装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

778 起きろよ

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「失せろ、私に──」

 アイシクルミントの巨大鉢植えが木っ端微塵に割れる。
 HP1割で着々と減りつつあると言えど、さすがの耐久値。
 そのほかのステータスがべらぼうに高いからさもありなん。
 攻撃力もない巨大鉢植えを叩きつけたところでなんともだ。

「──構うなアアアアアアアアアアア!」

「いいや、構うぞ!」

「うむ、構い倒してやろう!」

 キングさんと二人で飛び込む。
 渦中へ。
 休日の家族サービスを放棄してると、嫁と娘に出ていかれるぞ。

「父親ならよ、起きろ! 外に出ろ!」

「主の通りである、この引きこもり出不精め!」

 休日だからってな、日がな日中ゴロゴロされちゃ困るんだ。
 戦闘で部屋の中は荒れ果てて、掃除が超大変なのである。

「聞こえてるんだろ! 憤怒!」

「黙れ! 貴様だけは、貴様だけは!」

 やっぱ何か因縁があったんだな、邪竜と。
 俺の右手を見てから、雰囲気が変わった。

「何かがあったとしても俺にはどうすることもできねえよ」

 つーか、強いていうなら倒してやった。
 邪竜倒して、指輪に霊核埋め込んでやったのである。
 感謝こそされても、恨まれる筋合いはない。

 しかしながら、霊核が宿った武器。
 それはある種のつながりを示すものである。

 作れるのが俺だけしかいないから、怒るのも仕方ない。
 とかそんな理由で逃れることはできない。
 イグニールの杖が、その存在の証明であるから。

 イフリータとイグニールの関係性を鑑みると……。
 うーん、標的になるのもわかる。

「でもそんなの関係ねえ!」

「ど、どうした主よ!?」

「あ、いや別にこっちの話」

 いきなりキレ出した俺にキングさんが驚く。
 昔あったよな、このネタ。
 まあいいや。

「憤怒さ……」

 アイシクルミントの破片が辺りに散らばっている中で話す。
 無効化装備を貫通するような、とんでもない熱気。
 散らばった氷の破片は、その熱量を相殺してくれていた。



【アイシクルミント】
一定時間、範囲内の火属性を無効化



 おそらく、ボス戦用のアイテム見たいな扱いなのだろう。
 俺の装備も、別に無敵チートってわけではない。
 確かに役立つのだが、絶対回避不可能ギミックだってボスにはあるのだから。

「ガアアアアアアアア!」

 憤怒の拳が耳元を殴りつける。
 何かが破裂するような音が聞こえた。
 HPがミリ以下になった。
 あぶねえ、即死しかねん一撃だったっぽいな……。

「……過去に何があったか知らんけど」

 襟首掴んで、一気に憤怒の顔を引き寄せた。
 無敵時間で今は死なないから、一気に話をつける。
 片ではなく話を。

「今は、ラブがいるだろ」

 その瞬間、届いたのか。
 憤怒の瞳孔に確かな意思が宿ったように見えた。
 ラブと同じような青い瞳が、少しだけ動く。

「──ッ」

 憤怒の目に反射して映っていた。
 ラブの姿。
 口を激しく動かしている。
 上手く聞き取れないが、パパって必死に呼びかけている気もした。

「一つ教えてやるけど、お前がいくら消えろ失せろと脅しても閉じこもっても」

「……」

「ラブは行くって言ってたぞ、死んだとしてもそれが娘の役目だってなッッ!」

 良いのか、お前はそれで。
 良いのかつってんだ。

「お前はそれで、良いのかって、言ってんだよ!」

 答えろ、憤怒。

「邪竜がうっとおしいなら、別に右腕くらい千切って良いぞ」

 それでお前の心が晴れるなら、な。
 一本や二本安いもんだ。
 もうすでに片足ないし、前に左腕食いちぎられてるし。
 まあ、治るから自己犠牲とかそんな高尚なもんじゃないけど。

「とにかく愛娘が起きろって言ってんだ」

 もういいだろ。

「右手の邪竜のことは、後で説明するよ」
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