装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

650 控えめに言ってアシッドクラウドナイス・後編

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『こら! 船室にいろと私はアナウンスしたはずだが? 船長権限に背くつもりか?』

『そして私は副船長ですぞ~!』

 甲板へとぞろぞろ出向いた俺たちに、オスローからの叱咤が飛んでくる。

「イグニールの全力を見たいから、船のスピード少しだけ緩めてくれ~」

『積乱雲レベルのかなり大きなクラウドだが、本当に倒せると言うのかね?』

「多分いけるだろ、知らんけど」

 魔力550、そしてINT6万を超える魔法の威力を前に、耐え切れる魔物は少ない。
 しかもクラウドとかいう雑多な魔物であれば、尚更だ。
 ちなみに、現状ワシタカくんに引かせているのではなく、船の推進器を利用している。
 クロイツ製のものをお試しで使っている状況だった。
 引っ張ってるのがワシタカくんだったら、まず魔物は寄り付かないのである。

『……ふむ、面白そうだから私も見せてもらおうかな』

『オスロー氏、やめた方が良いですぞ~』

『何故? カルマとか、そんなことを言い出すのか? 私は信じてないから大丈夫だ』

『ふーむ、その杖見るからにやばいですぞ~』

 杖がやばい?
 まあ、カルマがやばい俺が作ったんだからやばいだろうな。
 だがしかし、最大出力を見ておかないとこの先困るだろう。

 えい、火球。
 ズオオオオオオ、バゴーン。

 とかなんとか、加減ミスっちゃって、周りが焦土と化したらマジでやばい。
 イグニールの炎って、後で爆発するから、マジで。

「じゃ、とりあえず距離が取れてる内に撃っちゃうわね」

「うん」

 甲板の先頭に立って、本当に馬鹿でかい雲に向かって杖を構えるイグニール。
 ああ、あの雲って夏場によく海の向こうで見るよな、とか。
 俺たちレベル高いからナチュラルに高高度で平気だけど、本当はヤバイよな、とか。
 でも浮遊結晶の効果で、船の上にいるのならば高度はあんまり関係ないっけ、とか。
 ラフな格好のイグニールって可愛いな、とか。

 そんなことを考えている内に杖の先に展開した魔法陣から火球がゴッと出現する。
 ボッではなく、ゴッ。

 初見で音がおかしかった。
 さらに、一番弱い火属性魔法なのに、直径50メートルくらいあった。
 熱量もとんでもないのではないかと思う。
 船が竜樹でできていなかったら、とんでもないことになっていたはずだ。

『──』

 一斉に絶句する。
 太陽にも似た火球は、そのまま雲の元へと飛んで行って……爆発した。

 ドォオオオオオオオオオオオオオオオ!
 ズオオオオオオオオオオオオオオオオ!

「おわああああああああああああああ!?」

 激しい衝撃が船を揺らす。
 全力ヤバい、ヤバいって。
 威力で吹っ飛びそうになるのを、ゴレオが抑えてくれる。
 ジュノーとポチがそれでも吹っ飛んでいきそうだったので掴む。

「な、何事だい!? 新手のクラウドかい!? 爆発するやつ!?」

 血相を変えてオカロが船の中から飛び出して来た。

「イ、イグニールの全力火球を撃って見ようぜってなったんですよ」

「全力? これが全力? 控えめに言ってもヤバいね?」

 うん、ヤバい。
 もうヤバいとしか言いようがなかった。
 俺の辞書に、イグニールヤバいの文字が追加された。

「僕、怖くなったから船室で大人しく寝てるね?」

「あっはい」

 青い顔をしてそそくさと引っ込んでいくオカロを見送って、イグニールが言う。

「お、思った以上の威力になったわね……加減どうするのよ、これ……」

「ハ、ハハハ……予備の杖作ってあげるから、何かある時以外はそれを使いなよ……」

「そうする……」

 威力検査の結果、なんとも言えない空気になった。
 人に向けて撃っちゃダメなやつだ。
 そして魔物に向けたとしても、周りに誰もいないことを確認しなきゃなレベル。
 全力で撃ったら、の話になるのだけど。

 ……──ポツ、ポツポツ。

「あ、雨だし」

 みんなでお通夜みたいな空気になっていると、ポツリポツリと雨が降って来た。
 何がどうしてこうなったのかわからんが、なんか汚い色の雨である。

「あっ、イグニール服……」

「え?」

 どうやら降って来たのは爆散したアシッドクラウドの服だけ絶妙に溶かす液だった。
 その結果、ラフな部屋着姿だったイグニールの服が溶けていく。
 俺が全て強化してある下着だけが残される形となっていた。

「あーもう、お気に入りの部屋着なのに……」

「いや、そんなことより隠して隠して!」

 見ない振りしつつ凝視してそう言うのだが、彼女はあんまり気にしていない様子。

「別に同じパーティーなんだから気にすることないじゃないの」

「そ、そういうもんか?」

 絶対違うと思う。
 いやでも、俺パーティーなんてイグニールとしか組んだことないからな……。

 そうなのか? そういうもんなのか?
 割と他の冒険者で、女性がいるパーティーってそう言うもんなのか?

 わからないけど、とりあえずアシッドクラウドナイス。
 でもこのパターンが俺以外の人の前で起こるのは癪に触るから、部屋着もカナトコしておこう。

「さ、戻るわよ」

「あっはい」

 下着姿のイグニールに腕を掴まれて、船室に戻ることとなった。
 うーん、腕に感じる直な感触。
 しかしながら、やはり恥じらいというものが必要なのではないか。
 そう、思いました。


=====
『私もカルマを信じることにする』
『入信ですか? 歓迎しますぞ~』
『娘ちゃん、ちょっといい?』
『なんだね、パパ』
『衝撃で何か問題が出てないか確認したんだけど、推進器一部溶けてたよ』
『……火属性魔法禁止にする! まったく! なんて火だ!』


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