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本編
643 イキリダンジョンコア
しおりを挟むさて、珍しく俺の大活躍によってガーディアン達は一掃された。
鉄資源豊富ですよ、ええ。
装備ドロップについては、オリハルコン製のものをたんまり持っている。
だから基本的にドロップした鉄は、玉鋼錬成用のものでしかない。
そして、その玉鋼は全てヒヒイロカネの材料となるのだ。
現状、ヒヒイロカネを超える金属類と出会っていないから、損ではない。
精神世界で天元突破した俺の手持ち資源だが、それでも心もとないのがヒヒイロカネ。
少しでもこう言うところで稼いでおきたいと言ったところなのである。
「足らんぞ、もっと出せよ」
「煽っちゃダメだよ!」
「良いんだよ」
俺の圧倒的な姿を前にして、今だにビビるケープに行っておく。
「ダンジョンにはリソース消耗させるのが得策なんだから」
本体が出て来ざるを得なくするのが、狙い目だ。
身内ばかりいると、こう言うダーティーな真似ができるのが良い。
勇者達と行動することになっていたら、ちまちま倒さなきゃいけない。
やっぱりそれは面倒くさいよな?
「消耗合戦って、相手はもしかしたら骨を取り込んだかも知れないんだぞ!」
「魔力があっても資源がなければダンジョンはやっていけないさ」
そしてガーディアンの元になっていた鉄鉱石。
それらは全て俺のインベントリにないない。
これぞ、ザ・ダンジョン攻略である。
「ほら、どんどんダンジョンぶっ壊すぞ」
ポチとゴレオを交代して、そのままピッケルで一緒に岩盤削っていく。
ガッガッガッガ。
このピッケルも実際破壊の大槌という装備をカナトコしたものだから。
クイック採掘によってどんどん石を削って掘り進むことが可能である。
「おーい、ダンジョンコアー」
ガッガッガッガ。
「早く出て来ないとこっちから掘り進めちゃうぞー?」
ガッガッガッガ。
ちなみに、ゴレオの方はもっと激しい感じで掘り進めている。
一発一発の威力が俺の倍くらいだから、ガゴンガゴンとね。
もう、ド偉い勢いで穴を開け始めているのだった。
「おーい?」
「──このクソガキどもがああああああああ!」
掘っていた岩肌に、突如として巨大な穴が出現する。
その奥から、貴族のような姿をした細身の男が姿を現した。
「愚弄しやがって!」
顔を真っ赤にしたダンジョンコアは言う。
「人様のダンジョンに勝手に穴を空けて、何様のつもりだ!」
「何様もなにも、ここはケープのダンジョンだ。そっちが何様?」
「なんだと!?」
「言っておくけど、そっちが勝手にこっちのダンジョンに干渉したんだぞ?」
せっかく距離を取ってダンジョンを作っていたと言うのに。
それを脅かすお前が悪だ。
正当性はこっちにある、と俺はまくし立てる。
「ケープは敗者。私は勝者。情けなく逃げ出したならさっさと消え去るのが筋だ!」
「その件も、最初にこの土地にいたのはケープの方らしいよな?」
「それがどうした?」
ダンジョンコアは鼻で笑いながら言った。
「奴はこの土地から逃げ出して、空いた土地に私がダンジョンを作ったまでのこと」
「ふむ」
「多少弁が立つガキの様だが、人の世界でしばらく生きていた私に通じると思うな」
「人の世界……?」
ダンジョンコアが人の世界で生きていたなんて、珍しい。
首を傾げていると、目の前のダンジョンコアは高らかに宣言する。
「そう、私はとある方に使命を授かってここにいるのだ!」
「し、使命だと!?」
「ふはは、畏れおののけ、この地下に眠る悪魔の亡骸を再び復活させるべく使わせられたのだ!」
「あ、悪魔の亡骸だってー!?」
……ふむ、地下に眠る強力な魔力を持った骨の正体が判明したな。
なんとも、ベラベラベラベラよく喋るダンジョンコアだろうか。
情報収集が捗りすぎて笑えてくる。
「怖いか? 悪魔に恐れおののくとは、やっぱりガキだな」
「そ、それをどうするつもりだーだれがそんなひどいことをー」
「ふん、高尚なお方の名前を、クソガキに教える必要はない!」
「あっそう、じゃ、とりあえず仮称でうんこたれって呼んでもいい?」
「うん──!? ふ、ふざけるな! あのお方を愚弄する気か!」
「だって教えてくれないからわかんないもん。なあ、ジュノー?」
「え? あたし? えっと……うん、よくわかんないからうんこたれでいいと思うし!」
唐突に話を振られたジュノーは首を傾げながらそう宣言した。
すると、ダンジョンコアは顔を真っ赤にして鼻息荒く怒り出す。
「貴様ら! 八大迷宮の一つ、奈落墓標の最終守護ビシャス様を知らんのか!」
「ほー」
ビシャスね、名前は知っているぞ。
ラブは性格の悪い奴だとかなんとか言っていたはず。
勇者達が断崖凍土に来た時も、その名を口にしていた。
邪竜を復活させたのがビシャスだとかなんとか。
謂わば、勇者関連で色々とちょっかいを出している悪党と言える存在だ。
「悪魔の亡骸を復活させるために、お前はここに来たっていうの?」
「その通りだ」
ふむ、地下に眠る悪魔の亡骸を復活させるべく、力を貸した……か。
臭い、臭すぎる。
また裏でなんかコソコソやってるのかと思うと、ここで潰しておくべきだな。
「さあ見逃してやるからさっさと帰れクソガキども! 私にはやるべきことがあるのだ!」
「ちなみに、悪魔の亡骸ってもう復活したの?」
「まだだ!」
まだか、そっか。
「よし、ゴレオやれ」
「……!」
コクリと頷いたゴレオがピッケルを振り上げてダンジョンコアに殴りかかる。
ブォン!
「──ひえっ!? なっ、いきなり何をする!」
「やっぱりヤバそうな感じがするから、阻止させてもらう。イグニール!」
「えっ? きゅ、急に? えいっ火球」
イグニールは俺の急な振りに答えて、ダンジョンコアに火球を飛ばした。
ゴレオの一撃を回避しながらの状況で対応できずまともに受けてしまう。
「ぐわああああああああ!!」
爆炎に飲まれて火だるまになっていた。
これで終わってくれたら楽勝だよな、と思っていたのだけど。
やはり分体でここに来ていた様で、燃えつきながらも余裕の表情をしていた。
「宣戦布告か? よかろう、ならば受けて立つ。貴様らに地獄を──」
──ゴッ!
あっ、言葉を言い終わる前にゴレオの一撃が命中した。
「……!」
やっちゃった、とばかりに内股になってぺこぺこと謝るゴレオ。
「いいよいいよ、どうせ減らず口叩くだけだろうしな」
「おい! 本気出させちゃったよ!」
ケープが焦った様に言う。
「良いのか!? 地獄を見せられるんじゃないのか!?」
「どうせ悪魔の亡骸を回収しに行かなきゃいけないから、一緒だよ」
「えっ!? 外に出るんじゃないのか!?」
「行くよ」
悪魔の亡骸とか、復活したらなんかヤバそうだし。
それに、なんか裏でコソコソやってるっぽいから先に潰しておきたかった。
「でもトウジ、どうやって行くわけ? 一旦外に出て正規ルートから入るの?」
「そうだし、もしくはさっきみたいに地下深くまで掘り進むし?」
イグニールとジュノーの疑問に答えておく。
答えは単純明快だ。
「あいつが出て来た穴、まだ開けっ放しだからさっさとここから行こうぜ」
どうやら、頭に血が上って自分が来たルートを消し忘れていたみたい。
「すごいアホですぞ~」
「うむ、アホで助かった」
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