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本編
787 最終手段か。
しおりを挟む女性陣が裸でいると言うお宝展開だったのに。
なんだか居た堪れなくなったので部屋に戻った。
(先ずは、思い切って体に入り込んでみるのは如何でしょう)
(ふむふむ)
氷漬けされた俺の死体を見つつ、ローディと共に思案する。
(今の社長の状態は、抜け落ちた魂がそのままって感じです)
(ふむふむ)
(入れ物に戻ってしまえば、生き返るのではないでしょうか?)
(やってみる)
すいーっと自分の体に移動して、同じ体勢を取った。
同化するように、寸分違わず。
(……)
……戻った気がしねえ。
なんだこれ、ちょっとやってて悲しくなって来た。
何が悲しくて俺の死体を寸分違わず重ならないかんのだ。
(社長、起きつつ幽体離脱って言ってみてください)
(言わねーよ)
そもそも左足まだ治ってないから重なっても不恰好。
(つーか、お前が戻る時はどうしてんのよ)
(私ですか?)
(うん)
(自分の体に重なるとかそんな面倒なことはしてませんね)
(……おい)
意味ないじゃん。
こいつをアドバイザーに迎えた俺が馬鹿だった。
(そもそも戻ろうと思って戻ることないですし)
(むむ?)
(留守中のお姉様の部屋でゴロゴロして、一通り満足したら勝手に戻ります)
(へ、へえ……)
さすが生き霊。
今の状態のこいつはイグニールへの思いが形になった存在。
欲望に忠実な思念体ってことだな。
(戻れなくなることとか、想像したりしないの?)
(別に、普通に私は生きてますし、勝手に活動してますし)
(そ、そっか)
仕事のフラストレーションをこうして生き霊で済ます。
あれ、なんかそう思うと効率的だ。
気づかれなければ、誰にも迷惑かけないからね。
(ってことは、俺も何かに満足したら戻れたりするのかな?)
(そもそも元が死んでますからなんとも)
(だよね……)
ウィンストがこうして凍らせたと言うことは、だ。
心肺機能が停止したことを証明している。
(貴方の状況が正直不可解過ぎて、手の施しようがないですね)
(そっすね……)
ローディの言う通り、マジでどうすることもできなかった。
(でも一応考えうる方法は全て取りましょう。発散するのです)
(発散? 何を?)
(うーん、性欲ですかね? 私はそれですし。とりあえずみてないのでどうぞ)
(できるか! あほ死ね!)
異世界に来て、サモンモンスターも俺の目を通している。
そうわかってから、一回もソロプレイはない。
あ、でも……ブニーの特殊能力で爆発的発散はできた。
今回もそれを利用することによって……!
(あー、ダメだ。呼び出せねえ)
墓ドロ中は、ゲームシステム機能を全て使えないのである。
サモニング図鑑すら開けない状況なのだった。
(呼び出せないって、社長……まさか性的処理を従魔に……)
(なわけあるか!)
もう黙ってろよ……。
仕方ねえ、この手段は取りたくなかったのだが……。
この家には思念体が一つ存在する。
過去に色々と面倒ごとをしでかしてくれた、奴だ。
あまり頼りたくないのだが、最終手段である。
俺もネクロマンサーにジョブチェンジして復活するしかない。
恨みつらみブーストが心配なのだが、背に腹は変えられない。
(よし、一つだけ思いついたから、その方法で行こう)
(なんでしょう?)
(リビングの神棚に飾ってある奴を使うんだ)
(……あの禍々しくて私も近づけないものを使うんですか?)
(あ、知ってたの?)
(それはもう。初めてこの家に来た時、バッチリ目が合いましたし)
やはり思念体。
同じような存在同士だと気が付くようだ。
=====
※ブニーとはクラーケンのサモンモンスター。
※特殊能力は攻撃するたびに、受けるたびに快感を得る。
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