装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

930 縄張り争い・前

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 ワシタカくんに乗ってウィンストを追うと、魔国と深淵樹海の境目あたりでドラゴンがもみ合っていた。

「ギャオオオオオオオオオオオオ!!!」

「ギャオオオオオオオオオオオオ!!!」

 月明かりに照らされる二色のドラゴンはエメラルドとサファイアを連想させるほどに煌めいていた。
 揉み合うドラゴンの上で、褐色に銀髪の少年が、透き通った白い肌を持つ金髪の少年と相対する。

「誰だ、テメェ!!」

「貴様こそ何者だ」

 セリフから察するに、ウィンストたちもさっき追いついたっぽい。

「俺か? 俺は小賢だ!」

「そうか、ならば墓に還れ」

 ウィンストの魔法。
 衝撃が敵対する偽小賢と使役するドラゴンへ直撃。
 深淵樹海の深い森へと超速で落下した。

「今世はもうその名が居ていい場所ではない」

 つ、つえええー。

「あっさり終わったな」

 ワシタカくんに、チビの隣に並んでもらいウィンストに話しかける。

「いや、まだだ」

 しかし、ウィンストの視線は依然として厳しいまま、鋭く下を見据えていた。
 そういえばエリナがいない。
 恐らく道中で敵勢力に引き渡されたか何かだろう。

「トウジ、ポーションをもらえないだろうか」

「たくさんあるから全部持ってっていいぞ」

「ありがとう」

 俺からもらった秘薬を一気に飲み干すと、再びウィンストはサーチを使う。
 宿で行った時とは桁外れの範囲、そして濃さだった。
 心なしか、ウィンスト自身も淡い魔力を見に纏いぼんやりと輝いて見える。

「検知、——チビ、闇夜が邪魔だ」

「ギャオ」

 ウィンストの言葉に答え、チビが口からゴバッと巨大な火球を生み出し周囲が太陽に照らされた様に明るくなった。
 火球の中にはドロドロとしたマグマの様なものが渦巻いている。
 イグニールの火球とはまた違った、地属性の火球なのだろうか。

「南西、南東に大多数。北西にもちらほら……あとは、雑魚だな」

「エリナはどっち?」

「南西」

「つまりはデプリ側ってことね、となると……夢幻楼街と奈落墓標が出張って来たのか」

 ダンジョンコア二つ相手か。
 天海深塔行きを阻止するために総力戦を仕掛けて来た、ってところ。

 敵の持ってる情報を整理すると、俺は弱体化して大精霊持ちのイグニールもいない。
 まあ今のうちに叩いておこうって気になるのも致し方ない。

 だが、もうその情報は古い。
 レベルは戻っていて、装備だって全てが特殊強化済みだ。

 トウテツの手甲が祀ってあった祠は地面ごと削り取ってインベントリに入れてある。
 持って帰ったらさっさとダンジョン内に配置して装備作らないとね。

「エリナを頼むよ、ここは俺がやっとくから」

「任せた。太陽は残しておく。符号は『堕ちろ』だ」

「あいよ」

 それだけ言って、ウィンストはチビと共に南西の方向へと飛び立ってしまった。
 俺は魔国方面から押し寄せる敵の相手をするだけなのだが……。

「ギョアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 一人になってすぐ、北の方角からとんでもない叫び声が響いた。

「なんだなんだなんだ!?」

 深淵樹海にそびえる巨大な木々をへし折りながら、何かが猛烈な勢いで近づいて来て鎌首をもたげた。
 それは巨大なデスワーム、そして頭の上に何か乗っている。

「トウジー! 師匠ー!」

「ん?」

 図体のでかい虎の顔を持った男が手を振っていた。

「アォン? アォーーーーーーーン!!!」

「インサス!」

 深淵樹海の守護者アビスの一人、凶暴のインサスだった。
 懐かしい人物、そして愛弟子の登場にポチが興奮して尻尾を振りまくっている。
 ワシタカくんに高度を下げてもらい、インサスに近寄った。

「懐かしい感じがすると思ったら、トウジと師匠じゃねぇか!」

「アォン!」

「調子はどうかって? へへ、新作料理考案しちまったんでよ? 今度食べてくれよな!」

「ォン!」

「話を割って聞くけど、そのでかいのは……?」

「ああ、これか?」

 巨大なワームを撫でながらインサスは言う。

「アビスイーターっていう新しく作られた守護者の一人だよ」

「新種のイーターなんだ」

「もっとも、みんな最近料理にはまっちまって、基本残飯処理要員なんだけどな!」

「ぎょあぎょあっ!」

 残飯うまいです!と言わんばかりに体をくねらせるアビスイーター。
 名前はパンザンというらしい。
 そのままだった……。

「で、森の端っこが騒がしいけど、なんか色々と起こってるっぽいな?」

「そうだね。多分二方向から別の大迷宮の軍勢が攻めて来てるよ」

「やっぱりそうだったか。範囲かぶっちまって、情報が一部邪魔されてたからなー」

 深淵樹海勢力もダンジョン陣取りの真っ最中だったってことらしい。

「まあ、多分デプリ側が手強いだけで魔国側は雑魚だぜ。ラストの力は俺らには通用しないからな」

「加勢してくれるの?」

「一応うちの縄張りに入って来てるからな! あと、師匠の助太刀なら俺はいつでもどこでもだぜ!」

 それは心強い。
 俺もフルパワーで戦えるけど、もしかしたら魔国の向こう側にあるもう一つの勢力が来る危険性もあった。
 3対3なら、全然余裕で戦えるってもんだ。







=====
深淵樹海勢力
コア グルーリング
横暴 ティラン
自暴 ディスペア
凶暴 インサス
粗暴 ヴィメン
残飯 パンザン←New!


天海神塔編かと思いきや、実はダンジョン大戦だった説
そして毎日更新一月達成で感無量。
配信でみんなが相手してくれるから、モチベが上がってがんばれています。
このまま引き続き気力の続く限り駆け抜けたいね。

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