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本編
928 ボディチェック未遂事件
しおりを挟む「ロガソー氏は、また特別な人種なのではないだろうか……?」
ゴーレムと本気で結婚した男がいる、というパワーワード。
いつも仏頂面のウィンストもこれには呆れ顔だった。
「エリナと出会った頃は、そもそも俺はお前としか敵対してない」
「なるほど」
「だから最初から敵勢力の一人だった、とは流石に考えられない」
その辺は安心しても良い。
もしこれで敵勢力の一人だったのならば、もうお手上げだ。
「あと、見た目人なんだから大丈夫だって、うん」
「そういう問題ではないのだが……?」
「あと、エリナの装備は俺が強化したもの使ってるから安心安全だよ」
エリナ自身のレベルが低いから、そこまで強い装備ではない。
しかし同じレベル帯の中でいえば、基礎能力は半端ない代物だ。
「スキルを持つ者、持たない者の差を知っているだろう、トウジ」
「心配性だな、わかったちょっと待ってて欲しい」
確かに装備で即死は免れるとしても、これから先のことを考えればそうかもしれない。
今日の内にできることは全てやっておくべきだろう。
「スキル持ちの装備がいくつかあったはず」
カナトコする分の衣類を借りにエリナの部屋へと向かいつつ、インベントリを探る。
「当たり前の様にスキル持ちの装備を出せるとは、やはりとんでもないな」
「杖で地面を突くだけで何でもできる方がとんでもないけどな」
格好良すぎるだろう、杖で地面をトンってしただけで風が止むとか。
俺だってやってみたい、足で地面をドンしてドン。
「より上位のスキルになればなるほど、自由度が増し応用が効くようになる」
「へー」
「私の場合は全ての属性スキルが一体となり、魔術というスキルに変わった」
「抽象的だね」
「その通り、大は小を兼ねるように上位になればなるほど抽象的になるものだ」
ちなみに、ウィンストの師匠が使えるものは魔法。
すなわち万物の法則的な立ち位置をどうにかこうにかしてしまうものらしい。
「……閃いたぞ」
装備のスキルだって、ゲームではそう言った掛け合わせなんてなかった。
しかし、似た様なものを揃えたら何かあるんじゃなかろうか。
きっとある。
今までこうした直感は当たって来たじゃないか。
外れたこともあったかもしれないが、当たったことしか記憶してない。
つまり、ある。
「何かまたとんでもないことを考えているようだが? 表情でわかる」
「とんでもないことではないけど、試してみたいことはできたね」
さてさて、それはおいおい準備するとして先にエリナの件だ。
「疑うんなら、ウィンストがボディチェックしなよ? 俺はその間に装備を準備するから」
「何故私が」
「俺はもうバイアスかかってるし、嫁さんいるからね」
イグニールやマイヤーならば許してくれるとは思うが、流石にね。
「余計なお節介はいらない。そもそも私は人としての幸せを掴むことはできないぞ」
「だったら余計にウィンストがチェックしなよ。ゴブリンだから許されるぞ」
「ならば仕方がない、了解した」
そんなわけでエリナの部屋のドアをノックする。
扉の目の前でこんな話をしていたんだ。
何をされるか覚悟はできているだろう。
開けて反論してこなかったということは、完全に待ちの状態。
すなわちウィンストボディチェック待機。
せいぜい親睦を深めてくれ。
「はいるぞー」
ガチャ。
「って、……あれ?」
エリナの部屋はもぬけの空だった。
荷物すらない、誰かが泊まった形跡すらない。
そんな状態。
……既視感があった。
どこかで、こんな感覚に見舞われたことがあった。
「……鍵もかかっていないし、無用心過ぎるな」
「……ウィンスト、そういえばお前って部屋をしばらく空ける時、ちゃんと鍵かけた?」
「当たり前だろう」
なるほど、な。
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