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本編
667 美味しいご飯で元気パワー
しおりを挟む「えーと、『美味しいご飯で元気パワー』がパーティーネームですか?」
「…………はい」
翌日、俺は朝から一人で冒険者ギルドに顔を出してパーティーネームの申請をしていた。
エリナが言った通り、俺たちのパーティーネームは美味しいご飯で元気パワーになった。
発案者はポチとピーちゃんである。
由緒正しいじゃんけんにて勝ち残り、二人で決めた名前なのだから、これでいいのだ。
なんだか締まらないけど、逆にそれが俺たちっぽいと、そう思う。
「本当に良いんですか?」
「ええまあ、特に他に候補もなかったですし」
ぶっちゃけ俺は特に何も考えてなかったから、この名前に口出しする権利なんてないのだ。
候補として上がっていたものに関してだが、以下である。
・紅蓮のイフリーターズ
・アルバート商会冒険者支部
・酒を求めし鬼の集い
・白骨カルマ禊会
・フルーツパンチ
・パンケーキの伝道者とその仲間たち
・コレクターズ
こんな感じだ。
誰がどれとは言わんが、とりあえずジュニアとコレクトをチェンジした後の名前である。
でもまあ、わかるだろ、誰がどの名前の発案者か。
個人的にはコレクターズはなかなか良い感じのパーティーネームかと思った。
運極みのくせになんでじゃんけんに負けるかな、コレクトめ。
「一応、変更できますからね?」
「いやとりあえずこれでずっと行きますよ」
パーティーメンバーとして登録されているの俺とイグニール。
しかし、ポチもゴレオもコレクトもジュノーも、みんなも。
みんなパーティーメンバーなのだ。
俺たちは日々の平和を目標に頑張っている。
そう言う意味もこもっていた。
毎日平和でご飯が美味しい、元気もりもり。
結論、それが一番良いのである。
素材収集とかひと段落ついてから、基本的に食に偏った冒険ばっかりだ。
あながち、ポチとピーちゃんの考えたこの名前は、今の俺たちに合っている。
「他に案はなかったんですか?」
「まあ、特に」
上に羅列された名前を出したところで、素っ頓狂な顔つきは変わらんだろう。
そんな訳で、パーティーネームの申請を終えた。
いよいよ世界一番の冒険者を決める戦いに馳せ参じる。
Sランク冒険者パーティー。
『美味しいご飯で元気パワー』が世界を取る日が来るのだ。
……周りの冒険者の皆様は何を思うだろうか。
気にしても仕方がないし、考えないようにしよう。
「で、もう一つ気になっていたんですけど」
「あっはい」
「その衣装はなんなんですか?」
俺のつま先から頭頂部までをジロッと眺めながら尋ねるエリナ。
「なんでメイド服を? それもミニスカの」
「これは罰です。何も聞かないでください」
「いや、気になりますって。その状況でなんで平然としてるんですか?」
「罰なんで」
「え、罰ってなんですか?」
「罰は罰です」
とりあえず、じゃんけんで最下位順に残っていた罰ゲームを行使することになった。
プレゼント交換とともに、一人ずつと言う感覚である。
俺の罰ゲームは基本的にみんな受けている状況だった。
故に、最下位は明日も1日その格好で過ごすと言うことになった訳である。
「ってことで、今の状況ですね」
「ちょっと何言ってるかよくわからないんですけど」
「そうですか?」
「今日1日そのミニスカメイド服なんですか?」
「はいそうです」
とりあえずメイド服に関して聞かれているときは、心を無にしていた。
そうしないと、羞恥心でなんか心がやばいことになる。
スク水じゃないだけ、まだマシだよな……?
「トウジさんたちのパーティーって、なんだかいつも楽しそうですね」
「そうですか?」
聞き返すと、エリナはため息をつきながら言った。
「最近ギスギスしたパーティーの担当にばかりつかされるので、トウジさんたちを見てると心が和みますよ」
「大変っすね」
「でもお仕事だから仕方ないのです」
俺たちが最速でSランクに駆け上がった、その実績は担当にもあると見られる。
その結果、他の上位パーティーを受け持つことが多くなったそうだ。
で、パーティー間や、パーティー内でのギスギスに巻き込まれているらしい。
大変なんだな、受付も。
「まあ、何事も楽しくやってなんぼですよ」
それが一番なのさ。
幸せだ、と思わないと、幸せなんて到底起こりえないのである。
「なら、今、その状況を楽しんでる感じですか?」
「それはぜんぜん」
家の中で内輪でやるなら俺ははっちゃける隠キャだが、流石に公衆の面前はな。
そこまで陽キャにはなれん、隠の者である。
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