装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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891 本物?

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「ギュアッ!!!!」

 地上から数百メートルあたりで、着陸地点を探しながら飛行するワシタカくんが吠えた。
 声を聞いたポチが、スッとピストルを懐から出したことで察する。
 恐らく敵襲だ。

「エリナ、筒の奥で毛布にくるまってて欲しい!」

「は、はひ!」

 ワシタカくんの足につけられた筒は、VITをガチガチに強化した鎧にカナトコしたもの。
 用意に貫けるものでは無いと思うのだが、念を入れて防御用の特製毛布に身を包んでもらう。

「ポチッ!」

「アォン!」

 俺はポチを抱っこしながら筒を少し開けて上半身を乗り出した。
 ワシタカくんの羽毛をかき分けて上へと登っていくポチ。
 飛行中は尾羽に隠れて外が見えない。
 だから安全具なしで背中に回るのも仕方ないのだろうが……よくやるよ……。

「お、俺もいくぞー!」

 緊急用のワイヤーがつながったベルトはオッケー。
 これでもし振り落とされたとしても、一安心だ。

「や、やったぞ! 初めて背中に乗れた!」

 羽毛をかき分けながら登っていき、俺は初めてワシタカくんの背中に立った。
 正確に言えば、四つん這い状態で生まれたての小鹿みたいな感覚なんだけど。

「アォン……」

「なんだよ。背が高いから風の抵抗をもろに受けるの俺は!」

 情けないものを見るような目を向けるポチに弁明しておく。
 いやマジで、体を低くしておかないと持ってかれる。
 風に持ってかれるから、これ。

「ギュアッ!」

「うおあっ!?」

 突然、ワシタカくんがぐるっと体をよじる。
 巨体が大きく横回転して、一瞬目下の樹海が頭上に見えた。

「今ぐるんってしたぞ! ぐるんって!」

 羽毛が抜けたら、真っ逆さま。
 股間がヒュンとした。

「アォン!」

 そんなこと言ってる場合じゃ無い、とポチが吠える。
 ずっと警戒していたが、どこから攻撃されたか全くわからなかったそうだ。

 ポチの鼻やワシタカくんの目にも引っかからないとなれば、自ずと下の樹海。
 もしくは、俺たちよりさらに高い位置。

「たぶん上だな、ポチ」

 下から上空数百メートル付近を高速で飛行するワシタカくんを補足できるはずがない。
 巨大な体躯を持つロック鳥相手に攻撃を仕掛けてくる奴なんて、大抵空の敵である。
 そんでもって、上空で俺たちの死角となる位置で一番あり得るのは……。

「……太陽の中だ」

 一瞬だけ直視しないように太陽の方角を見上げる。
 視界の端、眩しい光の中に小さい点のようなものが見えた。

「ビンゴ。ワシタカくん、一旦高高度に戻って上空を取り返そう!」

「ギュァア!」

 上昇しようと大きな翼をはためかせた時、それに感づいた敵が一気に降下し強襲を仕掛けてきた。
 空の戦いは、圧倒的有利ポジションである相手の後ろや上をとったもん勝ち。
 亜竜くらいならぶっこぬいてしまえるワシタカくんのスピードがあれば、真上を取られさえしなきゃ平気だと思った。

「――! 速っ!?」

 再び見えない斬撃が俺たちを襲う。
 ワシタカくんの左足につけてある、俺がさっきまで納まっていた筒の縁が切り落とされた。

「嘘だろ、おい」

 前述通り、相当強化した防具の見た目を写したものなのだが……。
 それがまるで豆腐みたいにいかれた。

「くそっ! これは本格的に」

 不味い、とそう思った時。
 鋭い鉤爪のついた巨大な足が頭上から俺の目の前に迫っていた。

「——ギャォォオオオオオオオ!」

「ギュァッ!?」

 鋭い鉤爪が翼の付け根に食い込み、すぐに赤く染まる。
 ワシタカくんの悲痛な声。

「ワシタカく——うっ」

 心配の声を上げる間もなく、やや細っそりとした竜の顔が俺の目の前にあった。
 長い首を器用に曲げて、悲痛な叫びを聞いて満足そうにした竜は口元からよだれを滴らせながら呻く。

「グルルルルルゥゥ」

 う、動けない。
 蛇に睨まれてしまったカエルのように、体の自由が効かなくなった。

 絶大な信頼を置いていたワシタカくんが、意図もたやすく制圧されてしまったショック?
 いや、それもそうだが、少しだけ違う。

 目の前にいるこいつが、今まで見てきたどの飛竜とも違う存在だからだ。
 前に、氷漬けにされた邪竜を目の前にした時と、同じような感覚。

 長い時代の中で交配を繰り返し、すっかり竜としての血というか。
 そういうものが薄くなってしまったような、小物感が存在しない。

 ひしひしと伝わってくる圧力。
 マジモンの竜じゃねーか。

 俺がアンデッドドラゴンを倒した時のレベルっていくつの時だっけ。
 邪竜と戦った時はいくつの時だっけ。
 一切戦いに参加してなかったのに、無駄な記憶が頭から勝手に溢れ出した。

「アォン!」

「はっ!」

 ポチが俺の脹脛に食らいついていた。
 割と強めに噛みつかれた痛みによって、思考が目の前の存在に引き戻される。

「このっ!」

 咄嗟に剣を構えると、それに反応して竜が大きく顎を広げた。

「……どーすんだよこれ」

 恐らく即死はしないだろうが、その後どうすればいい。
 場所は上空。
 ワシタカくんが制圧されてしまった状況で、何を選択すれば正解なのか。
 1秒くらい迷っている間に、正面に見える巨大な牙が迫る。








「——待てだ、ソラタロ!」
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