装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

678 対して、小動物くんは

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 部屋に居づらくなって、急遽ポチと一緒に外に出てきたけど……。
 はてさて、まだ朝早い時間帯だしどうしようか。
 清々しい天気、外に出ている人たちがちらほらと見えだす。

「次、エリアCだ」

「了解」

 首都の各エリアに配置された廃品置場をうちの業者が回っていた。
 こんな朝早くからやってたのか……知らなかった。

「ォン」

「家のゴミボックス回収も基本的にはこの時間帯だって?」

 日本のごみ収集業者と基本的には変わんないな、もう。
 無限に回収できてしまう性質上、車とかはいらない。
 一応、この世界の魔導技術では車の類似品は可能。

 だが、人知を超えた魔物という驚異がいる現状。
 機器に頼るよりも、レベルの高い馬の方がいいのだ。
 強い馬に馬車を引かせれば、弱い魔物は寄り付かない。
 俺の知る馬と違って、レベル上昇で走れる距離と速さも増える。

 うーん、異世界。
 異世界って感じ。

 そして、俺は全くもって違う世界で、だ。
 日本の価値観のようなものに悩まされている。

 変わらない根っこの部分と。
 それを形成した環境が変わることはない。

「いや、こういうのは自分から変わるべきなんだろうな……」

「ォン?」

 首をかしげるポチ。
 いきなり何を言い出すんだ、といった面持ち。

「こっちの話」

 郷に入ったら郷に従え、という言葉がある。
 結論、異物と感じて逃げていたのは俺じゃないか。

 若い頃は、変化や進化を夢見ていた。
 だがある程度歳を重ねると、それが途端に怖くなる。

 地に根を張り出した瞬間から。
 自分の何かを見つけてから。

 近頃の若者は、だなんて言うおっさんの気持ち。
 わからないでもない。

「ポチさ」

「ォン?」

 公園にたどり着いて、ベンチに座りポチを膝の上に乗せる。
 もふもふの頭の毛の上に顎を乗せながら話す。

「俺はどうしたらいいと思う?」

 変えるべきか、このままでいるべきか。
 イグニールに対する気持ちの問題もあるが、それだけじゃない。
 他にも色々と混み合っている事情はある。

 目を背けてきたんだ。
 今の関係性が心地よいから、見ないようにして居たんだ。

「さっさと決断すべきか? こればっかりは、さっさと」

 自分の思い違いでした、って言うのが一番だと思う。
 例えば、周りの女性が俺に好意を持っているとする。
 それで俺が自分本位になんか調子こいた発言をする。

 でもって……。
 は? 別にあんたに興味ないけど? 何いってんのバカじゃないの?
 みたいな感じで終わるのが一番いい気がした。

 俺が勝手に浮き足立って先走って、一人で撃沈した。
 それが理想の答えなのかもしれないね。
 もっとも、それで変わってしまう“それから”が一番怖いけど。

 ギブアンドテイクで俺が出せるもの。
 もっと用意しておくべきか。

「アォン……」

 そんなことを考えていると、ポチはため息を吐きながら俺の膝を降りた。
 そして、公園の土に棒で書く。

「ォン」

 変わるのが怖いのは、みんな一緒。
 でも、悪いことばかりじゃない。
 きっと良いことばかりかもしれない。

「ポチ」

 ポチも料理という道に目覚めてから目覚ましい活躍だ。
 常に研究し続ける、と言う意味で、変化に強い。
 俺とは違って、気高く強い精神をお持ちのコボルトだ。

「ォン」

 ポチはさらに書く。

 自分の人生なんだから、好きにしたらいい。
 主のことは、みんなが尊重する。
 それだけは変わらない、永遠に、変わらない。

「……」

「ォン」

「まだあるのか?」

 コクリと頷いたポチは、最後にデカデカと書いて見せた。
 そして書き終わって誇らしげに胸を張る。

「アォン!」

 ──この世界を自由に生きていけばいい。
 ──自分の人生なんだから。

「……まあ、究極はそうだよな……よし、ポチおいで」

「アォン」

 再び膝の上に戻ってきたポチを撫で回しながら。
 俺は密かに決意する。

「よし、もうちょっと待機して様子見しよう!」

 相手が俺のことを好きかどうか、それが確定的になってからだ。
 うん、そうだ、そうだよな。
 大人の恋愛ってもんは、好き嫌いをつけるのではなく。
 なんとなく雰囲気的になし崩し的に、やるもんだ!

「勝ち確定になるまで、しばし観察!」

「……アォン……」

 話聞いてたの?
 と首をかしげるポチであった。
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