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本編
818 王様の偉大なる計画
しおりを挟む「あ、どうも」
ジュノーのパンケーキ待ちをしていると、ドアが出現してケープとアドラーが出てきた。
一見ちんちくりんのクソガキとしか思えない少年アドラーは、実はクロイツ王国の王様。
そして彼の周りをふわふわしている同じような背格好の少年はケープ。
以前、ダンジョンコア同士の戦いで負けそうになっていたところを条件付きで助けたのだ。
「あれー、トウジじゃんトウジ!」
「これはこれは、お久しぶりですね」
「お久しぶりですねと言うか……」
色々聞きたいのだけど?
まずケープの姿がすごくアドラーに寄せられて、知らない人が見たら双子に見える件。
「ケープ、アドラー様にすごくそっくりですけど」
「ある程度ダンジョンの規模が大きくなればこの辺も自由にできるみたいなんで、似せてもらっています」
「なんでまた……」
「影武者みたいなものですよ。もっとも政敵の急所は常に押さえておくタイプですから、基本城でのお遊び程度ですが」
目を細くして笑うアドラー。
腹に黒いものを抱えた子供って、なんか恐ろしいよね。
「遊びっていうか、そっちがフラフラどこかに行く時の身代わりじゃん!」
「好きにダンジョンを作らせてるんですから、おあいこでしょう」
「そうだけどさー!」
「まあまあ、またバタードッグ買ってきてあげますから」
「わかったー!」
ケープのやつ、バタードッグで買収されてる……。
この二人の関係性は、俺とジュノーのものと似ているようだ。
「あと、もう一つ気になってたんですけど」
「なんでしょう?」
「……ドアが出たってことは、この城はもうダンジョン化済みってことですか?」
「もちろん」
頷いたアドラーは、さらにぽろっととんでもないことを言い放った。
「むしろ、白だけではなく城下町も含めてダンジョン化済みですよ」
「えっ」
この首都ごとってこと?
す、すげぇ……。
「このくらいで驚いてもらっちゃ困りますね。ゆくゆくは国土全般にまで広げる予定ですから」
「うわぁ……」
さすが王様。
どうやら秘密裏に国ごとダンジョン計画を推し進めているようだった。
「国ごとってすごいし!」
ご大層なダンジョン話を聞いて、ジュノーがパンケーキのホイップクリームまみれになりながら話に混ざる。
「権限持ちになれば永遠に王様だし!」
「ええ、永遠にダンジョン遊びが楽しめますね」
王様に居座るというか、心の底からダンジョンを楽しんでいるみたい。
国土がダンジョンになれば、最強国家ができてしまいそうだ。
「アドっちさ、それだけ広いとリソースの管理とかどうするし?」
国王に向かってアドっち呼ばわり……。
「ハハハ、今まで国を管理してきた人間が、ダンジョン一つを管理できない訳がないじゃないですか」
さすが王様。
俺は基本興味ないことにはノータッチ。
放置してジュノーに任せっきりだからなあ……。
リソースもある程度確保したら、確保しただけ装備の強化で潰している。
故に、いつまでたってもジュノーは低階層のままだった。
「俺はその辺あんまりわからないけど、アドラーの言う通りにしたら全部上手く行ってるんだよね!」
「ほえー……トウジとは大違いだし……」
渋い顔をしたジュノーの視線が俺を刺す。
「そんなこと言われても俺一般人だし……」
「いつだかもっと拡張してくれるって言ってくれたし! 早くするし!」
「えー……」
「それに、拡張したらケープみたいにあたしも大きくなれるチャンスかもしれないんだし!」
「いやあ……」
適当に濁しておく。
都市をダンジョン化だなんて、王様だけの特権だ。
それにこれ以上でかくなって部屋に入り浸られたら困る。
「でかくなったら部屋別だけどいいのか?」
「……えー」
「俺の枕をベッドがわりにして日がな日中お菓子を食うのは許さんぞ。それにフードにも入れなくなるぞ」
「じゃーやめとくし……フードにも入れなくなるし……」
「そうそう。変化ってのは何かを捨てることなんだ。両得なんて中々できるもんじゃないんだぞ」
世の中そんなに甘くないのさ。
体がでかくなってパンケーキの摂取量が増えたらポチだって大変だろう。
「で、世間話もこの辺にして……こんなところで何をしているんですか?」
「それそれ! いきなり城に侵入者が現れてびっくりしたじゃん!」
「あー、そのことですけど」
説明が面倒だな……。
適当に済ますか。
「召喚魔法陣的なものを適当に触ってたら、間違えてこっちに飛ばされちゃったみたいでして」
「召喚魔法陣ですか。あまりおいそれと使ってしまうと、色々と面倒だと思いますよ?」
「そ、そうですよね」
訝しんだ表情をするアドラー。
こいつ聡いから嘘をついたら色々と誘導されて探られかねないな……。
話題変えよう。
「そ、そうだ! 勇者たちはどうなってますか? まだ寝続けているとか?」
「勇者ですか? そうですね、依然として深い眠りについたままですよ」
「そうですか、まだ眠ったままですか」
「考えうる手段を用いて目覚めさせることが可能かどうか色々と試しているんですが……」
どんな手段も通じず、ずっと延命措置だけを続けているようだった。
そうだ、あいつらをものと世界に送り返すって目標を掲げちゃいるんだが、その前に起こすところからも始めないといけないんだよな。
「このような状態にしてしまった責任が僕にはありますし、色々とデリケートな部分ですから、召喚魔法陣の乱用はできれば控えていただきたいです」
「わ、わかりました」
「顔だけでも見ていかれます?」
「いや、ちょっと用事があるので、俺たちはこれで失礼します」
引き続き眠ったままの勇者はアドラーに任せよう。
遠くの地で眠ってもらっておいた方が俺にはまだ都合がいい。
首都ごとダンジョン化して、防衛も完璧に近いからね。
俺たちはマイヤーを連れ戻すため、クロイツ城を後にすることにした。
イグニールに帰還のスクロールを使っていただき、育った場所へとひとっ飛びである。
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