装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

695 悲惨

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 ピーちゃんを追いかけて、森を駆け抜けた先には大きな水場が存在していた。
 マップにも登録されていない水場である。
 豊かに湧き出る水場のほとりには、木造家屋が立ち並び、畑もあった。
 雰囲気的には、豊かな自然を有する深淵樹海と似たようなものだが……。

「こ、これは」

 ……今は違う。
 血の匂い、そして血みどろで横たわるハイオークとエルフ。
 あまりの惨状に、思わず言葉を失ってしまった。

「ぷ、ぴ……」

 隣から、小さな声が聞こえる。
 ピーちゃんも、この光景を目の当たりにして言葉を失っていた。
 ほろり、ほろりと溢れる涙が頬を伝う。

「アォン」

 悲しそうな顔をしたポチが、ピーちゃんの隣に立ち手を握った。

「ぷ、ぴぃ……ぴぃ、ぴぃ」

 ダムが壊れてしまったように。
 大粒の涙を流しながら、小さな鳴き声を上げるピーちゃん。

「……ッ」

 そんな中、俺はただただ拳を強く握りしめていた。
 鳴き声を聞けば聞くほど、自分自身に腹が立ってくる。

 どうして、どうして、どうして。
 どうして気がつかなかった。

 ハイオークなら、デプリに着いた時点で子供の存在を感じる。
 しかし、山に入って五日、何のアクションも起こさなかった。

 どこからか俺たちの様子を見ているとか、そんなそぶりもない。
 コレクトや骨だったら、そう言う存在に気がつくはずなのに。

 それはつまり……。
 ピーちゃんの両親に何かあったってことを指し示すのだ。
 そして目の前の現状は、一番最悪なもの。

 俺は、一番見せちゃいけないものを見せてしまった。
 どこで選択肢を間違えた、とかそんな後悔はない。
 ただただ、ひたすら、申し訳がない。
 そんな気持ちが胸の中から止められない勢いで溢れ出てくる。

「トウジ、これは……トウジ?」

 やったのはどこのどいつだ。
 明らかに感じる人為的な殺しの跡である。
 魔物の襲撃後は、基本食い散らかされるから、すぐわかった。

 人里近い場所に住んで、危険だとかなら百歩譲って良い。
 だが、こんな山奥で、しかも言葉が通じる奴らだろう。
 誰が、何で、こんなことをしやがったのか、心がざわついた。

「──トウジ!」

 パチン、と両ほほをひっ叩く音。
 気がつくと目の前にイグニールがいて、赤い瞳が俺を射抜く。

「ぼーっとしてんじゃないの。今はとにかく生存者を探すのが先!」

「あ、ああ……」

 そうだ、そうだった。

「トウジ! コレクトと一緒にあたし上から見てくるし!」

「う、うん、よろしく頼む」

 とりあえず協力してくれるっぽいから任せたのだけど。
 こっちには魂が見える存在がいる。

「……骨」

「……残念ですが」

 そう言って首を横に振る骨だった。
 つまり、生存者はゼロ。
 ピーちゃんの両親も、もう……。

「トウジ、それでも探すのよ。あと、しっかり弔ってあげなきゃだから」

「そうだな」

 誰がやったのか、その犯人を探す前にやるべきことがある。
 この惨状の後片付けと、ピーちゃんのケアだ。
 仮の保護者として、ただただぼーっとしているわけにもいかない。

「イグニール」

「何?」

「ありがとう」

 彼女が側にいてくれてよかった。
 心の底から、そう思う。

「当然よ。私たち、パーティーメンバーでしょ?」

「そうだね」

 よし、気持ちを切り替えて、ピーちゃんのケア。
 死体を集めて綺麗に埋葬しようと動き出した時である。

「クエーッ!」

「トウジ!」

 上空に行ったコレクトとジュノーの声が響いた。

「コレクトが! 森の中に誰か──」

 ジュノーが通訳して叫んだ時、森の中から一閃の白い光が空へと伸びる。
 唐突に、飛空船に積んだ魔力収束砲の様な光。
 光は、たちどころに空にいたコレクトたちを飲み込んだ。

「コレクト! ジュノー!」

 少し焼き焦げた様な匂いをまとわせて、ジュノーだけが落ちてくる。

「だ、大丈夫か!?」

「あたしは平気! それよりコレクトが庇ってまともに!」

 図鑑を確認すると、スロットに一つ空きができていた。
 おし黙る俺の表情を見て、ジュノーが涙目になる。

「あ、あたしがコレクトに上を見に行こうって言ったから!」

「24時間経てば再召喚できるから、大丈夫だ」

 そんなことより、あの攻撃を仕掛けていた奴。
 恐らく、あいつがこの惨劇を生み出した野郎。
 コレクトが見つけていなかったら、不意を突かれていた可能性がある。
 ……無駄にはしないぞ、コレクト。

「出てこい、クソ野郎!」

 光が出た方向に叫ぶと、長い金髪を後ろで編み込んだ男が姿を見せた。

「ハア、面倒だから不意打ちで全て終わらせようと思ったんですけどね……」

 片刃の巨大な大剣を片手に持った金色の鋭い目を持つ男。
 ため息を吐きながら言葉を続ける。

「まあ良いでしょう。神に背く人たちは、みんな死んでください」
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