装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
上 下
638 / 682
本編

906 強欲は身を滅ぼす

しおりを挟む

 その後、元に戻ったロイ様が呼び出したキング種の面々を用いてここら一帯を制圧。
 彼らが収めるはずだった分の金品も回収できた。

「やっぱり足りないみたいだな」

 手甲が祀られている石造りの祠だが、回収してきた金額を投じても動かなかった。
 話を聞いた限りだと、この祠は恐らく特殊強化を行うためのものなのだが、この様子では成功率100%ではなく、強化失敗時の装備破壊効果を打ち消してくれるものである。

 一応詳細が見れるか触ってみたのだが、力の祠としか書いてなかった。
 結果を見て予測するしかない。

「追加で投資してみるか」

 ケテルは存分にある。
 ぶっちゃけ手甲に興味はなく、この祠自体が欲しいのでさっさと強化を進めることにした。
 強化を全て終えないと取り出せないっぽいから仕方ない。

「むッ」

 俺の後ろからその様子を見ていたキングさんが眉を潜めた。
 何かを感じ取ったらしい。
 ちなみにロイ様のおかげでデフォルトで普通に喋れる状態になっている。
 手間が省けます。

「どうしたんだ、キングさん?」

「祀られている手甲の魔力が脈動し、大きく増えた」

「……なら、成功したみたいだね」

 俺にはそんな雰囲気は感じられなかったけど、見る人が見ればそうなるのか。
 良いね、わかりやすいね。

 特殊強化には、一部装備の破壊確率が存在する。
 全てのUGを消費してからという強化方法の性質上、保険を用意しておかなければその境地まで踏み込めなかった。
 この祠があれば金さえ払えば全部、ぜーんぶその問題が解決してしまう。

「よし、どんどんいくぞ!」

 喉から手が出るほど欲しい。
 手甲は井守衆に返すが、この祠だけは俺が管理するんだ。
 井守衆を強化し雇用して守ってもらうのも手だろう。

「再び魔力が膨れた。次の脈動は、先ほどよりも大きいぞ」

「来てるな、これ」

 キングさんに成功のアナウンスをしてもらいながら、どんどんケテルを投じていく。
 さっき投じた百足衆のお金分よりも成功率が高い。
 やはり悪いことをして稼いだお金より、徳を積んだ俺のお金の方が価値があるんだな。

「成功の流れが来てるし、一気に解放までいこう! ほらほらほらほら!」

「……主よ、強欲は身を滅ぼすぞ」

「キングさんがそれ言う?」

「それもそうか。我が見ている、異変を感じればすぐに知らせよう……そして再び魔力が増えたぞ」

 恐らくもう少し、もう少しで全ての特殊強化が完了するのだ。
 特殊強化を完了させてしまえば、この祠は俺のもの。
 そして全てのスペリオル装備を強化してビシャス以下、あいつらの仲間内を懲らしめる。

 前にボコボコにされたタリアスのアローガンス。
 あいつもついでに装備パワーでボコボコにしてやる。

 俺の弱体化情報とか、イグニールの妊娠情報とか。
 一日中、俺に張り付いてないと流出しないような情報。

 多分あいつの口から伝えられたんだろうな、と予測している。
 立場的には敵でも味方でもなく、面白い方につくと言っていた。

 敵対しなければ良いと思っていたが、俺からすれば利敵行為はすなわち敵である。
 こっちにも何か情報を流していれば、まだ一考の余地もあったけどな。

 そんなことを思いながら、俺は湯水の如くお金をつぎ込んでいく。
 すると、いつしかお金が吸い込まれなくなった。
 置いたらスッとお金が消えてしまっていたのに、うんともすんとも言わなくなる。

「終わりか」

「……主よ、一応構えておいたほうがいい」

「え?」

「これほどまでに膨れ上がった強い魔力は、八大迷宮のコアや邪竜に匹敵する可能性もある」

 要するに、何が起こるかわからない。
 とキングさんは言っているようだった。

 強くて濃い魔力はそれだけ強い魔物を生む。
 さらには強い力を持った人間だってそう言った要因から生まれ出る。
 そう考えると、本当に不思議な存在だよな、この魔力ってやつ。
 魔力を蓄積すると装備も強くなるし。

「わかっ——」

 ——た、と言おうとした時だった。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!



 祠を中心として、周りが急に揺れ始めたのである。
 地面も空気も何もかもが振動しているように感じた。

「こ、これは……!?」

「主よ、我の後ろにいろ」

 スッと俺の前に出てくれるキングさん。
 惚れてまうやろ。

 さて、ここからどうなるのか。
 しっかりと装備が完成されて出てくるのか。
 そのための演出みたいなものなのだろうか。
 だとしたら、いちいち装備を強化する度に地震が発生するのは面倒だ。

 それ以外の展開。
 そもそも祀られている手甲の真実は全て間違いだったとか?

 奉るって、基本的にあんまりよろしくない神様の怒りを沈めるためとかそんなもんだしな?
 封印されていた者が、封印を解かせるためになんらかの伝承としてポジティブなイメージを残した、とか……わりかしありがちな話である。

「魔力が収束し……主、伏せていろ!」

「りょ、了解!」

 キングさんに言われるがままに伏せると、青白く光り始めた祠から青白い光が空へと放出された。
 これは見たことがある。

 飛空船に積んでいた魔力収束砲と同じ。
 極限まで圧縮された魔力は、眼に見えるような青白い光を持つのである。

「明らかに、普通に装備ができましたって演出じゃないなこれ!」

 天を貫く魔力の柱を見ていると、上空で再び大きく光り輝いた。
 頼むぞ、何事もなく装備よ降ってきてくれ。
 できればこれがデフォルトの演出であってくれ。

 しかし、俺のそんな祈りは届かなかった。

「主よ——その体——」

「え?」

 俺に目を向けたキングさんが、驚いた顔をしてシュンッと消えてしまった。
 そして俺の視野もローブの男と戦っていた時のように再び低くなる。

 いや、もっとだ。
 足に力が入らなくなり、立っていられなくなって転んでしまう。

 一体何が起きてるんだ。
 体の時が戻されてしまうエンチャント・ダンジョンコアはローブの男ごと空に……。

 そこで気がついた。
 魔力の柱が伸びる先には、そのダンジョンコアがあったことに。






=====
コミカライズ担当のシオン先生と一緒に配信する際の質問とか募集しています。
ちなみにシオン先生の好きなキャラは我らがパンケーキ師匠でした!
コミカライズ版でキングさんが出た時、皆さんのコメントがすごく盛り上がっていてとても嬉しかったそうです。

いつも読んでいただきありがとうございます!
本当に感謝永遠に
しおりを挟む
感想 9,834

あなたにおすすめの小説

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
ファンタジー
 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~

まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。 よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!! ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。 目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。 なぜか、その子が気になり世話をすることに。 神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。 邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。 PS 2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。 とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。 伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。 2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。        以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、 1章最後は戦闘を長めに書いてみました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。