装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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5巻

5-1

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 第一章 加護刀と過去からの手紙


 俺――秋野冬至あきのとうじが居住をここ、魔導国家ギリスの首都に移してからはや数週間。
 中央山脈で素材を探したり、冒険者ギルドで面倒臭いやからに絡まれたり、色々なことが巻き起こったのだが、それ以外は至って順調だ。
 朝起きて、ペットのポチが作る美味おいしい朝ご飯を食べ、昼まで装備やらポーションを製作。そしてギリスに根を張ったダンジョンの手入れ作業。
 昼飯を済ませたら、ダンジョンへつながるドアを設置してあるギリス港町の宿屋へ向かい、ポチとダンジョンコアのジュノーと一緒に、新鮮な魚を吟味ぎんみする。

「今日の夕食は、焼き魚と白ご飯と汁物でいいかなあ、俺」

 やっぱり、白米にスープとおかず一品くらいがちょうど良い。

「えー、チーズは?」

 そう主張するジュノーは、どこか物足りない顔をしている。

「毎日食ってたら胃もたれするだろ。たまにはあっさりしたものが良いと思います」

 チーズもカニも、たまに食べるから美味しいもんなのだ。

「そんなことないし」
「いや、そんなことあるし。お前の価値観で語らないでくれる?」

 毎日甘々のパンケーキを食べてる奴の言うことなんか信じられません。
 俺は、オーソドックスな青魚の塩焼きを食べたい気分なんだ。おろし醤油しょうゆで皮をパリッと焼いた魚を、な。

「うーむ、想像しただけで腹が減ってきた……頼むぞ、ポチ」
「ォン」

 ポチならば、あっさりしたものを食べたい俺の心をみ取ってくれるはず。

「ま、あたしはパンケーキが食後に出てくるなら、なんの問題もないし」
「満場一致だな。今日はシンプルイズベストな焼き魚で」

 ダンジョンを活用させてもらう契約上、ジュノーのパンケーキは、ポチが毎日作ることになっている。

「じゃ、きの良い魚を探しに行くか」
「アォン!」


「――まだ夕食まで時間あるけど、今日はこれからどこ行くし?」

 魚を大量に購入し、ギリス首都に戻ってきて街をプラプラしていると、俺のフードから顔を覗かせたジュノーが、唐突にこんなことを言い出した。

「え? 知らずについてきてたのか?」
「だって、家にいても暇なんだもん。ゴレオも一人になりたいっぽくて、相手してくれないし」

 いつもなら、ゴーレムのゴレオも揃ってお買い物に行くのだが、あいつは今、スライムのキングさんの教えを受けて一人、強さについての瞑想めいそうに入っていた。
 俺はぶっちゃけ、キングさんがいれば戦闘に困ることはないと思っているが、とにかくゴレオの邪魔じゃまをするな、とのおたっしなので、そっとしておくことにした。

「まあ、この後の用事に関しても、ゴレオにとってはややセンシティブだから、今日はそっとしておくのが一番だよ」
「この後の用事ってなんだし?」
「ほら、ライデンって青年がいただろ?」
「ああ、ゴレオが刀踏んづけて壊しちゃった件だし?」
「そうそう」

 今日はこれから、ゴレオが誤って踏み壊してしまったライデンの刀を直すべく、彼の家を訪ねるのだ。

「トウジ、ちゃんと直せるし?」
「製法がわかれば、なんとかできそうだけど……」

 もしダメだったら、彼が持てるレベルで最大限にまで成長したあの刀と、性能的にさほど変わらないものか、より強いものを作って、渡すつもりだ。
 確かあの刀の能力は……スペリオル、霊装(麒麟きりん)、成長武器、属性強化(雷)の四つ。
 ゲームをプレイしていた頃の記憶では、装備製作であの能力を、そっくりそのまま実現することは不可能だった。
 成長武器と属性強化は可能だが、霊装が、地味に難度が高い。
 霊装化のスクロールを手に入れることもそうだが、霊装化に必要不可欠となる素材を落とす魔物、麒麟を探さなければならないのだ。
 製法、つまり製作用のレシピを知ったところで、作るにはいくつものステップを踏まなければならないから、すぐには作れません、直せませんってことになる可能性が高かった。

「まあ、とにかく頑張るよ」

 ジュノーに対して、俺はそうやって言葉をにごした。

「直んなかったら、ゴレオもライデンも落ち込んじゃうね」
「ぐ……痛いところを……」

 だから、相応の代物しろものは渡すって言ってるだろうに。
 さすがに家宝と言われる刀には劣るかもしれないけど、俺の作った装備だって、どこぞのバカが2億ケテルで買い取るレベルだったりするのだ。
 そもそも、この世界の連中は知らないと思うが、スペリオルって付く武器は、ゲームではボスドロップ専用の装備だったんだぞ……。

「つまり、装備製作で作ることは不可能で、もしかしたらワンチャンあるかもなって感じのテンションで彼の元に行くんだ。その辺の俺の気持ちを汲み取ってくれ」
「責任逃れってやつだし」
「アォン」

 こいつら、まったくもう!
 何事も希望を持って動いた方がいいのに、なんでそう俺を追い詰めるかね。
 代案も考えているのだから、俺の責任はどうにか果たせると思いたいところだ。
 そんなことを話しながら歩いていると、裏路地から怒号がひびいてきた。

「放せ! お前ら、いい加減にしろよ!」

 ライデンの声だった。
 覗き込むと、いつぞやの不良生徒に囲まれ、羽交はがい締めにされたライデンがいる。

「テメェが教師にチクったせいで、俺らが怒られたじゃねーか!」
「怒られるようなことをするお前らが悪いだろうが!」

 逆恨さかうらみか。

「うるせえ! この恨み、返させてもらうぜ、落ちこぼれめ」
「つーかさ、こいつなんか意味不明な下着つけてんだろ?」
「へへへ、いて確かめてやるか? ハハッ!」
「なっ!?」

 ズボンのベルトに手をかけられ、必死に抵抗するライデン。

「『ふんどし』とかいう変態下着か……そうだな、こいつの変態具合を街にさらすか!」
「もう二度と学校に来れなくなるっつーか、街歩けなくなるんじゃね?」
「――でも、ふんどしがブランド化されたら恥ずかしくなくなるのでは?」
「ォン」
「そもそもふんどしってなんだし? 甘いやつ?」
「「「は……?」」」

 俺達がごくごく自然な感じで会話に交ざると、場の空気が一瞬固まった。そして不良生徒全員が、シュババッと素早い動きで俺から距離を取った。

「はあ……まったくお前らさあ……」
「な、なんだよ」
「くだらないことをしてストレスを発散するより、さっさと家に帰って勉強しろ」
「アォン」
「勉強しろし!」

 正直、過去の苦い経験から、こういった厄介やっかいごとにはあまり首を突っ込みたくなかった。
 だが、見て見ぬふりをするのも忍びなかったし、何より俺はライデンに用事があるから、この場合は正しいよな?

「ほら帰れ帰れ。こういうことをしてると、いつか自分の身に返ってくるんだから、今のうちに卒業して良い子ちゃんしとけよ」

 因果応報いんがおうほうの神様は、俺達の行いを余すことなく見ている。それで落ちぶれた人を、俺はよく知っているのだ。

「ぶ、部外者がいきなり入ってきてんじゃねえよ! おっさん!」
「おっさ……ま、まあそうか……」

 言葉が少し突き刺さった。二十九歳だし、そこは真摯しんしに受け止めよう。

「関係ない奴は引っ込んでろ!」
「いや、関係ないことはないぞ。ライデンと約束していたことがあるからな?」

 もう引っ込みつかないし、子供をおどすわけにもいかんので説得だ。

「ほら、これからギリスを背負って立つかもしれない、アーティファクト研究学の生徒なんでしょ? こんなくだらないことをするよりも、もっと広い世界に目を向けてほしいって、おじさんは思ってるよ。だから解散解散」

 しっしっ、と手で払う仕草しぐさをすると、それがかんさわったのか、血の気の多そうな不良の一人が、地面に転がっていたレンガを拾い上げ、殴りかかってくる。

「うぜぇんだよ! このっ!」
「あたっ」

 ゴッと重たい音が響いて、レンガが砕けた。

「!?」

 レンガで頭を殴られたのに、平然としている俺を見て、固まる不良諸君。

「……ちょっと、頭はマジで危ないって」

 俺以外だと死ぬ可能性だってあるんだぞ。

「な、なんで……平気なつらしてんだ……」
「なんで、と言われてもな、一応Bランクの冒険者でもあるし?」

 あとは単純に、俺の装備の質がすごく良いからである。
 魔物との戦いも知らない、レベル20にも満たない不良の攻撃なんて、60レベル用の新装備でVIT値も4000後半の俺にとってみれば、カス以下だ。
 たいした攻撃力のないレンガで殴られたところで、HPは減らないのである。

「とりあえず、この場はさっきの一発に免じて退いてくれないかな?」
「く、くそっ! テメェの顔は覚えたからな! マジで覚えてろよ!」

 そんな捨て台詞ぜりふきながら、不良達はわらわらと路地裏を後にするのであった。
 人の顔を覚えるより、テストに出る単語でも覚えておけば良いのに。

「……ふう、とにかく一件落着で良いかな?」

 根本的な解決には至ってないが、この場で頭を殴られたことはライデンも見ている。
 あとで教育指導の先生に、おたくの学校の生徒はいったいどうなってるんだ、って感じで苦情を言ってやることに決めた。
 え、大人気ないって?
 いいや、殴られたのは事実です。これが、暴力を法律で制限された大人のやり方だ。

「あ、あの……すいません……何度も助けていただいて……」

 一息ついていると、ライデンが申し訳なさそうに近づいてきた。

「いや、仕返しをせずに耐えてるだけ、ライデンはすごいと思うよ」

 俺が同じ立場だったら、逃げて引きこもっていた。
 確か勉強よりも剣術が得意なはずなのに、それでも手を出さないライデンは、俺なんかよりもすごくできた人間だと感じる。

「学校では、うでぷしに任せることはやめようって決めてるんです」
「へえーすごくえらいし。その気になれば、ボコっちゃえるのに?」
「剣の鍛錬は己を律するためでもあるんですよ」

 ジュノーの言葉にそう返すライデン。

「なるほどね、やっぱりすごいよ」

 素直にそう思った。聖人君子かと思うくらい、良い子である。
 そんなライデンにジーンと感動していると、大通りの方から声が響いてきた。

「見たぞ! おい、俺は見たからな!」

 声の正体は、以前もギルドでいちゃもんをつけてきた冒険者、義憤ギフンマンである。
 ちなみにこいつ、本名はギフマンとかいうらしいぞ。どーでも良いけど。

「白昼堂々、学生を脅して何をしてるんだ! それがお前の本性か、おい!」

 俺を指差して何やらわめき散らしていた。そしてズカズカと近寄ってきて、さらに言葉を続ける。

「この下衆げす冒険者! やっぱりお前はそんな奴だったんだな、反吐へどが出るぜ!」
「はい……?」

 いきなりそんなことを言われても、と俺達は首をかしげていた。

「慌てて走っていく学生が見えたから何事かと思えば、カツアゲとは見下げた野郎だ!」

 走っていく学生って、あの不良どものことか。
 確かに、ライデンとの関係性を知らなければ、今この状況はカツアゲである。
 まったく面倒な誤解をしてくれたもんだな……。

「何を勘違いしてるのかわかりませんけど──」
「お前の言い訳は聞いてねえ! さっさと離れろ! 怖がってんじゃねーか!」

 ──聞いてねえ。

「つーか、そっちこそいきなりなんなんだし! カツアゲなんかしてないし!」

 俺達の中で、一番喧嘩けんかっ早いタイプのジュノーがついに言い返した。
 良いぞ、行け行け、言ってやれ。

「むしろ、こっちが助けたんだし!」
「うるさい従魔だな。ちゃんとしつけとけよ。所詮お前はその程度の野郎だってことか?」
「話を聞けし! ライデンをかばって殴られたのはトウジなんだし!」
「ハッ、卑怯ひきょうな手でランクを上げてきた冒険者の従魔は、言うことがやっぱりちげぇな?」

 悦にったように、鼻で笑いながら義憤マンは続ける。

「小さいのは黙ってろ。俺はそこの卑怯者に説教かましてんだからよ」
「なっ!?」

 その言いっぷりに、ジュノーは信じられないものを見たような表情になっていた。
 俺もそう。この場にいる全員がそうだ。

「従魔を連れているってことは、脅しに利用したってことだな?」

 ファーストコンタクトから、なんだか無駄に決めつけてくる奴だなとは思っていた。

「ギルド規則に照らし合わせれば、ランク降格どころか除名もありうる話だぜ?」

 しかし、まさかここまで人の話を聞かずに、自分の意見のみをべらべらと言ってしまえる人間がいるとは思ってもみなかったのである。

「おい、その辺わかってんのかよ!」
「知ってますよ、そんなこと」
「マジかよ、おいおいおいおい、確信犯かよ?」

 頭の中で情報を整理するって作業が、こいつにはできないのだろうか。
 まあ良いや。何がこいつの感情をここまでかき立てるのかは知らないが、この場にライデンがいるって状況は幸運だった。

「俺、何もしてないよね?」

 これではっきりする。

「はい、むしろこの間から助けてもらってばかりなので、頭が上がりません」

 目の前で義憤を募らせる男に困惑しながらも、そう語るライデン。
 これで、義憤マンが思っているような展開ではなくなりました。さらに文句をつけてくるとしたら、脅して言わせてるとか、そんな感じだろう。

「脅して言わせてるんじゃないだろうな? 卑怯者は信用できねえ!」

 うん、言うと思った。
 ここまで来たら何を言っても通じない。そんな手合いは無視するに限る。

「はあ……面倒だなあ……」

 ギルドで余計なことを言われる前に、ライデンを連れて状況説明しに行くか。
 そう考えていたところで、ライデンが一歩前に出た。

「あの、本当になんなんですか?」

 まっすぐな目を義憤マンに向けて、こう言い放つ。

「見て見ぬ振りをする人が多い中で、行動を起こすのは素晴らしいです」

 当然だと鼻を高くする男に、「ですが……」とライデンは付け加えた。

「ちょっと決めつけが過ぎるのではないですか?」
「何?」
「今一度状況を説明しますけど、トウジさんは不良に絡まれていた僕を助けてくれました。あなたから見て、被害者の僕がそう説明するんですから、そうですよ」

 真正面から義憤マンの想像をぶった切るライデン。
 俺は心の中で、「いっけええええ!」とひそかに思っていた。

「理解いただけましたか?」
「う、お……」

 ばっさりと言い切られた義憤マンは、さっきまでの俺達のように固まっていた。
 違うだろ、なんでお前が唖然としてるんだよ。何様だよ。
 しかし、私はあなたの味方だよ感を出して話をややこしくしてくる奴には、味方だと思っていた人が「違いますよ」って、きっぱり言うのが良く効くなあ。

「とりあえず、誤解も解けたってことで行くか」

 狼狽うろたえている隙をついて、俺はライデンを連れて裏路地を後にすることにした。
 安いプライドで、退くに退けなくなってしまう人は、この世にごまんと存在する。
 そんな人に出会った際は、再び噛みつかれる前にさっさと逃げるのが得策なのさ。

「あの、トウジさん。治療院で頭を見てもらわなくて大丈夫ですか?」
「平気だから気にしなくて良いよ」

 ダメージほぼないし。

「お、お前の言い分がもし本当だとしても! 俺は悪くないだろ!」

 路地から顔を出した義憤マンが声を張り上げる。

「彼の言葉に免じて、ギルドには報告しないでおくから、お前も余計なこと言うなよ!」

 捨て台詞も、なんともお粗末な保身っぷりだった。

「しませんから、もう金輪際関わってこないでくださいね?」
「ハァ? 喧嘩売ってんのか!?」
「なんでそうなるんですか? お互い余計なトラブルは回避しましょう、ってことですよ。そうすれば、あなたの担当受付さんにも報告せずに済みますし、どうですか?」
「お前……脅しか……?」

 だから、なんでそうなるんだよ。なんだよもう、面倒臭い奴だな。

「脅しじゃないです。とにかく俺は何もしてないですし、あなたも脅してると勘違いしてしまっただけ。はい、そこにトラブルはありますか? ないでしょ? ならここでさよなら!」
「あ、おい! まだ話は──」

 俺はライデンとポチの手を引いて、さっさとこの場を後にした。
 できれば二度と会いたくない。


       ◇ ◇ ◇


 面倒な奴からは物理的に距離をとって、ライデンの家へと到着する。
 勝手に和風っぽいものを想像していたのだが、彼の家はいたって普通のアパートだった。

「一人暮らしなの?」
「ですね。立場的な都合上、親父とは一緒に住めませんので」

 彼の父親は近衛このえ兵長。実の息子とは言え、王族の住む場所で生活する父親と暮らすことはかなわないそうだ。

「大変だね」
「初めのうちはそうでしたけど、もう慣れましたよ。さ、どうぞ」

 お言葉に甘えてライデン宅へとお邪魔すると、とんでもない光景が広がっていた。

「な、なんだしこれ!?」
「アォン……」
「す、すごいな……」

 一人で住むなら十分な広さのワンルームに、所狭ところせましと本が積まれている。
 ベッドと机周りだけは片され、生活スペースは取られているのだが、かなりギリギリだ。

「べ、勉強熱心なんだね……」

 なんとか気を使ってそんな言葉を絞り出すと、ライデンは恥ずかしそうに言う。

「その……整理整頓が苦手というか……ハハハ……」
「そっか」

 落ちこぼれと言われる理由が少しだけわかった気がした。
 本がいっぱいあるけども、整理がまったくできていない。
 勉強ってある意味、ノートと頭の整理整頓だからなあ……。

「トウジの部屋も、たまにこんな感じになってるし」

 ぽろっと失礼なことを言うジュノー。

「いや、さすがにここまでじゃないぞ……? 汚い時は何かに集中してる時だからな?」
「ぼ、僕だって普段はもう少しマシです……たまたま製法の書かれた本を探してて……」

 ライデンと互いに取り繕っていると、ポチが「わふぅ」とため息をいた。普段から小まめに掃除しとけ、と言っているみたい。
 わ、話題を変えよう。

「それで、お目当のものは見つかったの?」
「はい、見つかりました」

 ライデンは枕の下から一冊の本を取り出した。

「失くさないように、こうして枕の下に入れておいたんですよ」
「そ、そっか……」

 エロ本じゃないんだから……まあいい、とにかく本を読む前に。

「ポチ、ジュノー、この部屋を片付けるぞ」

 このままだと落ち着けるスペースがないので、まずは部屋の片付けをすることにした。

「ォン!」
「任せるし!」

 ポチとジュノーは「おー」とハイタッチしながら、部屋の片付けに着手する。

「いやいや、さすがにお客さんに片付けをさせるわけには……」
「まあ見とけって」

 綺麗きれい好きで几帳面きちょうめんなポチの片付けスキルは、見事なもんだ。
 こういう時に限って、俺は逆に指示を受ける立場となる。

「ォン!」
「あ、はい、すいません!」

 見てないで手を動かせとの指示なので、せっせと掃除を頑張ることにした。

「ちょっと! 本はちゃんと名前と種類で揃えて、本棚に並べるし!」
「はい、すいません!」

 普段はバカみたいなことばっかり言ってるジュノーも、片付けに関してはポチ並みだ。
 ダンジョン部屋の内装とか結構こだわるタイプで、片付けや模様替えを頻繁ひんぱんにしているから、実際のところはかなり几帳面なのである。
 キャラ的には、こういうのを面倒臭がるタイプなのに、せぬ。

「うりゃうりゃー! 掃除掃除掃除だしー!」
「アォンアォンアォォォォオオオオオーン!」

 そんな二人がいるからこそ、うちはいつでもキレイキレイ。
 いつだって汚すのは、俺・コレクト・マイヤーの三人である。
 ちなみに、ゴレオは小石とかチリとかを吸収するので、歩く掃除機だ。
 そして、ストロング南蛮の羽毛が抜けてしまう件に関しては、もう仕方がない。
 何しろストロング南蛮は、サモンモンスターじゃないにもかかわらず、トイレだって覚えたし、飯も行儀ぎょうぎ良く食べるし、マイヤーの良きペットとして活躍中なのだ。卵は産まないけどな。


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