装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

919 魔国へ

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 デプリを東に、そして山脈を越えて魔国に差し掛かった。
 割と敵のお膝元である。
 魔国というのは、西方諸国の言い方であり実際はコルトと呼ぶらしい。

「コルトは、半魔の因子を多く持った者が生まれやすい」

 何故かは詳しくは知られていないが、とウィンストは語る。
 半魔の因子こそ何なのか俺にはわからない。

 掻い摘んで話すと、魔物っぽい要素を持って生まれた人のことを指すそうだ。
 魔族も人も、お互いに子を為すことが可能だからDNAで行くと同じなのだろう。

 しかし見た目が大きく違う者がいたり、そういった部分で常に虐げられてきた。
 人間、基本的には排他的だからね。
 それで争いが絶えず、国家間で戦争が巻き起こった過去もあるのだ。

「クロイツででかい人たちと関わったことあるけど、別に普通だったなあ」

 揚げバターに熱狂し、クロイツでの土木作業に携わっていたトロルみたいな人ら。
 ずんぐりと巨大な図体だけど、彼らも俺らと変わらない普通の人間なんだね。
 むしろ、そのくくりで行くと、俺こそ部外者なんだよなあ……。

「このご時世、コルト人を差別するのはデプリの人間か田舎者だけだろう」

 クロイツ国王アドラーがやってきたコルト人の雇用。
 技術水準でもギリスに追いつき、各国を一歩リードしつつある実態。
 人種差別だなんだ、と言っている場合ではないのだろう。

「……私、結構差別的な目で見てたかもしれません」

 そんな話をしていると、エリナが罰が悪そうに会話に混ざる。

「遠く離れた土地出身ならば、仕方がない。むしろ見方を変えるチャンスでもある」

「ウィンストさん……!」

 人間、違うコミュニティにいる同じ姿の人たちですら警戒するんだ。
 見た目が違えばそんなものだろう。

 だた、相手をしっかりと理解する。
 そっから自分の中で噛み砕いて付き合い方を考えるのが重要だ。

「しかし、他の国と同じように悪い者も多くいる」

 差別意識を無くそうというバイアスは逆に危険になりかねない。
 故に「変わらない」という価値観を意識するのが良いんだ。

「道中はできるだけ私かトウジの側にいる方が良いだろう」

「はい! ウィンストさんの側にいます!」

「ならば念のためチビもエリナと一緒に行動をしてくれ」

「ギャオッ!」

 俺が何か言わなくても、自発的に行動するエリナである。
 ちなみに魔国を経由する理由は、ウィンストの知っている道がそこしかなかったからだ。

 陸の海と呼ばれる場所にアクセスする方法はたくさんある。
 周りを囲う国からならば、どこからでも。
 そこに天海深塔へのアクセスルートを追加すると、大きく絞られてしまうのだった。

 コルトから東に向かうとティノールと呼ばれるまた別の栄えた国にたどり着く。
 陸の海が外海とつながる唯一の海路。

 その海路から昔の賢者、つまりはウィンストの師匠が残した海流を使うのだ。
 魔術的な海流には、他人を跳ね除ける流れが刻まれている。
 そもそもこの依頼はウィンストなしにはたどり着けない、そんな代物だった。

「私は一応観光できて良いですけど、トウジさん時間は大丈夫なんですか?」

「でも流石に魔国上空を飛ぶのはな……」

 魔国には空を飛べる人もいるだろうし、色々と問題になりかねない気がした。
 もっとも、一度見ておくには良い機会だ。
 そんなわけで、少しの期間ではあるが滞在することにしたのである。

 魔国自体が敵ではない。
 魔国にあるダンジョンコアが敵である可能性を孕んでいるだけなのだ。
 もしかち合ってしまうとしたら、それはそれでいい。

 レベルは戻った。
 装備も戻った。
 フルセット装備を使った俺のステータスは、インフレした戦いについていくことが可能である。

「ま、道中楽しんで行こうよ、一応猶予はまだあるからね」







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