装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

674 マジックハンドガン

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「それからですね、なんか遠くのものを取る時に使える浮遊結晶を用いた手です」

「うん」

「トウジさん、たまに遠くのものを引き寄せてる時あるじゃないですか?」

「……あるね」

 移動がめんどい時に指輪のスキルである引力を用いてるんだが、ただの横着だ。
 邪竜三兄弟の魂が入った指輪のスキル、斥力と引力。
 相手の行動阻害をする際にかなり有効な一手となるのだが、正直こっちのが便利だ。
 割と最近そう言う小間使い的な形で使っていて、次男が聞いたらキレそうである。

「そこから発想を得ました」

「なるほど」

 ボタンを押すと風の魔法で空気砲みたいに手の形をした物が発射されるマジックハンド。
 手のひらに感圧があり、密着すると指が開閉してつかむことができる。
 掴んだ後は、浮遊結晶の効果で浮かせて、手についたワイヤーを引っ張って引き寄せる。
 引き寄せた後に手のひらは再び元の開いた形に戻って物を離すと言う仕組みだ。
 命名としては、マジックハンドガンという形にしておきましょう。

「お~、うまく出来てるね」

「ォン!」

 狙いを定めて撃つものだと言う説明を聞いて、ポチがやって見たいと言う。

「これはすぐに使えるの?」

「構造の通りに作ってるんでしたら、それは使うことができます」

 ただ、一回撃ったら浮遊結晶が消滅するから使い捨てとのこと。
 コスト的には、全然量産できるからそれなりに配備しておきましょう。

 それでも、俺のリソース的には余裕ってだけで。
 普通浮遊結晶の製作にはかなりの素材が必要となるのだけどね。
 まあ、俺基準で考えればコスパ高いってことで、よろしく。

「はいポチ」

「ォン!」

 ポチは俺が片手で持っていたマジックハンドガンを両手で握りしめる。
 そして、リビングにある適当なものに撃ち込んだ。

 ポシュッ!
 空気によって押し出される手。

 少しフラフラしながらもキッチンの上のコップに上手く命中した。
 命中した瞬間、手がガチッとコップを掴む。

「ポチさん、もう一度ボタンを押すことでワイヤーが戻ります」

「ォン」

 言われた通りにボタンを押すと、ワイヤーがシュルシュルと戻り始める。
 ワイヤーといっても、蜘蛛の魔物から取れるすごく強靭な糸素材。
 科学的に合成された強い糸を魔物が普通に持ってるんだから、異世界ってすごい。

「アォン!」

 無事にコップを手元に引き寄せることに成功して感激の声を上げるポチ。

「上手くいきましたね」

「いったな」

 設計図だけを描いてきたので、果たして上手くいくとは思っていなかったらしい。
 そうだよな、頭の中で考えることと実際に作ってみることって差異がある訳だし。

「手の掴む力が弱すぎないか心配だったんですけど、浮かせちゃえば問題ないみたいですね」

「だな。でも重たすぎる物とかはダメなんだろう?」

「一回限りでしたら浮遊結晶の出力を上げればそれなりに対応はできるはずです」

「なるほど」

 継続して浮遊させ続ける、という問題にぶつからなかったら問題ないみたいだな。
 一瞬だけ浮かせる、という部分に焦点を当てて考えれば良い使い道はありそうだ。

「アォン! アォン!」

「もう一個? はいはい」

 せがむポチに、たくさん作って上げる。
 ポチの射撃精度ならば、使いこなすことができるはずだ。
 掴んでこっちに引き寄せる、色々と使いどころがある。
 たくさん作ってカバンに入れて、もたせておこうか。

 ボシュボシュ!

 次は両手持ちで遠くにあるものを引っ張ってくるポチ。
 楽しそうで何よりである。
 なんだか、遊んでいる姿を見ると俺もやりたくなってきた。

「ライデン、俺たちもちょっと使ってみようぜ」

「僕も良いんですか?」

「設計した本人なんだから良いに決まってるよ」

 そんな訳で、テストを兼ねてこのマジックハンドガンで遊んで見ることにした。
 俺にはスキルがあるから良いんだけど、これもこれで楽しい。
 ちなみに、マジックハンドガンは装備製作の銃カテゴリーに登録された。

 地味に新しいカテゴリーです。
 ライデンくん、本当にありがとうございました。

「よーし、撃ってみるぞ~」

「はい!」

「アォン!」

 そんな感じで3人で並んでマジックハンドガンを撃ってみる。
 狙いはテーブルにあるコップ。
 二つ並べて外した人は罰ゲームとして、スクワット10回。

 ボシュボシュボシュ!
 3人揃って同時に射出。

「あれっ!」

 俺のマジックハンドは、ちゃんと狙ったのにあらぬ方向へ飛んでいった。
 罰ゲームは俺か……と、考えていると。

「朝から騒がしいわね何よ」

 パジャマ姿のイグニールが目をこすりながらやってくる。
 そして──もにゅ。

「あっ」

 俺のマジックハンドはイグニールの胸に命中し、掴んだ。
 しっかり、がっつり、掴んだ。

「……」

「……」

 重量の関係上持ち上がることはないが、気不味い空気が流れる。

「トウジ」

「は、はい」

「どういう状況かしら?」

「えっと……デモンストレーション?」

「人の胸をおかしな魔導機器で掴むのが?」

「いやそれは」

 断じて違うのだけど、状況的に言い訳できない。

「説明と説教ね。部屋に来なさい」

「はい……」

 罰ゲーム、イグニールからの説教にチェンジだ。
 くっ、二度と撃つ系の武器は使わんぞ!
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