装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

892 小賢(偽)

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「——待てだ、ソラタロ!」

 今にも俺を捕食しようとしていたドラゴンが止まる。

「飯はもう済んだだろ? これ以上デブったら飛べなくなるぜ」

 そんな声と共に、浅黒い肌に長い銀髪を三つ編みにした少年が空から姿を現した。

「グルゥ」

 少しの風を纏いながら、スッと俺の正面に存在する竜の顎門の隣に立ち頬を撫でる。
 どことなくウィンストに似た雰囲気を感じた。
 しかし、彼とはまったく正反対の性質を持っているようにも思えた。

 ウィンストが色白で金髪だからか?
 いや、色味の問題じゃない。

「お前は……」

「おう、俺の名前はアルスト。ここを縄張りとした小賢だぜ!」

 マ、マジか。
 こいつの口から出た言葉に、辟易とした気持ちになった。

「で、こっちはスカイドラゴンのソラタロだ」

「グルゥッ!」

「チビの時から面倒見てんだ! いやあ、悪かったな。だけど許せ。ここは小賢の縄張りだから、次深入りしたらマジでこいつが食っちまいかねねぇからな? ってことで——」

「——いや、違うだろ」

 アルストが言い終わる前に、つい突っ込んでしまった。
 いや、だってさ?
 俺はこいつが、まぎれもない偽物であることを知っている。
 小賢ってのはウィンストのことだ。

「何言ってんだ? 俺が本物の小賢だぜ?」

「本物に寄せるなら、もう少し努力しろよ」

 ドラゴンを使役しているってのはあってるけど。
 背格好とかもなんとなくウィンストと同じくらいだけど。

 色味の問題じゃないって思ったのは撤回。
 撤回だ、撤回。

「小賢は金髪だし、肌も白い。そんで」

 矢継ぎ早に言葉を続ける。

「人間に対して警告をするし、こうやっていきなり襲いかかってくることはないぞ」

 冒険者ギルドで小賢の話をした時に聞いた話だ。
 過去のウィンストは、踏み入るなという警告のみ行い、それを守れば攻撃はしなかった。

 徹底した人の立ち入り禁止。
 それがゴブリンの一大生息域を築き上げた所以である。

 恨みに取り憑かれる前から、意外なことに彼は認められていた。
 むしろ、スタンピードが起こらない要因にも上がっていたはず。

 せっかく山脈が落ち着きを見せていたってのに……。
 まさかここに来て自分の偽物を名乗る奴の出現。
 そりゃウィンストも動くはずだ。

 チビの頃から見てるってのもニアミスというかなんと言うか。
 雑さが出ている。
 チビの頃からじゃなくて、そのまんまチビなんだなこれが。

「ま、まあいいや……で、いきなりなに? ここから出て行けって?」

 ワシタカくんが本当に辛そうなので、余計な会話を省いておく。
 争うよりも、こいつをやり過ごすことの方が大切だ。
 縄張りから出て行けと言うのならば、その通りにしておこう。

「……いや、テメェは知ってる側っぽいからやっぱ殺すわ」

「は?」

 アルストがそう言った瞬間——ずしゃ。
 ドラゴンの足がワシタカくんの翼の付け根を握りしめた。
 えぐい音が響いて、ワシタカくんが消える。

「いきなりかよ! マジで小賢じゃねえよお前!」

「ふわあああああ!?」

 今まで隠れていたエリナが中に投げ出されて悲鳴を上げた。
 もちろん俺とポチも同じように空中に投げ出される。

「ポチ! 浮遊結晶を持ってエリナのところに!」

「アォン!」

 ポチは懐から取り出したマジックハンドガンを取り出した。

「なるほど」

 俺が投げようと思ったが、それで移動ができるならばよし。
 ついにこのコボルト、立体起動能力すらも得てしまったぞ。

「あとは……俺たちだ! グリフィー!」

「そんなグリフィン一体で俺の相手をするつもりかよ? ははっ、血迷ったか?」

「血迷ってなんかないさ」

 今回、高級巨人の秘薬はキングさんには使わない。
 俺はグリフィーと一緒に小人の秘薬を飲んだ。

「何するつもりが知らないが、先手必勝だぜ!」

「ほわっ!?」

「きゅんきゅん!?」

 ドラゴンの見えない斬撃が俺たちを襲う。
 アルストも一緒に魔法陣を展開して、風の斬撃を強化しているようだった。
 一瞬やばいかもと思ったが、幼体化したことにより狙いが外れてくれて助かった。

「ぐりふぃー!」

「がう」

 なんとか小さなグリフィーの背中に乗って、もう一本。
 小人の秘薬お代わりだ。




「——グルァァアアアアアアアアアアアアア!!!」

「——だっしゃおらあああああああああああ!!!」
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