装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

768 愛し来る

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「憤怒の真骨頂、それは怒りのままに際限なく全てのステータスが上昇して行くことじゃ」

「マジか……最強かよ……」

「根本的な能力としては、傲慢をも凌ぐと呼ばれると過去に呼ばれておった。ただし……」

 俺を背負って走りながら、ラブは様々な情報を俺に教えてくれていた。

「圧倒的な力の代償は大切なものじゃった」

「まあ、付き物だろうよ」

 怨嗟の鎖に束縛されたウィンストの時も、そういった話を耳にしている。
 映画でもよくありがちな、大いなる力には大いなる責任ってやつだ。

 代償、代価。
 必ずと言って良いほど、そういったもんにはその言葉が付き纏う。

「過去に怒りで死なせたのは実子。わしとパパは血はつながっとらんの」

「そうか……でも、それから二人で家族みたいなもんだったんだろ?」

「まあの」

「だったら家族だ。俺だって、みんなとは血が繋がってない」

 それに、俺はこの世界の人間じゃない。
 それでも家族だという確かな絆は、みんな持ち合わせている。
 血縁だけが家族ではない。
 そりゃ確かに特別な関係なのかもしれないけど……。

「両親ってもんはもともと血が繋がってない赤の他人同士だからな」

「ふむ?」

「どんな道も一緒に歩いて行く、その決意がすでに家族じゃない?」

「そうじゃの」

 家族の理由は子供ではない。
 夫婦関係は冷めきっていても、子供のことがあるから家族でいる。
 そんな話をよくネットで見たりした。

 そんなもんなのかね、と思うけど、今だったら確実にこう言える。
 家族ちゃうがな。
 幼くても、想いは必ず伝わってるし、背中を見て考えるものである。
 俺に子供ができたら、そういう冷たい背中は見せたくないと思った。

「今こうしてダンジョンの奥へと向かう最中も、同じ道かの?」

「そうだよ。だから手伝ってんだ」

 ラブから返事はなかったが、心なしか嬉しそうな雰囲気を感じた。

「うーむ」

「さっきから人の背中の上で何をやっとるんじゃ?」

「いや、左足くっつけれないかなって思って」

「どうじゃ?」

「ダメっぽい。俺の持ってるポーションでもちょっと難しいや」

 暴食のグルーリングの時は、阻害攻撃を持っていた。
 だが、今回俺の足を切り飛ばしたのは鋭利な氷。
 ダンジョンコアの攻撃じゃないから、治ると思ったのだけど……。

「それは憤怒の支配があるからじゃの」

「憤怒の支配?」

 聞き返す俺に、ラブが説明してくれる。

「怒りは相手から全ての権利を剥奪する。その効果として、まずは回復阻害」

「なるほど……」

「さらに段階が上がって行くごとに生命力までも摘み取るようになるのじゃ」

 支配領域も、段階を経てどんどん外へ外へと広がって行く。
 今はダンジョン内という制限を持つが、それもどうかわからない。

「もしも、この領域が拡大を続けダンジョンを超えればとんでもないことになる」

 だから、遠い北方の極寒の大地。
 生命がほとんど育まれないようなこの場所の奥地にダンジョンを構えている。
 皮肉にも、ダンジョンができたことで新たな生態系が生まれてるんだけどな。

「聞けば聞くほど、やばい代物だな」

「相手が強ければ強いほど、パパも我を忘れて強くなるのじゃ」

 だがの、とラブは続ける。

「最後は燃え尽きる」

「……燃え尽きる、か」

「憤怒の炎は精霊が持つような優しく包むようなものではないのう」

 自分もろとも、全てを焼き尽くす大いなる怒り。
 それが憤怒である。

「うーん、聞けば聞くほど、なんだかどうしようもなく思えてきた」

「無論、策はあるのじゃ!」

「おお! やっぱ無策じゃなかったか、どうするんだ?」

「のはは、愛する娘が涙を流して叫んで名前を呼べば、パパはきっと答えてくれるのじゃ!」

「えっ」

 それ無策じゃない?
 無策過ぎない?

「……一瞬でも期待した俺がバカだった」

「我ながらぱーふぇくとな作戦じゃろうにの!」

「いや、こうなる前、呼んでもまったく聞き入れてくれなかっただろ」

 ラブの言葉は、完全に聞こえちゃいなかった。
 だからさすがにその作戦はちょっとなあ……。

「他の作戦はないの?」

「ないのじゃ。でも、本気で殺すならわしらは焼き殺されとるぞ?」

 今この場で生きとるという状況、そこに希望を見出したとのこと。

「いやそれは……」

 フォルの効果なんだけど、と考えたところで思い浮かぶ。
 ラブはグループに突っ込んでない。
 それでもこうして生きている、確かに何かありそうだった。

「昔のう、賢者に聞いたんじゃ」

「ん?」

「もしも遠い未来、治らない怒りが封印を飲み込んだ時、この言葉を思い出してっての」

「どんな?」

「愛し来る、冷涼」

「……いとしくる、冷涼? どういう意味だそれ」

「わからんが、賢者の世界の言葉での……」

 ラブはその言葉を噛み締めながら言う。

「やっぱり熱いものは愛しい人が冷ましてやらなきゃいけないとか、そんなんかの?」

「どうだろう……?」

 賢者め、何か方法があるならしっかり伝えておけよ。
 なんでそんな、朧げな言葉で残したんだ。

 今後に及んで運命論的な意味なのか?
 もしくは、初めからそんな方法はないってことか?





=====
ダンジョンの脆さとは何か。
故の強さとは。
と、言う部分もいずれ語られるでしょう。
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