝授してね」
「いや作らないから!」
「いいですよ。恋愛弟子にはリアルタイムでお手本も見せます」
「みせねーよ!」
そもそも、マリアナの今話している内容って、恋愛というよりも結婚してからのことなのでは?
だったらそれを開発するのは花嫁師匠の方になると思うんだけど、そこんところはっきりしてほしい。
「そ、それは刺激的だね」
「おっと、思わぬ弱点を発見してしまいましたね」
何を想像したのだろうか、急に顔を赤くするオルフェ。
本当に、ナニを想像しているんでしょうね?
もっと奥ゆかしくなってほしい、そう思った今日この頃である。
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