装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

本編

９１８ ウィンストの春？

　トウテツと井守衆の面々は、デプリで治安の一番良いイグナイト領に移住してもらうことになった。
　そっちの方が俺が何かとサポートし易く、今度成長する子供の教育にも良いと思ったからである。
　もっとも、関しの目が行き届きやすい部分もあって、さらにはトウテツがいることによる防衛能力。
　いつ誰が俺の邪魔をしようとしても、これで多少は安心できるはずだ。

　ま、トウテツよ。
　せいぜい人との暮らしを楽しんで丸くなってくれることを俺は願っているさ。

「さて、トウジ。私を探していたようだが……？」

　遠足みたいな様子で旅立っていくトウテツらを見送った後、ウィンストが早速本題に入った。
　長かった、ここまで来るのに。

「天海深塔への道案内をして欲しくて、ずっと探してたんだ」

「なるほど、そうか」

「以前、知っているっぽいニュアンスで話してたことがあっただろ？」

「そうだな、私の師匠が恐らく滞在しているはずだ」

　よし、それならば話が早い。
　ダンジョンコアから滞在を許可されていると言うことは、身内のウィンストも同じはずだ。

「ウィンストの師匠と天海深塔のダンジョンコアを紹介して欲しい」

「ふむ、了解した」

「戦いに巻き込むとか、味方を増やすとか、そんな気はさらさらないよ」

　あくまで、深海の情報が得られればそれでよし。
　もともとギルドの無理難題。
　どんな危険があるのか、そしてどんな利益があるのか。
　そこをはっきりさせておくことが一番重要だろう。

「あの人たちは他の者たちよりもさらに引きこもりがちだから、それを最初に告げておくと警戒はされないだろう」

「ありがとう」

「あのぉ……お話中申し訳ないのですが……そこの方がトウジさんの探していた方ですか……？」

「え？　あ、うん」

　俺とウィンストの話にそそっと入ってくるエリナ。
　そういえば、まだ紹介していなかった。

「ウィンスト、彼女はエリナといって俺の担当をしてくれているギルドの受付だよ」

「なるほど承知した。よろしく頼む、エリナ嬢。私はウィンスト」

「ひゃい！　ウィ、ウィンストさんですね！　よろしくお願いしますしゅ！」

　にこやかな表情で握手を求められたエリナは、顔を真っ赤にさせテンパリながら手を握り返した。

「ちょ、ちょっと良いですか！　トウジさん！」

　それから俺の袖を引っ張ると、ウィンストから距離を取る。

「なんだなんだいきなり」

「聞いてないですよ！　あんなイケメンが案内役の人だなんて！」

「ええ……」

「こっちだってそれ相応の準備をしておく必要がありました！」

「ええ……」

　いきなり何を言い出すのやら、こいつ。
　たぶんウィンストはその辺はまったく気にしないタイプだと思われる。

「旅疲れで肌もボロボロですしお風呂も入ってないのに！」

　多少匂いがキツくとも、漏らし癖があったとしても。
　何らかの事情があったのだろうと察してくれて、さらには理解もしてくれる。
　なんなら相談にすら乗ってくれるレベルで、良い奴なのだ。

「……えっと、それでつまりエリナは何が言いたいの？」

「一目惚れしました。仲を取り持ってください」

「あの、一応言っておくけど」

「おっと、あんまりこうやってこそこそ話すのも印象が悪くなりますね。ではあくまでさりげなくですよ！」

　人じゃなくてゴブリンだぞ、と言う前に、エリナはそそくさとウィンストの元へと向かっていった。

「すいません、こんなボロボロの状態でご挨拶となってしまって……！　よろしくお願いします！」

「そうか？　トウジの移動についていくのは、普通の冒険者でも骨が折れるから、よくやっていると思うが」

「辛いですけど、私もいちギルドの職員として、今回の深海調査依頼に同行させていただいてます！」

　あの様子じゃ、ゴブリンだと言っても信じなそうな予感がする。
　ウィンストもエリナも良い奴だ。
　これまでの関わりを通して、築いてきた間柄がある。

　何とかしてやりたい気持ちもあるのだが、恋愛感情とかその辺ってあくまで個人の気持ち。
　その人次第なんだから、こっちから下手に色々と手を貸すのも違う気がする。

　ウィンストは聡い。
　恋愛的な部分がどうかは知らんが、とにかく１を聞いて１０を理解する。
　下手に変なことをするよりも、その心をまっすぐ見せてやることが重要なんじゃないだろうか？

「……ポチ、なんだかまた一つ波乱がありそうだな？」

「アォーン」

　召喚しなおしたポチに話を振ると、できる限り仲良くなれるように力を貸すつもりだって感じの反応をしていた。
　まあ、これから寝食を共にするんだから関係性はある程度深くなるだろう。

　そこからどうなるか、だけど。
　やっぱり人とゴブリンの壁は高く分厚そうだ。

「……！」

　ゴレオはとにかく興奮した様子で、グッグッと拳を握りしめてエリナにエールを送っている。
　そうか、ゴーレムと人間の愛もあるのだから、愛に種族なんて関係ないのか。

　いや、違うだろ！
　あれは特別なケースだ。

　変に納得しかけたけど、ロガソー氏は真性のゴーレムマニアだから成立しているのだ。
　うーん、業が深い。

　俺はいったいどんな視線でこの二人を見ればいいのか。
　こういう時に側にイグニールがいてくれたら、色々とアドバイスをしてくれそうなものなのに。
　はあ、会いたいな、さっさと依頼を終わらせて帰りたいよ。






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明日も更新します。
最近コラボ麻雀でボコボコにされたので、麻雀の練習をしております。
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