装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

829 セバスとの会話

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 トガル首都へと先回りした俺たちは、マイヤーが来るのを今か今かと待っていた。
 来るまでに予想される時間は、めちゃくちゃ早くても約7日くらいである。
 ほとんど端から端なので、意外と遠いんだな、これが。

 それを1日で行けちゃうワシタカ超特急は、本当に素晴らしいもんだ。
 普通の飛空船だと、ワシタカくんほどの速さは出ないのでもう少しかかる。
 今後、この辺の交通の便を良くしていくとなれば……。
 気軽に飛べなくなる時代が来るのかもしれないね。

「──で、2週間くらい経ったんだけど。マイヤー来なくね?」

「……おかしいわね」

 窓の向こうに見える丘の景色を見ながら、イグニールと顔を見合わせる。

 先回りして3週間。
 もう確実に到着していてもおかしくないほど待っていたのだが、マイヤーは来ない。

 マイヤーが来たらわかるように、トガル首都に入るための道がよく見える場所。
 そこに居を構えてずーっとストーカーのように毎日毎日見ていたのだ。

 装備やらポーションを作りながら、な!

 2万個。
 この数字は、マイヤーと話す切っ掛けにしようと思っていたポーションの数。

 俺の計画では、ポーション納品したいけど良いかな?
 って話を持って行く予定だった。

 もし「今更なんやねん」と言われても、ビジネストークなら話してくれる。
 そう思っていたのだ。

 そこから俺の思いの丈とか、みんなの気持ちとかを伝えて。
 最終的にはマイヤー戻ってこいと、とにかく頭を下げるつもりだったのである。

「せっかくマイヤー用の秘薬セットとか準備したのに」

「トウジ、それなんか営業に行くみたいだし……」

 俺の一言にそんなツッコミを入れるジュノー。

「そうだけど、それが良いかなと思ったんだよ」

 マイヤーとの関係の始まりって、こういうところからだった。
 だから、初心に戻ってもう一度筋を通すために、俺はポーションを作り続けるのである。

「……にしても、いったいどうしちゃったのかしら?」

「ちょっと心配だし……」

「アォン……」

 待てども待てどもマイヤーがこないという事実に、多少の焦りを感じてきた。
 どこかで事故にあったのだろうか、それとも考え直してサルトに戻ったのだろうか。
 実はもう首都に入っていて、俺たちがたまたま見逃しただけなのかもしれない。

「……アルバート商会、行ってみるか」

 とにかく情報が必要なので、マイヤーの実家に足を運ぶことにした。
 体裁的には、ポーションを持ってきたという形でいいだろう。
 いつもマイヤーを経由していたのだし、その居どころを探るにはちょうど良い。

「む? トウジ殿ではありませんか」

「へ?」

 その道すがら、急に声をかけられた。
 振り返ると、燕尾服に身を包んだオールバックが良い渋さを出す人物。
 セバスがいた。

「おお、お久しぶりです、セバスさん」

「久方ぶりです」

「買い出しですか?」

「いえ、今からギリスに向けて船に乗るところでございますよ。ご存知のはずですが……」

「あ、ああ、そうでしたね……」

 セバスは、マイヤーの代わりにギリス支店へ異動することになったんだった。
 向こうで立ち上げた商会をマイヤーが落ち着くまで切り盛りする手はずである。

 もっとも、本当にマイヤーが戻って来るかはわからない。
 あの母親の口ぶりからは、到底そうには思えなかった。

「何故、トウジ殿が首都に? とっくにギリスにお戻りになられているかと」

「え、えっと……」

 ギクリ、と狼狽えていると、セバスはにこやかな表情をしながらこう言った。

「冗談ですよ。お嬢様を呼び戻しに来られたのでしょう?」

「あ、あはは……」

 色々と察しているみたいだった。
 できる男は違うね。

「トウジ殿、せっかく首都までご足労いただかれましたところ申し訳ないのですが」

「はい?」

「お嬢様は、首都からではなく別の港から出発いたしております」

「えっ!?」

「首都からも出ていますが、最速で行くとなれば南端の港からも出ておりますゆえ」

「し、知らなかった……」

 どうやらイグニールも知らなかったようで、唖然とした顔をしていた。
 嫁入り前の準備をすべく、首都に立ち寄るだろう。
 そんな予想をして首都に来たのだから、イグニールは何も悪くない。

「私も、そこまで急ぐほどのものかと……少々困惑しておりますよ……」

「そうなんですか……」

 商売人らしく、行動力がめちゃくちゃ高いマイヤー。
 何もこんなところで発揮しなくても良いのにな。
 先読みするはずが、そのさらに先を読んでいるみたいだ。

「トウジ殿、私はお嬢様には自由にしていただきたいと思っております」

 南の方角を見ながら、セバスは語る。

「貴方と一緒に過ごされている間のお嬢様は、すごく楽しそうに仕事をしていらっしゃいました」

 サルトを離れてギリスに向かってからも、定期的に手紙をもらっていたらしい。

「貴方がここにいる。この状況は、つまりはそう言うことなのでしょう?」

「はい」

 どこまでも察しのいい男、セバスである。

「小さい頃から苦労の絶えない生活を送ってらしておいでですから……私の一個人の意見といたしましては、お嬢様がご自身で決めた道を歩んでいただきたい。そう心から思っております」

 たしか、彼女は小さい頃から遠方に飛ばされて行商生活をさせられていたんだっけ。
 あまり多く聞いてこなかったところだけど、結構過酷な幼少期である。
 一緒にギリスに向かうことになったのも、魔導機器について勉強するため。
 自由奔放にしていながらも、実情はかなり家に束縛された状況だったのだろうか。

「不躾なお願いではございますが、どうかお嬢様のことをよろしくお願いいたします」

「はい、すぐにタリアスに向かいたいと思います」

「その間、ギリス支店につきましては私にお任せください」

「ありがとうございます」

 それだけ言って、セバスは船の時間がありますのでと港へ向かって行った。
 日にちを考えれば、もうすでにタリアスについているだろう。
 急がないと。






=====
色々こじれるタリアス編始まる。
更新が遅れてしまったこと、謝罪いたします。
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