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本編
868 魂の■■・絶望と希望
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マイヤーが俺を刺した、この事実はおそらく操られているからだ。
「バインドではなく、誘惑なんですねえ」
混乱する俺を見ながら、ぽつりと呟くビシャス。
思った通り。
目は虚ろ、刺した後は力が抜けたようにだらりと俺にもたれかかる。
「く、は……ビシャス……ッ」
マイヤーの体をなんとか支えたものの、俺も痛みを堪えきれずに膝をついた。
「なんだ、このナイフ……?」
ガチガチに固めた俺の防御を貫通し、HPに直接ダメージを与えるナイフ。
レベル100にも満たないマイヤーが握って、できる芸当ではないのだ。
「遥か大昔に作られた秘蔵のものですよ。名は、永遠に続く痛み」
「永遠……だからといって、こんな」
「圧倒的なレベル差、装備差、その状況でダメージを受けるのかってことですよね?」
答えは簡単です、とビシャスは続ける。
「その差に応じた割合ダメージを継続的に与える代物なんですから」
「……ぐ、ふ」
「前の勇者さんがおっしゃってましたねー、レガシー等級に匹敵する武器だって」
レガシー等級に匹敵する武器。
前の勇者、なぜそんな単語を知っていると言うのだろうか。
「フフフ、私に鼻くそほじってろだとか言ったり……やっぱり似てますね」
「何が、だ」
「ま、これを今話すのはやめておきましょう。知る権利は、勝ち取らなければいけないものですから」
「まるでまだ勝ち筋が残ってるみたいに言うのは、よくないですよ。ビシャスさん」
ビシャスの前にソルーナが出る。
「もう彼はここで終わりなんですから……もう希望を見せたところでその後の絶望は少ないでしょう」
「ぐ、」
膝をついて立っていることもできなくなった。
マイヤーを抱きしめたまま、今度は俺がソルーナを見上げる立場になる。
「どうですか? 大切なものに刺される痛みは、苦しいですか?」
「……言ってろ」
「そうですか。すぐにその減らず口に聞けなくして差し上げましょう」
掲げたソルーナの手に、一つの丸い球体が浮かび上がる。
とてつもない力を感じ、すぐにそれがメイヤの魂だと理解できた。
「やめ、ろ……やめて、くれ……」
これから奴がその魂をどうするのか。
わかるからこそ。
身体中に響く痛みの中で俺はマイヤーを抱きしめた。
「退いてくださいよ、器に魂が入れられないじゃないですか」
「クッフ、演技派ですねソルーナさんも! クフフフ!」
響くビシャスの笑い声。
「わざわざ近づかなくてもできるのに! クッフゥ!」
「雑草と一緒ですよ。何気なしに踏み潰しても、再びそこにしつこく生えてくるものです」
だから、とソルーナはかがんで俺の前に顔を近づけて言った。
「根こそぎ引っこ抜いて、念入りに踏み固めておきませんと。種が芽吹く余地も与えないくらいに」
「ぐ、く……そ……」
割合ダメージは、俺の装備の回復力を少し上回る状態で継続する。
召喚しているキングさんの無敵効果があったとしてもその状態だ。
ダメージからの無敵時間。
そのわずかな時間ではHPの回復が追いつかない。
か、回復だ。
少しづつ削れて行く状態では、HP1残しの効果も使えない。
「おっと、それですね。何度も何度も回復して、目障りです」
インベントリから出した回復の秘薬。
目ざとく見ていたソルーナによって、遠くに蹴り飛ばされてしまった。
くそ、この状況では回復すら難しい。
「ほらほらトウジさん? この魂を器に移せば、あとは私が直接取り込んでおしまいですよ?」
「やめろ……やめろ! やめろおおおおお!」
「アハハハハハハハ! ほら邪魔です、退いてくださいよ!」
「あぐっ」
叫ぶ俺を、笑いながら蹴り飛ばすソルーナ。
「愉快ですね! 実に愉快です!」
「マ、マイヤー……頼む……」
せっかくまた会えたのに、ちゃんと決めたのに。
言おうと思ったことすら、満足に言えなかった。
「今までの奮闘も、全部虚しく、今この瞬間を以って──」
「う、ぐ」
ソルーナの足元で横たわるマイヤーに、手を伸ばす。
遠い、遠い、遠い。
たった数メートルの距離が、どこまでも遠く感じる。
「いやだ」
ごめん、俺がちゃんと決めなかったのが悪かった。
離れ離れになるべきじゃなかった。
もっと、もっともっと俺がしっかりしてたら……。
「──終わりにしましょう」
ソルーナは、手にあるメイヤの魂をマイヤーに近づけた。
こんな結果、認めたくない。
動け、動けと俺の頭は命令しているのに、体が動かなかった。
あざ笑う声を聞けば聞くほど、どんどん硬くなっていく。
“──トウジぃ”
声が聞こえた。
俺のよく知る、マイヤーの声が聞こえた気がした。
「ああぁぁ……!!」
マイヤー。
マイヤー、マイヤー!!
“──トウジ”
次に、メイヤの声も聞こえる。
絶望の淵に立たされている俺の心が、最後の最後に求めた。
聞きたかった声が、幻聴として現れているのだろうか。
でも、ごめん、俺……。
どうしても、体が動かないんだ……。
踏ん張ろうと気合を入れれば入れるほど。
目から涙が溢れて、それと一緒に抜けて行く感覚だった。
“──諦めないで!”
「なに!?」
ソルーナの驚いた声が聞こえる。
奴の方を向くと、マイヤーの体に移そうとしていた魂が拮抗していた。
「何故拒絶する、元は同じ身体だろ! 大人しく、言うことを聞かないか!」
険しい表情で力を込めるソルーナに、メイヤの魂は抗う。
そして再び、声が聞こえる。
“彼女も私も、まだ諦めてない”
「え、幻聴じゃ……」
“決して違う。彼女も今、自分の中で踏ん張っているところ”
魂の声は、俺にだけしか聞こえていないようだった。
ソルーナは声を気にもとめず、マイヤーの体に無理やり押し込もうとしている。
“手を伸ばして。繋いで。彼女の名前を呼んであげて”
「う、うああああああああああああああ!!」
声をあげて手を伸ばす。
体を這わせる。
諦めていた俺の心に、彼女が希望をくれた。
一人じゃ……ない!
戦っているのは、俺一人じゃない。
「マイヤー!! マイヤアアアアアアアアアアアア!!」
その事実が力をくれた。
「まだ諦めてなかったんですか! 良い加減にしてください!」
ビシャスは動かない。
俺とソルーナのやりとりに黙って目を向けているだけだった。
……いや、そんなことは気にするな。
今は、この状況を打開するためだけに、体を動かせ。
「無駄です! 今更手を伸ばしたところで、何も変わりませんよ!」
「最後まで、足掻くんだ! 決めたんならケツまで!」
動けなかったさっきまでの俺をぶん殴ってやりたい。
そうだよな、マイヤー。
途中で泣いて這いつくばって、カッコ悪かったよ俺。
なんでもいい、今この場だけは諦めない。
諦めたくない。
「うおおおおおおおおおお!」
そして掴んだ。
マイヤーの手を、俺はしっかりと握りしめた。
思い出したように、すぐにグループへと入れる。
「マイヤー! メイヤ! 繋いだ! 繋いだぞ!」
同時に、ソルーナがメイヤの魂を無理やりマイヤーの体に入れ込んだ。
「……さっきからあなたは何をしているんですか」
俺の行動に、眉を潜めるソルーナ。
「黙れ……最後まで、ケツまで、諦めたくなかったんだ」
マイヤーのHPは、空白のまま表示されない。
グループメンバーがログアウトしているような挙動である。
……おい、メイヤ。
繋いだぞ。
今度はしっかり、握ったぞ、メイヤ!
「フフ、あとは混ざり合った一つの魂を私が──」
ソルーナがそう言いかけたところで、マイヤーのHPケージが赤く灯った。
たった今、ログインしたかのように、赤く輝いた。
それを見て、マイヤーが何らかの拘束から解き放たれたことを理解する。
同時に、彼女の体からメイヤの魂がスッと抜け出す。
行き場を失ったように、ふわふわと、上空を漂い出した。
「……は? なんだ、これは……何故、拒絶された?」
その光景を目にしたソルーナは、大口を開けて唖然とする。
「マイヤー、良かった……うぐっ!」
まだ目を覚ましていないマイヤーを抱き寄せると、顔を踏みつけられた。
怒りの形相で、ソルーナが俺を見下ろしていた。
「やってくれたな、トウジ・アキノ。また最初から、やり直しだ!」
「最初から? 無理だぞ……ジュニアァ」
ジュニアの名前を呟いた瞬間、マイヤーが一瞬にして消える。
最初からやり直し、この時点でマイヤーの魂を縛っていたもの。
それが消えた瞬間でもあったのだ。
「この、くそがあっ!」
「おごっ」
怒りのままに、俺を思いっきり蹴り飛ばすソルーナ。
HPは一瞬にして1になり、装備の無敵時間が発動する。
奴が焦って無茶苦茶な動きになった隙に、俺は回復した。
繋がった、首の皮一枚繋がった。
その事実が、痛みを忘れさせた。
動ける、まだ、俺はやれる。
ここからが正念場なのかもしれないが、あとはメイヤだけだ。
「フフ、ソルーナさん。少しお遊びが過ぎたようですね?」
「……さっさと殺しておくべきでした」
剣を携え、俺の方へと静かに歩いてくる。
俺に対する嫌がらせを一切捨て、ただ殺すつもりで。
「こんな雑魚はさっさと殺して……私は、アローガンスを殺して塔を奪うのです!」
「──誰を殺す、であーるか?」
「──貴様のことを殺したいらしい」
「──主よ、随分と酷い格好だ」
=====
やっとここまでかけた!
来たぞ!
「バインドではなく、誘惑なんですねえ」
混乱する俺を見ながら、ぽつりと呟くビシャス。
思った通り。
目は虚ろ、刺した後は力が抜けたようにだらりと俺にもたれかかる。
「く、は……ビシャス……ッ」
マイヤーの体をなんとか支えたものの、俺も痛みを堪えきれずに膝をついた。
「なんだ、このナイフ……?」
ガチガチに固めた俺の防御を貫通し、HPに直接ダメージを与えるナイフ。
レベル100にも満たないマイヤーが握って、できる芸当ではないのだ。
「遥か大昔に作られた秘蔵のものですよ。名は、永遠に続く痛み」
「永遠……だからといって、こんな」
「圧倒的なレベル差、装備差、その状況でダメージを受けるのかってことですよね?」
答えは簡単です、とビシャスは続ける。
「その差に応じた割合ダメージを継続的に与える代物なんですから」
「……ぐ、ふ」
「前の勇者さんがおっしゃってましたねー、レガシー等級に匹敵する武器だって」
レガシー等級に匹敵する武器。
前の勇者、なぜそんな単語を知っていると言うのだろうか。
「フフフ、私に鼻くそほじってろだとか言ったり……やっぱり似てますね」
「何が、だ」
「ま、これを今話すのはやめておきましょう。知る権利は、勝ち取らなければいけないものですから」
「まるでまだ勝ち筋が残ってるみたいに言うのは、よくないですよ。ビシャスさん」
ビシャスの前にソルーナが出る。
「もう彼はここで終わりなんですから……もう希望を見せたところでその後の絶望は少ないでしょう」
「ぐ、」
膝をついて立っていることもできなくなった。
マイヤーを抱きしめたまま、今度は俺がソルーナを見上げる立場になる。
「どうですか? 大切なものに刺される痛みは、苦しいですか?」
「……言ってろ」
「そうですか。すぐにその減らず口に聞けなくして差し上げましょう」
掲げたソルーナの手に、一つの丸い球体が浮かび上がる。
とてつもない力を感じ、すぐにそれがメイヤの魂だと理解できた。
「やめ、ろ……やめて、くれ……」
これから奴がその魂をどうするのか。
わかるからこそ。
身体中に響く痛みの中で俺はマイヤーを抱きしめた。
「退いてくださいよ、器に魂が入れられないじゃないですか」
「クッフ、演技派ですねソルーナさんも! クフフフ!」
響くビシャスの笑い声。
「わざわざ近づかなくてもできるのに! クッフゥ!」
「雑草と一緒ですよ。何気なしに踏み潰しても、再びそこにしつこく生えてくるものです」
だから、とソルーナはかがんで俺の前に顔を近づけて言った。
「根こそぎ引っこ抜いて、念入りに踏み固めておきませんと。種が芽吹く余地も与えないくらいに」
「ぐ、く……そ……」
割合ダメージは、俺の装備の回復力を少し上回る状態で継続する。
召喚しているキングさんの無敵効果があったとしてもその状態だ。
ダメージからの無敵時間。
そのわずかな時間ではHPの回復が追いつかない。
か、回復だ。
少しづつ削れて行く状態では、HP1残しの効果も使えない。
「おっと、それですね。何度も何度も回復して、目障りです」
インベントリから出した回復の秘薬。
目ざとく見ていたソルーナによって、遠くに蹴り飛ばされてしまった。
くそ、この状況では回復すら難しい。
「ほらほらトウジさん? この魂を器に移せば、あとは私が直接取り込んでおしまいですよ?」
「やめろ……やめろ! やめろおおおおお!」
「アハハハハハハハ! ほら邪魔です、退いてくださいよ!」
「あぐっ」
叫ぶ俺を、笑いながら蹴り飛ばすソルーナ。
「愉快ですね! 実に愉快です!」
「マ、マイヤー……頼む……」
せっかくまた会えたのに、ちゃんと決めたのに。
言おうと思ったことすら、満足に言えなかった。
「今までの奮闘も、全部虚しく、今この瞬間を以って──」
「う、ぐ」
ソルーナの足元で横たわるマイヤーに、手を伸ばす。
遠い、遠い、遠い。
たった数メートルの距離が、どこまでも遠く感じる。
「いやだ」
ごめん、俺がちゃんと決めなかったのが悪かった。
離れ離れになるべきじゃなかった。
もっと、もっともっと俺がしっかりしてたら……。
「──終わりにしましょう」
ソルーナは、手にあるメイヤの魂をマイヤーに近づけた。
こんな結果、認めたくない。
動け、動けと俺の頭は命令しているのに、体が動かなかった。
あざ笑う声を聞けば聞くほど、どんどん硬くなっていく。
“──トウジぃ”
声が聞こえた。
俺のよく知る、マイヤーの声が聞こえた気がした。
「ああぁぁ……!!」
マイヤー。
マイヤー、マイヤー!!
“──トウジ”
次に、メイヤの声も聞こえる。
絶望の淵に立たされている俺の心が、最後の最後に求めた。
聞きたかった声が、幻聴として現れているのだろうか。
でも、ごめん、俺……。
どうしても、体が動かないんだ……。
踏ん張ろうと気合を入れれば入れるほど。
目から涙が溢れて、それと一緒に抜けて行く感覚だった。
“──諦めないで!”
「なに!?」
ソルーナの驚いた声が聞こえる。
奴の方を向くと、マイヤーの体に移そうとしていた魂が拮抗していた。
「何故拒絶する、元は同じ身体だろ! 大人しく、言うことを聞かないか!」
険しい表情で力を込めるソルーナに、メイヤの魂は抗う。
そして再び、声が聞こえる。
“彼女も私も、まだ諦めてない”
「え、幻聴じゃ……」
“決して違う。彼女も今、自分の中で踏ん張っているところ”
魂の声は、俺にだけしか聞こえていないようだった。
ソルーナは声を気にもとめず、マイヤーの体に無理やり押し込もうとしている。
“手を伸ばして。繋いで。彼女の名前を呼んであげて”
「う、うああああああああああああああ!!」
声をあげて手を伸ばす。
体を這わせる。
諦めていた俺の心に、彼女が希望をくれた。
一人じゃ……ない!
戦っているのは、俺一人じゃない。
「マイヤー!! マイヤアアアアアアアアアアアア!!」
その事実が力をくれた。
「まだ諦めてなかったんですか! 良い加減にしてください!」
ビシャスは動かない。
俺とソルーナのやりとりに黙って目を向けているだけだった。
……いや、そんなことは気にするな。
今は、この状況を打開するためだけに、体を動かせ。
「無駄です! 今更手を伸ばしたところで、何も変わりませんよ!」
「最後まで、足掻くんだ! 決めたんならケツまで!」
動けなかったさっきまでの俺をぶん殴ってやりたい。
そうだよな、マイヤー。
途中で泣いて這いつくばって、カッコ悪かったよ俺。
なんでもいい、今この場だけは諦めない。
諦めたくない。
「うおおおおおおおおおお!」
そして掴んだ。
マイヤーの手を、俺はしっかりと握りしめた。
思い出したように、すぐにグループへと入れる。
「マイヤー! メイヤ! 繋いだ! 繋いだぞ!」
同時に、ソルーナがメイヤの魂を無理やりマイヤーの体に入れ込んだ。
「……さっきからあなたは何をしているんですか」
俺の行動に、眉を潜めるソルーナ。
「黙れ……最後まで、ケツまで、諦めたくなかったんだ」
マイヤーのHPは、空白のまま表示されない。
グループメンバーがログアウトしているような挙動である。
……おい、メイヤ。
繋いだぞ。
今度はしっかり、握ったぞ、メイヤ!
「フフ、あとは混ざり合った一つの魂を私が──」
ソルーナがそう言いかけたところで、マイヤーのHPケージが赤く灯った。
たった今、ログインしたかのように、赤く輝いた。
それを見て、マイヤーが何らかの拘束から解き放たれたことを理解する。
同時に、彼女の体からメイヤの魂がスッと抜け出す。
行き場を失ったように、ふわふわと、上空を漂い出した。
「……は? なんだ、これは……何故、拒絶された?」
その光景を目にしたソルーナは、大口を開けて唖然とする。
「マイヤー、良かった……うぐっ!」
まだ目を覚ましていないマイヤーを抱き寄せると、顔を踏みつけられた。
怒りの形相で、ソルーナが俺を見下ろしていた。
「やってくれたな、トウジ・アキノ。また最初から、やり直しだ!」
「最初から? 無理だぞ……ジュニアァ」
ジュニアの名前を呟いた瞬間、マイヤーが一瞬にして消える。
最初からやり直し、この時点でマイヤーの魂を縛っていたもの。
それが消えた瞬間でもあったのだ。
「この、くそがあっ!」
「おごっ」
怒りのままに、俺を思いっきり蹴り飛ばすソルーナ。
HPは一瞬にして1になり、装備の無敵時間が発動する。
奴が焦って無茶苦茶な動きになった隙に、俺は回復した。
繋がった、首の皮一枚繋がった。
その事実が、痛みを忘れさせた。
動ける、まだ、俺はやれる。
ここからが正念場なのかもしれないが、あとはメイヤだけだ。
「フフ、ソルーナさん。少しお遊びが過ぎたようですね?」
「……さっさと殺しておくべきでした」
剣を携え、俺の方へと静かに歩いてくる。
俺に対する嫌がらせを一切捨て、ただ殺すつもりで。
「こんな雑魚はさっさと殺して……私は、アローガンスを殺して塔を奪うのです!」
「──誰を殺す、であーるか?」
「──貴様のことを殺したいらしい」
「──主よ、随分と酷い格好だ」
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やっとここまでかけた!
来たぞ!
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