装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

890 ポチ強化

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 いなくなってしまったウィンストを探すべく、俺たちはトガルを出発した。
 まったく情報がないため、基本的にはコレクトの力を借りて先に進む。

「クエーッ!」

「ギュアッ!」

 コレクトは、ワシタカくんと細かいやりとりをしながら山脈のはるか上空を旋回していた。
 マイヤーの時みたいな、見つからないというケースではなく。
 幸い、ウィンストやチビは山脈を超えた反対側の樹海にいるとのことだった。

「あの……いつまで空に……?」

 すっかり上空が苦手になってしまったエリナが、顔を真っ青にしながら口をこぼす。

「降りて探さないんですか? 何だかいそうな雰囲気なんですよね? よくわかりませんけど」

「いそうな雰囲気だから、もう少し詳しい状況が掴めるまで空から探してるんだよ」

 鳥は人より目がいいからね。
 意思疎通がしっかり取れて、細かい指示が出せるのならば、人より優れている。

 危険な樹海に降りて闇雲に探すよりも、ある程度位置を絞り出したほうがいい。
 俺のレベルが低くなっている現状、デプリ側の土地に無闇に降りたくはなかった。
 一応敵認定しているダンジョンが存在する国だからね。
 件のダンジョンの位置はまだ遠い方だけど、何があるかわからんのだ。

「あそこだけポッカリ開いてますけど……あれって例の……」

「そうだな」

 エリナが視線を送る方向には、ポッカリと開けた箇所があった。
 あれは過去に勇者とウィンストが一悶着あった場所で、鉱山街となっている。
 勇者が獲得した新たな鉱脈だなんだと騒ぎ立てられ、一時は賑わっていたらしいが……。
 ネクロマンサー事件をきっかけに誰も近寄らなくなり、閑散としているようだった。

「……ウィンスト」

 そんな場所を見ながら思う。
 何故、この地域から彼の気配がするのか。
 そこが心配である。

 ウィンストも、自分の中で折り合いをつけていたはずだ。
 しかし因縁とは、どれだけ距離をおこうとしても関係ない代物。
 かと言って、断ち切ろうとするには多大のない労力を要する。
 そんな厄介なもんだ。

 見通しが甘かったか?
 いや、甘かったんだろうな。

 もう少し気にかけておくべきだったのだろうが、今更である。
 面倒を見るならケツまで。
 全てに決着をつけるのはウィンストの役目。
 だが友人として、可能な限りの助力を行おう。

「杞憂だったらいいんだけどなあ」

「アォン」

 良い予感なんて当たった試しがない。
 だけど悪い予感ってあんまり外れることがない。
 まさに自然の摂理とも言えるぞ、これ。

「クエッ」

「ギュアッ」

 コレクトとワシタカくんに動きがあった。
 ぐるぐると上空を旋回していたワシタカくんが、徐々に高度を下げ始める。
 向かう先は、閑散とした鉱山街。

 あ、早速ですか。
 そうですか。

「ポチ、絶対何かあるから準備だけはしておいて欲しい」

「アォン」

「できることなら、エリナを優先的に守る方向性で頼む」

「アォン!」

 任せて欲しいと頷くポチ。
 そうだ、ポチの武器もそろそろクロスボウから別の物にしておくか。

「ポチ、俺の弱体化に伴って新しく作った武器を進呈する」

「……アォン?」

「今まで弾がもったいなくて作らなかったんだけど」

 と、手渡したのはピストル、ライフル、キャノンの三種類。
 そう、重火器である。

 俺がやっていたゲームでは、もちろん存在していた武器。
 しかし、この世界では使ってる人を見たことがない。
 銃って、なんだかんだ海賊が使ってそうなイメージだった。
 だけども見てきた奴らはみんな剣を携えた荒くれ者。

 武器製作における素材が地味に普通の鉄じゃダメだったり。
 大きさに比べて素材の量も多かったり。
 そもそも弾丸が、木片から適当に大量生産できる矢に比べて無駄にコストがかかる。
 だから作ってこなかったのだ。

 この世界って、ステータスとか武器の攻撃力に依存する部分が大半。
 重火器だけが攻撃力がバカ高いとか、そんなことはなく。
 十分に弓でも通用してしまうとんでもワールドなわけだ。

 故に、めちゃくちゃ強化した弩で十分だった。
 コストもかからんし。
 そっからずるずるとポチには弩で頑張ってもらっていたのだが、今は量産体制が整っている。

 重火器の良さは、取り回し、弾速、飛距離、連射性。
 でもって、弾丸にそれぞれ違った効果を持たせることができる。

 ピストルならば、取り回し、連射性、バラエティに富んだ効果弾丸。
 ライフルならば、一撃の重さや弓矢とは比べものにならない飛距離と貫通性。

 キャノンは言わずもがな。
 どかーんと爆発する榴弾など、特大火力でコストもバカでかい系である。

「アォォォォ……! フンフンフンスッ!」

 新武器に、すごく鼻息を荒くしたポチはすごく嬉しそうだ。
 今までずーっと同じクロスボウを使ってた訳だしね。
 それで近距離、遠距離と頑張ってくれていたわけだ。
 今後は、それぞれの武器の特性に合わせて選んでもらえると良し。

 え? マシンガンとかはないのかって?
 現状、無い。
 俺のやっていたゲームには、ピストル、ライフル、キャノンしかなかった。
 故に、現状その三種類しか作れない。

 あくまで、現状だ。
 魔力を収束させて打ち出す砲塔が飛空船に乗せられていたように。
 この世界の人がこの世界の技術で作り出すことは恐らく可能である。
 そしてそのレシピをいただければ、俺も作れるようになるのだ。

 しかし、魔道具や魔導機器系の類って装備の必要レベルが存在しない。
 これって一体、どういうことなのだろうかね?
 ステータス依存であるこの世界で、明確な線引きが無いものの一つ。

 うーん、原理がわからん。
 いや、そもそもステータスという存在の方がイレギュラーなのだろうか。
 まっ、そんな話はどうでも良いか。

「ポチ、俺のカバンをチョッキタイプにカナトコしておいた」

「アォン」

 その中に、3種類の重火器と各種ダンガンがたくさんストックされている。

「撃ち方と弾の込め方は……って、もうすでにできてらっしゃるね」

 さすがポチだ。
 何も説明せずとも、ピストルに弾を込めて手触りを確かめている。
 ピストルの見た目は、西部劇とかに出てくるタイプの回転式拳銃とそっくりだ。
 装弾数は六発と少ないように思えるが、クイック使って矢を打つより早いはず。

 ……御信用として、エリナにも持たせておくべきか?
 いや、やめておこう。

 弾をこめちゃってると、引き金を引くだけでお手軽に出ちゃう代物だ。
 弓や弩とは勝手が違う。
 こういうもんは、持つべき者が持たされるべきなのだ。

 ちなみに、俺は怖いから持たないぞ。
 撃ってもどうせ当たらんだろうからね!
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