装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

894 けつに集いし

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 天海深塔を目指す道すがら、俺たちは依然としてデプリとトガルを隔てる山脈の中にいた。
 樹海の真ん中でひっそりと体操座りをしながらペナルティの時間が切れるのを待っていた。

「今の大きさならすぐに移動できるのに、良いんですか?」

 焚き火の前でポチの用意したシチューを食べながら、エリナが呑気にそう話す。

「迂闊に移動したら森の中が大騒ぎになるよ」

 偽物率いるドラゴンの影響で、森に棲む魔物たちも神経質になっているはずだ。
 そんな中、さらにやばい奴が急に現れてドラゴンを倒したわけである。

 いつ、スタンピードが起こってもおかしくないレベルなのだ。
 デプリ側は正直知ったこっちゃないが、今のサルトにはウィンストがいない。
 そんな状況で迂闊にスタンピードを誘発するような行動は避けるべきだった。

「それに、まだここに用事があるからね」

「え、私としてはさっさとこの恐ろしい樹海の中を出たいんですけど……」

「俺だってそうだけど、コレクトがまだここにウィンストがいるって言ってるし」

「クエー」

 結局目的を達成するためには、彼の助力が必要となる。
 味方かも敵かもわからないような状況で八大迷宮の一つを相手にするくらいなら、少し時間をとっても良いからコネクションを得て臨むべきなのだ。

「ちなみに、深海探索の当てってなんですかね?」

「あれ、言ってなかったっけ?」

「肝心のところは聞いてないですよ!」

 もしかしてですけど、とやや興奮しながらエリナは聞く。

「不思議な魔法使いがこの森にいて、その人の力で海の中を自由に動けてしまうとか! そんな感じですか!」

「いや違うよ」

「えー……」

 そんな便利な魔法があるなら、人にとって海は怖いものじゃない。
 一応、一定時間水中で呼吸をしなくても済むアイテムは存在する。
 しかし、効果時間が余程質の良いものでも1時間とかそこらなので、深い場所までいけないそうだ。

 もっとも、俺には水中での窒息ダメージを無効化する装備があるから問題ないけどね。
 みんなでそれを身につけて、海系のサモンモンスたちと一緒に行動すれば良いだろう。

 そう考えるとウィンストを探す必要はないんじゃないかと思えてくるのだが、違う。
 光の届かない深海での明かりとか、準備期間が一切なかったのでその辺がどうにもならなかった。

 濡れるし。

 水圧とか、空の上に比べてやばそうだ……濡れるし。
 なによりポチの美味しい料理を深海の中で食えないのが問題だ。

 俺の日々の活力だぞ?
 それに濡れるし。

 海水って頭皮に影響あるんじゃないのか?
 ないことはないだろ?

 窒息ダメージの心配はないが、頭皮へのダメージは深刻かもしれない。
 だからこそ、俺はウィンストに案内させて海の底に聳えるダンジョンに行く。

 最初から仲の良い状況で会えるのならば、色々と楽だ。
 なんとか取り入って魔物の分布について聞く。
 深海の海図でも作って持っていけば、前人未到の大成果だ。

「……いちいち新しい人間関係とかで余計なストレスもかからんしな……一番ダメージが少ない……」

「……何をぶつぶつ呟いてるんですか? 何のダメージ?」

「頭皮」

「頭皮!? ちょっとよくわかんないんですけど、結局当てとはなんなんですか!」

「ああ、俺が探してる奴が、天海深塔への行き方を恐らく知ってるんだよ」

「あ、そうなんですか天海深塔……って、えっ!?」

「アォッ!」

 エリナが思わず落としたシチューをポチが間一髪でキャッチする。
 ナイスキャッチポチ。

「いくらギルドで情報を探しても見つからなかった八大迷宮の一つに行く方法ですか!?」

「うん。ついでに言えば、そこの主とも多分知り合いだと思われる」

 ウィンストの過去の口ぶりから、師匠と言われる過去の賢者もそこにいると思われる。
 つまり、迷宮への滞在を許される存在ってことは、迷宮の仲間だ。
 その仲間の仲間ということで、きっと俺たちは煙たがられることはないはずである。

「そこで色々と深海について聞いたら、あとはギルドに報告して終わり」

 簡単な作業だ。
 ウィンストが見つからないというアクシデントはあったが、見つかればこっちのもんよ。
 こっちには、生きてれば探し物絶対見つけるマンのコレクトがいる。
 この世の地の果てまで、追いかける覚悟が俺にはあるぞ。

 一部例外もあるが、流石に超獣クラスの奴がこの山脈にいるって噂はない。
 いたらギルドだって全ての依頼を中止にしてでも、対処に回るはずだ。
 俺のギルドの立場は、それなりに戦力になる冒険者って感じだろうしね!

「い、いったいどんな人なんですかね……」

「良い奴だよ」

 今も昔も、良い奴だ。
 だからこそだろうか、俺は彼の師匠である人物に何の危機感も抱いていないのは……。

「とりあえず明日、体が元に戻ったらまた探し始めるから、今のうちに寝といてよ」

「うーん、スケールが大き過ぎてイマイチついていけないですけど……わかりました寝ます」

 半ば現実から目を背けるように、エリナは自分のテントに戻っていった。
 できればコテージを出してあげたいが、今の状態で出すとデカ過ぎてやばいんだよなあ。

「……っていうか俺もゆっくり寝たい……」

「アォン……」

「だよな、仕方ないよな……」

 寝返りでエリナを潰してしまったら元も子もない。
 今宵はゆっくり月でも見ながら過ごそうか——……






「——様! ——ん神様! お目覚めください!」

 声がする。
 やべ、見張りしてようと思ったのに、体操座りしたまま寝てしまっていた。

「いけね、寝てた危ねえ」

 睨めっこしてようと思った月はいなくなり、朝日が登り始めている。
 そんな中で、俺のお尻の方から声がした。

「怪力乱神様! お目覚めください!」

「へ?」

「おお! 乱神様がお目覚めになられたぞ! 皆の者! 頭を下げて平伏すのじゃ!」

「は?」

「怪力乱神様! 万歳! 怪力乱神様! 最高! 怪力乱神様! 最強!」

 ……な、なんだこいつら。
 俺のけつの近くで、忍者のような服に身を包んだ連中がひれ伏していた。
 しかも、全員ポチと同じくらいの背丈である。
 よ、妖精?

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