装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

926 ポチ食堂

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「アォン」

 懐かしい話に浸っている内に、高カロリーフルコースの方が誕生してしまった。
 結局俺たちは話だけして、あとはポチとゴレオが全て賄ってくれる。
 ちなみに実食させてから色々考えるとのことで、炊き出し形式をするつもりらしい。

「ンフーーー!! 腹減っだよ親方!!」

「オラモォッ!!」

 話を聞きつけたのか、随分と興奮した半巨人族の面々がソワソワしながら待っている。

「落ち着けお前ら、もうできたって言ってんだからしっかり待ってろ!」

 待ちきれない半巨人族の方々を嗜める親方。

「親方だってソワソワしてるだろー!」

「揺れてんぞー! 地面が」

 地面が、というパワーワード。
 その通り、みんな地味にソワソワを隠し切れておらずソワソワが地鳴りに。

「おいおいおいおい、ポチ早く振る舞えってやばいよこれ」

「アォン」

 もはやソワソワではなく、ゴゴゴゴする面々を見ながらポチはまあ待てと言った。
 今から最後の仕上げに取り掛かるんだから見ていろ、と。

「何をするんだ……?」

「……???」

 ゴレオもその辺については聞いてなかったらしく、メイド姿でオロオロしていた。
 ソワソワゴゴゴゴオロオロ、そして俺はアセアセ。
 うーん、料理一つでこんなカオス空間が出来上がってしまうとは、さすがポチ。
 さすがは、伝説の料理人の一番弟子と言った方がいいだろうか。

「アォン」

 ポチは、【ポチ食堂】と書かれた板を取り出して、そこに自分の手をポンと押し当てた。
 そしてその看板を掲げる。

「わあ……可愛い可愛い肉球スタンプだあ……!」

 そんな声を漏らした俺の周りでも、みんな一様に和んだ表情でポチに目を向けていた。
 小動物の足跡って、何であんなに愛くるしいんだろうね。
 横綱の手形は勇ましく、赤ちゃんや小動物の手形は可愛い。
 もはやその辺って概念的な扱いなのだろうかね……じゃねえよ!

「それが最後の仕上げなのか?」

「ォン」

 どうやら料理はとっくにできており、スタンプの位置をどこにするかで迷っていたらしい。
 本当は自己主張するべきか迷ったんだけど、今後は自分の名も広めていきたい。
 そんな野心を込めて看板に自分の印を付け加えた、とのことらしいですよ皆さん。

 知らんがな。
 いや別に好きにしたらいいと思うけど、今じゃないだろ。

「アォン」

「え? おっさんを越えるためにはやっぱり自分も名乗り出る必要があるって?」

 それならそれでいいけど、そろそろ自分の決意を誇ってる場合じゃないぞ。
 肉球スタンプが少し恥ずかしかったのかすごく尻尾を揺らしてるけど……。

「ポチ、俺とゴレオがそろそろもたなくなるんだ……」

「……」

 ギリギリのところで半巨人族の方々を止めている段階、そろそろ押し潰されてもおかしくはない。

「わあああママー! あの看板持ってるコボルトさんかわいい!」

「可愛いわねえー? ちょっと寄ってみましょうか?」

「コボルトさんが料理作ってるんだってパパー!」

「すごいなー! じゃあパパ奮発して大盛り食べちゃおっかなー?」

 半巨人族の後ろには商店街の飲食店メンツが、そしてその後ろにはファミリーが並んでいる。

「きゃー! 何あのコボルト可愛らしいわねぇっもう!」

「やだん、とってもとっても可愛いわねん!」

「あんたたちっ、あたしたちも流れに混ざるわよっ!」

 ポチの可愛さに引き寄せられて、青髭の目立つゴツいお姉さま方も襲来。
 そもそも商店街の人たちがポチの物珍しさ、そして料理の物珍しさに集まっているわけだ。
 そっちに流れていた人たちが、何やら祭り事かとこっちの空き地に押し寄せている。

「……ごめん、もうもたないよ俺」

 押し寄せて、流れてきて、止まらなくて。

「ポチ食堂開店ですどうぞよろしく」

 と、だけ言い残し、そのまま俺は人の波の下敷きとなった。







=====
その後、ポチの肉球スタンプグッズや肉球スタンプ系のデザインをした料理が流行った。
というのはまた別のお話である。





今日更新短めですいません。
PCの調子が圧倒的に悪いみたいです。
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