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本編
715 本当に性格悪いやつの大いなる一撃(連撃)
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※視点トウジに戻ります
なんかすごい汚いデブが、イグナイト家当主のおっさんをぶっ飛ばした。
次は、イグニールも魔の手にかけようとしていた。
すぐに準備してイグナイト家に着いた瞬間、目の前で起こっていた出来事である。
途中からだが、話は聞いていた。
デブがこの屋敷に入ってからこっそり中の情報は探っていたのである。
イグニールが前に立ち、なんだか守ろうとしていた。
イグナイト家は当初は敵だと思ったのだが、違うようである。
本来の敵は、やはり教団。
イグニスと呼ばれる現当主も、このデブからすごい言われてたみたいだしな。
「──デブじゃなくてぽっちゃりだ!」
「いや、お前はただのデブだボケ」
クイックで間に割り込んで、クリームパンみたいな手を掴む。
まったく、これで同じ30歳か……。
俺は飯の時間すらもネトゲに当ててたから太らなかった。
だが、もし一般的な食欲があったらこんな体になっていただろう。
「人前で偉そうに語る時は、生活習慣を整えろ」
「いきなりなんだ、お前は!」
なんだお前は、か……。
「イグニールのパーティーメンバーだよ。連れ戻しに来た」
「では、お前は話にあったトウジ・アキノか!」
目の前のデブ。
トゥワイスは、俺の顔や体をジロジロ見ながら言った。
「ほっそりしてて僕ちんより弱そうだな、ガリガリ」
「うるせーぞ、チビデブ」
「カチーン。僕ちん、今日ばっかりは頭にキタよ本当に」
「腹に来てんだろ、デブ」
口喧嘩で勝てると思ってんのか。
勝てなかったら自分の立場を盾にしてるけど、俺には効かんぞ。
冒険者って立場は、国を跨ぐ第三者みたいなもんだからな。
それに、こういう手合いにはコンプレックス一点攻めが良い。
「つーか、聖人と同格、もしくはそれ以上とか言ってたな」
「ふん、神の加護を持つ僕ちんにガリガリが勝てるわけないね!」
俺はバッと右手を掲げて答える。
「お前ら教団が送り込んで来た聖人とやらは、俺は右腕一本で倒したぞ?」
つまり、俺の方がお前より強い。
そして、ガリガリの方がデブより強い。
世の中のムキムキのやつは、筋肉を過信し過ぎだ。
「……ここに来た時点でお前が聖人や僕ちんの兵士を倒したのは知ってるぞ」
だが、とトゥワイスは続ける。
「ここは教団の本部が存在する都市で、僕ちんが招集すれひでぶっ──!?」
その瞬間、掲げた右腕にトゥワイスを引き寄せてぶん殴った。
聖人や兵隊をけしかけた親玉だな、こいつが。
余計なおしゃべりとかはもう無用で、とりあえずポチの仇である。
どうせあれだろ?
イグニールとの結婚するためにイグナイト家にも圧力をかけていた。
それなら全てこいつが悪い。
こいつをボコボコにしなきゃ俺の気が済まないのである。
「い、いきなりな──べあっ!?」
「なんだよ、言ってみろよ」
「今から言おう──ばべびっ!?」
「あと100回くらいこの繰り返しするから覚悟しろよ」
で、本当に100回数えてやった。
俺の後ろに控えるキングさんとロイ様が数えてくれていた。
一方的な顔面100回パンチ。
何か言おうとしていたが、御構い無しだ。
途中で踏ん張りを見せた聖人の方が、まだマシである。
「……ハ、ハァハァ……うぐ、ぐ……」
打ち拉がれて横たわるトゥワイスの姿に、全員引いていた。
イグナイト家に仕えていた人たちも。
そしてこのトゥワイスと一緒にこの家に来ていた者たちも。
全員が息を飲んでこの光景を呆然と見ることしかできなかった。
「確かにこれだけやって死なないってことは聖人並みだな」
「ぼ、僕ちんにこんなことをして、お前絶対に許さないからな!」
「別に許されたいとか思ってないし」
そもそも背信者とか異端者とか。
教団の考え方では、すでに許されない立ち位置にいる。
俺個人としては今更何をやってもどうでもいい。
つまるところの、無敵な立場にいるわけだ。
「とりあえず話はそれだけか? 許さないなら許さないで俺も行動に移すけど?」
こいつを手にかけるのは手に汚れが付着しそうなので、ジュニアの頼む。
今日、デプリに開いた大穴に、超高度から落下していただきましょう。
神の御意志に委ねるってことだな、この辺も。
生きてても死んでても、俺にはもう関係ない、けじめはつけたってことで。
でもあれだな……。
神様がそれでも生かすってんなら、もう神様に会いに行くしかないね!
「黙れ! 僕ちんはイグニールちゃんと婚姻し、公爵家の立場を正式に得るんだ!」
「いきなり自分語りかよ。そんな願望押し付けられても知らないって」
追い込まれると唐突に自分の願望を押し出し叫ぶやつ、よくいる。
そしたら俺も言うぞ? 願望。
「黙れー、俺ちんはみんなで揃って美味しいご飯食べるんだー腹減ったんだー(棒)」
「ふ、ふふ、ふざけんあ! そ、そんそん、そんなのとぼぼ僕ちんを一緒にするな!」
煽られ過ぎててもう呂律が回らないほど頭に来てるっぽいな。
もしくは、俺がバカスカ顔面殴ったダメージ。
「はあ……僕ちん君はさ、今までなんでも思い通りになってきたんだよね?」
ボコボコになった醜い顔で俺を見上げるトゥワイスに近寄る。
「一応成人してからもわがままは許されるけど、その責任は全部自分に来るんだよ?」
「ぼ、僕ちんを子供扱いするな!」
「子供扱いしてなかったら、すぐにでもここで消滅させてるけど良いの?」
「子供扱いしろお!」
なんだこいつ。
「子供扱いするとしたら、君の親が今回の責任全部背負うことになるけど良いの?」
「ひっ、誰か! おい、そこで見てないで早く僕ちんを助けろクソども!」
「トゥ、トゥワイス様……そうしたいのは山々なのですが、このスライムたちが邪魔をして……」
バリケード役のキングさんとロイ様が実に良い活躍をしてくれている。
「口を挟んだら我が殺すぞ、貴様ら」
「うむ、三親等より以降も災いが降りかかるだろう」
怖過ぎぃ。
どっちが悪者だってくらい、どハマりしていた。
俺と違って、敵には一切容赦しないからな……。
「ほら僕ちんくん、一人でなんとかしてみなよ? なんでも良いから口動かしてよ?」
「か、金ならいくらでも払う! 言い値で払うから!」
「いくら?」
「1億ケテル出す! 僕ちんのお小遣いの余ってる分、全部出す!」
「えっと、1億って確か……白金貨100枚だっけ?」
「なっ!?」
僕ちんくんの目の前に、白金貨100枚出して積んでみた。
俺の個人資産いくらあると思ってんだ、馬鹿目。
「ダメだな、この1000倍くらいないと、金で俺は動かないよ」
「な、なら! 美女! 料理! 全部望むものをやろ──ぶふっ!? ま、また殴ったな!」
「お前、それ今の俺には禁句だぞ」
美女とかいらないからここに来てんの。
そして美味しい料理を作ってくれるポチがやられたから仕返しに来てんの。
少しは頭働かせて、俺の望むものを提示しろよ。
もっとも、望むものとかこの世に一つ、仲間と家族だけだけどな。
この交渉は、ただのお遊びで徹底的に心をへし折ることでしかない。
「ほら、他になんかないのか?」
「も、もうない! お前が何を求めてるかも僕ちんにはわからん!」
「だったらイグニールとの婚姻も、金輪際ここに関わるのもやめろ」
「そうか、お前はイグニールちゃんを取り戻しに来たんだな?」
「そうだけど」
「だったら、それは金輪際叶わないんだよバーカ!」
「なんで?」
「イグニールちゃんは公爵家の血筋、お前みたいな背信者でどこぞの馬の骨は相手として不相応!」
なぜか、水を得た魚のように急に饒舌になるトゥワイス。
俺との立場の差、みたいなものでしか、もう誇れるものがないのだろう。
「そういうことね? 確かに俺に身分なんてないけど……イグナイト家だから通用するものはあるぞ」
「はあ?」
眉を上げて訝しむトゥワイスの目の前で、俺は呟いた。
「──顕現せよ、イフリート」
なんかすごい汚いデブが、イグナイト家当主のおっさんをぶっ飛ばした。
次は、イグニールも魔の手にかけようとしていた。
すぐに準備してイグナイト家に着いた瞬間、目の前で起こっていた出来事である。
途中からだが、話は聞いていた。
デブがこの屋敷に入ってからこっそり中の情報は探っていたのである。
イグニールが前に立ち、なんだか守ろうとしていた。
イグナイト家は当初は敵だと思ったのだが、違うようである。
本来の敵は、やはり教団。
イグニスと呼ばれる現当主も、このデブからすごい言われてたみたいだしな。
「──デブじゃなくてぽっちゃりだ!」
「いや、お前はただのデブだボケ」
クイックで間に割り込んで、クリームパンみたいな手を掴む。
まったく、これで同じ30歳か……。
俺は飯の時間すらもネトゲに当ててたから太らなかった。
だが、もし一般的な食欲があったらこんな体になっていただろう。
「人前で偉そうに語る時は、生活習慣を整えろ」
「いきなりなんだ、お前は!」
なんだお前は、か……。
「イグニールのパーティーメンバーだよ。連れ戻しに来た」
「では、お前は話にあったトウジ・アキノか!」
目の前のデブ。
トゥワイスは、俺の顔や体をジロジロ見ながら言った。
「ほっそりしてて僕ちんより弱そうだな、ガリガリ」
「うるせーぞ、チビデブ」
「カチーン。僕ちん、今日ばっかりは頭にキタよ本当に」
「腹に来てんだろ、デブ」
口喧嘩で勝てると思ってんのか。
勝てなかったら自分の立場を盾にしてるけど、俺には効かんぞ。
冒険者って立場は、国を跨ぐ第三者みたいなもんだからな。
それに、こういう手合いにはコンプレックス一点攻めが良い。
「つーか、聖人と同格、もしくはそれ以上とか言ってたな」
「ふん、神の加護を持つ僕ちんにガリガリが勝てるわけないね!」
俺はバッと右手を掲げて答える。
「お前ら教団が送り込んで来た聖人とやらは、俺は右腕一本で倒したぞ?」
つまり、俺の方がお前より強い。
そして、ガリガリの方がデブより強い。
世の中のムキムキのやつは、筋肉を過信し過ぎだ。
「……ここに来た時点でお前が聖人や僕ちんの兵士を倒したのは知ってるぞ」
だが、とトゥワイスは続ける。
「ここは教団の本部が存在する都市で、僕ちんが招集すれひでぶっ──!?」
その瞬間、掲げた右腕にトゥワイスを引き寄せてぶん殴った。
聖人や兵隊をけしかけた親玉だな、こいつが。
余計なおしゃべりとかはもう無用で、とりあえずポチの仇である。
どうせあれだろ?
イグニールとの結婚するためにイグナイト家にも圧力をかけていた。
それなら全てこいつが悪い。
こいつをボコボコにしなきゃ俺の気が済まないのである。
「い、いきなりな──べあっ!?」
「なんだよ、言ってみろよ」
「今から言おう──ばべびっ!?」
「あと100回くらいこの繰り返しするから覚悟しろよ」
で、本当に100回数えてやった。
俺の後ろに控えるキングさんとロイ様が数えてくれていた。
一方的な顔面100回パンチ。
何か言おうとしていたが、御構い無しだ。
途中で踏ん張りを見せた聖人の方が、まだマシである。
「……ハ、ハァハァ……うぐ、ぐ……」
打ち拉がれて横たわるトゥワイスの姿に、全員引いていた。
イグナイト家に仕えていた人たちも。
そしてこのトゥワイスと一緒にこの家に来ていた者たちも。
全員が息を飲んでこの光景を呆然と見ることしかできなかった。
「確かにこれだけやって死なないってことは聖人並みだな」
「ぼ、僕ちんにこんなことをして、お前絶対に許さないからな!」
「別に許されたいとか思ってないし」
そもそも背信者とか異端者とか。
教団の考え方では、すでに許されない立ち位置にいる。
俺個人としては今更何をやってもどうでもいい。
つまるところの、無敵な立場にいるわけだ。
「とりあえず話はそれだけか? 許さないなら許さないで俺も行動に移すけど?」
こいつを手にかけるのは手に汚れが付着しそうなので、ジュニアの頼む。
今日、デプリに開いた大穴に、超高度から落下していただきましょう。
神の御意志に委ねるってことだな、この辺も。
生きてても死んでても、俺にはもう関係ない、けじめはつけたってことで。
でもあれだな……。
神様がそれでも生かすってんなら、もう神様に会いに行くしかないね!
「黙れ! 僕ちんはイグニールちゃんと婚姻し、公爵家の立場を正式に得るんだ!」
「いきなり自分語りかよ。そんな願望押し付けられても知らないって」
追い込まれると唐突に自分の願望を押し出し叫ぶやつ、よくいる。
そしたら俺も言うぞ? 願望。
「黙れー、俺ちんはみんなで揃って美味しいご飯食べるんだー腹減ったんだー(棒)」
「ふ、ふふ、ふざけんあ! そ、そんそん、そんなのとぼぼ僕ちんを一緒にするな!」
煽られ過ぎててもう呂律が回らないほど頭に来てるっぽいな。
もしくは、俺がバカスカ顔面殴ったダメージ。
「はあ……僕ちん君はさ、今までなんでも思い通りになってきたんだよね?」
ボコボコになった醜い顔で俺を見上げるトゥワイスに近寄る。
「一応成人してからもわがままは許されるけど、その責任は全部自分に来るんだよ?」
「ぼ、僕ちんを子供扱いするな!」
「子供扱いしてなかったら、すぐにでもここで消滅させてるけど良いの?」
「子供扱いしろお!」
なんだこいつ。
「子供扱いするとしたら、君の親が今回の責任全部背負うことになるけど良いの?」
「ひっ、誰か! おい、そこで見てないで早く僕ちんを助けろクソども!」
「トゥ、トゥワイス様……そうしたいのは山々なのですが、このスライムたちが邪魔をして……」
バリケード役のキングさんとロイ様が実に良い活躍をしてくれている。
「口を挟んだら我が殺すぞ、貴様ら」
「うむ、三親等より以降も災いが降りかかるだろう」
怖過ぎぃ。
どっちが悪者だってくらい、どハマりしていた。
俺と違って、敵には一切容赦しないからな……。
「ほら僕ちんくん、一人でなんとかしてみなよ? なんでも良いから口動かしてよ?」
「か、金ならいくらでも払う! 言い値で払うから!」
「いくら?」
「1億ケテル出す! 僕ちんのお小遣いの余ってる分、全部出す!」
「えっと、1億って確か……白金貨100枚だっけ?」
「なっ!?」
僕ちんくんの目の前に、白金貨100枚出して積んでみた。
俺の個人資産いくらあると思ってんだ、馬鹿目。
「ダメだな、この1000倍くらいないと、金で俺は動かないよ」
「な、なら! 美女! 料理! 全部望むものをやろ──ぶふっ!? ま、また殴ったな!」
「お前、それ今の俺には禁句だぞ」
美女とかいらないからここに来てんの。
そして美味しい料理を作ってくれるポチがやられたから仕返しに来てんの。
少しは頭働かせて、俺の望むものを提示しろよ。
もっとも、望むものとかこの世に一つ、仲間と家族だけだけどな。
この交渉は、ただのお遊びで徹底的に心をへし折ることでしかない。
「ほら、他になんかないのか?」
「も、もうない! お前が何を求めてるかも僕ちんにはわからん!」
「だったらイグニールとの婚姻も、金輪際ここに関わるのもやめろ」
「そうか、お前はイグニールちゃんを取り戻しに来たんだな?」
「そうだけど」
「だったら、それは金輪際叶わないんだよバーカ!」
「なんで?」
「イグニールちゃんは公爵家の血筋、お前みたいな背信者でどこぞの馬の骨は相手として不相応!」
なぜか、水を得た魚のように急に饒舌になるトゥワイス。
俺との立場の差、みたいなものでしか、もう誇れるものがないのだろう。
「そういうことね? 確かに俺に身分なんてないけど……イグナイト家だから通用するものはあるぞ」
「はあ?」
眉を上げて訝しむトゥワイスの目の前で、俺は呟いた。
「──顕現せよ、イフリート」
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