装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
483 / 650
本編

783 霊体でやばいやつにであった

しおりを挟む

(ナ、ナニアレェッ──!!)

 なんかしんみりした気持ちになっていたら、なんかいるんですけど。

(ああ、おいたわしやお姉様ぁ……お姉様、お姉様お姉様)

 やばい。
 時には頬を抑えて恍惚としたり。

(それもこれもあの男が起因しているのかしら……ギギギ)

 稀に爪を噛んで恨めしそうにしたり。
 とにかく、ヤベェのが目の前にいらっしゃった。

 マイヤーは気づいていない。
 つまり、俺と似たようなタイプである。

 更に言えば、俺はあいつを知っている。
 そして俺の知る人物は生きている。
 オスロー親子の研究所に勤めているその名は、ローディ。

 サルトの冒険者をしていた頃に助けた女性。
 イグニールによって作られたダメ女である。
 もうとんでもない心頭ぶりは、どこぞの学校の七不思議になるレベル。

 ここへ来て。
 ここへ来てこいつが出てくるのなんでだよ。

 正直言って、ダンジョンコアよりやべえ相手だぞ。

(やべぇ、逃げないと……)

(お姉様ぁん……あ? なんだお前だれだよ)

 気づかれた。
 戦いますか?
 いいえ、逃げます。

(いや、ちょっとその辺を通りかかった霊です。それじゃ)

(待ちなさい)

 肩を掴まれた。
 逃げられない。

(あの、その、えっと……どちらの地縛霊ですか?)

(生き霊ですよ)

 自分で言ってんだけど、こいつ。
 まあ、そうなんじゃないかとは思った。
 だって生きてるもんな、お前。

(くっ、こうして霊体になってまでお姉様の身を案じているというのに……)

 生き霊ローディは、言い表せないものすごい形相で叫んだ。

(どこまで私の邪魔をすれば気が済むんですか、あなたは!)

(ええ……邪魔も何も、久しぶりにあった相手にそれ言う?)

 俺はこいつとの接触を徹底的に避けて来た。
 だからそんなを言われる筋合いはないのだけど。

(言いますよ! お姉様と隣にいつもいて!)

(パーティーだからね)

(ずるいずるい、研究所のトップじゃなければ殺してます!)

 こ、怖い。
 権力的なガードは通じないタイプかと思ったのだけど。
 その辺の分別はまだ持ち合わせているようだった。

 こうして生き霊になってまでこっそり見守るストーカーだからな。
 イグニールの迷惑にならないことを一生懸命考えての上でだろう。

(なんで生き霊になっても自我持ってるの? 本体は?)

(は? そんなの普通に決まってるじゃないですか)

 えっ、普通なの?
 この世界の生き霊って、普通なの?

(貴方だって普通に過ごしてるじゃないですか? バカなんですか?)

(いや俺は……)

 ちょっとちげーんだよ。
 くそ、こいつと話してるとバカになりそうだ。

(本体は何してるのかって聞いてんのよ。仕事しろよ、研究所で)

(大丈夫です。ここにいる私はお姉様の愛専門の感情なんで)

(は?)

(私の本体は、研究への熱意を持ってデスマーチに勤しんでいます)

(そ、そうなんだ……)

 聞けば、イグニールへの愛のみがこの場にいるらしい。
 そして、本体は歪んだ愛情が抜け落ち、すっきりした表情で仕事に打ち込んでいるそうだ。
 知らんがな。

(と、とにかくキモいから帰れよ)

 イグニールの部屋に、だ。
 ドアを透過して顔を突っ込んで、下腹部をもぞもぞしながら見るのやめろ。
 何してんだお前、霊体の有効活用をするな。

(は? 貴方に言われたくありません)

 俺のことを蔑んだ目をしながら、ローディは再びスポッと顔を突っ込んだ。
 こいつ、こんなことずっとしてたのか?
 プライベートもへったくれも何もねえなおい……。

(あのさ、お前と一緒にしないでもらえる……?)

(貴方も生き霊なんでしょ? 私のは愛、貴方のは性欲。貴方のがキモい)

 お前に言われたくねえええ!

(ちげえよ。俺、普通に死んでるんだけど)

(死んでる? ついに天罰での当たったんですか?)

(こっちに死体あるよ)

(うわグロっ、片足ないし、色々焦げて、何やってたんですか……)

(ちょっとダンジョンコアと死闘してたら、ちょっとね……)

(ダンジョンコアって……まあ、死んでるんなら成仏してください。それじゃ、私は見守る仕事がありますんで)

(ちょ、ちょっと待って!)

(なんですか? 邪魔です。今忙しいんですよ。久しぶりにお姉様に会えたのに……)

 こいつ、俺とイグニールが結婚したことに気付いてないのか。
 知ったら何されるかたまったもんじゃないな……。

(いや、どうやって生き霊から本体に戻るの?)

(はあ? もう死んでるなら諦めてくださいよ)

(いやいや、一応今後の参考までに……)

 馬鹿げた話だが、こいつから蘇る方法が聞き出せそうな気がした。
 確かに死んじゃいるが、あくまで墓ドロってだけで、まだ生きている。
 こうして意識があるんだからね?
 死んだ連中がみんな幽霊になるのならば、周りは幽霊だらけだろう。





=====
幽霊になったら、絶対覗き見する。
そういう回です。
しおりを挟む
感想 9,839

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。