装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

681 竜樹の船vs翼竜

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「──ギャォォォオオオオオオオオオオオ!」

 飛空船後方より、咆哮をあげながら迫り来る巨大な竜。
 ドラゴン。

『竜がこんなところに出現するなんて、珍しいですぞ~』

 すぐさま甲板に出る俺たちに、骨の声が響いてきた。
 アナウンス用のスピーカーからである。

 余談だが、遠隔通信装置の魔導機器もうちの新商品だ。
 飛空船をばこばこ飛ばすとなると、必要不可欠だから。
 魔力信号と感知装置を取り付ければ、割と安全だ。
 しかし、対応距離がまだ1kmくらいなのがネックである。

『トウジ様、やはりもってますなぁ~!』

「ドラゴンにケツを追われてるってのに、呑気だな骨」

 ダンジョンコア並みにやばい相手だろ、こいつ。
 ウィンストの肩にいつも乗ってるチビ。
 あいつが本気を出してガイアドラゴン化したらマジでやばいぞ。
 怨嗟の鎖が強制進化させたデミドラゴンとか、歯が立たない。

『ちなみに、あれは翼竜の類ですぞ』

「何か知ってるのか?」

『昔はそれなりにいましたからね、どこにでも』

「へ、へえ……」

 今はめっきり見ないけど、絶滅しちゃったとかそんなのかな?
 こんなのがうようよいる昔の召喚に巻き込まれなくてよかった。
 心の底からそう思った。

『ロック鳥のスピードについて来れる翼竜となれば、ストームジャベリンと呼ばれる竜ですぞ』

「それはやばいのか?」

『他の竜種に比べれば、速さ以外は雑魚に近い存在ですが、それは竜の中での話ですぞ~』

「つまりは、やばいってことでオッケー?」

『オッケーですぞ~!』

 だったら尚更やばいよな、なんて思うのだが、骨はまだ言葉を続けた。

『ですが、竜樹を使うこの船も一つの竜としてカウントして良いですぞ~』

「何が言いたい?」

『この際、性能テストをして見てはいかがですか?』

「ふむ……」

 昔の生き残り対、現代魔導技術の粋を結集させた飛空船か。
 それもそれでアリかもしれない。
 竜に勝てれば、空の戦闘はほぼほぼ無敵に近くなるのだし。

 空には、稀にこういった魔物が出る以上。
 戦闘能力のテストもやっておくべきであろうさ。

「じゃ、とりあえずテストよろしく」

『はいですぞ~』

「大丈夫なの? 一応、全力出せるように私もしておくけど」

「……それは最終手段で頼むね、イグニール」

 心配しているところ悪いが、イグニールの全力をポンポン出すのはまずい。
 癖になっちゃったらどうするよ。
 あっ、癖で全力火球やっちゃったてへぺろで、小さな森は焦土だぞ。

「なんか人を危険人物扱いしてないかしら?」

「そんなことしてない。可愛い美人強い女神」

「……適当に言葉を並べても、嬉しいだけよ」

 嬉しいのか、素直だな。
 ま、まあ良いでしょう。

 冗談もさておきと言うことで、骨の指示に従って俺たちは配置についた。
 配置といっても、後方魔力収縮キャノンの照準合わせ用にポチとゴレオが赴くのみ。
 防衛障壁発生装置も、広域拡散フレアも、総船室からスイッチ一つで簡単だ。
 故に、すべての操作を船長としての役目を持つ骨が行うのである。

「キャノンのスイッチはあたしが押したいし!」

「危ないからダメ」

「え~! イグニールゥ、トウジが意地悪するし!」

「いや、あんたミスりそうだし、ダメよ」

「……なんか悲しくなってきたし」

 甘ったるい声でイグニールに助けを求めたジュノーだが、普通に切り返されてショボンとしていた。
 まったく、とりあえず骨と一緒にやることを前提にわがままを聞いてやるか……。

「ジュノー、結構危険なボタンだからむやみに押しちゃダメなんだぞ?」

「わかってるし! 大丈夫!」

「それじゃ、ジュノー殿は私の合図に合わせてお願いしますぞ~」

「は~い!」

 そんな訳で、ワシタカくんには少しスピードを緩めてもらい翼竜の接敵を待った。

「ギャオオオオオ!」

 目を血走らせた翼竜は、初手口から渦巻く炎のようなものを吐き散らかす。
 ストームジャベリンと呼ばれるなら、風の槍みたいなものを吐くのかと思った。
 しかしながら、とりえあず最初の一杯は生ビールみたいな感覚で炎を吐く。

「一応、風で威力を強めてはいるわね」

「ほうほう」

 さっと解説役ポジションに収まるイグニール。
 なんだか懐かしかった。

「魔力障壁展開ですぞ~! ポチッとな」

 飛空船を取り囲むように、淡く発行したフィールドが展開する。
 障壁だ。
 単純ながら、俺は何気に便利な性質を持ってるよな、なんて思う。
 盾だけではなく、上に乗ることもできるんだからね、これ。

「ごっそりバッテリーの魔力を持って行かれましたけど、耐えれましたぞ」

「耐えれたな」

 強力な一撃だったと思うのだが、展開した魔力障壁はビクともしなかった。
 障壁に利用する魔力は特大バッテリーを消耗する、とメモっておく。
 竜の一撃をバッテリーひとつでなんとかできたんだから、余裕で黒字だな。

「後で充填をお願いしますぞ~」

「了解。俺とイグニールでやっとくよ」

 MP回復ポーションは湯水の如しだから、黒字どころかレジの金もらったレベル。

「2撃目が来るわよ」

「では、そのままフレアを作動させますぞ~!」

 もう一度、口からブレスを吐こうとする竜に、広域拡散フレアをお見舞いする。
 フレアという単語はそもそも異世界に無く、広域拡散弾的なものだ。
 カッコいいからと言う理由で、俺が広域拡散フレアと言う名前をつけたのである。
 男の子は、いつだってこう言う兵器とかが好きなんだ。

 シュバババババババ。

「ギャオオオオオオオ!?」

 後方から広い範囲に発射された無数の魔力弾幕に、翼竜がひるむ。
 追われた際の十分な牽制にはなり得るか、と思ったんだが……。

「翼膜の貫通を確認しましたぞ。蜂の巣ですぞ」

 骨からのそんなアナウンス。

「え、貫通したの?」

「しましたぞ。威力設定は、とりあえず最大でやってますぞ」

「な、なるほど」

 竜の丈夫な体も貫通してしまえるとか、もうこれだけでいい気がした。
 強い。

「でも、無駄が多いので、基本的には牽制として使うのが無難ですぞ」

「そうだな」

 船に積んである特大のバッテリー、2本目がこれで空となった。
 一回の兵装で一本単位を使ってるのだけど、少し消耗が激しい。
 だが、竜との戦い自体が珍しいものだから、実際はそこまでか。

「ねえ、ボンちゃん」

「なんですぞ、ジュノー殿」

「キャノンいるし?」

「……いりませんね。もう翼竜は瀕死で逃げようとしてますし。でも景気付けに撃っちゃいましょうぞ」

「そうこなくっちゃだし!」

 唐揚げ残り一個だけどどうする?
 とりあえず新しいの頼んでもっかい乾杯しよっか?
 みたいな流れでオーバーキルが確定した。
 特大バッテリー1本を消耗する勢いで、魔力収縮キャノンが起動する。

「大盤振る舞いしてるけどさ、充填するの俺とイグニールなんだけど」

「あと2本残った分で、デプリまでの航空は可能ですぞ~ポチッとな」

 ドヒューン。
 船が揺れた。
 後方から超絶極太の何かすごいビームが放出されて、竜は消えた。

「やったし! ドラゴン撃破だし~!」

「やりましたぞ~! オーバーキルですぞ~!」

 ドロップアイテムが各所に散らばっていく。
 その光景を見ながら、俺はため息をついていた。

「あー……」

 気づいたんだ。
 空の戦いってドロップアイテムとか回収がえらく面倒なんだな、と。
 俺の益にならないから基本的には無視する方向性が良いな、こりゃ。
 そこそこ面白かったけど、兵器は無闇矢鱈と使うもんじゃない。

「一応これって材料があれば誰でもどこでも撃てる代物よねえ……」

「そうだな。装備を強化しなくとも、竜に余裕で勝てちゃう代物だ」

 イグニールと顔を見合わせながら思った。
 とんでもないものできちゃった、と。

「ま、まあ……浮遊結晶用のヒヒイロカネとか、現状俺しか作れないし?」

「竜樹がないと全力放出に耐えきれないだろうから……だ、大丈夫よね?」







=====
伏線とか、何もないです。
ただ、翼竜がノリでオーバーキルされてしまうだけでした。
これはひどい。
ギリス編が始まってから、ロマン砲を出したいと思っていたので、念願叶いました。
そしてこの飛空船には、まだまだ隠された秘密がある。
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