装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

881 お留守番の民と進撃の不潔・2

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「ぷぴーーーーー!!」(待ってよ! 置いてかないでー!)

「コケーッ!」(バーロー! 逃げなきゃ後が怖えんだわ!)

 リビングから廊下へ。
 トウジやイグニール、マイヤーらの個室を左右に駆け抜ける。

「コケッ!」(ピー助! 全部のドアを少しだけ開けるんだ!)

「ぷぴ?」(なんで?)

「コケーコッコッコ!」(どこに逃げ込んだかわからなくすんだよ!)

「ぷぴ」(逃げ込んだら普通、ドア閉めるよ)

「コケ」(それもそうだな)

 それでも一つだけ扉を閉めておけば、そこに誘導されるかもしれない。
 そう考えたピーちゃんは、トウジの部屋だけ閉めたままにすることにした。
 オスローはなんだかトウジのことを少し気にしている様子。
 たとえ扉がブラフだってバレたとしても、入らずにはいられない……かもしれない。

「ぷぴ」(それで、これからどこにいくの?)

「コケッ!」(決まってんだろ、風呂場だよ!)

 地下深くに広がるダンジョン奥には行かず。
 あえて風呂場に行こうと言い出したストロング南蛮。
 なんとなくだが、ピーちゃんには彼の思惑が理解できた。

「……ぷぴ」(浄化しちゃうの?)

「コケー」(そういうことだ)

 この家の風呂、というか水は全てダンジョン内の浄水で賄われている。
 どれだけ長い間風呂に入っていなかったとしても、汚れなんか一発。

「コケ……!」(都合の良いことに奴は全裸。ひとっ風呂浴びせてやろうぜ!)

「ぷーぴ!」(わかった! お風呂は脱がなきゃダメだもんね!)

「コケーッ!」(だからピー助、てめぇも服を脱いじまえ!)

「ぴー……」(え、僕も……?)

「コケーコッコッコ!」(なに恥ずかしがってんだ! この家に来た時は着の身着のままだったじゃねーかよー!)

「ぷー……」(それはそうだけど……なんか服を着て過ごすのが普通になったから……)

「コケーッ!」(るせー! 俺なんか常に全裸みたいなもんなんだよ早くしろー!)

「ぷぴぷぴ!」(羽毛があるじゃん! もー、わかったよ、脱ぐよ……脱げば良いんでしょ……)

「コケ……コッコッコ」(おう……つーか、いつまでオークどもの言葉使ってんだ?)

「ぷぴ!」(こっち見ないで!)

「コケェ……」(鶏相手に何恥ずかしがってんだか……)

 全身にタオルを巻いて登場したピーちゃんに、呆れた表情をするストロング南蛮。
 羽毛がない生き物は、なんと難儀なことか……と彼は悟った。

「コケッ」(で、もう普通に話せるんじゃないのか?)

「ぷぴ」(話せてたら話してるよ。まだ赤ちゃん言葉が抜けてないだけ)

「コケ……」(え、そのプピプピ言ってんの、赤ちゃん言葉だったのか……?)

「ぷん」(うん)

「コケェ……」(まじかよ、ハイオークって不思議だな……)

「ぷぴー」(不思議だね。それで、こっからどうするの?)

 そんな話題から、ピーちゃんはすぐそこまで迫っているオスローに戻す。
 策略が成功し少しの時間を稼ぐことはできた。
 しかし依然として、匂いはすぐそこまで迫ってきているようだった。

「コケ!」(ピー助が片言でも意思疎通できるなら、一緒に体流しっこしようって作戦が使えたのにな!)

 でもまだ赤ちゃん言葉とやらが抜けないのならば仕方がない。
 考えていた第二の作戦を、ストロング南蛮はピーちゃんに伝えた。

「コケ!」(楽しそうに風呂遊びするぞ!)

「ぷぴ……?」(なんで……?)

「コケ」(あのアホならば、釣られて風呂に飛び込んで来るはずだ)

「ぷぴぃ……」(大丈夫かなあ……?)

 なんともおざなり過ぎる作戦に、少しの不安を抱えながらも、ピーちゃんは南蛮と一緒に風呂に入ることにした。

「コケー!」(バーロー! 風呂に浸かる時はタオルを取りやがれ!)

「ぷぴいい!」(えー! やだ! そっちも羽毛つけてるじゃん!)

「コケーコッコッコッ!」(羽毛が脱げるか馬鹿野郎! 鶏が羽毛を脱ぐ時は、食われる時なんだよ!)

 ストロング南蛮は、ピーちゃんの体に巻き付けられていたタオルを啄む。
 そして無理やり剥がそうとバサバサと羽を羽ばたかせた。

「ぷぴ!」(やめてよ! いじわるしないで!)

「コケーコッコッコー!」(あ、こら逃げるな! バレて怒られるのは俺なんだぞ!)

 風呂場でわたわたと走り回る小動物たち。
 綺麗に整頓され、重ねられていた桶や石鹸が辺りに散乱する。

「うふふふ、かくれんぼの次はお風呂で鬼ごっこなんて、楽しい歓迎会じゃないか」

 そんな風呂場の喧騒を聞きつけて、ついにオスローがやってきた。
 マナー的に脱がせたいストロング南蛮。
 なんか恥ずかしくて脱ぎたくないピーちゃん。
 ともに理由があって駆け回っているのだが、オスローには関係ない。
 彼女には、ただ可愛い生き物が追いかけっこしているだけに見えていた。

「コケー! ココココッ!」(きやがった! ピー助がもたもたしてるから!)

「ぴぷぅ!」(僕のせいにしないでよ! そっちが悪いよ!)

「コケー!」(この際どっちが悪いとか関係ねぇ! ピー助! そのタオルを奴の顔に投げろ!)

「ぴぷ!?」(だからなんで! タオルに執着してるの!)

「コケーコッコ!」(目くらましにすんだよ! その間、俺が直接あいつを湯船に落とすから、お前はその隙に逃げろ!)

「ぴっ!?」(そんな危険な!?)

 風呂場でかなり臭気はかき消されているとはいえども、本体はまだ汚い。
 直接攻撃に打って出る、それはすなわち触れること。
 触れてしまえば、嗅覚は死ぬ。
 なんだ変わらないけど、ただそれだけは理解していた。

「コケ」(俺は天下の闘鶏だぜ? 後輩一人守れなかったら、闘鶏の名が廃るってもんだ)

 ストロング南蛮は、赤茶色の翼を大きく広げると、オスローの正面へと走っていく。

「コケーッ!」(あとで、俺の羽を綺麗に洗ってくれよ! ピー助! そら、今だ!)

「ぷぴーっ!」(南蛮くーん!)

 なかなかに心打たれる言葉だったのだが、それでもピーちゃんはタオルを投げなかった。

「コケーッ!」(ピー助てめー!)

「ぷぴーっ!」(ごめんなさいやっぱりむり!)

「さあお姉さんと一緒に鬼ごっ──」

 ツルッ。

 脅威が差し迫るその時である、桶と一緒に散らばっていた石鹸。
 小動物しか見えていなかったオスローは、気付くことなく足を滑らせた。

 ゴッ。

 すごい音が風呂場に響いて、オスローは仰向けに死んだカエルみたいになった。
 天は小動物らに味方したかに思えたが、危機はまだ過ぎ去っていない。

「コケーッ!」(こ、こっちに来るぞー!)

「ぷぴいい!」(わあああああ!)

 気を失ったオスローの勢いは止まらず、ツルツルと滑って二人に襲い掛かった。
 近くにいた南蛮は容赦無く轢かれ、すぐにピーちゃんも巻き込まれる。
 ありえないくらい滑る石鹸によって、風呂場の壁にバウンドした3人。
 不幸なことに全員頭を打ち意識を失ってしまい、そのまま湯船に浮かぶこととなった。

「……騒がしいなと思ってきて見れば、なんだこりゃ……」

「……どういうことでしょうか……」

 ぷかぷか浮かんだ3人を見つめる、パインと骨。

「……ああっ! 私の骨洗い用のスベスベ極み石鹸がすり減ってる!」

「え、あんた体洗う必要あるのか……?」

「あの石鹸は私のデリケートゾーン用ですぞ~! 高かったんですぞ~!」

 もろだし、というかそのままの骨盤を見せ付けながらそう言う骨に、パインは少し引く。

「まじかよ、ずっとあれで髭剃ってたんだけど……」

「破廉恥ですぞ! それはもうク……いや、新しいプレイと言っても過言ではないですぞ!」

「……ど、どうでもいいけど、とりあえずあいつらのこと頼むよ。俺、飯作って来るから」

「了解ですぞ~、オスロー氏は意外と薄毛なんですな~!」

「言わんでいい言わんでいい。まったく、トウジがいなくなるとすぐこれだ……」







=====
長らくお待たせしてしまった!
ちゃっちゃと話を先に進めますぞ~!オチが弱くてすいませんですぞ~!
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