装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

719 後の話

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「私としては、公爵家の立場は持っておきたいところなんだけど」

「ふむふむ」

 イグニスを交えて、今後に関しての話し合いを行う。
 デプリのウザさをなんとかするためには、その内部に食い込むのが一番良い。
 イグニールはそう言っている様だった。
 確かにそうだが、別にそれをイグニールがしなくて良いと俺は思う。

「公爵は引き続きイグニスさんにしてもらって、支援だけしようよ」

「わ、私がか……」

 イフリートとイフリータ。
 二人の火の大精霊に認められながら結婚を誓った俺たちを前に。
 イグニスはなんとも恐れ多いといった風の対応に変わっていた。

 確かに身分的な話になればなんとも言えない。
 だが、もう一体の火の大精霊を召喚できるのならば、十分とのこと。
 むしろ、魔法に秀でた他の貴族からの誘いだってあるかもらしい。

 それはいらんな。
 俺はイグニールがいい。

 いつものソファでは、自然に俺の隣に腰掛けていたイグニール。
 なんだか今日は、さらに距離が近い。
 と言うか、心なしかすごく楽しそうにくっついている気がする。

 これ、もしかしなくてもリア充?
 この後爆発オチとか待ってたりしないよな?

 話を進める。

「家がギリスにあるので、デプリに長いこといるわけにもいかないんですよ」

「なるほど……」

「それに、デプリ上層部って何かと敵が多いし嫌いだからいたくないんです」

「教団の件もそうだが……どうしてそこまで君はもめているんだ?」

 首をかしげるイグニスに、俺は目を丸くした。

「え? 公爵さんならとっくに知っていると思ってましたけど?」

「む? 君が背信者だとか言われているのは知っているが……?」

「いや、その理由ですよ。ばちばちやってた理由」

「すまない。正直自分のことで精一杯過ぎて、わからないのだ」

 ため息を吐いて頭を下げる初老の男。
 イグニールを連れ戻しに行ったのも、全部トゥワイス手引きか。
 こいつは、言われるがまま、頼むがままって感じである。

「そもそも、この国のお偉いさんにはトウジの名前は有名よね?」

「そんなに有名なのか?」

 俺の代わりに今だに腕にべったりのイグニールが答える。

「ええ、だって勇者召喚でやってきた異世界人だもの」

「勇者召喚……だと……」

「トウジの話だと、周りに貴族もいたらしいから見てるはずだけど」

「すまない。たくさんの貴族が集まる場所が嫌でお腹を下していた」

 ……過敏性腸症候群か!
 まあ、気持ちはわからんでもない。
 日本にいた時は俺だって苦労した。
 辛いよなあ、あれって。

「つまりサボって休んでたわけね」

「病欠だ」

「誇らしく言ってんじゃないわよ……」

 キリッと病欠発言を受けて、額に手を当てるイグニールだった。
 ともかく、公爵家は割と弱々しい立場にある現状。

「私としては、もう隠居して君たち二人に家督を継いでもらいたいのだが……」

「あー……あくまで俺が婿入りするのは受け入れますけど、家督はちょっと」

 貴族のなんたるかとか知らない平民。
 いや異世界の底辺出身だからな、俺は。
 上級国民でもなんでもないので、それは面倒過ぎる。

「公爵をずっと続けてきたイグニスさんがこのまま続けたら良いですよ」

「しかし……」

「大丈夫ですよ」

 自信がないタイプだとは、イグニールから事前に聞いていた。
 期待を背負ったけど、イマイチだったという過去があるから。

 それに聞いた話じゃ、イグニールの母親。
 つまるところの自分の姉にも、劣等感を持って生きていると。

 ようやく恵まれた息子もその気負いから魔力が暴走して怪我。
 色々と不運が重なってしまった形なんだよな……。

 イグニールの母さんに関しては、そもそも大精霊になってる。
 どういうわけか知らんが、そんなのに劣等感なんて持っても仕方がない。
 はえーすっごい、で受け流せたら良いのだけど。
 この事実は言わないでおいてね、と言われているので秘密である。

「とりあえずブレイズくんを呼んでもらっても良いですか?」

「う、うむ……?」

 俺はこの場にブレイズを呼んでもらった。
 顔の半分に大きな火傷を負った少年である。

「トウジお兄様、イグニールお姉様、来ました」

 見るからにいたたまれない顔の少年は、丁寧にお辞儀した。
 良い子じゃないか。

「なんでしょう?」

「その顔の傷、お兄さんが治してあげるよ」

「えっ、そんなことできるんですか!?」

 俺の言葉に、イグニスが立ち上がって身を乗り出した。

「まあ、薬とかポーションは俺の専売特許ですし」

「な、なんと……」

「後は火属性への耐性が全くなくて、こうなっちゃったんだよね?」

「そうね」

 イグニールに確認すると、頷いた。
 うーん、二の腕に伝わるダイレクトマシュマロ感覚。
 良きです。

「でも潜在能力的には、とっくに父親は超えてるんじゃないの?」

「ふぐっ」

 ズーンと俯くイグニスだった。
 イグニール、あんまりそう言うこと言っちゃダメだって……。
 つーか、俺も装備がなかったらただのもやしなんだが……?
 ダメ親父に、少しだけ同じ波長というものを感じる俺がいた。

「ブレイズ、隠れて練習してたでしょ?」

 ブレイズを目の前に呼び、顔の傷を触りながらイグニールが言う。

「……はい」

「隠してるけど、ちょくちょく腕に新しい火傷の跡もあるみたいね」

「な、なんでそんな危ないことをするんだブレイズ!」

「もう火傷してるなら、これからいっぱい練習してても一緒だよ父さん!」

「そ、そう言う問題じゃなくてだな……」

 意外ととんでもねえ奴かもしれん、この目の前の少年は。
 多分、父親のことを見ていられなかったんだな。
 それで自分から強くなろうと、必死だったのだろう。

「だが、あんまり親に心配かけるのは良くないよブレイズくん」

「はい……」

「とにかく、はいこれ」

「これはなんでしょう?」

「属性耐性を持つ装備だよ。肌身離さず身につけておけば好きなだけ練習して良い」

 全属性耐性に加えて、HP超過ダメージ後の生存効果。
 その後、無敵時間内にて安全圏へのHP回復効果を持っている。

「な、なんなのだその装備は……」

「親愛なる親戚に対する、俺からの贈り物です。イグニスさんにも適当にあげます」

「いや、そんな国宝級の装備、迂闊にはもらえない」

「たくさん持ってるんで良いですよ、気にしなくて」

「……何者なのだ、君は……いや、イフリートを召喚できることだけで十分なのだが……」

「勇者召喚に巻き込まれた、ただの一般人ですよ」

 あくまで、ね。
 いやこれからもそこは貫き通すぞ。
 余計な責任を、運命とやらに背負わされたくないので。

「じゃ、あとはポーションだけど」

 と、インベントリからポーションを出そうとしたら。

「それは大丈夫です」

 丁寧なお辞儀とともに断りを入れるブレイズだった。

「良いの? 綺麗に治せると思うけど」

「……この傷は、残しておきたいんです」








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じゅのー「出番まだだし!? まだー!?」
ほね「こらこら、今は彼らが主役ですぞ……」
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