装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

921 半巨人にとってはカロリーゼロ

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「んごごごごごごご……足りねえ、揚げバターじゃ足りねえよお……!!」

「おい落ち着け! ちょっと待てって!」

「もっと、もっともっどもっどおおおおおおおお!!」

 商店街の少し先で、そんな叫び声と共に半巨人族の人が暴れ始めた。

「うわー! みんな避難しろー!」

「カロリー不足の半巨人が暴れだしたぞー!」

 地面をドスンドスンと踏み鳴らす巨大な男性の影響で商店街がてんやわんや。
 特に小人族っぽい人たちなんかは震災時のように机の下に身を隠していた。
 人の流れに巻き込まれでもしたら、命がいくつあっても足りないからだろう。

「親方! 早く止めにいきな! 揚げバターはもうちょっとかかるからさ!」

「わがっだ! ごらぁっ! 暴れて人様に迷惑かけるんじゃねぇぞ!」

 エリナを転ばせてしまった時とは打って変わったような鬼の表情をして、半巨人の親方はすっ飛んで行った。
 暴れる半巨人族の男を後ろから羽交い締めにすると、その腕っぷしで押さえ込んで持っていた揚げバターを大きな口の中に突っ込んで強制的に食べさせる。

「んごごご! ごご……ご……あ、あれ? 俺は、一体何を……」

「おめぇ、今日ちっと外作業を頑張り過ぎたんだろ?」

「お、親方! うん俺、子供ができるから目一杯稼がないと行けねんだよお!」

「そっか、おめでとさん。でも、ほどほどにしとけよ? それで問題起こすと家族も不幸にしちまうからな?」

「お、俺は……なんてことを……」

 正気に戻った半巨人は、親方と少し言葉を交わした後に頭を抱えて悲しんでいた。
 そしてすぐに土下座するような勢いで周りの人たちに謝罪する。

「すんませんでした! 俺、今日朝から外で現場やってて!」

「良いんだよ。いつもご苦労さん。町が発展するのもあんたたちのおかげだからさ」

「頑張りすぎるなよー! いつもご苦労さん!」

「みんなが快適に暮らせるのは半巨人と小人のおかげだからさー!」

 一時は騒然としてしまった商店街だが、その謝罪と共にみんながフォローを入れ始める。

「何がどうなってるんだ……?」

 あまりにも急な展開についていけないでいると、俺の足元に避難してきた小さい男性。
 小人のおっさんが答えてくれた。

「半巨人特有の発作だよ、発作。まったく騒ぎになると俺たち小人は命の危険があるってのに……」

「発作? あと、足にしがみついたまま喋るのやめてもらって良いですか?」

「おっとごめんよ。小人の勘でにいちゃんは半巨人が襲ってきても平気な気がしてね」

「そうですか」

「発作だけど、最近の半巨人に多いんだ。もっとも、もともと荒くれ者だったから、それが元に戻っちまうってのが正しいんだけどさ」

 もともと荒くれ者だった、か。
 目線を合わせて謝ってくれた親方や、みんなの前で謝罪した姿からは考えられない。
 しかし、さっきの暴れっぷりを見ると何とも……。

「トウジ、色々と考えを巡らせているようだが、もともと荒くれ者だったと言うより、他の者よりも必要な食べ物が多いから、それを理由に各地で略奪を繰り広げていた歴史があるってだけだ」

 凶暴な習性でもあるのかな、と思っているとウィンストが捕捉してくれる。
 今はいろんな食べ物があり、戦争もなく平和な時代。
 食うに困らなくなった半巨人族は、貴重な労働力としてかなり重宝されているそうだ。

 街を囲う大きな壁も頑丈そうな作りの家もきれいに敷かれた道も水路も、力持ちである半巨人が作った。
 細かい部分は小人族が担当しており、街の人から大きく感謝されているらしい。

「元に戻る、というよりも、恐らく働き過ぎたことによる空腹で我を忘れてしまっているのだろう」

「それはまた難儀なもんだ……」

「揚げバターってのがクロイツから流れてきてからさ、いつも以上に半巨人族は働ける様になったんだけど、その代わりに揚げバター効果が切れてカロリーが足りてないと、ああして発作を起こして暴れちまうのが問題になってんだよ」

 ウィンストとの会話に、小人のおっさんも加わる。

「そこの金髪の人も言ってた様に、下手に略奪してきた歴史がある分、半巨人族は認めてもらおうってみんな頑張って、頑張り過ぎて逆に迷惑をかけちまってるのが現状なんだ」

「なるほど……」

「それ以外にも色々と細かい原因はあって、巨人族は俺ら小人族や他の人と違って暮らしていくにも金がかかるから、そう言う意味で長時間働くことのできる揚げバターから離れられないんだ」

「なら強制的に働く時間を抑えてもらうしかないよなあ、みんなが暴れたら危なそうだし」

「そうだけど、街の人は誰もそんなことは言わねえよ。頑張ってる奴、頑張りたい奴が頑張れる場所は必要だろ? 頑張ってるやつに頑張るなって、それこそ酷い仕打ちさ」

「すいません、迂闊でした」

 小人のおっさんの言うことも一理あるので謝っておく。
 確かに、頑張りたい奴が頑張れるのが一番だ。
 努力してる人にそんなに頑張らなくても良いよっていうのは、なんかハラスメントに当たるんだっけ?

「もっと手軽に食べれて揚げバターよりカロリーの高い物があったら解決するんだろうけど、なかなかね……」

 はあ、とため息を吐く小人のおっさんの前に、ポチが胸を張って現れる。

「アォーン!」








=====
戦いの合間には、やっぱりポチ話よ。
アォーン!



この世に存在するやべぇハイカロリーな食材。
トウジの目指す場所は海。
答え見えた。
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