装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

697 人間臭いとキナ臭い

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「よくわからない宗教だと……? インチキカルトだと……?」

「昔は良かったかもしれないが、時代遅れなんだよ」

 恐らくだが、これから新たな時代の到来を迎える。
 とりあえずダンジョンコア渡して黙らせたアドラーのいる国。
 クロイツに、国費をもらって飛空船の造船所や本拠地を作る。

 デプリと仲の悪いクロイツ。
 何故仲が悪いのかは知らんけど、そこは魔族もいる国だ。

「いつまでもお前らの価値観が通用すると思うなよ」

「神は不変、故に私たちも不変なる存在なのですよ」

「信仰してる奴らも神と同格とか、怒られるぞアホ」

 神は死んだとか、別に言うつもりはない。
 いや、すべてのものに神が宿る。
 だからこそありがたいのが日本の価値観。

 自分たちが神の使いだとか、神の意志だとか。
 そう言った価値観で心の武装をするから、この世に戦争は蔓延るんだ。

「結局、自分の心の免罪符がわりに良い様に利用してるだけだな」

「……」

 もともと鋭かった視線が、さらにギッと険しいものに変わった。

「ふむ、貴方はやはり殺しておくべきですね」

 聖人は大剣を構え、続ける。

「背信者、異教徒の範疇ではなく、もはや異物です」

「人間だよ。うんこするし」

「……死んでください」

 聖人の額に青筋が浮かび上がった瞬間。
 バッ、と正面に立っていた彼の姿が消えた。

 見えないけど、なんとなく何をするつもりか理解できた。
 剣聖もそうだったが、超高速で動く時は近接攻撃。
 カオスアビリティの効果を使用して、全力で上に跳び上がる。

「……なるほど、従魔任せかと思いきや、意外とやるもんですね」

 俺の超ジャンプを見上げながら、聖人は呟く。

「なあ、キングさん」

「プルァ?」

 一緒に空中に跳んで回避したキングさんに言う。
 ちなみにキングさんは素でこのジャンプ力。

「あいつだけは、俺一人で相手させてもらえないかな?」

「……」

 キングさんの目が俺をジロリと見つめる。
 できるのか、やれるのか、と問いかけている様だった。

「いつも、全部を誰かに任せたままじゃダメだと思うんだ」

 こと戦闘にかけては、俺が出る幕もないみたいな形だ。
 しかし、家族が酷い目にあったんだ。

 立ち上がるのは誰か?
 保護者の代わりとして仮パパ役をしている俺である。

 いつも俺を助けてくれた。
 背中を見せてくれたキングさんの様に。
 今回は、俺があいつを蹴散らす番だ。

「やれるよキングさん」

「プルァ」

「キングさんが側で見てくれてるから、やるんだよ!」

「プルァッ!」

 巨大な顔面が、ニヤリと笑う。
 その笑顔に送り出されて、俺はインベントリから秘薬を取り出し使用した。

「最初に見たでしょう、上空にいたとて私の射程圏内です」

 ズアッ!
 と、コレクトをやった閃光が振るわれた剣の先から出てくる。

「こんな結末、つまらないですね。私がまた勝ってしまうなん──」

 上空を見つめながらそんなことを言う聖人の言葉が止まった。
 理由は、5倍の巨人になった俺が、閃光を押し返していたから。
 キングさんの無敵効果をなめてもらっちゃ困るんだよな、マジで。
 連続攻撃の次の一撃を無効化する、なんてチート臭いものだけど。
 その真価は、こう言った永続的な攻撃にこそ、特に有効なのだ。

「つまらない? お前、そんな気持ちでハイオークとエルフ殺したのか?」

 だったら、お前の教義ごと踏みにじってやる。
 そのまま着地とともに、聖人を踏み潰しにかかった。
 ドゴォッ!

「くっ──」

 咄嗟に横飛びし、なんとか回避する聖人。
 タイムリミットは30秒。
 だが、高級巨人の秘薬の在庫はまだまだたくさんある。
 飲む必要なく“使用”できるという仕様上、隙はない。
 実質、その気になればずーっと巨人でいることができるのだ。

「──なあ聖人、死んだらどこに行くと思う?」

「神のもとだ。しかし貴方はいけませんけどね」

「俺はいかない。お前が逝け」

 実際に死んでその目で確かめてみれば良い。
 よくわからんものを盾に、驕り高ぶりやがって。

 元のデプリも、いやこの世界の上層部はそうだ。
 子供に使命とか、ロクでもないものを持たせる。
 そう言うのは、自分たちで全部後始末しろよな。

「そんなに神様ってのが大事なら──」

「くっ、これは!?」

 引力を用いて、俺の右手に引き寄せられる聖人。
 でかくなった拳を振りかぶって、俺は勢いよく殴りつけた。

「──勝手に神様のもとにでもなんでも逝ってろよ!」

「ぐ、はっ!?」

「関係ない奴、巻き込んでんじゃねえよ!」

 何かしらの事情があるかもしれないが、そんなのどうでもいいだろ。
 神様が大事な宗教屋さんは、な!
 理屈とか、そういうものを度外視にして神に祈れって一生を終えろ。

 本当に信仰心があるなら、そうじゃないの?
 暴論で、屁理屈かもしれんが、論破してどうぞ。
 神の名の下に殺してもいい道理があるなら、そっちが暴論だ。

 邪魔だから殺す。
 ただそれだけの理由の方が、まだ納得できるね。
 人間“臭く”て良いじゃないか。
 お前らのはキナ“臭い”って言うんだよ。






=====
トウジの屁理屈説教編、──開幕


ちなみに引き寄せぶん殴りって相手が攻撃してなくてもカウンターみたいな威力になりそう
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