装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

923 パインのおっさん……!アンタって人は

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 俺とポチは適当な空き地に移動して料理開発に勤しむこととなった。
 空き地に出された魔導キッチンを前にして、せっせとレシピを書き記すポチ。
 そして使えそうな食材を適当に準備しておく俺を見ながらエリナが一言。

「なんで空き地なんですか?」

「いや、部屋の中臭ったら困るし」

 今回、カロリーのバケモノを作るとして、一つ候補に上がっているものがある。
 スイーツではないバケモノの名はラーメン。
 背脂マシマシ豚骨ラーメンは、黒烏龍茶が必要なほどにガッツリしているのだ。
 豚骨なんか部屋で調理したら別料金とか取られかねない。

「俺とポチたちで色々やっとくからエリナとウィンストは観光でもしてきなよ」

 これはナイスパスでは?

「いや、せっかくだし私も調理を手伝おう」

 そんなことはなかった。
 俺やポチを残して観光に馳せ参じるわけにもいかないらしい。

「半巨人族の知識や知見に詳しい人物がいた方が良いだろう」

「それもそっか」

 ウィンストとエリナをくっつける以前に。
 俺とウィンストは親友だ。

 あまり過度に押し付けがましいことをしても何も良いことはないだろう。

 普通、普通が一番なのさ。
 必死に寄せたり取り繕ったりするよりも、普通であることを見せる。

 自分らしく、偽らない。
 本質を見抜ける様な聡明な人には、それが一番いいんじゃないだろうか。

「なら私も手伝いますよ~」

 そんなこんなで全員で半巨人族の方々を腹いっぱいにしよう計画がスタートした。

「え、あんな小さなコボルトが伝説の料理人の一番弟子!?」

「バカ、伝説の料理人だぞ! できないことを可能にするのが伝説の料理人だぞ!」

「たしかに、できらぁっ! ってコボルトですら弟子にしそうだ……!」

 ……うーん。
 こっちの国にもしっかり伝説の料理人話が伝わってらっしゃる。
 どんな伝説を生み出したのだろうかね、あのおっさんは。

「魔牛モーモーを手懐けて家畜化しちまった……あの伝説の料理人……」

「危険を冒して深淵樹海に潜らなくてもよくなったんだよなあ……」

「そういえば昔から定期的に魔牛肉を買い付けに来てる人がいたっけ」

「最近、牛丼屋ってのが他の国で話題になってから、魔牛肉の輸出量がかなり増えてるらしいぜ?」

「コルトの一大産業になるなんて、伝説の料理人って、まさに伝説だなあ」

 なるほど、見えた。
 ここに来たパインのおっさんは、牛の家畜化を進めていたらしい。

 荒れ狂う魔牛モーモーは、乳も出れば経年とともに肉も旨くなるそうだ。
 最初は乳牛として用い、乳が出なくなったあとは食肉として利用する。
 なかなかに有能な牛である。

 さらにレベルが上がることによって、さらに旨さを増すらしく。
 コルトでは、闘牛ならぬ闘モーが催し物として行われている。
 勝ち上がったモーモーは、白黒マーブルの毛色から徐々に白色が抜けていき黒一色となる。
 そこまで行き着いたモーモーは黒モーと呼ばれ、飛び上がるほどの高値で取引されるのだ。
 ちなみにモーモーは何故かコルトの地でしか繁殖しない。

「うーん、色々とやってるなあ」

 おっさんからしてみれば、新たな食材の開拓。
 さらには自分で店を開く際の輸入ルート開拓。

 たったそれだけのことなのに、いろんな人が結果的に幸せになっている。
 もしこの世界で英雄とは誰かと聞かれたら……。
 それは間違いなくパインのおっさんだ。

「アォォォォォオオ!」

 そんな小話を小耳にしていたポチは、やる気に満ちた表情をしている。
 一番弟子だもんな、ポチ。
 コルトで伝説、作っちゃおうぜ。

「……なんだか牛丼を久々に食べたいものだ」

「ポチに言ったら作ってくれるさ」

「今夜は私がリクエストしても良いのか?」

「いいよ、俺も食べたい気分だし」

「そうか、チビも喜んでいる」

「ギャオッ!」

「ウィンストさんもトウジさんも、食べるの好きですよね」

 エリナがふと呟いた疑問にウィンストが答える。

「おそらく牛丼は、トウジにとっても私にとっても思い出の深い代物だからな」

「そうなんですか! いったいどんな思い出が……っと、聞いちゃってもいいんでしょうか?」

「私は構わないが」

 と、ウィンストは俺に目配せをする。
 話してもいいのだろうか、変に警戒させてしまわないだろうか。
 そんな視線だった。

「いいんじゃない? これから旅が始まるんだし、腹を割って話すのは大事だよ」

 ウィンスト、という人物。
 もしエリナが一生通して好きでい続けるならば、知っておかなきゃいけない部分だ。

「お互いまだよく知らない部分もあるだろうし、今のうちに伝えておこう」

「エリナ、覚悟して聞くんだぞー」

「え? えっ? そ、そんな覚悟のいるお話なんですか? ええっ?」

 どうだろうか、俺にはもうどうだっていい過ぎたこと。
 しかし聞く人が聞けば少し嫌な気持ちにもなるだろうか。
 遠く離れたギリス出身だとは言えども、ウィンストは大きな罪を背負っている。






=====
おっさん「あれ、この牛うめーな、毛が黒いのもっとうめーな」
おっさん「あれ、この牛若い個体だと良い牛乳でんじゃん!」
おっさん「モーモーっていう手のつけられない牛なのか?」
おっさん「おーい、コルト産の干し草くれるなら言うこと聞くってよー!」
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