装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
500 / 650
本編

800 魅惑のチョコミントバニラ・中編

しおりを挟む

「うーむ、にわかには信じがたい光景だ」

 オスローが呟く。

「そりゃな」

 八大迷宮の一つ、断崖凍土、最奥。
 一部の限られたものにのみ侵入を許されるその場所。
 いや、一部というより誰も到達したことのない領域。

「おら! どんどん並べていくぜ!」

「ぴっ」

「ピー助もわざわざ手伝いありがとうな!」

「ぷぴぃ!」

 そんなドえらい場所にて、テーブルの上に様々な料理が並べられていく。
 俺の知る中で最高のシェフ二人が、最高の素材を使った、最高の料理だ。

「うっほ~! ピクニック気分かとおもっとったけど、やばいやんこれ!」

 断崖凍土のダンジョンコアとその代理が囲む状況でダンジョンピクニック?
 さすがにマイヤー、それは……とおもったけど。
 俺がダンジョンに来た時って大体こんな感覚だから何も言わないことにした。
 この感覚を味わってもらおう。

「ダンジョン料理とかいうテーマで一般公開したら儲けれるかもなあ」

「マイヤー、見世物にする気か」

「せっかく透明で強固な氷を作れるなら、魔物がおるところ見物させたらええやん」

 動物園か。
 いや、水族館的な。

「世の中物好きがめっちゃおるから、割と高値払って来るやつ多いと思うで」

「一理ないこともないわね」

 俺の隣にいるイグニールが頷いていた。

「前の一件以来、階層の一部をアトラクション化したでしょトウジ?」

「うん」

「それが地味に冒険者以外をここに呼び込んでんのよ」

「ま、まじか」

 全くその辺触ってなかったんだが、意外なことに人の訪れは増えているらしい。

「ここへの護衛依頼、かなり増えてるわよ」

「最近ギルドで依頼物色とかしなかったから、気がつかなかった」

「ええやんええやん、したらええやん」

「俺に言うなよ」

「せやかて構造的に人がいっぱい来た方がええんやろ?」

「まーね」

 人が訪れる、ということはそれだけダンジョン内の魔力も増える。
 中にいる生物から魔力を吸収するんだからな、ダンジョンって。
 そこに生きてる、生きてないとかは関係ない。
 殺した方が手っ取り早く全てを奪えるだけで、生かしててもいいのだ。

 ……ん?
 ダンジョンコア。
 魔力を吸収する。

 ユノに会ってから、ダンジョンというものについてしばしば考えていた。
 なぜ生まれたのか、誰が生んだのか。
 厄災が訪れたさい、この力を渡したのはユノではない。
 だが、同等の存在が渡した、ということはなんとなく予想していた。

 与奪の権利は、ある意味神とか、この世を管理する存在のみが出せる。
 生き物から魔力を吸収する……すなわちそれって魔力与奪権利の奪だ。

「なんのために……」

 と呟いたところで、一つの仮説が成り立つ。
 明らかにユノの敵対者ではないだろうか。
 そういうことだ。

「どうしたの、トウジ?」

 イグニールが俺の顔を覗き込む。

「あ、いやなんでもない」

「ぼーっとしないで聞いてみ、トウジ。交渉や、交渉」

「ん? え、まじで?」

 ぐいっと迫り、促すマイヤー。
 アイデアを憤怒に伝えろと言うのか……。

「……何百年ぶりの食事だろうか」

 ちらっと憤怒を見てみると、スープを一口飲んで感動していた。
 あれだけ起こっていた形相が、今はもう冷静そのもの。
 敵対者とは全く思えない。
 グルーリングもそうだったしな。

 まあいいや。
 ここは一つ。
 マイヤーに促されるままに聞いて見てもいいかもね。

「ヒューリーさ──」

「──胃が荒れてるなんてことは万に一つもないだろうが、とりあえずそれ食べて調子を見てくれや」

 話しかける前に、パインのおっさんがスープを感想を求めて憤怒に話しかけた。

「む? う、うむ」

 屈折ないパインのおっさんの笑顔に、どぎまぎとするダンジョンコア。
 一般人からこうした扱いを受けるのも久々なのだろう。
 もっとも、おっさんが一般人の中に含めて良いのか謎だけどな。

「行けるようだったらじゃんじゃん食え! 腹いっぱいになれば、みんなハッピーなんだぜ」

「ォン!」

「ハハッ! ポチ公、なかなか良いこと言うじゃねえか! 旨い飯があれば世界は平和だ!」

 俺もそう思う。
 食事って、人間にとって必要不可欠な娯楽要素だよなあ。
 美味いって感覚は脳にダイレクトアタックする。

「食って食ってハッピーハッピー!」

「アォンアォーン!」

 シェフ二人がなんとも言えない怪しい宗教感を醸し出している最中。

「パパ! あーんするのじゃ!」

「いや、皆が見ている目の前でそれは……」

 ラブが早速親子の絆っぽい感じのものを演出していた。

「お願いなのじゃ! 久しぶりなのじゃよ! したいしたいんじゃー!」

「わ、わかったわかった」

 駄々をこねて甘えられて、憤怒はラブのいうことを聞いてやる。
 ……このダンジョンのさらなるアトラクション化の話を持っていくのは後にするか。
 今はゆっくりさせてあげたい。

 だが、過去にダンジョンになった時の、災厄の時のことは食事が終わり次第聞こう。

しおりを挟む
感想 9,839

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。