装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

853 自ら墓穴を掘る男

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 ──ゴウンゴウンゴウンゴウン。

「よし、とりあえずこんなもんで良いか」

 ポチが料理を作り、その様子をメイヤが楽しげに見ている間。
 俺は装備製作を少し切り上げて、泉の辺りにポンプを設置していた。

 生きている者が触れれば死ぬ温水。
 水島とグリフィーの犠牲を目の当たりにした今、信憑性は高い。

 怖いが、この温水がなんなのかすごく気になる。
 故に、ポンプでくみ上げて瓶詰めしてみることにした。

「それはなに」

「うわっ」

 瓶詰め魔導機器、簡単ポーションファクトリー初号機。
 俺の願望を叶えてくれたオスローの傑作を前にニンマリしていると、後ろからメイヤが顔を出した。
 この子、あっちこっちに移動して忙しないな。
 興味を惹かれるものには、とりあえず関わろうとするタイプなのだろうか。

 似ている。
 並々ならぬ情熱を注ぎ込む姿も、似ている。

「貴方は何をしているの?」

「この温水がなんなのか調べようと思って、くみ上げてた」

「……罰当たりかも」

「ははは、かもしれないけど。文句があるなら言ってみろって感じ」

 この世界の神様的な存在は、放任主義だぞ。
 俺は実際に会ったことあるから、知っている。
 頼まれごとだってしてるんだから、罰当たりくらい許してくれるさ。

 目の前に広がる温水は、非常に取扱注意な代物。
 だが、生命力溢れる奴の前では切り札になるんじゃないか、と思ったのである。
 あまり上手く行くとも思えないが、とりあえず汲めるだけ汲みます。

「で、この大きな箱は何?」

「簡単ポーションファクトリー初号機」

「???」

「自動で液体を汲み上げて、自動で瓶詰めしてくれる魔導機器だよ」

 これのすごいところは、俺の作ったカバンを利用しているところだ。
 俺が生産を行うと、圧倒的量の空き瓶が必要になる。
 そうなると、ガチで一つの工場並みの規模になってしまうのが予想できた。

 そこでカバンだ。
 同じ種類のものなら、いくらでも大量にストックしておける。
 いわば倉庫代わりにしているようなもんだ。

 用意した万単位の空き瓶。
 そして詰め終わった後の万単位の瓶は全てカバンに収納されるのである。

 ちなみに、機械の中でどうやって取り出して、どうやって収納しているのかは知らん。
 その辺は企業秘密とのこと。
 一応、俺商会のてっぺんにいる人なんだけどね……。
 まあ、使えるのならばなんでも良いのだ。

 10種類くらいまでなら、これで大量に運ぶこともできる。
 アルバート商会やうちの商会、研究所の倉庫部分には導入されているぞ。

 閑話休題。
 ゴウンゴウンと動くポーションファクトーリを見て、メイヤはゴクリを息を飲んでいた。

「……魔導機器。聞いたことがある。でも見たことはなかった」

「ちなみにポチが料理を作っているアレも、魔導機器だぞ」

「っ! 水も火もでる不思議なかまど!」

 魔導キッチンが魔導機器だと知り、鼻息荒くテンションをあげるメイヤ。
 面白い反応だ。

「簡単なものなら他にもあるけど、使ってみる?」

「いいの?」

「いいよ。料理を待ってる間とか、暇だと思うしね」

 遊べる魔導機器といえば、ライデン考案のマジックハンドガンだ。
 危険性は低いし、遠くのものを取ったりして結構楽しめる。

「はいこれ」

「これは! なに!」

「マジックハンドガンっていって、遠くの物に狙いを定めて引き寄せる魔導機器だよ」

 タイミングよく鳥が飛んでいたので、試しに撃つことにした。
 ボシュ、スカッ。

「……捕まえたら引き金をもう一度引けばワイヤーが戻ってくるから……うん……」

「貴方は、もっと弓の練習をした方がいい。使い方はわかった。貸して」

「あ、うん」

 マジックハンドガンを渡すと、見よう見まねで彼女は引き金を引いた。
 射出されたマジックハンドは、茂みの中に突っ込んで行く。

「……弓とは違うかな?」

 誰だって最初はこんなもんだ、と思っていたら、メイヤはニヤリとしながらもう一度引き金を引く。
 すると、ワイヤーに引っ張られて、耳を掴み上げられた野ウサギが姿を現した。

「最初は鳥じゃなく、茂みに隠れている小動物が手頃」

「すげぇ」

 ドヤ顔するのもわかるくらい、超絶精度。
 空気抵抗とか結構あって、狙いづらいんだけどなあ……。
 この腕前は、ポチにも引けを取らないレベルである。

「わふ」

 料理を作りながら、ポチが「それくらいできるもん」と言った顔で見ている。
 一丁前に負けん気か?
 俺からすれば、どっちもすごいの一言なんだけどな。

「……ごめんね、びっくりさせちゃって」

 解放された野ウサギは、一目散に茂みの中へと消えて行く。

「殺傷能力は皆無だから、好きなだけ遊ぶと良いよ」

 あくまで遠くのものを取るという目的で作られているからね。
 スポーツハンティングにはぴったりだ。

「でも食べないのに脅かすのはかわいそうだから、虫とか高い位置にある果実を狙ってみる」

「オッケー」

「それで特製蜜汁を作る。蜜にたかる虫なら甘くて美味しい蜜溜め込んでるから」

「ノーオッケー」

 そのセリフばかりは聞き捨てならんぞ。
 はちみつとかは抵抗ないんだけど。
 ほら、衛生的なものとかさ、あるじゃないか……。

「青汁は甘くない。でも蜜は甘い。これなら食べれるはず」

「アォン」

 いつでもパンケーキやけまっせ、と合図するポチ。
 ポチには断固拒否できても、目の前にいるマイヤーそっくりな女の子の無邪気な笑顔を見せられたら、どうにも断りづらくて、結局了承することになってしまった。

「おそらく蜂蜜だ。蜂蜜だ。蜂蜜だ」

「蜂蜜よりもっと良いもの。ミツカブトっていう体に蜜を溜め込むカブトムシ」

 そう言いながら、彼女は森の中へと走って行った。

「…………ぬあー!」

 静かな泉のほとりで、ゴウンゴウンとポンプの音が響く中、俺は頭をかかえる。

「言わずに蜂蜜ってていにしておいてくれたら良いのに!」

 なんてこった、なんてこった、なんてこった。
 カブトムシって、あれだろ。
 硬い前翅の部分ってゴキブリと同じ成分なんだろ!

 ぬわあー!
 これは本当に、ぬわあー!

「……アォン」

 ゴロゴロと地面をのたうち回る俺を見て、ポチがため息をついていた。
 虫の体内に溜められた蜜より、今転がっている地面の方が汚いとのこと。

 うるせえよ。
 装備製作に全然集中できねえよ。

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